著者
岩﨑 千晶 池田 佳子
出版者
関西大学教育開発支援センター
雑誌
関西大学高等教育研究 (ISSN:21856389)
巻号頁・発行日
no.4, pp.9-17, 2013-03

本稿は、協同的な学習や学習者が自律的に学ぶことにより、自ら考え行動する「考動力」を育むための学習環境"コラボレーションコモンズ"をいかにデザインしたのかについて論じている。具体的には、学習環境を構築する際に検討すべきScott(2012)の提示する6つの質問に答えていくことで、コモンズで生成することが望ましい学びや育成したい学生像を検討し、コモンズの運用や学習支援の在り方について述べる。
著者
福島 可奈子
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.5-24, 2017-07-25 (Released:2017-09-13)
参考文献数
43

【要旨】鶴淵幻燈舗は、明治期に文部省の委託で初めて西洋幻燈を製作・納品し、その後の幻燈の普及に多大な影響を与えている。しかし鶴淵幻燈舗の事業の実態については、現存史料が少ないために、先行研究では断片的にしか明らかにされてこなかった。本論は、近年新たに発見された鶴淵幻燈舗発行の機関誌をも参照しながら、同舗の製造・宣伝・販売事業と、販売先のひとつである博文館の雑誌『少年世界』が主宰するお伽幻燈隊の活用方法について検証し、「通俗教育」事業としての幻燈と諸メディアのつながりの一端を明らかにしようとする。なぜなら同舗製作の幻燈は、近代国家としての「国民」の形成を目指していた明治政府にとって必要不可欠な教育ツールと目されたからであり、また明治期は現在考えられているような概念やメディアが定着・分離する以前であり、写真、幻燈、児童雑誌など多様なメディアが混在していたからである。そして「通俗教育」の名のもとにそれを横断する形で、鶴淵幻燈舗の製造・販売事業、お伽幻燈隊の受注事業があった。本論では、メディア考古学の観点から、メディアの多様性と相互の連関に注目するとともに、従来等閑視されてきた幻燈の実際面、製造・販売者や使用者の視点からの、技術的側面や具体的使用例を検討しつつ、明治期の「教育」現場での、他メディアとのつながりをも含む幻燈の果たした役割を明らかにする。

1 0 0 0 OA 諸事留帳 43巻

出版者
巻号頁・発行日
vol.[47] 自万延至文久 分冊ノ二,
著者
有竹 洋平 林 悠太 吉松 竜貴
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A4P2090, 2010

