著者
田崎 晴明
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.741-747, 1996-10-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
26
被引用文献数
1

磁石(強磁性体)の中で, 数多くの電子のスピンが同じ方向を向いてそろうのは何故か? この古典的な間に答えるためには, 強い非線形な相互作用を及ぼしあいながら, 複雑に絡み合って量子力学的に運動する多くの電子たちの生み出す物理的なストーリーを読みっとていかなくてはならない. そのような理論的な試みの一つの側面を, Hubbard模型での強磁性の厳密な例を中心に解説する. 学部程度の量子力学の知識だけを前提にして, このテーマのおもしろさと最近の結果を伝えたい.

390 0 0 0 OA 若き女の手紙

著者
溝口白羊 編
出版者
岡村書店
巻号頁・発行日
1912
著者
瀧澤 毅
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The university bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.3, pp.149-160, 2010-02

マスクを着用することがインフルエンザ感染予防に有効であるというエビデンス(科学的根拠)があるのかEBMの方法により検討した。そのため本学図書館から利用できる医中誌, JMEDPlus, 医学・薬学予稿集データベース、日経メディカルオンライン、MEDLINE, Cochrane Libraryを検索し、インフルエンザと呼吸器感染症に対するマスク着用の予防効果について、臨床論文を抽出しエビデンスを評価した。マスク着用がインフルエンザや他の感染症予防に有効であることを検証した推奨度A、エビデンスレベル1bのランダム化比較試験のエビデンスはない。これまでマスク着用のインフルエンザ感染症予防を検証するランダム化比較試験が香港とシドニーで実施されたが、いずれもマスク着用と非着用のインフルエンザ感染発症率に統計的有意差はなかった。推奨度B、エビデンスレベル2aの観察研究ではインフルエンザ予防に有効であることを示す非ランダム化比較試験とコホート研究のエビデンスがある。また、SARS感染予防に有効である可能性を示唆する推奨度B,エビデンスレベル3aの症例対照研究のメタアナリシスによるエビデンスもある。一方、手洗いの小児肺炎などの感染症予防効果については、推奨度A,エビデンスレベル1bのランダム化比較試験のエビデンスがある。WHOや米国CDCのインフルエンザ予防ガイドラインはマスク着用よりも手洗いを重視しているが、これは両者の予防効果のエビデンスレベルの違いを反映させたものである。
著者
堀 まゆみ 小豆川 勝見 松尾 基之
出版者
一般社団法人 日本環境化学会
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.129-135, 2017-12-18 (Released:2018-06-22)
参考文献数
31

High Cr(VI) contaminants have often been detected in groundwater and soils around chromium slag dumping site in Tokyo. The actual status of Cr(VI) seepage in Ojima-Komatsugawa Park was surveyed from January to December 2016, followed with examination of its causes. Firstly, quite heavily concentrated Cr(VI) was detected in seepage water from permeable pipe at the Wansaka Field in the Park. The 50 mm of total rainfall was found to be the trigger for Cr(VI) to leach and spread to the sidewalk. Secondly, Cr(VI) exceeding the standard value concentration flows out into the sewage at the catch basin in Komatsugawa area during rainfall. Leakage at the both points could not be directly related to groundwater level. Results indicated that rainfall causes seepage of Cr(VI), which results in the ongoing pollution in these areas. There had been some attempts to remediate the pollution by applying iron sulfate, however, the investigation revealed significance of further development for fundamental solution.
著者
尾山 大知 丸山 智朗 井口 卓磨
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.121-129, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
18

2018 年5 月から2021 年5 月にかけて,関東平野を流れる荒川水系の1 細流において採集されたヒメヌマエビ属31 個体の標本を検討したところ,香港をタイプ産地とする陸封種,Caridina logemanni Klotz & von Rintelen,2014 に同定された.本種は年間を通じて確認され,抱卵個体や稚エビも採集されたため,本生息地において定着・再生産していることが示唆された.加えて,C. logemanni の採集地周辺の観賞魚店で販売されていた5 個体の形態も採集された個体とよく一致していたことから,荒川水系における本種の確認例は,観賞目的で流通していた個体の遺棄に由来すると考えられた.本種には標準和名が与えられていないことから,本報において新標準和名「ホンコンクロオビヌマエビ」を提唱する.
著者
河野 康一
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.163-173, 2012-06-17

