著者
福地 重孝
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.104-105, 1965-08-01

女らしき女丈夫 「婦人新聞」は矢島楫子を評して「男らしき女丈夫は世間に少なくないが,女らしき女丈夫に至っては,刀自において初めてこれをみる。社会を呪い,世間を悪罵する矯風家はその人に乏しくないが,教育家的先達的態度を以て社会を指導せんとする矯風家は,刀自をおいて他に多くみない。」(大正3・11・20)といっている。 彼女が風俗改善のため,東京婦人矯風会を起こしたのは1886年(明治19)であり,それを日本婦人矯風会として全国的組織としたのは1893年(明治26)であった。これは日本でもっとも大きな全国的婦人団体のさきがけということができよう。もっとも半官製の奥村五百子らの愛国婦人会のごとき軍事援護団体があったが,楫子らのそれは,その根底にクリスチャンとしての信仰と強烈な婦人解放の意志が蔵せられていたのである。そして,矯風会は満州事変以後一時沈滞したが,戦後たちなおり日本キリスト教婦人矯風会として活躍し,婦人運動の一翼をにない,国際平和運動にまでつらなって活動しているのである。

1 0 0 0 OA 水戸藩末史料

著者
武熊武 編
出版者
武熊武
巻号頁・発行日
1902
著者
吉田 聡宗
出版者
一橋大学大学院法学研究科
雑誌
一橋法学 (ISSN:13470388)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.565-613, 2020-07-10

This paper reviews the history of anti-animal cruelty laws in America primarily on the basis of the contents of the first annual report of the American Society for the Prevention of Cruelty to Animals(ASPCA). In Japan, the basic guidelines for comprehensively promoting measures on the welfare and management of animals seek cooperation between the public sector with law enforcement powers and private organizations. In order to improve the system, it is helpful to examine the situation in other jurisdictions. Compared to animal welfare laws in European countries, American anti-cruelty laws have not been studied as deeply in Japan as their importance merit. As previous studies have noted, American anti-cruelty laws have their roots in the New York of the 1860s. The state legislature established the ASPCA in 1866 and delegated some law enforcement powers to it. In the ASPCA's first annual report, its list of members, related laws, some cases, and other important information are recorded. By reviewing such information, we can gain a clear understanding of how the ASPCA enforced anti cruelty laws from the outset. This paper thus analyzes the first annual report of ASPCA and other historical documents with a view to clarifying its implications for Japanese law today.
著者
柘植 あづみ
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.35-41, 2006-09-25 (Released:2017-04-27)
参考文献数
15

生殖技術は生命倫理の中心的課題のひとつとして議論されてきた。生殖技術の開発・応用はめまぐるしく進むため、生命倫理の議論は常に技術刷新の後を追う形であった。しかし、これまでの生殖技術に関する生命倫理の議論は、生殖への人為的介入への危惧、家族関係の複雑化に対する懸念、情報開示やインフォームド・コンセントの必要性、生殖細胞や組織の商品化への批判など、対象となる技術は異なっても類似した内容が繰り返されている。そこで、本稿では、生殖技術の進展の経過を概観し、既存の議論を確認した上で、これまで十分に議論されてこなかった課題を指摘し、今後の議論の発展を促したい。
著者
水野 かおり 三浦 智恵美 三浦 猛
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.23-30, 2014-03-20 (Released:2015-04-02)
参考文献数
20

カワハギおよびウマヅラハギの適水温を明らかにするため,異なった水温(15°C,20°C,25°C,30°C)で63日間,飽食給餌下にて飼育し,両種の飼育成績を比較した。カワハギの成長は20°C~25°Cが最もよく,日間摂餌率および飼料効率は,15°Cと25°Cでは高水温ほど増加したが,30°Cでは減少した。ウマヅラハギは30°Cでは全ての個体が死亡した。日間増重率および日間摂餌率は,15°Cと20°Cでは高水温の20°Cの方がより増加したが,25°Cでは減少した。一方,飼料効率は15°Cが最も高く,高水温ほど減少した。これらの結果から,両種の飼育適水温はカワハギ20°C~25°C,ウマヅラハギ15°C~20°Cの範囲内であると推察された。また,海面小割生簀で15ヶ月間の飼育試験を実施した結果,カワハギは60 g から371 g,ウマヅラハギは24 g から267 g に成長し,累積死亡率は,カワハギでは29%と高く,ウマヅラハギでは 3%と低かった。
著者
矢口 芳生
雑誌
福知山公立大学研究紀要 (ISSN:24327662)
巻号頁・発行日
no.1, pp.5-49, 2018-03-31

