著者
井上 克巳
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.720-723, 2016-07-15

SATは計算機科学において最も単純で基本的な問題であるとともに,人工知能(AI)においても推論や制約充足のベースとなる重要な問題である.またSAT技術もアルゴリズム分野というよりは,AI研究の中で発展してきたことは注目に値する.本稿では,SATとAIの密接な関係を歴史的に概観し,SATがどれだけAIにインパクトを与えてきて,今後のAI 技術を左右し得るかについて予測する.SATは問題の構造が単純過ぎて(また理論的にもクラスNP に属するため)AIの本質的な複雑さには到底及ばないという意見があるにもかかわらず,SATの深遠さを知ることがAIに通ずることを本稿から読み取っていただきたい.
出版者
北海道
巻号頁・発行日
vol.第1, 1891
著者
山岡 耕作 堀 道雄 関 伸吾
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

人工流水環境下、人工採苗、琵琶湖産、海産のアユ3系統81個体について、摂食観察を行った。観察は朝夕の1日2回、摂食行動を連続50回、計100回行った。観察後、アユは氷水中で死亡させた後、重力等の外圧に影響されないよう、個体を吊り下げる様にした固定装置を用いて10%ホルマリンで固定し、保存した。形態的利き手の判定は、ホルマリン固定した個体について、下顎関節が前方に位置する側を利き手として判定した。体軸の歪みも判定に用いた52個体で左右の顎の使用頻度に有意差が認められた(人工、右利き9個体、左利き10個体:琵琶湖、右10、左10:海産、右7、左6)。摂食行動に関して、3系統間に差はみられなかった。全ての個体について形態的利き手の判定を行った結果、摂食行動が右利きの個体では体軸が右に歪み、科学関節部位の左側が前方に位置し、形態的利き手は左利きとなった。それに対して摂食行動が左利きの個体は、体軸が左に歪み、下顎関節部位は右側が前方に位置し、形態的には右利きとなった。これらのことから、摂食行動の利き手と形態的利き手は逆の関係になることが明らかとなった。従って、下顎関節部の位置、体軸の歪み、説食行動の3形質が密な関係にあることが示された。左右の顎の使用頻度、顎部形態、体軸の歪みに関して、3系統間に差はみられなかった。3系統81個体の外部形態の計測を行った結果、胸鰭長、腹鰭長に左右差が全ての個体で認められた。胸鰭長は81個対中61個体において形態的利き手と胸鰭の短側が一致した。腹鰭長では81個体中55個体において形態的利き手と腹鰭短側が一致し、胸鰭、腹鰭ともに利き手側が短い傾向がみられた。形態的利き手と対鰭との密な関係がうかがわれる.。左右の腹鰭位置を測定した結果、81個体中65個体において形態的利き手側の腹鰭が後方に位置した。形態的利き手と腹鰭関節の位置は密接な関係にある可能性がある。櫛状歯、眼径及び左右の眼の位置については、形態的利き手との間には明確な関係は認められなかった。又、調べられた全ての外部形態の左右差に関して、3系統間で有意差は認められなかった。

1 0 0 0 基礎

出版者
公益社団法人 日本超音波医学会
雑誌
超音波医学 (ISSN:13461176)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Supplement, pp.S464-S494, 2014 (Released:2014-06-11)
著者
鈴木 隆泰
出版者
Japanese Association of Indian and Buddhist Studies
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.1263-1270, 2015-03-25 (Released:2017-09-01)