2011年3月11日に発生した福島原発事故のがん保険への影響を検討した。急性被曝による健康被害は発生しておらず,将来的に急性外部被曝によるがん発生率上昇の可能性はないと思われた。今回の事故での放射線物質の総放出量はチェルノブイリ原発事故の1割程度と推測され,外部被曝線量や甲状腺超音波検査の結果等と合わせると,慢性被曝や内部被曝によるがん発生率上昇の可能性も,小児甲状腺がんを含めて,きわめて低いと思われた。しかしながら,国民が被曝による甲状腺がん発生率上昇の可能性を認識したことは,がん保険にとっての別の意味でのリスクになると思われる。甲状腺をはじめとしたがん検診の受診率が上昇すれば,相当数の潜伏がんが保険請求される可能性がある。がん保険としては,今回の原発事故をがん発生率が上昇する直接的リスクとして捉えるのではなく,潜伏がん発見率が上昇する間接的リスクとして捉える必要があると思われる。
著者
西村 秀一
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.222-226, 2017-07-25 (Released:2017-09-05)
参考文献数
5
被引用文献数
1

首から名札のようにぶら下げるタイプあるいはポケットに挿すペンのような形状で身体に装着させ,顔面に近いところでの二酸化塩素のガスの放散によるウイルスや細菌の除去を標榜する市販の四社の四製品について,その効果の有無を検証した.ウイルス実験では,冬の生活空間を想定した室温20℃,相対湿度25%の閉鎖空間内でA型インフルエンザウイルスをネブライザーを用いて浮遊させ,それぞれの製品の直上20 cmのところで空気を吸引し,ゼラチンフィルターでウイルスを濾しとり回収した活性ウイルスの量を測定した.細菌実験では同じく製品の20 cm直上にStaphylococcus aureusあるいはPseudomonas aerginosaを塗布した寒天培地を20分間置いたのち回収し,培養してコロニー数を数えた.それぞれの検証対象直上で回収した空気中の活性ウイルス量や寒天培地上の菌数を,製品による曝露を受けない対照と比較した.その結果,すべての製品で,少なくとも用いたウイルスや細菌に対して標榜されているような抑制効果はまったく認められなかった.さらに,それらの製品から放散されるガス濃度の測定も行った.その結果,どの製品でも,10 cm離れた場所で二酸化塩素はほとんど或いはまったく検出されなかった.
著者
大和 浩 太田 雅規 中村 正和
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.130-135, 2014 (Released:2014-04-16)
参考文献数
11

目的 飲食店の全客席の禁煙化が営業収入に与える影響を,全国で営業されている単一ブランドのチェーンレストランの 5 年間の営業収入の分析から明らかにする。方法 1970年代より全国で259店舗を展開するファミリーレストランでは,老朽化による改装を行う際に,全客席の禁煙化(喫煙専用室あり),もしくは,喫煙席を壁と自動ドアで隔離する分煙化による受動喫煙対策を行った。2009年 2~12月度に全客席を禁煙化した59店舗と,分煙化した17店舗の営業収入の相対変化を,改装の24~13か月前,12~1 か月前,改装 1~12か月後の各12か月間で比較し,客席での喫煙の可否による影響が存在するかどうかを検討した。改装が行われておらず,従来通り,喫煙区域と禁煙区域の設定のみを行っている82店舗を比較対照とした。解析は Two-way repeated measures ANOVA を行い,多重比較検定は Scheffe 法を用いた。結果 全客席を禁煙化した52店舗,喫煙席を壁とドアで隔離する分煙化を行った17店舗,および,未改装の82店舗の 3 群の営業収入の相対変化(2007年 1 月度比)は,12か月単位の 3 時点の推移に有意差が認められた(P<0.0001)。改装によりすべての客席を禁煙とした店舗群の営業収入はその前後で増加したが(P<0.001),喫煙席を残して壁と自動ドアで隔離する分煙化を行った店舗群の営業収入は有意な改善を認めなかった。結論 ファミリーレストランでは,客席を全面禁煙とすることにより営業収入が有意に増加するが,分煙化では有意な増加は認めらなかった。
著者
岩谷 佳美 加賀 勇治 芳賀 喜裕 荒井 剛 山田 文夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.25-30, 2011 (Released:2012-09-20)
参考文献数
6

当院の冠動脈造影(coronary angiography; CAG)と経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI)の年間総数は約7,000件であり, 循環器医師17名が左橈骨動脈アプローチで施行している. そのため, 術者個人の年間件数が多く, 被曝線量の増加が懸念される. そこで, 術者個人の被曝線量と件数から被曝状況を分析し, 問題点および防護対策について検討した. その結果, 個人の年間平均件数はCAG 280件, PCI 80件, 平均年間被曝線量は3.5mSvで, 被曝線量は件数に依存しなかった. 被曝線量の多かった術者は, 年間27.0mSvで, 職業被曝線量限度を超える危険性が生じた. この術者の被曝状況を分析した結果, 個人線量計を防護衣の前ポケット(布製)に入れていたため被曝したことがわかった. そこで, 正しく防護衣の内側に装着した場合の被曝線量をファントム実験で算定した結果, 被曝線量は3.7mSv/年と推定された. 術者は個人被曝線量計を正しい位置に装着する, きちんと防護用具を使用するなど, 常に被曝防護を意識し, 実践することが重要である.
出版者
石巻日日新聞社
巻号頁・発行日
vol.平成23年3月12日, 2011-03-12
著者
岡本 健

