著者
服部 正嗣 澤田 宏 殿岡 貴子 坂田 岳史 藤田 早苗 小林 哲生 亀井 剛次 納谷 太
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.3M1GS1203, 2020 (Released:2020-06-19)

児童や生徒は、期末テストや模試等で問題を解くことによってその時点での学習状況を把握している。これに加えて共通の問題を解いた集団のテスト結果を適切に分析できれば、テスト後の学習に有用な情報を得ることができると考えられる。本研究では、集団のテスト結果を対象にVariational Autoencoderを適用し、児童生徒の各問題への回答傾向および同様の解かれ方をしている問題の集合について分析する。具体的には、生徒一人ひとりが各問題に正答したか誤答したかを入力とし、同じ出力を得られるようAutoencoderを学習する。学習の際に、従来の損失関数に加えて入力がすべて0、1(誤答、正答)であるならば潜在変数もすべて0,1となるような制約など、潜在変数が正答率と相関するような複数の制約を加えた。このことによって得られたVariational Autoencoderの潜在変数を用いると児童生徒や問題についての解釈を加えることが可能であり、問題の集合や解くために同様の能力を要求されると考えられる問題の集合や各児童生徒が前述の問題の集合のいずれが得意でいずれが不得意かについての知見が得られた。
著者
石田 頼房
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.43, pp.p21-35, 1991-09

衛生学者としての森林太郎(鷗外)の仕事に関する一連の研究の一つである。今回とり上げるのは,鷗外の市区改正論である。鷗外の市区改正論としては「市区改正ハ果シテ衛生上ノ問題ニ非サルカ」が有名であるが,東京医事新誌に連載されていたこの論文は未完であり,難解でもある。これに対して「市区改正論略」は,『国民の友』という一般向けの雑誌にまず発表されただけに,短い論文であるが,その中に極めて分かりやすく,しかも要領よく,鷗外の市区改正論が述べられている。論文は「近心と遠心との利害」「離立と比立との得失」「細民の居処」の3項目よりなる。近心と遠心とは,現在の言葉でいえば一極集中か多心型かという都市構造の問題であり,鷗外はロンドン,パリあるいはウィーンの例を引きながら,遠心すなわち多心型の都市構造が望ましいと説く。離立と比立は,日本の建築用語では適当な言葉がないが, ドイツ語のoffene Bauweiseとgeshlossene Bauweiseのことで,鷗外はヨーロッパの都市が比立・高密の解決に苦労していることを紹介しながら,日本は現在離立であるのを大事にすべきだと説く。また,細民の居処では,リヴァプールの例なども引き,単にクリアランスするだけではなく,低所得者むけの住宅供給をともなう必要があることを説く。
著者
福永 安祥
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.137-149,en234, 1971

There live two hundred and sixty million people in Southeast Asia. It isdivided into peninsulas and islands from the geographical point of view. Accordingto the various religions (Mahayanist Buddhism, Hinayana Buddhism, Islam) and the differences in historical backgrounds as colonies, Higher Education ineach country is quite different. But, in general, we can indicate some points:<BR>1.Old suzerain's cultural influence still survives.<BR>2.They direct great efforts to foreign language education and they are rewardedwith good fruits.<BR>3.They are apt to attach much importance to law.<BR>4.On the whole, Science Faculty, specially the department of technology, ispoor in its educational facilities and contents.<BR>The following universities can be named as the representatives in Southeast Asian Countries. We explain a little abut these.<BR>1.Viet Nam-Saigon University.<BR>2.Thailand-Chulalongkon University. Thammasart University.<BR>3.Malaysia-University of Malaya.<BR>4.Laos-University Sisavang Vong.<BR>5.Indonesia-University of Indonesia. University of Padjadjaran.University of Gadja Mada.<BR>6.Singapore-University of Singapore. Nanyang University.
著者
松津 賢一 杉野 公則 伊藤 公一
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.162-166, 2018 (Released:2018-11-19)
参考文献数
18

バセドウ病の外科治療は,まだ他の治療法も補充療法もない時代に始まった。必然的に治療の目標は術後甲状腺機能正常となる寛解に置かれ,亜全摘が標準術式となった。その後,補充療法が確立されると全摘術が治療の選択肢に加わった。そして放射性ヨウ素治療,次いで薬物療法が導入されると外科治療の適応は明確に減少した。今日の外科治療の適応は薬物療法に対する副作用や抵抗性,難治性,早期に機能改善を得たい場合,圧迫症状を伴う大きな甲状腺腫,免疫学的改善を得たい場合など,ほぼ再発が許容できない症例に限定されてきた。これに伴って治療の目標は寛解から再発のない治癒に変わり,結果的に長らく行われてきた亜全摘術に代わって全摘術が標準術式になった。残された課題は外科治療特有の合併症をいかに減らすかに絞られてきており,近年では超音波凝固装置などのデバイスや神経刺激装置(NIM),あるいは内視鏡手術なども保険適応となっている。
著者
Jurkovic Sanja
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1232-1236, 2006

