著者
小坂 美保
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
no.11, pp.62-74,151, 2003
被引用文献数
1

本研究は, 明治政府が,「国民」としての統一性を前提とした近代化を推し進めるために, その秩序が内在化できるような身体の形成装置として都市や公園を捉えていたという都市と身体の関係に関する基本的な分析視点を明らかにするとともに, その諸相の一端を序説的に展開することを目的としている。<br>特に, 明治・大正期に都市計画とともに整備された公園に焦点をあて, そこでの人びとの身体が, 次のようなことから秩序づけられていく可能性をみることができた。それは, 公園内の運動場や体操器械, 園路といった施設=モノや, 公園内の人びとの〈見る/見られる〉という視線が, 人びとの行為の限定や秩序の受け入れに有効に機能している点である。

1 0 0 0 OA 師郷記 22巻

著者
[中原]師郷 [著]
巻号頁・発行日
vol.[1], 1000
著者
田畑 秀典
出版者
愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ヒト進化過程において、脳は著しく巨大化し、ヒトの高度な精神活動を可能にしている。脳が巨大化した主要因として、脳室帯(VZ)から離脱した神経幹細胞がさらにその幹細胞性を維持しながら脳室下帯(SVZ)で自己複製を繰り返すことが挙げられる。我々は発生過程マウス大脳皮質において、SVZで分裂する集団が皮質外側部において内側部よりも多く存在することを報告した。このことから、マウスにおいてこの両者を比較することにより、SVZ分裂細胞を多く作る仕組みを解明でき、これによりヒトが進化過程で巨大脳を獲得したメカニズムに迫ることができると考えられた。マイクロアレイ、in situ hybridization、および子宮内電気穿孔法によるスクリーニングと、情報科学的な淘汰圧の解析を平行して行い、霊長類で特異的に淘汰圧が高まり、SVZ分裂細胞の産生を正に制御する分子を同定した。この分子は、マウスではSVZにまばらに発現細胞が散見されるが、霊長類(マーモセット)では強陽性細胞が密に存在する。この分子は膜結合型のリガンドとして機能し、隣接する細胞に未分化性を維持させるように働くことが予測されることから、この発現レベルの違いが、SVZの発達を決定すると考えられた。種間による発現の違いが転写調節領域の変化によるものなのかを確かめるため、ヒトおよびマウスのBACクローンから転写開始点周囲の配列を単離し、その制御下にLuciferaseを発現するベクターを構築した。これらを子宮内電気穿孔法によりマウス胎仔脳に導入し、発現強度を比較した結果、マウス脳においてもヒトの配列はマウスよりも強い転写活性を示すことが観察された。多種間ゲノム比較によりこれらをブロック分けし、責任領域を絞り込んだところ、第2イントロン上流側の極めて狭い領域がマウスとヒトの発現強度の違いに決定的な役割を果たすことが示された。
著者
赤澤 正人 松本 俊彦 勝又 陽太郎 木谷 雅彦 廣川 聖子 高橋 祥友 川上 憲人 渡邉 直樹 平山 正実 亀山 晶子 横山 由香里 竹島 正
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.550-560, 2010 (Released:2014-06-12)
参考文献数
37
被引用文献数
1

目的 わが国の自殺者数は,平成10年に 3 万人を超えて以降,11年に渡りその水準で推移しており,自殺予防は医療や精神保健福祉の分野に留まらず,大きな社会的課題となっている。本研究では心理学的剖検の手法で情報収集がなされた自殺既遂事例について,死亡時の就労状況から有職者と無職者に分類し,その心理社会的特徴や精神医学的特徴の比較•検討を通じて,自殺既遂者の臨床類型を明らかにし,自殺予防の観点から有職者ならびに無職者に対する介入のポイントを検討することを目的とした。方法 心理学的剖検の手法を用いた「自殺予防と遺族支援のための基礎調査」から得られたデータをもとに分析を行った。調査は,自殺者の家族に対して独自に作成された面接票に準拠し,事前にトレーニングを受講した精神科医師と保健師等の 2 人 1 組の調査員によって半構造化面接にて実施された。本研究で用いた面接票は,家族構成,死亡状況,生活歴,仕事上の問題,経済的問題等に関する質問から構成されていた。なお,各自殺事例の精神医学的診断については,調査員を務めた精神科医師が遺族からの聞き取りによって得られたすべての情報を用いて,DSM-IVに準拠した臨床診断を行った。本研究では,2009年7 月中旬時点で23箇所の都道府県•政令指定都市から収集された自殺事例46事例を対象とした。結果 有職者の自殺者は,40~50代の既婚男性を中心として,アルコールに関連する問題や返済困難な借金といった社会的問題を抱えていた事例が多かった。無職者では,有職者に比べて女性の比率が高く,20~30代の未婚者が多く認められ,有職者にみられたような社会的問題は確認されなかった。また,有職者では死亡時点に罹患していたと推測される精神障害としてアルコール使用障害が多く認められたのに対して,無職者では統合失調症及びその他の精神病性障害が多く認められた。結論 自殺予防の観点から,有職者に対しては,職場におけるメンタルヘルス支援の充実,アルコール使用障害と自殺に関する積極的な啓発と支援の充実,そして債務処理に関わる司法分野と精神保健福祉分野の連携の必要性が示唆された。一方で,無職者に対しては,若い世代の自殺予防に関する啓発と支援の充実,統合失調症と自殺に関する研究の蓄積の必要性が示唆された。
著者
澤邉 泰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.10-19, 2015 (Released:2015-04-22)
参考文献数
19

