著者
Duangtathip Karn Nguyen Thi Thu Huong 井口 純 三澤 尚明 谷口 喬子
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.191-194, 2020-04-20 (Released:2020-05-20)
参考文献数
16
被引用文献数
2

Escherichia albertii は新しく認定された腸管病原性細菌で,わが国でも集団食中毒事例が報告されている.本菌は特徴的な生化学性状に乏しく,腸管病原性大腸菌(EPEC)や腸管出血性大腸菌(EHEC)との鑑別が難しい.われわれは,健康な飼育犬の糞便から,E. albertii を分離・同定した.本分離株は,病原性関連遺伝子(eae )及び細胞膨張化致死毒素(cdt )を保有していたが,志賀毒素遺伝子(stx2f )は保有していなかった.また,既報と同様,ペニシリン,アンピシリン及びエリスロマイシンに耐性を示した.飼育犬からE. albertii が分離されたことより,犬が人への感染源となり得る可能性が示唆された.
著者
市川 遼 坂本 龍一 中村 宏 並木 美太郎
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2020-OS-148, no.3, pp.1-7, 2020-02-20

メモリアクセスのパターンを解析することは,アプリケーションのパフォーマンス改善において非常に重要である.しかしメモリアクセスは頻繁に発行され,そのログが膨大になってしまうため,実行時間に影響を与えずにトレースを得ることは困難である.そこで本発表では,ハイパーバイザと Intel Optane DC Persistent Memory を用いたメモリトレースシステムを提案する.BitVisor を拡張した LVisor によって,Optane DCPM の持つ高速な大容量ストレージを解析用途に利用する方法を検討した.
著者
廣瀬 雄一
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 = Japanese journal of brief psychotherapy (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.72-80, 2014

「書き換え療法」としても知られるナラティヴ・セラピーはオーストラリアのM.ホワイトとニュージーランドのD.エプストンらによって発展した。ナラティヴ・セラピーは心理療法の領域にとどまらない幅広い領域で用いられているが,日本においては西洋との文化的差異もあってか,うまく機能しない場合もあるように思われる。それに対して日本生まれの森田療法が,これを補うことができるのではないかと筆者は考えている。筆者は復職デイケアクリニックであるリワークで勤務している。私はここでナラティヴ・セラピーと森田療法の併用を試みている。本研究の目的は,実際のケースを提示しながら,この2つの療法の組み合わせがどのように機能するのかについて検討することである。
著者
江上 京里
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.4-11, 2008-09-05 (Released:2016-10-25)
参考文献数
28
被引用文献数
5

現在実践で行われている温罨法については, 方法や対象がさまざまであり, これまでの温罨法の知見を統合し, 包括的に捉えていく必要があると考える. よってCooperの方法論を参考に温罨法の統合的レビューを行った. 医学中央雑誌 web版1983~2007年で 「温罨法」, そしてCINAHL web版1982~2007年で 「heat application」 で検索を行った. 論文の質を評価し国内文献は28件, 海外文献は5件を対象とした. 結果, 温罨法はさまざまな対象 ・ 方法で行われていた. その成果は 「加温した局所のみではなく, より末梢の皮膚温や皮膚血流量にも影響」 すること, 「加温した部位はさまざまであっても腸蠕動が亢進」 すること, そして腰背部への温罨法は 「自律神経のバランスを整える」 ことが整理された. 心理的側面では 「温罨法の気持ちよさは, 身体的な感覚によるところが大きい」 ことが示された. 方法については, 「適用の温度が高ければ短時間」 実施する傾向があり, 成果指標は, 自律神経を主とする 「生理学的な指標」 が多くを占めていた.
著者
塩寺 さとみ 伊藤 雅之 甲山 治
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.15-29, 2020 (Released:2020-05-21)
参考文献数
124