ここ数年、「地域経営」や「地域経営学」という用語は広く使われ、一般化してきている。厳密に使われているわけでもない。「地域再生」や「地方創生」という政策課題が広く社会化する動きと軌を一にしている。政府も様々な局面において「地域経営」の視点を強調し、これに関係する学会の動きも活発化している。既存大学においても、2016 年度から地域創生・再生、地域経営に関係する学部として再編する動きが目立った。たとえば、地域デザイン科学部(宇都宮大学)、国際地域学部(福井大学)、芸術地域デザイン学部(佐賀大学)、地域資源創成学部(宮崎大学)がある。高知大学は2015 年度に「地域協働学部」を新設した。福知山公立大学は、「地域経営学部」をもつ全国初の大学として2016 年4 月に開学した。今や「地域経営」や「地域経営学」はあまりに多種多様に使用され、混乱さえ感じられる。未だに確定的な定義はない。本稿では、「地域経営」や「地域経営学」の定義に関し、一定の整理を行うことを目的とする。第一に、「地域経営」等の用語が頻繁に使用されるようになった2000 年以降の動向と、地域活性化論議が活発化した社会的な背景を明らかにすることである。第二に、その用語を提起した政府機関および関係組織や学界および研究者の動向と、提起した内容を整理する。本稿で扱う「地域経営」や「地域経営学」に関係する組織および内容等は、次の3 つの分野である。①関係省庁:地方分権、地域再生や地方創生、人口減少・超高齢社会等を問題にする内閣府、総務省、国土交通省等の関係省庁、また、政府に関係する民間組織、地方自治体等であり、これら組織が発信する地域経営・地域経営学。②学界:日本学術会議経営学委員会「地域経営学の研究・教育のあり方検討分科会」の見解、また青森公立大学発の地域経営学会が発信する地域経営・地域経営学、並びに地域活性化の問題を扱う地域活性学会における地域経営・地域経営学。③研究者個人:地域経営・地域経営学に関係する図書・論文のなかで研究者個人が提起・展開する地域経営・地域経営学。これら分野における議論を整理するためには、一定のルールが必要である。本稿では、関係組織や学界並びに関係図書等における「地域経営学」の定義(対象・課題と方法等)、発生・定着の経緯と背景、学術・科学上の位置づけ、各分野における到達点に関して整理する。続いて、「地域経営学」の今日的意義および今後果たすべき役割を明らかにしつつ、「地域経営学」の定義の吟味を行う必要がある。定義、意義や役割が明確になれば、大学における教育研究のあり方、また地域社会への貢献のあり方にも大きな影響を与えるであろう。この課題は、最終章の拙稿に譲る。
著者
大嶺 ふじ子 浜本 いそえ 小渡 清江 宮城 万里子 砂川 洋子 杉下 知子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.64-73, 1999-11-30 (Released:2012-10-29)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

正しい性知識を伝授することと性をより肯定的に捉えられるような動機付けを目的として, 大学生8人がピァ・カウンセラーとなり, 高校生42人に対しロールプレイ等を取り入れたピァ・エデュケーションを3回にわたり実施した. ピァ・エデュケーションの具体的な方法と展開内容および留意点を検討し, その実施前後に高校生の性に関する知識及び意識についての変化と男女差を明らかにするための自記式質問紙調査を行った.ピァ・エデュケーション実施後の感想では,「性についてよく考えられた」,「もっと性のことを知りたい」,「カウンセラーの人たちは話しやすくて, 質問をしやすかったので安心できた」,「3回だけではなくもっと計画してほしい」など否定的な感想は無く好評であった.今回の性知識・性意識の調査結果からも, この時期の特徴が反映されており, 性意識は活発化してきているといえるが, 性知識は不十分であった. 特に, 性知識の面では,男女ともに, 避妊法では「コンドーム」, STDでは,「エイズ」と知識に偏りが大きかった. 性意識の面では, 性の責任性において, 男子は実施後に高い得点を示し, 変化がみられた. また,「望まない妊娠を避けるには」において, 男女とも実施後に「男女が性について本音で話し合える」と答えたものが倍増し, 変化がみられた.このことより, ピァ・エデュケーションは, 生徒が性をより建設的, 肯定的に考えることに役立つ教育方法として, 効果があることが示唆された.
著者
場知賀 礼文
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.147-160,240, 1993-09-30 (Released:2009-11-11)
参考文献数
26