心不全の治療は1960年代後半に早期離床・早期退院の考え方が定着し,1970年以降に運動療法が普及していった。その後,運動療法の安全性や有効性について多くの検討が行われ,多くの有益な効果が得られることが判明し,心疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインにおいても運動療法の効果について示されている。我々理学療法士が心不全患者に対して理学療法を提供する上で重要となるのはリスク管理である。理学療法士が「心機能」として一般的にイメージするのは左室駆出率(Left Ventricular Ejection Fraction: LVEF)ではないだろうか。LVEFが40%未満になると左室機能障害といわれ,心疾患に対する理学療法のリスク管理の指標としては重要となる。しかし,LVEFの低値が運動中止基準とはならなない。近年,我が国では高齢化が進み,65歳以上の割合が総人口の25%となり,「超高齢社会」となった。必然的に理学療法分野においても対象者の高齢化が進んでいくことは容易に想像することができる。特に老年期には心不全の発症頻度が増加するため,脳血管疾患や整形外科疾患などにおいても心疾患の既往を有している可能性が高くなり,重複した障害像を認める時代を迎え,高齢者の心臓の特徴を踏まえた循環障害に対する理学療法が重要となる。本稿では心臓の解剖・生理の基本,心不全の病態・典型的症状,心不全に対する理学療法について詳述する。
著者
吉川 澄夫
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

平成7年兵庫県南部地震(M7.3)は,本震前に地殻変動,地下水,電磁気などの様々な変化を伴い,地震活動の異常が観測されたことが知られる地震である.特に茂木(1995)は長期的・広域的な視野で地震活動の空白域と静穏化現象を指摘している.吉田(1995)は地震活動の先行現象の広域性を指摘し,震源域よりも広い領域が地震発生プロセスに関わっていることを示した.そこで何らかの予知手法を想定した場合,このような広域の先行現象を根拠にどの程度の確度で評価可能かが問題となる.eMAP は地震発生率をポアソン確率により評価するツールである(吉川・他,2017).個々の震源毎に領域を設定し,全ての領域の異常の度合いを表示することがこの方法の特徴である.上述の問題を考える為,この方法による広域地震活動の診断の可能性を検討した.兵庫県南部地震の際の広域の地震活動静穏化・活発化現象を,近畿・中国・四国地方を中心に解析したところ,以下の特徴が見出された.当時の気象庁震源カタログは一元化処理開始前であり,1988年以降の検知力はM2.0程度と考えられる.本震の5〜6年前までは,地震活動の空間的な分布が比較的短期間に変化し安定したパターンが見られないが,本震の約2年前,兵庫県東部で約50kmの範囲にわたり静穏化現象が確認される.そして本震約1年前から発生時まで,震源域とそれを囲む広い範囲の複数地域で活発化の状況を示した.これは諸々の活断層・構造線沿いに小規模な前震的活動が起きていたことによるものと思われる.この地震活動の時間的推移に基づいて予測手法を想定すれば次のようになる.まず静穏化現象の場所と広がりを把握することにより本震の発生場所と規模を想定し(吉川,2015),次に広域の地震活動の時間変化の同時性を検知することにより,相関解析などの手法をもって時期を推定するというものである.
著者
下條 清史 坂本 一憲 鷲崎 弘宜 深澤 良彰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.481, pp.97-102, 2012-03-06
参考文献数
7