『法華経』の「法華七喩」の中に,有名な長者窮子喩がある.一方,『法華経』や『涅槃経』等の影響下に作成された,如来蔵系経典である『大法鼓経』にも長者窮子喩が説かれている.両者には共通点も多い反面,最大の相違点として,『法華経』の長者窮子喩では,貧者は長者の家で仕事をしつつも財産を望まず,長者から真実を告げられ,思いもかけずに相続者となるのに対し,『大法鼓経』では,長者から真実を聞かされる前であったにもかかわらず,貧者は自発的に財産の相続者となることを望み,そして長者から真実を告げられ,望み通りに相続者となる,という点が挙げられる.この『大法鼓経』の長者窮子喩は,実子で〔あると〕は〔まだ知らされてい〕ない者が相続者になりたいと自ら望むという点において,血統・家柄を重んじるインド社会の価値観から見て非常に不自然であるとの指摘もなされてきた.本研究では長者窮子喩のみに限らず,両経典の一乗や解脱を巡る教説を辿ることによって,両者の異同の理由を探った.以下に結論を提示する.『法華経』は,一乗・一切皆成の根拠を衆生の外側(諸仏の誓願)に見出している.そのため衆生は,一切皆成であると「諸仏に教えてもらわなければならない」.これが,貧者が長者から教えられて,自分が息子・財産の継承者であったことがはじめて分かるという構図に連なっている.なお,一乗を主張するためには,すでに解脱を得ている阿羅漢の成仏も保証しなければならない.そのため『法華経』は,"解脱した者はもう二度と解脱できない"という従来の理解に挑戦することとなり,結果,それまでの「常識,前提」を覆し,「輪廻からの離脱は真の解脱ではない」「三界を離脱しても不死ではなく再生する」という驚くべき説を提唱するに至った.一方の『大法鼓経』は,『法華経』の提唱した「成仏するまでは複数回解脱できる」という説を継承しながらも,一乗・一切皆成の根拠については『法華経』とは異なり,「衆生の内側に実在する如来蔵・仏性」に見出している.そのため,「教えられずとも衆生(貧者)の側から成仏(財産)を求める」という構図を描くことが可能となった.さらには,如来蔵・仏性思想の一大特徴として,そもそもこの思想自体が「如来目線の教え」であることも関係していると思われる.如来であれば,他より教えられずとも一切皆成を最初から知っているからである.『法華経』とは異なり,『大法鼓経』の長者窮子喩が仏弟子ではなく釈尊の所説となっていることも,この仮説を支えるものと判断される.たしかに『大法鼓経』の長者窮子喩には,血統主義に立脚するインド社会・世間的価値からは「非常識」とも見なされる面がある.しかしインド仏教には,「如来=父,仏弟子=実子」という,世俗の親子関係を超えた「出世間の親子関係」という考え方が伝統的に存在していた.この伝統に照らし合わせるとき,『法華経』よりもむしろ『大法鼓経』の長者窮子喩の方が,出家主義・行為主義を標榜するインド仏教の文脈により沿うものといえる.
著者
鳥海 明
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.622-627, 2012-10-10 (Released:2012-11-20)
参考文献数
16

This paper discusses the GeO2/Ge gate stack formation on the basis of the interface reaction control of Ge. The Ge oxidation is quite different from the Si one in terms of the fact that GeO desorption should be taken into account in the oxidation process. By using high-pressure oxidation, GeO desorption is thermodynamically suppressed, resulting that nearly perfect C-V characteristics in MOS capacitors and the record high electron mobility in n-channel MOSFETs have been demonstrated.
著者
木村 專太郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1192-1193, 1998-10-25

●O'Donoghue's Triad (オゥドナヒューズ・トラィアッド) これは外科医や整形外科医には“unhappy triad”や“terrible triad”として知られているが,“O'Donoghue'sTriad”が正式なものである.“triad”は英語で三徴候を意味する.日本でいう“trias”はギリシャ語とラテン語に由来している. ラテン語の“trias”の属格は“triadis”であり,ギリシャ語のそれは“triados”である.これは“三つ組”を意味し,英語ではこの属格から派生した言葉“triad”を使う.さて“unhappy triad”とは,米国ではアメフトにおいて横からタックルしたときによく起こる外傷のことある.膝の外側からの力(valgus stress)と膝の内旋(external rotation)の力で起こり,このとき三つの障害が起こる.すなわち,内側側副靱帯(medial col―lateral ligament)と前十字靱帯(anterior cruciate lig―ament)の両靱帯の破裂,そして内側半月板の損傷の“三つ組”である.
著者
木野村 泰子 下村 孝
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.827-832, 2008-03-31 (Released:2009-05-08)
参考文献数
23
被引用文献数
7 6

