著者
太田 素子
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
no.14, pp.31-40, 2013

パーティをキーワードにして、ヴァージニア・ウルフ(Virginia Wbolf)の作品を読み解こうと試みる。パーティはウルフの作品に於いて重要な役割を果たしていながら、これまで、必ずしも正当に評価されてきたとは言えない。しかし、例えばパーティの催される1日を描く『ダロウェイ夫人』(Mrs.Dalloway)では、「瞬間」("themoment")を捉える特有の儀式として、パーティが効果的に用いられている。そこでは、もろさと表裏をなしながら至福の「瞬間」が鮮やかに定着されている。ウルフが、個我や自我に収敏したいわば閉塞的な世界を描いた作家と思われている一面で、常に社会との関係を意識し続けていたことを再考するひとつの試みでもある。パーティ空間を媒介にして、人は社会と幸福に関係を保とうとするが、そうはできない時代や個人の意識のため、様々なアンビヴァレントな意識を感じていると言える。パーティの準備に始まりパーティのクライマックスで終わる『ダロウェイ夫人』をとりあげて、G.ジンメル(Georg Simmel)や山崎正和の「社交論」、C.エイムズ(Christopher Ames)のパーティ論を踏まえつつ、ヨーロッパ近代の社交とウルフのパーティ空間について考える。
著者
土井 麻由佳 宮下 芳明
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.912-928, 2018-03-15

箏を演奏するためには,演奏技術だけでなく,箏譜の読譜力や弦の位置把握力も必要である.それに加えて,箏には25種類もの奏法が存在し,その中には運指の切替えタイミング等の演奏するにあたって必要な情報が箏譜上に書かれていないものもある.そのため,これらの奏法の習得は難しいとされている.そこで本論文では,箏譜が読めず弦の位置を把握できない初心者のための「奏法」を考慮した箏演奏学習支援手法を提案する.提案手法は演奏支援情報を箏の弦や龍甲に直接提示する.システムでは,プロジェクションマッピングによって,これらの提示を行う.弦名が書かれた紙を用いた手法との比較実験を行い,撥弦位置や奏法を提示する学習支援手法が初心者に与える影響・効果について考察した.また,箏初心者を対象とした提案手法が経験者にも有用であるかについて検証した.実験の結果,初心者には撥弦位置や運指,一部の奏法提示に効果が見られたが,経験者には有用でないことが明らかになった.
著者
伊藤 豊太[作詞]
出版者
ビクター
巻号頁・発行日
1942-02
出版者
日経BP
雑誌
日経ビジネス = Nikkei business (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.2022, pp.58-62, 2019-12-23

600年の歴史を持つ岩手県花巻市の鉛温泉。11月23日、地区に唯一残る「藤三旅館」運営会社の藤井大斗専務(40)は首都圏から訪れた男女5人に「ぜひ、ブランディングを手伝ってください」と呼び掛けた。天然の岩をくり抜いた湯船から湧き出る源泉と純和風の館は…
著者
河合 慎吾
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-85, 1961

The purpose of this study is to throw light upon the social character of modern highteens. The first point is to formulate their main characteristics by analyzing the data of the attitude survey of three highteen groups. (high school boys, young factory workers and white collar workers). The next point is to explore the conditions that injure their healthy development by using many documents about the highteen problems. Three characteristics of modern highteens are mainly as follows; (1) they have pluralistic ethical value systems, thatis, their values and ideologies are not monotheistical, (2) they assume rather ego-centric attitudes toward the society but they are the sametime, very sensitive to the judgement of their peer-groups, (3) they are practical and externally oriented, never confined themselves within the inner-worlds and enrich them. They have heathy personality traits in budding, but they are weak as individuals. So they cannot resist the negative forces without as individuals and are liable to surrender to the negative conditions, for example, over-competition in school and other seeming uncontrollable socio-political forces.
著者
小椋 秀樹 Hideki OGURA
出版者
国立国語研究所
雑誌
言語資源活用ワークショップ発表論文集 = Proceedings of Language Resources Workshop
巻号頁・発行日
no.2, pp.223-232, 2017

会議名: 言語資源活用ワークショップ2017, 開催地: 国立国語研究所, 会期: 2017年9月5日-6日, 主催: 国立国語研究所 コーパス開発センター外来語表記のゆれには発音のゆれが関わっているといわれるが,表記のゆれと発音のゆれとの間にどの程度関連があるのかについては,十分に明らかにされていない。そこで,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(出版・書籍)と『日本語話し言葉コーパス』とを用いて外来語の語末長母音の表記と発音のゆれの実態調査を行った。調査の結果,長音符号を省略した表記の割合(無表記率)は17.0%,短母音のように短く発音した割合(短呼率)は7.7%で,表記と発音との間にずれが見られた。この表記と発音とのずれの要因としては,(1)《エアー》《ソファー》《ボディー》等の特定の語において符号無表記や短音化が高い度数(比率)で生じていること,(2)語末音「ティ」を持つ語において符号無表記が広範囲かつ高い度数(比率)で生じていることの2点が指摘できる。
著者
小林 省蔵 大河原 敏文 斉藤 渉 中村 ゆり 大村 三男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.453-458, 1997-12-15
参考文献数
21
被引用文献数
2 20