熱帯泥炭湿地林は東南アジア、中南米、アフリカの低緯度地域にみられる森林である。その内訳はインドネシアでもっとも多く、全体の47%を占める。定期的、もしくは季節的な冠水によって落葉落枝の分解が抑制されることにより、林床に厚く泥炭と呼ばれる未分解の有機物が蓄積されており、貧栄養かつ低pHという特徴で知られている。泥炭湿地林には固有種や希少種が多くみられると同時に、その過酷な環境に適応した特殊な構造や機能を持つ植物が多くみられる。また、種組成や種特性は泥炭の深さやピートドーム内の場所によって大きく異なる。泥炭は15 mの深さに達することもあるため、泥炭湿地林は巨大な炭素と水の貯蔵庫という意味でもこれまで重要な役割を果たしてきた。このように、泥炭湿地林は、気候条件・水文環境や、泥炭、水、植生のあいだの微妙なバランスの下、長い年月をかけて成立し維持されてきた。人為的な撹乱がこのバランスに与える影響は著しく、その意味で泥炭湿地林は他の生態系よりも脆弱であるといえる。 泥炭湿地林の環境は農業や様々な土地利用には不向きであるため、これまで長年の間、開発の手を免れてきた。しかし、東南アジア地域では、1980年代頃より泥炭湿地林の排水をともなう大規模な農地開発等により急速にその面積の減少や森林の劣化が進み、正常な生態系機能は急速に失われつつある。泥炭湿地林の排水によって開発が行われる際には、これまで維持されてきたバランスが大きくくずれ、泥炭の分解や地中火、人為火災延焼による大気中への温室効果ガスの放出やこれに付随する地盤沈下が生じる。さらに火災による煙害は地域社会のみならず近隣諸国にも影響を与える国際的な環境問題となっている。大規模な排水、および火災の被害を受けた泥炭湿地林ではその回復は非常に難しい。さらにインドネシアでは、土地開発と経済発展、土地所有権や移民問題など様々な問題が複雑に絡み合う状況が泥炭湿地林の保全や回復を一層困難にしている。そこで本稿では、東南アジア地域の熱帯泥炭湿地林に焦点を当て、人為的撹乱が泥炭湿地林に与える影響とその回復の可能性、そして泥炭湿地林の将来について議論する。
著者
佐久川 弘 竹田 一彦 山崎 秀夫 チドヤ ラッセル サンデー マイケル アデシナ アデニュイ ダーバラー アリー アブデルダム シェリフ モハメド モハメド アリ カオンガ チクムブスコ チジワ
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-07-19

瀬戸内海において海水、堆積物、生物試料を採取し、海域による農薬汚染の進行度の評価を行い、瀬戸内海全域にわたる汚染の歴史的変遷を明らかにした。生物試料中の農薬濃度の測定から、食用魚等の食品としての安全性を評価し、水生生物へのリスクアセスメントを行った。さらに、瀬戸内海の海水等の農薬濃度、農地等での農薬使用量、船底塗料の出荷量から、過去の農薬の物質収支の変遷に関して解析を行った。その結果、測定した8種類の農薬のうちで、陸地で使用されるダイアジノン(有機リン系殺虫剤)がすべての試料において、比較的高濃度で存在し、水産食品としての安全性への懸念や水生生物に対する負の影響が認められることを明らかにした。
著者
前迫 ゆり 名波 哲 鈴木 亮
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

特別天然記念物春日山原始林はかつて豊かなフロラを有し,数百年にわたって保護獣のシカが生息してきた文化的背景を有している。調査の結果,1)生物多様性の再生には自然攪乱が関係しており,ギャップ形成後,すぐに植生保護柵を設置することによって種の多様性再生が生じたが,不嗜好植物の外来種(アオモジ,ナギ,ナンキンハゼ)の定着も認められた。2)シカの長期的インパクトは,常緑広葉樹から常緑針葉樹林(不嗜好植物ナギ)への偏向遷移をもたらし,100年オーダーで不可逆的変化が生じると考えられた。3)古いギャップに植生保護柵を設置した場合,埋土種子が枯渇し,実生更新がきわめて困難であることが検証された。
著者
旺文社
出版者
旺文社
巻号頁・発行日
vol.5, no.7, 1960-10