【目的】<BR> 意欲低下、自発性低下もリハビリテーションを行う上で、最大の阻害因子の一つであるという報告がある(大友.1986)。また、脳血管障害患者を対象とした在宅での日常生活動作(以下ADL)と生活意欲の関連報告や回復期病棟での1ヶ月間のADL変化と意欲の関連性を検討した先行研究もあり、リハビリテーションにおける意欲の重要性が伺える。そこで本研究では、東武練馬中央病院回復期病棟に入院する高齢患者を対象に、入院時の生活意欲と退院時までのADLの改善度の関連性について比較検討した。<BR>【方法】<BR> 対象はH20年11月からH21年10月までに当院回復期病棟に入院中であった65歳以上の高齢患者62名(男性19例、女性43例、年齢82.0±6.5歳、脳血管障害18例、整形外科疾患32例、脊椎脊髄疾患8例、廃用症候群4例)とした。入院中に急性増悪での転院や死亡退院した者は対象外とした。<BR>評価項目は、入院時と退院時の機能的自立度評価表(以下FIM)と入院時から退院時までのFIMの改善度であるFIM利得、入院時の生活意欲とした。生活意欲に関しては、認知症患者でも回答の有効性が高いとされているVitality Indexを用いた。Vitality Indexは鳥羽らによって開発された指標で、日常生活での行動を起床・意志疎通・食事・排泄・活動の5項目で評価し、高齢者のリハビリテーションや介護場面での意欲を客観的に測定するものである。各項目はそれぞれ0~2点まで配点された3つの選択肢からなり、満点は10点となる。カットオフ値とされる7点をもとに、8点以上を高得点群(以下High群)、7点以下を低得点群(以下Low群)の2群に分けた。<BR> 統計学的処理は、Stat view ver.5.0を使用し、入院時FIMと入院時Vitality Indexに対してはSpearmanの順位相関係数を求めた。また、FIM利得はMann-WhitneyのU検定、年齢・在院日数はt検定、性別はχ<SUP>2</SUP>検定を用いて群間の差を検討した。有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR> 数値の公表に関して、統計量を用いるなど個人の特定がなされないよう配慮することで、対象より了承を得た。<BR>【結果】<BR> High群は39例(男11例、女28例、81.2±6.3歳)、Low群は23例(男8例、女15例、83.5±6.7歳)であり、全体のVitality Indexは8.0±2.5点、High群は9.6±0.7点、Low群は5.2±1.7点であった。入院時FIMと入院時Vitality Indexは0.759と高い相関を認めた。FIM利得、年齢、性別は群間で有意差を認めなかった。在院日数はHigh群ではLow群に比べ有意に高かった(p<0.05)。<BR>【考察】<BR> 本研究では回復期病棟に入院する高齢患者に対し入院時の生活意欲と退院時までのADLの改善度との関連性について検討した。その結果、入院時FIMと入院時Vitality Indexに関しては高い相関が認められた。入院時のVitality Indexが低下している者はADL能力も低下していることが考えられる。また、入院時Vitality IndexとFIM利得との間に関連性は認められなかった。入院時の生活意欲と退院時までのADL改善度に対して関連性が低いと考えられる。以上より、入院時Vitality Indexが低い患者であっても、退院時までにADLが改善する可能性が示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 今回の結果から、回復期病棟へ入院してきた高齢患者は一様に意欲的であるとは言えず、意欲低下が認められる患者もいることは明らかである。意欲低下、自発性低下もリハビリテーションを行う上で、最大の阻害因子の一つであるという報告があるため、入院時に意欲低下が認められている患者はその後のADL改善を阻害する可能性も考えられる。そこで、本研究で回復期病棟に入院する高齢患者の入院時の生活意欲が退院時までのADLの改善度に与える影響について関連性を検討したことは、理学療法研究として意義があると考える。<BR>本研究の結果から、入院時Vitality Indexの得点で退院時までのADL改善度を予測することは困難であり、入院時の生活意欲低下が一様にADL改善度に対して阻害因子とはならないことが示唆された。よって、ADLの改善度に対しては疾病の器質的問題や障害重症度、個人因子など多角的な検討が必要だと考える。
著者
中野 美保
出版者
医学書院
雑誌
看護教育 (ISSN:00471895)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.678-681, 2010-08-25

はじめに 高齢者は加齢による機能低下に加えて,何らかの原因で長期臥床した場合,急速に日常生活能力が低下する。その結果,自尊感情の低下が生じ,生きる目的や意味が見出せなくなり,生活全体が活動性の低い状態になる。そうした状態を改善するためには,活動性を高め回復意欲を向上させるための,日常生活動作(以下,ADL)の自立に向けた援助が肝要となる。 S氏は70歳代後半の老年期の女性で,膵炎の再燃と寛解を繰り返し,入院8か月目となっていた。受持ち時,リハビリテーション(以下,リハビリ)が再開されたが「何もできない」「思うように立てない」「リハビリが進んでいるように全然感じない」等,否定的な言動が多くみられた。 今回担当した患者に対して,ADLの拡大に向けて,患者が喜びや楽しさを実感することができ,手指の巧緻性を高める指導・援助を行うことが有効であろうと考えた。そこで,遊びを交えたリハビリを行うことで,患者の回復意欲の向上が図られ,効果的にADLを拡大できる指導援助に取り組んだ。 このような「遊びリテーション」(三好春樹氏が提唱している,リハビリに遊びの要素を取り入れたもの)を取り入れることで,高齢者の回復意欲を喚起し,ADLを拡大させるための有効な手段になるかを,実践を通して明らかにしたいと考え,本主題を設定した。
著者
高村 元章
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.EbPI1446, 2011

