著者
細田 雅士
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.12, pp.1199-1208, 2019

<p>我々にとって最も身近な素材の一つであるプラスチックは,包装容器から電気製品・電子部品,自動車,医療用器具などの様々な形で活用されており,生活に安全性や利便性をもたらしている。一方で,プラスチックは化石燃料から作られており,製造や廃棄の過程での環境負荷が問題となっている。特に,近年ではマイクロプラスチックによる海洋汚染が注目されており,生態系への影響も深刻になっている。資源消費量の削減や環境負荷の低減のため,使用済みプラスチックの適切なリサイクルシステムの構築が国内外で求められているが,現在のところ,日本国内で発生するプラスチックの総廃棄量のうち,マテリアルリサイクルされている割合は約22%にとどまっている状況である。</p><p>全国の優良な産業廃棄物処理及びリサイクル事業者のネットワークを運営するエコスタッフ・ジャパン㈱では,日本全国の各地における廃棄物処理及びリサイクルの現場や排出事業者との繋がりの中で,中央省庁を含めた産官学連携の中で,業界最新動向のヒアリングを積み重ねてきた。本論では当社が近年実施した「製品製造時のプラスチック再生材活用促進事業のニーズ調査」を例に今後の資源循環の動向を概観する。</p><p>本調査においては,将来的な国内の再生プラスチック市場の拡大につなげるため,メーカー,コンパウンダーおよびリサイクラーの代表的な企業にヒアリング調査を行い,プラスチック再生材市場の需要と供給のマッチング条件を明らかにするとともに,再生プラスチックの活用促進における課題に対して,各主体がどのような対策を講じていくべきかについて方向性を示した。</p>
著者
平川 毅彦
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.134-151,269, 1986-09-30 (Released:2009-11-11)

地域レベルにおける政治現象の研究は、地域のあり方を検討するうえでも欠くことができない。本研究は、ハンター以降のアメリカにおけるコミュニティ権力構造研究の成果と反省とをふまえ、一九五五年から一九八三年に至る、札幌市郊外S地区における地域住民組織を中心としたリーダー層を分析し、それを規定していた諸要因を解明する。その際、地域イシューとリーダー層との関係を、対象地域の変動とのかかわりでとりあげることに主眼を置き、地位法・声価法を併用した。その結果、確かに、都市的な性格が強まるにつれてリーダー層の分化傾向や、地域住民組織の機能縮小が顕著になっていたものの、「旧中間層支配」は「土地」「ネットワーク」「情報」に支えられ、形を変えながら依然として存続していた。しかも、これらを権力基盤として成立させていた社会・経済的条件は地区のスプロールであり、生活施設整備を志向する「来住者層」と、自己の利権を維持しようとする「地元層」との間のバランス=オブ=パワーであったことが明らかにされた。
著者
北島 美有紀 境 徹也 樋田 久美子 澄川 耕二
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.491-493, 2010-09-25 (Released:2010-10-06)
参考文献数
12

明らかな原因を発見できない口腔内灼熱感のうち,痛みが舌に限られるものが舌痛症と定義されている.心理的要因が関与しているとされるが,発症の原因は不明である.今回,漢方薬の抑肝散加陳皮半夏(エキス製剤7.5 g中に半夏5 g,蒼朮4 g,茯苓4 g,川きゅう3 g,釣藤鈎3 g,陳皮3 g,当帰3 g,柴胡2 g,甘草1.5 gを含む)により痛みが軽減した舌痛症の1症例を報告する.患者は82歳の男性で,4年前に脳梗塞を発症し,その約1年後から舌の痛みが出現した.歯科で口腔内の器質的障害は否定されていた.脳梗塞の後遺症で歩行障害があり,患者はいらいら感や胃部不快感を訴えていた.また,舌に何か異常があるのではないかという不安を持っていた.漢方的診察により得られた証に随って,抑肝散加陳皮半夏7.5 g/日を開始した.内服開始7日後には,痛みの程度は数値評価スケールで8/10から4/10に軽減し,範囲も半減した.患者の証に沿った漢方薬の選択が,難治であった舌痛の緩和に繋がった.
著者
渡邉 貴昭
出版者
特定非営利活動法人喜界島サンゴ礁科学研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

