著者
養父 志乃夫 内田 均 萩原 信弘 石川 格
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.208-214, 1990-01-25 (Released:2011-07-19)
参考文献数
1

ニワゼキショウの群生地の形成手法を確立するため, 種子の発芽と生育習性, および刈取り抵抗性を調べた。その結果, 種子の発芽には光の照射が要求され, 発芽適温が15~20℃ にあった。花期は5~11月で, 葉は常緑に近い性質を持ち, 主に, 4~9月は地下部の養分と地上での生産養分によって, 地上部の栄養と繁殖成長を行い, 9~11月に生産養分を地下部に蓄積した。2週毎刈取りでは枯死し, 群生地形成における最適下刈り頻度は4週毎であった。
著者
永見 豊 鈴木 晴子 滝沢 正仁 木嶋 彰
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.A_230-A_237, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
6

道路に標示される区画線や規制標示の補助的役割をもつ路面標示「止まれ」を対象に、その文字を運転者に立体的に見えるようデザインすることで交通安全に寄与することを目的として研究を行った。遠近法によって三次元立体を平面上に再現する手法をアナモルフォーシスと呼ぶ。この手法を用いて、「止まれ」の路面標示文字を立体的に見せるデザイン案を作成した。ドライブシミュレータを用いたCG走行実験に加え、実物大シートを設置した道路での実走実験によりその効果を検証した。その結果、「止まれ」文字の横表示ブロック案と「止まれ」の道路標識を表示した案は、運転の障害になることなく、止まろうとする意識を高められることが確認できた。
著者
玉山 和夫
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学経営論集 = Sapporo Gakuin University Review of Business Administration (ISSN:18841589)
巻号頁・発行日
no.9, pp.1-14, 2016-02-15

本稿では,日本の企業の低収益性に改めて焦点をあてて,その原因をマクロ的・社会心理学的=行動経済学的に指摘する。そもそも投資家は,自身への分け前の原資たる純資産(一株当純資産:BPS)の増大をもって株主への最大の見返りと判断するはずである。もう一歩踏み込めば,配当で支払われた分も含めたもともとの純資産(配当内部留保BPS)の増大が望ましい。日本のBPS は1955年を1とすると2013年には14.49にしかなっていない。配当内部留保BPS でも40.59である。この間名目GDP は1から57.37に増大していたのに,である。アメリカではこれらは,26.41,79.06,39.10であった。アメリカでは名目GDP の伸びよりも,配当内部留保BPS の伸びが大きいのである。一方,株式リターンは日米ともに配当内部留保BPS の増加と整合的である。昨今日本でも話題になっている株主還元とは,煎じ詰めれば株式リターンの向上である。であるからには戦術的な手段を議論する以前に,総合的な純資産である配当内部留保BPS の増大を図ることが,株主への正しい報い方ということである。実際株主還元に言及する論者たちも,配当の増加や自社株買いといった狭義の株主還元に解を求めることには批判的である。かといって株主に報いるためには何が必要であるかということについては,「しっかり儲けましょう」と言う以外具体的な話はあまり聞かない。本稿では日本のBPS および配当内部留保BPS が,経済の全般的な成果に比しても極めて貧弱であることの要因を,日本の低い資本分配率,高すぎる設備投資,それに伴う資本市場から過剰調達に求める。経営の安定の名のもとに,リスクを取った経営よりは既存事業の存続のために過大な投資を続け,そのつけを資本市場に負わせてきたのである。また,日本の投資家もリスクを取ることを嫌い,こうした「安定経営」に資金をつぎ込んできたのである。しかもこの状況は日本の社会心理学的構造に由来していると思われる以上,その転換は難しいが,結局はグローバルな株主から信頼される企業と,そうでない企業の二極化が進むことになるだろう。
著者
山下 景秋
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.123-135, 2020-03-31

Japan must win not only price competition but quality competition in both agricultural products and industrial products. But usual economics has not taken a problem of quality into careful consideration. This paper deals a problem of quality with quality cost, cost which makes quality and number of sale as result of quality. I think that number of sale is a function of price and quality cost, and a set of quality cost and number of sale under constant price expresses quality level. I think that profit of enterprise and farmhouse is a function of price and quality cost, I examine condition of profit maximization in each of three cases. This paper shows adjustment process to profit maximization in each case, and examins which strategy and what case had better be adopted in these three cases.
著者
Tadashi KAWAI Dmitrii GALANIN Tatiana KRUPNOVA Norishige YOTSUKURA
出版者
The Japanese Society of Applied Phycology
雑誌
Algal Resources (ISSN:18833284)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.155-163, 2015 (Released:2020-01-15)