Fault-Localizationはテスト結果からテスト失敗の原因となるコードの箇所を推定する手法で,デバッグ作業の支援に有効である。しかし、テストケースが十分でない場合,バグを十分に局所化できないため、Fault-Localization結果が信頼できない.本稿では,実際の開発形態に沿ったインクリメンタルな運用のもとでプログラム構造を用いてFault-Localization結果を改善する手法を提案する.Fault-Localization結果のトップランキングの高精度化とバグの修正を繰り返していく手法により,効率的なデバッギングの実現可能性を示す.
著者
Eric K. BIRKS Hajime OHMURA James H. JONES
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
Journal of Equine Science (ISSN:13403516)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.87-92, 2019 (Released:2019-12-18)
参考文献数
26
被引用文献数
2

Measurements of gas exchange while breathing gases of different O2 concentrations are useful in respiratory and exercise physiology. High bias flows required in flow-through indirect calorimetry systems for large animals like exercising horses necessitate the use of inconveniently large reservoirs of mixed gases for making such measurements and can limit the amount of equilibration time that is adequate for steady-state measurements. We obviated the need to use a pre-mixed reservoir of gas in a semi-open flow-through indirect calorimeter by dynamically mixing gases and verified the theoretical accuracy and utility of making such measurements using the mass-balance N2-dilution method. We evaluated the accuracy of the technique at different inspired oxygen fractions by measuring exercising oxygen consumption (VO2) at two fully aerobic submaximal exercise intensities in Thoroughbred horses. Horses exercised at 24% and 50% maximum oxygen consumption (VO2 max) of each horse while breathing different O2 concentrations (19.5%, 21% and 25% O2). The N2-dilution technique was used to calculate VO2. Repeated-measures ANOVA was used to tested for differences in VO2 between different inspired O2 concentrations. The specific VO2 of the horses trotting at 24%VO2max and cantering at 50%VO2max were not significantly different among the three different inspired oxygen fractions. These findings demonstrate that reliable measurements of VO2 can be obtained at various inspired oxygen fractions using dynamic gas mixing and the N2-dilution technique to calibrate semi-open-circuit gas flow systems.

1 0 0 0 OA 李陵

著者
中島敦 著
出版者
小山書店
巻号頁・発行日
1946
著者
陰里 鉄郎
雑誌
美術研究 = The bijutsu kenkiu : the journal of art studies
巻号頁・発行日
no.306, pp.1-11, 1977-03-31

Very little is known concerning Keiga KAWAHARA (1786- after 1860), a painter in Nagasaki, although he developed a unique Western-influenced repertory in painting there. Almost none of the considerable number of paintings he left are dated. Many of his works have his seal but few have his signature. His paintings can be classified into two categories. One is a group of works painted for foreigners and the other is a group of works for Japanese. The first group includes those made for J. C. BLOMHOFF (1779-1853), J. G. F. Van Overmeer FISSCHER (18001848) and P. F. Von SIEBOLT (1796-1866), at their request out of their political and academic interest. Keiga's works, in the Blomhoff-Fisscher Collection in the Rijks-museum voor Volkenkunde at Leiden, Netherlands, seem to have greatly contributed to the book on Japan written by Fisscher. The frontispiece of this book has a painting of an arrangement of several small pieces by Keiga. These small paintings are his copies Hokusai KATSUSHIKA'S wood-blockprinted book Hokusai Manga. Fisscher's description of typical Japanese life meets exactly with the scenes in a handscroll painting titled “Life of the Japanese”, which was presumably executed by Keiga. Koga Bikō, a Japanese book on old paintings compiled in mid-nineteenth century, contains a passage mentioning that Hokusai made a set of two illustrated handscrolls titled “Life of the Japanese” for a Dutchman. There must be some kind of a relationship between these works. The Rijks-museum voor Volkenkunde owns thirteen hanging scroll paintings by Keiga, four in the Siebold Collection and seven in the Blomhoff-Fisscher Collection. All thirteen scrolls have the artist's signature, an exceptional fact. These two collections are from different but successive periods. Therefore, they are useful materials for studying the development of Keiga's style, from 1817 to 1829. The works in these collections indicate that Keiga studied the methods of the Tosa-school-type of traditional Japanese painting and worked in the style of SHÊN Ch'üan, a Chinese painter who came to Nagasaki.