西アジア地域は、人類史の中でも早くから文明が発展し、交易の中心として文化・経済の重要な地域であり続けていた。しかし、近年の中東地域の社会情勢は不安定である。近年の中東地域の不安定な社会情勢には、干ばつと砂嵐の多発といった気候変動の寄与が指摘されている。過去に発生した気候変動の影響を検証するためには連続した観測記録が必要となる。そこで、過去の干ばつと砂嵐の頻度と強さをペルシャ湾産の造礁サンゴを用いた代替指標で復元することにより、観測記録の不足を補い、近年の西アジアの気候変動を解明する。復元記録をもとに気候変動が中東社会に与えてきた影響を解明する
著者
Mitsuhiro Fukuzawa
出版者
Global Business Research Center
雑誌
Annals of Business Administrative Science (ISSN:13474464)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.207-225, 2020-10-15 (Released:2020-10-15)
参考文献数
88
被引用文献数
2

Studies of the value stream mapping (VSM) in Western journals report that leveraging VSM as a lean tool results in performance improvements. However, in these articles, VSM is functioning as a tool for partial optimization, attempting to identify and resolve bottlenecks in individual functions and divisions, primarily in production activities. For that reason, the greater the degree to which VSM underpins success, the more it deviates from the original essence of lean production and flow management, promoting overall optimization by focusing on the flows across the value chain, and potentially leading to poorer performance in the overall value flows up to the customer.
著者
Masami Abe
出版者
Global Business Research Center
雑誌
Annals of Business Administrative Science (ISSN:13474464)
巻号頁・発行日
pp.0200903a, (Released:2020-09-25)
参考文献数
14
被引用文献数
2

It has been reported that the use of key phrases that all staff share a common understanding of is effective for integration inside an organization. At the Rakuwakai Otowa Hospital, however, integration failed due to the long-standing use of the terms “for the patient” and “patient first.” The staff had assigned different meanings depending on their profession to these terms based on which they had built successful track records for their profession. That experience acted as an inertia preventing changes in attitudes and behaviors and ended up accelerating individually optimal activities for each profession. It is not merely a matter of staff across units simply using the same key phrases; it is important to reduce the ambiguity of the key phrases through behavior.
著者
鳥羽 妙
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.259, 2016-07-05 (Released:2016-08-17)

様々な状況に臨機応変に対応し,意に反するものが降ってきてもネガティブな発想にならずに対応する.研究にかかわることは常に頭の片隅で考え続け,多くの情報や経験といつでも繋がるようにしておく.繋がる快感を経験することでさらなる発想に繋がる.
著者
鈴木万年 著
出版者
文求堂
巻号頁・発行日
vol.[天], 1891
著者
AROZARENA I.
雑誌
J. Biol. Chem.
巻号頁・発行日
vol.276, pp.21878-21884, 2001
被引用文献数
1 31
著者
堀尾 勝
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.5, pp.1259-1265, 2012 (Released:2013-05-10)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

腎機能は糸球体濾過量(GFR)で評価され,最も正確な評価法はイヌリンクリアランスである.クレアチニンクリアランスはGFRより30%程度高い.一般臨床では血清Crが用いられるが,年齢,性別の情報を含んだGFR推算式の使用が有用である.GFRの単位は症例個人の値(ml/min)と,体表面積補正値(ml/min/1.73m2)の2種類がある.前者は薬剤の投与量設定に用い,後者は慢性腎臓病の腎機能評価に用いる.
著者
髙橋 誠 猪俣 雅之 福井 美規子 渡辺 祐子 佐々木 佳子 鈴木 直哉 徳村 麻衣子 川原 昇平 吉嶋 抄苗 地主 隆文 青田 忠博 小林 道也
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.19-26, 2013 (Released:2018-04-02)
参考文献数
9