The questionnaire survey was done among employee in business buildings with or without a garden on its rooftop to clarify the actual conditions and the evaluation of the roofs as spaces for relaxation or for lunch break. The ratio of the respondents who took rest in the roof gardens at lunch time was significantly higher when that roof garden received a higher evaluation. In addition, 68% of respondents answered that they wanted to take rests in the green roof when they felt the sense of relief and also the 39% the sense of season. On the other hand, 65.0% of the respondents who did not intend to take rest in the green roof said that there was no place or facility to sit down on. And the 43% answered there was a little shade and also the 38% remarked that they couldn't be bothered to go up to the roof. Results showed that the green roofs are evaluated by the office workers as spaces for relaxation and lunch breaks when they were able to feel comfort, nature and the change of the season on them. And it was also shown that above-mentioned preferable conditions would be maintained by introducing some facilities such as benches, rain covers, pergolas and the vegetations consisting of various kinds of plants such as grass, flowers, and evergreen shrubs.
著者
井上 幹生 末國 仙理 藤田 知功 福家 柔 奥谷 孝弘 後藤 将太 阿部 博文 市守 大介 篠原 拓馬
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、天然林と人工林から成るパッチモザイク構造とサケ科渓流魚個体群の時空間的動態との関係を水系スケールで検討した。サケ科魚類の産卵場所は水系内で極めて不均一に分布するが、孵化した当歳魚の移動分散によって均一化がおこり、そのことが水系全体の効率的利用に帰結することが示された。その過程において、天然林パッチは当歳魚の初期成長を高める場として機能することが示唆された。
著者
伊集院 睦雄
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.218-226, 2018-09-25 (Released:2018-10-11)
参考文献数
23

こころのしくみや機能を明らかにするにあたり,認知心理学(あるいは認知神経心理学)では,コンピュータ・メタファーを用いた情報処理的アプローチが用いられてきた.これに対して,メタファーの源泉を脳に求め,脳の情報処理様式で動作するシステムをコンピュータ上に構築し,シミュレーションによってこころを理解しようとする研究手法が,ここで紹介するコネクショニスト・アプローチである.本稿では,語彙処理,特に読みに関する脳型情報処理モデルを具体的に紹介しながら,コネクショニスト・アプローチの特徴を述べ,従来の研究手法との違いを明らかにする.また,近年の注目すべき動向についても簡単に触れる.
著者
三田村篤四郎
雑誌
東京医事新誌
巻号頁・発行日
vol.3076, pp.812-819, 1938
被引用文献数
1
著者
張 瓊華
出版者
日本比較教育学会
雑誌
比較教育学研究 (ISSN:09166785)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.24, pp.180-197, 1998-06-30 (Released:2011-01-27)

Bilingual education has been adopted in school education in order to carry outan equality policy for ethnic groups in China. There are two modes of bilingualeducation in China. One is using the ethnic language as a teaching language while Chinese is taught as a subject. The other is where Chinese is used as a teachinglanguage and the ethnic language is taught as a subject. Bilingual education has beenregarded as useful in promoting a common language and forming common culture, andalso helpful in maintaining ethnic language and culture. Does it really have such a keyrole? It is very interesting to study the function of bilingual education in formation ofethnic identities in China from the perspective of coexistence of multiethnic cultures.
著者
李 志霞 林 宏飛 山崎 仲道 上高原 理暢 井奥 洪二
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.361-370, 2009 (Released:2010-01-13)
参考文献数
20
被引用文献数
1