【目的】<BR> これまで元気に生活していた高齢者が肺炎や転倒、基礎疾患の悪化をきっかけに入院し、その後不幸にも入院期間中に寝たきり状態になり、そのままの状況で退院せざるを得ないケースに遭遇する。その一方で再び良好な回復を示し、在宅に戻って以前と変わらぬ生活を取り戻した高齢者も存在する。これらの転帰の相違は、確かに疾患や損傷の重症度や適切な治療の介入、家族の支えや介護などの影響が大きいのかも知れない。しかし、それと並行して、本人自身に芽生えた再び生きることへの原動力、すなわち生活意欲をかきたてる「動機」に通じる何からかの要因の存在があったからではないかと考えている。<BR> そこで、本研究では、かつて寝たきりの状態を経験し、現在はそれらの状況から回復の方向へ転じた高齢者を対象として、その背景因子や相互の関連性を模索することを目的に、半構造的インタビューによる聞き取り調査を実施した。そしてそれらのデータをもとに寝たきり状態となった高齢者の生活意欲向上にかかわる要因について検討を行ったので以下に報告する。<BR>【方法】<BR> 対象者の選定は、これまでに寝たきりの状態を6ヶ月以上経過し、現在その状態が改善されたか、または改善過程にあり、本研究の趣旨に同意が得られた2名の高齢者を対象とした。事例1および事例2ともに、70歳代の男性で、在宅での生活を営んでいる。事例1は、アルコール依存による精神障害や重度の肝機能障害、糖尿病など11種類の病名を持ち、病院から特別養護老人ホームを経て、退所後3年6ヶ月が経過していた。旧厚生省官房老人保健福祉部長通知(老健第102-2号)による障害高齢者の日常生活自立度判定基準(以下、寝たきり度)では、ランクB2からJ1へ、要介護度は4から 要支援1へと変化し、現在はシルバー人材センターからの依頼業務等もこなせる状況にまで回復している。事例2は、結核で入院中に脳出血を発症し、回復期の病院を退院後5年5か月が経過していた。寝たきり度はランクC2からB2へ、要介護 5から4へと軽快し、現在週2回のデイサービスを利用して歩行練習に励み、他の利用者とともにカラオケを楽しんでいる。<BR> 聞き取り調査の分析は、まずICレコーダーに録音した音声データより逐語録を作成し、それらのデータをもとにコード化、カテゴリー分類等の質的研究の手順に準じて、その要因を分析した。今回、分析の基本として、グランデッド・セオリー(Grounded Theory Approach)の考え方を受けたロング・インタビュー法(The Long Interview)を採用した。<BR>【説明と同意】<BR> 本研究に関する調査協力の依頼に当たっては、倫理上の手続きとして個人情報の保護に関する法律(法律第57号)と「疫学研究に関する倫理指針」(文部科学省・厚生労働省)に基づく同意書を作成し、十分な趣旨の理解と同意を得て実施した。また、インタビュー中の会話の録音についても、事前に確認をとり録音の了解を得た上でインタビュー調査を実施した。<BR>【結果】<BR> 一連の分析手順を踏んだ結果、最終的に事例1では7つのカテゴリーと27個の註釈が得られ、事例2では7つのカテゴリーと25個の註釈が得られた。それらのうち2つの事例に共通するカテゴリーとしては、「楽しみ(やりたいこと)」、「人との交流(役割としての意味合いも含む)」、「役割」、「医療や福祉環境への懐疑と不満(主に家族から)」の4つのカテゴリーに集約された。<BR>【考察】<BR> 2つの事例に共通するカテゴリーより寝たきり状態となった高齢者の生活意欲向上にかかわる要因として特に注目すべき項目は、「楽しみをもつこと」、「役割をもつこと」、「人との交流をもつこと」の3項目であると考えた。これらは、我々の日常生活において極普通に散在する要因で、「その人となり(自分らしさ)」を表すものと解釈されるが、寝たきりの状態や虚弱に陥った多くの高齢者はそれらの要因を一瞬のうちに無くし、生きる道筋を失った状態とも捉えられる。このような状態の反映を生活意欲の低下と表現するならば、この生活意欲を向上させるための要因やきっかけにいち早く気づくことこそ、「寝たきり」の状態となった高齢者を本当の意味で「起こす」のためのストラテジー(strategy)へと通じるものではないかと考えた。それはすなわち、「人としての尊厳」の回復を目指すものともいえる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 寝たきり状態となった高齢者を回復の方向へ導く視点には、生活意欲の向上につながる要因の追究ということが重要であった。それは、単に機能や能力の維持・改善ばかりに目を奪われることなく、対象者が何気なく発信している普段の会話の中から「その人となり(自分らしさ)」をいち早くキャッチする着眼点の重要性が示唆された。
出版者
巻号頁・発行日
vol.[44] 四十三 牢屋敷御普請御修覆地震ニ付骨折候牢屋掛御褒美之部,
著者
阿部 征次
出版者
東京女子体育大学・東京女子体育短期大学
雑誌
藤村学園東京女子体育大学紀要 (ISSN:03898806)
巻号頁・発行日
no.23, pp.p63-68, 1988-03