History, catch, gear, propagation of resources in the wild, cultivation, and utilization of the kelp Saccharina japonica in northern Hokkaido, Japan, and southern Sakhalin and Primorye, Russia are compared in this review of the fisheries in these areas. Sea currents (especially, warm currents) commonly affect the occurrence and production of this kelp in those regions. Techniques in propagation of S. japonica in the wild and by cultivation has been developed in both Hokkaido and Primorye. The total annual amount of harvest and season were regulated in fisheries in Sakhalin, though only season of the harvest is regulated in Hokkaido. Harvest and cultivation of kelp in three regions have many similarities.
著者
玉里 久美
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.58-67, 2013-11-30 (Released:2017-07-01)

本研究の目的は,社会復帰途上にある慢性統合失調症患者にとって,看護師が傾聴することの意義とその様相を明らかにすることである.慢性統合失調症患者10名を対象に,看護師による傾聴について半構成的面接を行い,KJ法の原則手順に従って質的記述的に分析した.その様相は,4つの段階的な構造を示し,【聴いてもらいたい欲求に歯止めをかける要因】,【聴いてもらえると思う看護師の見極め】,【聴いてもらおうとする行動を促進させる要因】,【真意を語れることを左右する聴かれ方】の4つが導かれた.この4つ目の段階においては,《心がほぐれるような聴かれ方》と《接線的ズレのある聴かれ方》に分類された.患者がとらえた傾聴の意義は,4つ目の段階の《心がほぐれるような聴かれ方》から発展し,【精神症状の中に混在する心のメッセージを汲み取ってもらえた安堵感】,【将来の生き方を模索する苦悩の共有感】,【聴いてもらえた過程で芽生えてきた看護師への信頼感】の3つが抽出された.結果から,看護師の傾聴の仕方によって意思表示を可能にし,患者の自己成長のきっかけに繋がることが示唆された.
著者
阪本 恭子
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.78-86, 2015-09-26 (Released:2016-11-01)
参考文献数
36

「こうのとりのゆりかご」が熊本に設立されて2015年で8年が経った。同設備は人工妊娠中絶や児童遺棄から新生児を救うために15年前からドイツで作られる赤ちゃんポストを手本にする。本稿は、日本のゆりかごの現状と課題を把握し、ドイツにおいて赤ちゃんポストの代替策となる最近の動きを紹介して展望を描くなかで、赤ちゃんポストの今後のあり方を見直す。 第1章で、2014年9月発行の「こうのとりのゆりかご検証報告書」から見える問題を分析して課題を見出し、その対策となる一案を示す。第2章では、2014年5月にドイツで施行された、妊婦に安全な出産を、子どもには出自を知る可能性を保証する内密出産法を概観して制度の今後を展望する。第3章では赤ちゃんポストについて、それを必要とした社会の一員として生き始めている赤ちゃんポストの子どもの幸せに目を向け、その是非ではなく意義を問う。
著者
細部 博史
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.437-444, 2002-11-26 (Released:2012-01-10)

制約は,多様な問題解決のための有力な手段であり,ユーザインタフェース(UI)を含む様々な分野で広く利用されている.UI分野における制約の最大の用途はグラフィカルレイアウトであり,制約によってレイアウトの維持が自動化されて容易になるという利点がある.制約によるUIの構築を実現するための基盤システムとして,これまでに様々な制約解消系が研究開発されている.本研究では,優先度を伴った線形等式および不等式制約からなる系(制約階層)を処理するための制約解消系を構築する.そして実験により,この制約解消系が,制約が1,000個を超える状況でもUIを実現するのに十分な効率を持っていることを示す.
著者
小野 元治 大久保 裕行 岡崎 真一郎 石松 敏樹 宇留嶋 美奈 吉松 英明 加藤 徳弘
出版者
大分県農林水産研究センター
巻号頁・発行日
no.2, pp.11-39, 2008 (Released:2011-03-07)

イチゴの主要害虫に対し、天敵や微生物農薬および天敵に影響の少ない化学農薬を中心に防除効果を検討するとともに、既存の防除技術を組み入れた防除体系について検討した。1.灰色かび病に対して、サンクリスタル乳剤およびジーファイン水和剤の散布、ボトキラー水和剤のダクト散布が有効であり、うどんこ病に対しては、硫黄くん煙およびボトキラー水和剤のダクト散布に防除効果が認められた。2.主要病害に対して、天敵や微生物農薬を組み入れた防除体系による現地実証試験を行った結果、ボトキラー水和剤のダクト散布により、うどんこ病に対する効果は少発生により判然としなかったが、灰色かび病に対しては散布剤と併用することで十分な防除効果が認められた。3.ハダニ類に対して、チリカブリダニとミヤコカブリダニの4回放飼、ハスモンヨトウに対しては、フェニックス顆粒水和剤、プレオフロアブルおよびトルネードフロアケルの散布が有効であった。4.主要害虫に対して、天敵や微生物農薬を組み入れた防除体系による現地実証試験を行った結果、チリカブリダニとミヤコカブリダニの4回放飼は、ハダニ類の密度が上昇しないように薬剤散布と併用しながら放飼することで十分な防除効果が得られた。ハスモンヨトウ、アブラムシ類に対しても、適期防除を行うことや、防虫ネットの設置により防除可能なことが実証された。5.総合防除体系の確立により、本圃における慣行防除回数30回に比べ9回以上削減が可能となった。
著者
小西 博郷 小河原 孝司 島本 桂介 冨田 恭範
出版者
茨城県農業総合センター園芸研究所
巻号頁・発行日
no.17, pp.43-46, 2010 (Released:2011-07-26)