『ゾンビ学』(人文書院)の付録として、株式会社人文書院のウェブページで発表された論考。先行研究や資料のリサーチ方法を解説したもの。
著者
植木 岳雪
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.11, pp.75-82, 2018-02-28

著者が今までに受け取った79通の不採用通知の文面を分析した結果,研究者の不採用通知は平成22~25年の方が平成11~14年よりも「お祈り」または「祈念」と,「ますます」という表現が含まれるものの割合が増加した。研究者の不採用通知は,ビジネス文書のような定型の文面を主とし,より簡素で事務的なものになってきたことがわかった。その要因として,1つの公募に対する応募者数が増えたため,採用側が応募者に不採用通知を送る際の手間を少なくするようになったことが考えられる。

382 0 0 0 OA 麻疹ワクチン

著者
中山 哲夫
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.257-266, 2009-12-24 (Released:2010-07-03)
参考文献数
44

麻疹ワクチンは1954年に分離されたEdmonston株を親株としてニワトリ胎児胚細胞をはじめとした本来の感受性宿主以外の細胞で継代することにより高度弱毒生ワクチンが樹立された.麻疹ワクチンの普及により麻疹患者報告例数は減少し南北アメリカは麻疹排除に成功し,我が国を含めた太平洋西部地域は2012年を麻疹排除の目標達成年度としている.近年の分子生物学的手法の進歩により麻疹ウイルスRNAをcDNAクローン化し感染性ウイルスを回収するreverse geneticsが確立され,弱毒の分子基盤が解明され麻疹ウイルスの性状が解析されてきた.また,こうした分子生物学的な手技を応用し既存の方法では有効なワクチンが開発されていない感染症に対して既に安全性と有効性が確立されている弱毒麻疹ワクチンを生ワクチンウイルスベクターのプラットフォームとする新規の組換え生ワクチンへの応用,ワクチン株をベースとするoncolytic measles virusへの展開を述べる.
著者
山中 智省
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-24, 2021 (Released:2023-03-31)

朝日ソノラマのソノラマ文庫は,自社の単行本叢書の文庫化を企図して1975年に創刊を果たし,2007年まで存続した若年層向け文庫レーベルである.本稿では,ソノラマ文庫の創刊から全盛期に至る1970~80年代を射程に,同文庫が「ライトノベルの一源流」と見なされる特質をどのように形成したのかを明らかにしていく.また,とりわけ1980年代後半の動向をもとに,ソノラマ文庫の戦略面における課題とは何かに焦点を当て,その考察を試みる.
著者
Ryugo S. HAYANO Masaharu TSUBOKURA Makoto MIYAZAKI Hideo SATOU Katsumi SATO Shin MASAKI Yu SAKUMA
出版者
日本学士院
雑誌
Proceedings of the Japan Academy, Series B (ISSN:03862208)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.211-213, 2014-06-11 (Released:2014-06-11)
参考文献数
9
被引用文献数
3 5

Comprehensive whole-body counter surveys covering over 93% of the school children between the ages of 6 and 15 in Miharu town, Fukushima Prefecture, have been conducted for three consecutive years, in 2011, 2012 and 2013. Although the results of a questionnaire indicate that approximately 60% of the children have been regularly eating local or home-grown rice, in 2012 and 2013 no child was found to exceed the 137Cs detection limit of 300 Bq/body.
著者
飯島 茂子 小城 一見 髙山 典子
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.362-369, 2020-04-30 (Released:2020-11-24)
参考文献数
9

64歳女。紫外線硬化アクリル樹脂を用いたアクセサリーの作製中に感作されたアレルギー性接触皮膚炎の1例を報告した。患者は布またはポリエチレン手袋を着用していたが,2週間後の2回目の作製後に手指の軽度の腫脹・疼痛・掻痒を感じた。4週間後の3回目の作製時には,水疱を形成する重篤な皮膚炎を生じた。パッチテストの結果から,感作源は,アクリル樹脂中に含まれる2-ヒドロキシエチルアクリレートと考えた。2-ヒドロキシエチルメタクリレートにも弱い交差反応を示し,今後,同様の樹脂を用いる歯科治療,接着剤,ネイルアートなどでも口腔粘膜・皮膚接触部位に皮膚炎を生じる可能性がある。感作を防止するには,アクリルモノマーには直接接触するのを避けること,ディスポーザブル手袋は防護性のないこと,およびネオプレン製工業用手袋でも短時間の作業に留めることを十分理解させることが重要である。(日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):362-369,2020)