血清シスタチンC 濃度(CysC)は血清クレアチニン(Cre)と比較して優れた腎機能の指標である。近年、Cre 値から換算される推定クレアチニンクリアランス(CCr)や推定糸球体濾過量(eGFRcreat)に代わってCysC から換算される推定糸球体濾過量(eGFRcys)が用いられることが多くなってきている。しかしながら、多くの患者におけるこれらのパラメータの比較を行った報告は少ない。そこで本研究では、北海道消化器科病院の入院患者1163 名を対象に、eGFRcys に対してeGFRcreat ならびにCCr の比較を行うとともに、それぞれの指標間の差異の原因を明らかにし、腎機能評価に影響を及ぼす要因を特定することを目的とした。 まず、各患者の腎機能評価指標の平均値について比較したところ、CCr とeGFRcreat はほぼ同じ値であったが、eGFRcys はこれらの値よりも大きく、eGFRcys とeGFRcreat ならびにeGFRcys とCCr の差の平均は、それぞれ27.6、21.4 であった。また、eGFRcys とeGFRcreat またはCCr の差が平均値(27.6、21.4)を上回るあるいは下回る患者に分け、患者の腎機能評価に影響を及ぼす因子を多変量ロジスティック回帰分析により解析した。その結果、[eGFRcys ‐ CCr] と血清アルブミン値の間には有意な相関性が認められた。さらに、[eGFRcys ‐ eGFRcreat] では性別、肥満度ならびに血清アルブミン値に有意な関連性が認められた。以上の結果より、eGFRcreat やCCr は eGFRcys に比べて低値を示し、その程度は腎機能の評価に影響を与えるものであった。また、その差に影響を与える因子は、筋肉量ではなく、栄養状態であると考えられる。
著者
谷川 啓司
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.137-145, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

最近治療補助だけでなく,疾病予防・健康保持を目的にサプリメントの利用者は急増している.しかし,食品に分類されていても様々な薬理効果を持ち,健康管理をする側から無視できない状況となってきた.しかし,医療従事者にはサプリメントに対する意識が薄く,また知識も持ち合わせていない.今回紹介する MSA 認定講座は,EBM に基づいたサプリメント情報を疾病からアプローチしながら学ぶ,医療従事者を対象とした上級講座である.臨床で働く医師や薬剤師等が信頼しながら学びやすく考慮された内容で,臨床的な応用を念頭に配慮された構成になっている.また利用者の利便性を考慮し,受講は e ラーニングシステム,資格認定試験は CBT システムを導入している.今後,氾濫するサプリメントの情報の中で正確なものを見極める力を養い,総合的な医療として,サプリメントも利用した健康管理を臨床の医療従事者がリードして行っていくことが望まれる.
著者
野田 康太朗 中島 直久 守山 拓弥 森 晃 渡部 恵司 田村 孝浩
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.165-173, 2020-03-28 (Released:2020-04-25)
参考文献数
26
被引用文献数
3

本研究では,トウキョウダルマガエルを対象とし,第一に PIT タグの個体へおよぼす影響およびタグリーダーによる探知能力の両面から,越冬個体の探知に適した手法か検討した.第二に,対象地にて PIT タグを挿入した個体の越冬場所の探知を試みた.さらに,栃木県上三川町の水田水域において越冬個体の探知を試みた.PIT タグが個体へおよぼす影響を調べるため,PIT タグを挿入した群と挿入していないコントロール群を 15 日間飼育したところ,斃死及びタグが脱落した個体はおらず,体重の増減にも両群間に有意な差は見られなかった.探知能力の検討では PIT タグを土中に埋める試験区を設け実験した.その結果,深度 20 cm までの読み取りは可能であったが,30 cm より深くは読み取れなかった.さらに,栃木県上三川町で実施した水田水域における越冬個体の探知では,30 個体の越冬場所を確認した.Neu 法により解析したところ,30 個体の越冬地点は,畑地に集中していることが明らかとなった.また,越冬深度は 7.4-27.0 cm,平均 18.3±4.7 SD [cm] であった.この結果から,水田水域に生息するカエル類と比較し,本種はより深い地中で越冬する生態を有する可能性もあった.一方で,越冬深度の違いが PIT タグと掘削という手法の違いに起因する可能性もある.なお,本研究の結果は冬期湛水水田が卓越した地域において実施された事例的な研究である.今後は PIT タグを用いた越冬個体の探知方法により,異なる気象条件の地域,営農方法や圃場構造等が異なる地区での知見を集積することが望まれる.