温湯をイチゴ苗上に散布することによる病害防除の可能性について検討した。炭疽病菌の接種前または接種後に温湯を散布することでイチゴの葉における炭疽病の病斑数は無処理区と比較して共に減少し、灰色かび病についても同様の傾向が認められた。温湯散布条件としては、炭疽病菌および灰色かび病菌接種前後で散布時間を30秒間に設定した場合は40℃以上で、温度を50℃に設定した場合は散布時間10秒間以上で効果があり、温湯散布の効果には温度依存的および時間依存的な傾向が見られた。また、45℃、30秒間の温湯散布ではイチゴ苗に熱害の影響は見られなかった。以上より、温湯散布にはイチゴの炭疽病および灰色かび病に対する予防効果および発病進展抑制効果の両方があると考えられ、イチゴ栽培における温湯散布実用化への可能性が示唆された。
著者
田口 義広 百町 満朗 杖田 浩二 川根 太
出版者
日本植物病理學會
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.94-101, 2003 (Released:2011-12-19)

IK-1080の菌濃度を1.0×10(8)cfu/mlとした懸濁液1.0mlを、トマト果実の着果促進を目的としたホルモン処理と同時に花弁に散布すると、花弁における灰色かび病の発生は著しく抑制された。散布直後の花弁におけるIK-1080の菌量は1.9×10(7)cfu/mgだったが、処理後の花弁の菌量は7.9×10(9)cfu/gとなり約400倍増加していた。無処理区の花弁上にはBotrytis属菌を含む10種類以上の糸状菌が認められたが、IK-1080を散布した花弁では5種類に減少し、Botrytis属菌は出現しなかった。このように菌相の単純化が認められた。トマト栽培では受粉に訪花昆虫のマルハナバチがよく用いられている。そこで、マルハナバチに、灰色かび病菌に拮抗的なIK-1080を運ばせることで花弁の灰色かび病が防除できるかを検討した。はじめに媒介用のアダプターを4種類試作した。箱型のアダプターは出巣したマルハナバチが帰巣しなくなった。箱内に1本の紐を渡した型と円筒の中にパフを敷いた型のアタプターは、帰巣しても巣に入りたがらない行動が認められ、花粉球の落下も多かった。一方、出入口分離型はマルハナバチの出巣個体数が1時間当たり12頭と多く、時間当たりの帰巣率も77.8%と高かった。また、マルハナバチの運んできた花粉球の落下が最も少なく、果実の着果率も96~98%と高かった。この出入口分離型のアダプターを用いるとマルハナバチの身体に1頭当たり6.0×10(4)cfuのIK-1080が付着していた。マルハナバチにIK-1080を運搬させると、訪花20日後の花弁の菌量は10(6)~10(7)cfu/mgと増加した。また、灰色かび病の発生は著しく抑制された。マルハナバチにIK-1080を運搬した花弁でも、ホルモンと同時処理の時と同じようにBotrytis属菌の出現は認められなかった。本法は著しく省力的で、アダプターに入れるIK-1080の量は1回当たり(7日間分)3gと少なかった。
著者
小河原 孝司 冨田 恭範 田中 有子 長塚 久
出版者
茨城県農業総合センター園芸研究所
巻号頁・発行日
no.14, pp.35-42, 2006 (Released:2011-03-05)

茨城県内現地におけるトマト灰色かび病の発生実態と防除対策について調査し、BS剤の防除効果を最大限に発揮させるための温度条件並びにその防除効果の持続期間について検討した。また、BS剤を組み入れた防除体系の有効性について検討した。1.トマト促成栽培における殺菌剤散布は、主に灰色かび病防除が目的であり、本病が主要病害であった。2.トマト灰色かび病に対するBS剤の防除効果は、気温15℃以下では低く、20-25℃において高かった。3.灰色かび病多発生条件下において、BS剤は、メパニピリム水和剤と比較し、薬剤散布18日後までほぼ同等の防除効果が認められた。4.BS剤を防除体系の中に組み入れ、発病葉除去等の耕種的防除を徹底し、化学合成殺菌剤の散布回数を3割程度削減した場合、生育後半の葉における灰色かび病の発生はやや増加したが、果実では十分な防除効果が認められた。