細胞融合により3倍体を作出する目的で, '十万'ウンシュウ, '大三島'ネーブルオレンジおよび'トロビタ'スイートオレンジの珠心起源カルスのプロトプラストとクレメンティンの半数体 (No. 1およびNo. 2)の葉肉起源のプロトプラストを, 3組合せ (ウンシュウ+半数体No. 1, ネーブルオレンジ+半数体No. 2およびスイートオレンジ+半数体No. 1) で電気的に融合させた.得られた植物体の根端細胞の染色体数調査を行ったところ, 2倍体 (2n=18) と3倍体 (2n=27) が混在したが, いずれの組合せにおいても3倍体が存在した. これら植物体についてRAPD法により雑種性を調査したところ, 3倍体はいずれも両親に特異的なバンドの両方を含んでおり, 体細胞雑種個体であることが確認された.
著者
田村 航
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.127, no.11, pp.1-23, 2018

後花園天皇は崇光院流皇統(伏見宮)の出身ながら、断絶した後光厳院流皇統を猶子相続したため、どちらの皇統の継承者なのかという点で見解が分かれている。この問題を解明するにあたり、鍵となる伏見宮貞成親王(後崇光院)の尊号宣下についても、後花園と貞成の続柄や、貞成の尊号辞退をめぐり、検討する余地が残されている。そこで本稿では同時期の政治状況を見据えつつ、これらの問題をあきらかにしていきたい。<br>永享五年(一四三三)、後花園は義父の後小松院が死没したさいに後光厳院流の継承者と再確認されたものの、生家の崇光院流との関係を絶ち切れず、文安四年(一四四七)の貞成親王の尊号宣下を「厳親」としておこなうのか、それとも「傍親」としておこなうのかが問題となった。結局、後花園は貞成の尊号宣下を「傍親」すなわち兄としておこない、自らが後光厳院流の継承者であることを明示した。これは康正二年(一四五六)の貞成の葬礼でも変わらなかったので、貞成の尊号宣下は後花園の皇統を決した節目と見なせる。また貞成は尊号辞退の報書を提出し、とくに慰留された形跡はないが、依然上皇として天皇・室町殿と並びたつ位地にあった。<br>このように後光厳院流の後花園天皇と崇光院流の上皇の貞成が並存する、一見矛盾した措置がとられたのは、後花園の実父として貞成への尊号宣下をしてはならないという後小松院の遺詔と、足利義教が貞成を後花園の実父と遇してきた政治路線との妥結による。この結果、伏見宮は当主が代々後光厳院流の天皇の猶子として親王位につきつつ、崇光院流の上皇たる貞成にもつらなる世襲親王家として皇位継承権を担保され、後花園は後光厳院流の系譜上の断絶を回避しつつ、崇光院流(伏見宮)の温存をも果たし、前世紀以来の両皇統の争いを終息させ、その融和と両立を実現させたのである。
著者
塚本 研一 戸枝 一喜 船木 勉 大久 長範 松永 隆司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.313-319, 2007-07-15 (Released:2007-10-04)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

秋田県産のはたはたずし製品について秋田県内3地域の代表的製品の製品形態,各種化学成分,遊離アミノ酸,有機酸,遊離糖類,微生物について検討した結果,以下の特徴を明らかにした.(1)沿岸北部の製品は原料にハタハタ,米,野菜を主に使用し,熟成期間が短く乳酸発酵がない早ずしである.主に食酢処理による酢酸の浸透により微生物を抑制していた.(2)沿岸中央部の製品は原料にハタハタ,米,米麹,野菜を主に使用し,乳酸発酵があるなまなれずしである.使用原材料ではいずしに近く,米麹,野菜を使用し乳酸発酵を促進するなまなれずしの伝統的な製造法に近かった.(3)沿岸南部の製品は原料にハタハタ,米飯,米麹,野菜を主に使用し,米飯の米麹による糖化を十分に行っているが,乳酸発酵はない早ずしである.使用原材料ではいずしに近いが,食酢処理による酢酸の浸透および米飯の米麹による十分な糖化と砂糖添加による水分活性低下で微生物を抑制していた.これらの結果から秋田県のハタハタずし製品は乳酸発酵があるなまなれずしタイプと早ずしタイプの2つに分類された
著者
関根 政美
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.329-346, 2005-09-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
48
被引用文献数
2 2