身体へのフィット性の高いウェイトジャケットを用いて,全力疾走を行い,その時のスピード,ストライド,ピッチの変化を知り,それらとパワー,筋力の関係から,スプリントトレーニングにウェイトジャケットを用いる際の留意点を明らかにすることを目的に本研究を行い,次のような結果を得た。1)スピードは負荷重量を増すに従い低下するが,ストライドよりもピッチの低下が大きい。2)パワーは体重当たりパワーとスピードの相関が認められる。3)等速性筋力は脚の屈曲の筋力とスピードの相関が認められ,とりわけピッチとの相関が高い。4)全力疾走のためのウェイトジャケットの重量は,体重の3%から5%が適当とされているが,本研究では4kgよりも2kgの方が適していると思われる。5)ウェイトジャケットをスプリントトレーニングに用いるには,ピッチを低下させないように努力することにより,パワー向上のみではない効果が期待できるものと思われる。本研究の要旨は日本体育学会第38同大会において発表した。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1229, pp.48-52, 2004-02-16

2003年9月中間決算を説明する席で、全日本空輸(全日空)のIR(投資家向け広報)担当者は、語気を強めてこう言い切った。 全日空が無配に転落したのは1998年。その3年後の2001年4月に就任した大橋洋治社長は、2004年3月期の復配を「公約」に掲げてきた。IR担当者の強い口調は、取りも直さず、その公約実現にかける大橋社長の思いを代弁したものだ。
著者
内田 香奈子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-11, 2018-07-01 (Released:2018-07-04)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究の目的は,日本語版Emotional Approach Coping Scales(EAC)を開発し,特性的な情動焦点型コーピングが気分に与える影響を検討することであった。研究1では,EACについて5週間の期間をあけ2度の回答を参加者に求めた。その結果,EACは感情処理と感情表出の2下位尺度で構成され,いずれも高い信頼性と妥当性が示された。研究2では,日本語版EACとPOMSを用いて情動焦点型コーピングが日常の気分に与える影響を検討した。階層的重回帰分析の結果,感情表出は男女で怒り–敵意を,男性で疲労を高めた。一方,感情処理は男女で活気を高め,男性で疲労を低減した。さらに女性における交互作用も疲労において有意であった。本尺度を使用する際の制限や,今後の展望が論議された。

1 0 0 0 花郎世紀

著者
金大問著 李泰吉譯
出版者
民族文化
巻号頁・発行日
1989