価値と価値志向にかかわる課題は社会学の研究において中心的な位置を占めるものとはいえないにしても、価値が社会学における研究として重要な要素の一つであることは一般的に認められている。本稿では、価値が個人的、社会的に価値志向として重要な意義を有するものであると考える。まず個人的な価値志向に関する基本的な問題は、価値の内面化と統合化、及びこれらの過程に対する現代社会の影響に関してである。次に社会に関する問題は、社会意識の多様化を起す要因とは何か、社会の統合化の度合いとは何かについてである。社会的価値志向の多様化の主要な要因として、宗教あるいはイデオロギー、職業意識、現代文化の三つの要因を検討する。個人的な価値志向については、それが直接に社会的意識の影響を受けなければ、十全に個人の力だけによって形成されるものでもない。このように、価値志向に焦点を絞ることは、同時に個人的バイオグラフィと社会的・文化的現実、及び両者の関係に焦点を当てることである。
著者
原 克己 阿波野 昌幸 田渕 博昭 濱田 一豊
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.49-60, 1996-05-01 (Released:2013-04-26)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

大阪市新中央体育館 (仮称) は, メインアリーナ, サブアリーナなど全ての施設を公園地下に設けるという前例のない建物である。直径110m, 高さ30mのメインアリーナを覆う屋根は, プレストレストコンクリート球形シェル構造とした。屋根面の盛土・植栽等の荷重 (平均5~6t/m2) を支持するシェルドームに対し, その裾野部とテンションリングには約2万tの緊張力を導入する。また, シェルドーム部はプレキャストPC部材と現場打ちコンクリートの合成構造とした。本稿は, 大断面を有するテンションリングのマスコン対策, およびシェルドーム裾野部・テンションリングへのプレストレスカの導入について報告する。
著者
高野 敏樹
雑誌
人間福祉研究 = The human welfare review
巻号頁・発行日
no.5, pp.21-34, 2003-03-25

憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」としての生存権を保障しており,この規定が福祉国家としてのわが国の法的基礎をなしている。しかし,この生存権の法的性質をどのようにとらえるかという問題については,これまでも争いのあるところであり,とりわけ最高裁の一連の判決においては事実上,生存権の権利性は希薄化しているといってよい。生存権の司法的実現という視点からは,いずれの学説および判例上も,問題は立法・行政裁量の効果的な統制と,適切な司法審査基準の構築と適用にかかっていることを指摘した。
著者
竹林 秀晃 宮本 謙三 宅間 豊 井上 佳和 宮本 祥子 岡部 孝生 滝本 幸治 八木 文雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.82-87, 2006-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
26
被引用文献数
2

筋力評価や筋力トレーニングは,徒手筋力検査法や等速度運動機器など,一側を対象として行われることが多い。しかし,身体運動の多くは,左右の四肢を非常に巧みに協応させて行われており,左右肢間の相互作用を考慮した両側性運動を考慮する視点も必要と思われる。本研究では,一側に筋力調節課題を与えることで注意の方向を統一し,その調節水準を変化させることによる対側との相互干渉の変化を,下肢運動課題を用いて検討した。対象は健常成人9名とし,運動課題には右膝伸展筋筋力の筋力調節下(等尺性収縮による100%最大随意収縮 : Maximal Voluntary Contraction(MVC),75%MVC,50%MVC,25%MVC)で,対側である左膝伸展最大等尺性筋力を発揮するという両側性運動を用いた。加えて,左側単独での膝伸展最大等尺性筋力も測定した。測定に際しては右膝伸展筋力の調整量保持を絶対条件とし,注意の方向性を統一した。データ分析対象は,各運動課題遂行時の左膝伸展最大筋力の変化とした。その結果,右膝伸展筋力を調整することによる左膝伸展最大筋力への影響は,右膝伸展筋力の調節水準が低くなるに従い,左膝伸展最大筋力も同様に低下するという同調的変化を示した。これは,両側性機能低下のメカニズムの一つである認知・心理レベルでの注意の分割が関与しており,神経支配比が大きい下肢筋での筋力調節の要求は,課題の難易度が高く,運動の精度を高めるためより多くの注意が必要性であるため,左膝伸展最大筋力が低下したと考えられる。