現在, 経済グローバリゼーションを促進する「新自由主義経済イデオロギー」が国境の開放・自由化を求めている.他方で, 国民国家政府は, 人の自由な移動を厳しく制限・管理しようとしている.本稿ではこれを「移民 (入国管理) 政策のジレンマ」として考察する.そのためまず, 近代の人口移動のグローバリゼーションの歴史を探り, 次に, 入国管理規制の変遷について概観し, 最後に, 近年先進諸国では新自由主義経済イデオロギーのもとで移民制度の整備と入国管理規制強化が進められ, 管理能力を一段と高めていることを明らかにする.その影響としてまず第1に, 下積み職種労働者・家族呼寄せ移民の入国が困難になり, 逆説的な結果として, 難民申請者や非合法入国者が増大していることを明らかにする.また第2に, 非合法滞在者・外国人犯罪増加による社会的不安が先進諸国に醸成されるとともに, 戦後の大量移民が先進諸国の多文化社会化を促進した結果生まれた「文化戦争」状況を, 極右政党の台頭を例にみる.最後に, こうした社会・文化変動のなかで「多文化主義」の変容が進み, 新自由主義経済イデオロギーにより合致した移民政策と多文化主義が登場し, 社会的弱者の多い移民・難民は, 一度は人道主義観点から入国を許可され社会に包摂されるが, 結果的には, 社会的に排除・周辺化される傾向にあることを指摘する.
出版者
小学館
雑誌
週刊ポスト
巻号頁・発行日
vol.46, no.45, pp.154-159, 2014-11-21
著者
濱田 仁 木村 光子 村岡 大祐
出版者
日本藻類学会
雑誌
藻類 = The bulletin of Japanese Society of Phycology (ISSN:00381578)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.133-137, 2010-07-10
参考文献数
14
被引用文献数
2
著者
三浦 高志 熊岡 忍 松本 建太 下村 孝光
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. D-II (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.608-618, 2004-02-01
参考文献数
11
被引用文献数
1

本論文は,適応的直交変換によるベクトル量子化において,ベクトル探索を高速化する方法を提案する.高速化の原理は,誤差ベクトルをより次元の低いベクトルに分割してから量子化を行う,積符号技術である.ベクトルの次元が低くなれば,同じ近似利得を与える辞書サイズが小さくなるので,候補ベクトル数が減少してベクトル探索が高速化される.また,辞書ベクトルを先頭要素の降順にソートしておき,誤差ベクトルの先頭要素値から直接的に候補ベクトルの範囲を限定して候補ベクトル数を削減する方法及び誤差ベクトルの画品質と目標画品質との差によって最適なサイズの辞書に切り換える方法を追加した.提案方式の有効性は数値実験により検証される.
著者
大熊,真一郎
出版者
日本作物学会東海支部
雑誌
日本作物学会東海支部会報
巻号頁・発行日
no.113, 1992-07-01

水田や沼地に生息している湿性植物は通気組織が非常に発達しているのが特徴の一つである.レンコンの収穫を目的に栽培される食用ハスにおいても通気系の発達が顕著である.食用ハスの通気組織の構造, 葉-茎-根の連絡, 空洞(Lacunae)の中のガスの移動のメカニズム等は十分明らかにされていない.本研究では食用ハス(Nelumbo nucifera)の通気系の役割を調べることを目的とし, 空洞の形態観察および体内のガス圧調査を予備的に行った.
著者
水上 直紀 中張 遼太郎 浦 晃 三輪 誠 鶴岡 慶雅 近山 隆
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.2410-2420, 2014-11-15

本論文では,牌譜を用いた教師付き学習による麻雀プログラムの作成法について述べる.まず,上級者の牌譜を用いたパーセプトロン学習によって1人麻雀プレイヤを作成し,それを拡張することによって4人麻雀への適用を行う.拡張は,1人麻雀プレイヤに「降り」と「鳴き」の機能を教師付き学習によって導入することで行った.オンライン麻雀サイト「天鳳」で作成されたプログラムの実力を評価した結果,レーティングとして,平均的な人間プレイヤーの実力を大きく上回る1,651点が得られた.This paper describes a supervised machine learning approach for building a mahjong program. We start with building a one-player mahjong program by Perceptron learning with game records of expert human players,and adapt it to four-player mahjong. The adaptation is achieved by incorporating the "folding" and "calling" functionalities that are separately learned from game records. We have evaluated the playing strength of the resulting program on a large online mahjong site "Tenhou". The program has achieved a rating of 1,651, which is considerably higher than that of the average human player.