未利用スギ材の有効活用技術の開発を目指し,新規反応媒体である過熱水蒸気を用いて,100~200℃の飽和蒸気圧以下の圧力条件下で抽出温度,時間,水蒸気圧を変化させ,スギの葉から有機成分の抽出を行った。抽出温度100℃と比較し,170℃では約5倍の収率が得られた。また,水蒸気圧力が高く,抽出時間が長いほど収率は上昇した。抽出物については,温度および水蒸気圧が高いほど,分子量の大きい有機物質 (セスキテルペンおよびジテルペン) の抽出が促進された。さらに,ディスク拡散法を用いて18種類の土壌菌に対するスギ抽出物の生育抵抗性を調べた。温水および有機溶媒による抽出物と比べ,過熱水蒸気による抽出物は,カビおよび放線菌に対して優れた抗菌活性を示した。抽出物をGC-MSおよびGC-FIDで分析した結果,モノテルペンやセスキテルペン類が,これらの抗菌活性に関与していると考えられる。過熱水蒸気抽出は,抗菌活性成分の選択的抽出に有効であることがわかった。
著者
井上 昂治 原 康平 ララ ディベッシュ 中村 静 高梨 克也 河原 達也
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.D-K43_1-10, 2020-09-01 (Released:2020-09-01)
参考文献数
32

A spoken dialogue system that plays the role of an interviewer for job interviews is presented. In this work, ourgoal is to implement an automated job interview system where candidates can use it as practice before the real interview.Conventional job interview systems ask only pre-defined questions, which make the dialogue monotonous andfar from human-human interviews. We propose follow-up question generation based on the assessment of candidateresponses and keyword extraction. This model was integrated into the dialogue system of the autonomous androidERICA to conduct subject experiments. The proposed job interview system was compared with the baseline systemthat did not generate any follow-up questions and selected among pre-defined questions. The experimental resultsshow that the proposed system is significantly better in subjective evaluations regarding impressions of job interviewpractice, the quality of questions, and the presence of the interviewer.
著者
石原 誠 宮崎 泰地 原田 智広 ターウォンマット ラック
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.2414-2425, 2016-11-15

本稿では,対戦格闘ゲームにおけるゲームAI(AI)や操作法がプレイヤの感じる面白さに与える影響について分析する.対戦格闘ゲームには,キーボードなどの指先による操作と,Kinectを用いて体の動きで操作する方法がある.プレイヤがいずれの操作においても楽しく対戦格闘ゲームをプレイするためには,プレイヤと互角に戦うようなAIが必要である.また,それを実現させるためには強さをある程度持ったAIが必要である.本稿では,UCTをノード選択における戦略としたモンテカルロ木探索,ルーレット選択,ルールベースの手法を組み合わせることで,先述したAIを開発する.このAIをベースにし,UCTの評価関数を改変することによってプレイヤに合わせて強さを調整(難易度調整)するAIを開発する.そして,AIや操作法がプレイヤの感じる面白さに与える影響を,キーボード,Kinectのそれぞれの操作において分析する.対戦格闘ゲームの国際AI大会のプラットフォームとして利用されているFightingICEを用いた被験者実験より,難易度調整はプレイヤがより楽しんで対戦格闘ゲームをプレイするための重要な要素であり,特にKinectにおいて顕著な効果が示された.
著者
岩佐 真弓 塩川 美菜子 山上 明子 井上 賢治 若倉 雅登
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.55-58, 2018

Leber遺伝性視神経症(LHON)は10~20代の若年男性に好発するとされるが,比較的高齢発症する症例の臨床的特徴を検討した.2002年から2015年に受診したLHON92例のうち,発症年齢が50歳以上であった14例に対し,その年齢・性別・ミトコンドリアDNA変異の種別,臨床経過をレトロスペクティブに検討した.50歳以上で発症した14例(男性11例,女性3例)のDNA変異はm.11778G>Aを有し,そのうち8例で家族内発症が明らかであった.最低視力の平均は0.01,最終視力の平均は0.02であり,視野はゴールドマン視野計で5~30度の中心暗点を呈した.また,アルコール依存症,網膜静脈閉塞症,胃全摘などの既往歴がみられた.当院で経験したLHONのうち,50歳以上の症例は10%を超えており,稀ではなかった.いくつかの既往歴は,誘因としての役割という観点から今後注意していくべきものと考えられる.