著者
志水 廣
出版者
国立大学法人愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 (ISSN:21860793)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.77-83, 2015-03-31

小学校の児童が算数を学ぶ上で,算数科にかかわる数学言語(算数語彙)について,どの程度正確に理解しているかについて調査した。調査分野は,小学校下学年,「数と計算」の領域について算数教科書に登場する算数の用語・記号とそれらを規定する言語も含めて算数語彙とした。1つの算数語彙に対して5問の選択肢を用意して児童に選択させる問題(語彙テスト)を開発した。調査問題は,予備調査(175名)に基づき本調査(975名)を実施した。その結果,算数語彙に対して理解度の低い問題が見つかった。例えば,1年生の語彙「3人に2まいずつ」の正答率は66.9%,2年生の語彙「4この2つぶん」の正答率は18.1%,3年生の語彙「3人に分ける」の正答率は59.4%,語彙「はした」の正答率は52.9%であった。
著者
後藤 多可志 宇野 彰 春原 則子 金子 真人 粟屋 徳子 狐塚 順子 片野 晶子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.38-53, 2010 (Released:2010-04-16)
参考文献数
72
被引用文献数
24 9

本研究の目的は, 日本語話者の発達性読み書き障害児における視覚情報処理過程を体系的に評価し発達性読み書き障害の背景となる認知障害構造を明らかにすることである. 対象は日本語話者の発達性読み書き障害児20名と定型発達児59名である. 視機能, 視知覚, 視覚認知機能および視覚性記憶機能を測定, 評価した. 本研究の結果から, 視機能の問題は読み書きの正確性に大きな影響を与えないのではないかと思われた. 線分の傾き知覚と視覚性記憶機能は本研究で対象とした発達性読み書き障害児全例で低下していた. 視知覚と関連のあるvisual magnocellular systemとvisual parvocellular systemを検討した結果, 双方の視覚経路で機能低下を認める発達性読み書き障害児が20名中8名いた. 日本語圏の発達性読み書き障害児は海外での報告とは異なり2つの視覚経路の問題を併せもつことが多いのではないかと思われた.
著者
柳瀬 昇
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.74-87, 2009 (Released:2017-02-06)

2003年7月に行われた5例目の電子投票による選挙では,電子投票機の異常により 投票が中断するなどの大規模なトラブルが発生し,選挙人から行政不服申立てや選挙無効訴訟が提起されるに至った。名古屋高等裁判所は,2005年3月,投票機の異常によって選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあったとして選挙を無効と判示し,最高裁判所も,その判断を支持した。 本稿では,この岐阜県可児市電子投票事件について,事件の概要,選挙人からの行政不服申立てとそれに対する市・県選管による判断および裁判所の判断を概観したうえで,電子投票を用いた選挙の手続の瑕疵をただす方途について検討しつつ,各機関による法的判断について評釈を行った。
著者
山極 寿一 バサボセ カニュニ
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第21回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.46, 2005 (Released:2005-06-07)

これまで、ゴリラの食性をめぐって典型的な葉食者(マウンテンゴリラ)と季節的な果実食者(ニシローランドゴリラ)という二つの異なる特徴が知られている。この食性の相違は環境条件(山地林と低地熱帯雨林)を反映しているので、どちらがゴリラにとって主要な特性なのか、なかなか見極めることが難しい。私たちがここ10数年にわたって継続調査をしているコンゴ民主共和国カフジ・ビエガ国立公園のヒガシローランドゴリラは、ちょうど両植生帯の中間に当たり、1年のうちの短い期間果実が豊富に実る。ゴリラは好む果実が得られる時期は果実をよく食べ、少なくなると葉や樹皮など繊維質の食物を多く食べる。しかし、毎日寝場所から次の寝場所までゴリラ1集団の新しい通跡をたどってみると、果実の有無に関係なく年間を通して摂取している葉と樹皮が数種類あることがわかった。さらに、1日に集団で採食する食物の種類数にはほとんど月間変化が認められなかった。また、ゴリラは果実期になると遊動距離を伸ばして多くの果樹を渡り歩く傾向があった。これは、特定の果樹を繰り返し利用するチンパンジーとは対照的な特徴であり、主要な葉や樹皮を摂取する必要性から生じていると考えられる。これらの観察から、ゴリラは「果実を好む葉食者」と見なすべきである。
著者
堀田 修 田中 亜矢樹 谷 俊治
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.99-106, 2016-03-31 (Released:2016-06-23)
参考文献数
16

慢性上咽頭炎は肉眼的に判定することは困難とされ, 耳鼻咽喉科医の認知度は低い. しかし, 同部位の慢性炎症による局所症状は一般的には軽微であるがその解剖学的特性により, 慢性上咽頭炎は免疫系・自律神経系・内分泌系に影響を及ぼし, その結果として様々な全身症状を惹起する. 原病巣である慢性上咽頭炎が耳鼻咽喉科領域であり, 二次疾患である全身疾患が他科領域となるため, 1960年代に注目された後, 医療の細分化の潮流の中で, 一旦は医学界の表舞台から姿を消したが, 近年, 再び復活の兆しがある. 中でも慢性疲労症候群, 過敏性腸症候群などの機能性身体症候群における慢性上咽頭炎の関与は重要であり, 充分な上咽頭処置により全身症状の軽快が得られることが多い. それ故, 適切な慢性上咽頭炎診療の再興は将来, 日本の医療に大きなインパクトを与える可能性を秘める. その為には微細な経鼻的内視鏡的所見や具体的な処置方法を含む, 今日の医学に即した「慢性上咽頭炎診療マニュアル」の作成が切望される.

63 0 0 0 OA 和漢三才図会

著者
寺島良安 (尚順) 編
出版者
中近堂
巻号頁・発行日
vol.中之巻, 1888
著者
坂村 健
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.41(1986-HI-007), pp.1-8, 1986-07-09

文字列入力の過程において、入力効率がいいことと同時に作業者の疲労が少ないことは重要である。本論文は、これらの目的を達成するため新たに設計されたTRONキーボ-ドを中心としたBTRONオペレーティングシステムにおける入力仕様について報告するものである。BTRONはビットマップディスプレイの制御とマンマシンインタフェースにおけるリアルタイム性に特に注意して作られたワークステーション用OSである。TRONキーボードの設計においては、今までデータの無かった日本人の手の諸元データの測定から始め、その解析により人間工学的に打ちやすく疲労の少ない物理的キー配置を決定した後、多数の文書入力データの分析によりキーの文字配列を決定している。また、図形入力のための電子ペンを合わせて提案している。