弘法大師空海の主著である『秘密曼荼羅十住心論』及び『秘蔵宝鑰』は, 真言密教の立場から菩提心の諸相を扱う著作であると解釈しえる. そのような観点から, 空海が構想した心の十種の様相の中で,「他縁大乗住心」という法相の教えにあたる第六住心の意味や功用を考察して行きたい.<br>1.「他縁大乗住心」は,『秘密曼荼羅十住心論』の主な典拠である『大日経』の「住心品」における「無縁乗心」という概念にもとづくのではなく,『大日経疏』に説かれている梵語の"apara"の「無縁」と「他縁」の二つの意味の中の「他縁」の義にもとづいて名づけられている. 第六住心を大乗の定型的な「世俗菩提心」の意義を持つ「他縁乗心」の概念で強調する理由は, 小乗に対して「他」に対する慈悲や菩薩の行願を非常に重要な精神的な展開を表すためと思われる. 十住心の中に第六住心の功用は, 次の段階において, 深甚に空性を悟り, さまざまな方便にもとづく行動ができるように, 堅固な菩薩の基本的な心の功徳を形成することである.<br>2. このような構成において, 空海は, 法相の教えを伝統的な菩薩行の代表者として取り扱い,『成唯識論』や『十地経』等を以て, 三無数劫を経る菩薩行の典型としている. 法相宗の阿頼耶識や三性等という認識論的・存在論的な概念は言及しない. 空海は, 法蔵や澄觀等の中国華厳の諸法師と同じように, 法相の教理は主に現象世界を分類し, 三論等の教理は主に実相として空という第一義諦を説くと理解しているといえよう. そこで, 法相を実践的な側面から解釈し, 最初の大乗法門として第六住心に相当することにしたと思われる.<br>3. 第六住心の箇所において,『菩提心論』にもとづいて三無数劫を経る菩薩の波羅蜜等の修行を批判し,「即身成仏」を標榜する真言理趣の優位性が示される. 具体的に第六住心の「普遍大慈発生三昧」の密意を挙げ, 大乗住心等において初めて, 修行者自身が菩提心の多様な顕現であるという『秘密曼荼羅十住心論』の深意が示されると言える.
著者
上農 正剛 うえのう せいごう Seigou UENOU
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
九州保健福祉大学研究紀要 = Journal of Kyushu University of Health and Welfare (ISSN:13455451)
巻号頁・発行日
no.20, pp.35-43, 2019-03

The purpose of this paper is to propose the positioning of languages for bilingual education of deafchildren. In recent years, main stream education of deaf children in Japan has shifted from the oralapproach to bilingual education. Most schools for the deaf use voice and sign language during teaching.This situation, gives rise to two issues. First, there are two types of sign language in Japanese schoolsfor the deaf: signed Japanese and Japanese sign language (JSL); of those, which language is more suitablefor learning among deaf children? Second, how does sign language contribute to Japanese literacy?However, these issues are discussed separately and locally. As a result, we cannot apply them to theeducation of deaf children in reality. When we discuss these issues, we need to consider mutualrelationship and feasibility. For that purpose, the overall layout of the positioning of languages forbilingual education is necessary.
著者
侘美 光彦
出版者
立正大学
雑誌
経済学季報 (ISSN:02883457)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.65-124, 2003-10

本論文は、1971年以来確立した現代変動相場制を、その現実的機能と限界について分析した論文である。まず、そのために第1章において、1970年代、80年代、90年代のそれぞれの変動相場制期について、どのようなことが起こり、どのような問題が発生したのかを具体的・実証的に検出し、ついで第2章において、この検出を踏まえた総括的分析を行ない、とりわけ、従来の経済学が指摘してきた為替相場均衡理論や経常収支調整理論が根本的に間違っていたことを明らかにする。本稿は、そのうち第1章(1) 1970年代(1971〜80年)、すなわちスミソニアン体制、第一次石油ショックとスタグフレーション、為替相場の二極分化と対途上国民間融資の急増、および(2) 1980年代(1981〜90年)、すなわち主に、レーガノミックスとその国際的帰結、プラザおよびルーブル合意、ドルの暴落とブラック・マンデー、等々を分析したものである。