著者
[タカ]橋 克紀
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.47-61, 2008-07

論説(Articles)市行政の警察的役割を、市民はどう考えるのだろうか。本稿は、姫路市が2001年に制定した暴走族対策の「生活安全条例」の審議過程を取り上げ、議会でどのような関心が議論されていたのかを検証し、この疑問を考える一助としたい。姫路市は、当時、警察官僚出身の市長が犯罪からの安全安心を重視し、週末深夜にエスカレートしていた姫路駅前の暴走族を根絶すべく、彼らを煽る「ギャラリー」を規制する自主条例制定に乗り出した。オール与党体制にもかかわらずこの条例案は市議会で強い批判を受け、条例案は一度撤回された。姫路の生活安全条例案は少なからず報道もされ、市民の関心を集めたため、市の役割(福祉政策的な期待が強い)と警察の役割との関係を問い直す一つの機会が生まれたといえよう。しかし、実際の議論は、もっと目に付きやすい部分、たとえば「特攻服」それ自体の規制、若者のエネルギー発散、条文の曖昧さを技術的に解消することなどにばかり向かってしまい、概して福祉的イメージの強い市レベルの行政が司法警察的役割の一部をどう担うのかにまでは議論が及ばなかった。Himeji City was troubled with spasmodic violences by young motor gangs in public spaces, though often minor crimes or misbehaviors. Officials thought that this problem were excited by irresponsible spectators. The mayor, who was once bureaucrat of National Police Agency, introduced the bill that would prohibit those spectators from cheering hot-rodders. Surely this regulation included many problems in view of civil liberty, but catchy superficials (the peculiar costume for hot-rodder in itself, newly constructing practice fields in order to give vent to the young's energy, etc.) dismissed the problematics on redefining municipal police role. This paper reviews its discursive process in 2000-2001.
著者
片山 善博 Yoshihiro Katayama
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of culture in our time
巻号頁・発行日
vol.131, pp.1-16, 2015-03-31

遺族が故人とのつながりを維持することがグリーフケア(特に遺族のケア)にとって重要であるという研究が様々な課題を抱えながらも主流になりつつある.とはいえ,遺族の個人に対する関係は一方的なものである.近年の承認論の研究では,自己と他者との間の承認関係が自己の成り立ちやアイデンティティにとって極めて重要であることが指摘されている.従って,遺族が故人との承認関係を維持するためには,故人が他者の地位にあることが望ましいことになる.遺族ケアの課題として,できるだけ双方向的なつながりを維持できるための故人の他者化が必要である.しかし,故人はいわゆる実在する他者ではない.そこで本論では,どのような他者化が可能なのか,また双方向的なつながりの維持のために何が必要なのかを考察した.精神的な他者化を推進する個別的なケアと同時に,こうした関係を安定的に維持させる社会・文化的な価値の創造が必要であると結論づけた.

1 0 0 0 OA 和歌御会

巻号頁・発行日
vol.[29], 1000
出版者
武庫川女子大学
巻号頁・発行日
2017

終了ページ : 80
著者
長屋 郁子 小川 宣子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.170, 2005

<br><B>目的:</B>日常から地域性を意識した食事をすることで伝統的な日本型食生活が継承され、心が満たされる食生活につながるのではないかと考える。そこで本研究では、地域における伝統的な食生活を把握するため、地域産物や旬の食材を活用した伝統食の伝承が岐阜県の中でも比較的残っている飛騨地域の日常食の特性を調べることを目的とした。<BR><B>方法:</B>調査は地域の特性を地域産物や伝統食の食材料及び調理方法から明らかにするため、日本の伝統的な日常食であるごはん、大豆料理、漬物をとりあげ、飛騨地域の特徴を調べた。調査対象は、飛騨地域の中でも最北部にあり鉱山で発展してきた神岡町の65歳から80歳の男女18名と、北西部に位置し12月から2月にかけての平均気温が神岡町の0.8℃に比べて-0.2℃と低い農山地である白川村の40歳から73歳の男女14名に聞き取り調査を行った。大豆料理は、比較として県庁所在地のある岐阜地域の女性12名にも聞き取り調査を実施した。<BR><B>結果:</B>白川村では日常食のごはんに近隣の山の産物を加えることが多く、栗飯、山菜おこわを食べる家庭がいずれも29%あり、これらは神岡町では食べられていなかった。飛騨地域の大豆料理には、朴葉にのせて焼く朴葉味噌、すがたつまで茹で水分が少ないため保存性が優れているこも豆腐、豆乳を利用したすったて汁といった岐阜地域ではみられない地域特有の調理方法があった。日常的に食べられている漬物は、野菜を切ってから塩で漬ける切り漬が神岡町67%、白川村28%と多かった。また漬物の利用方法として、古くなった切り漬を加熱調理し、煮たくもじや漬物ステーキとして食べる家庭が白川村では神岡町に比べて多く、冬季に漬物を温かくして食べる工夫がみられた。
著者
阪口 正則 村上 忠弘 石川 巧 南村 弘佳
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.108-111, 2015 (Released:2015-04-11)
参考文献数
17

症例は69歳,女性.食後の腹痛および血便を認め,下部消化管内視鏡検査で虚血性腸炎が疑われた.腹部造影CT検査で上腸間膜動脈の起始部閉塞による腹部アンギーナと診断された.造影CT検査では,胸腹部大動脈および腹部大動脈に壁在血栓を伴う拡大と高度の大動脈壁石灰化を認め,また,両側の総腸骨動脈にも高度の狭窄を認めた.手術は,大伏在静脈グラフトを用い,腹部の主要な分枝動脈で唯一起始部から末梢まで狭窄を認めなかった右腎動脈から,上腸間膜動脈にバイパス術を行った.術後,食後の腹痛は消失し,良好な経過を得た.
著者
河田 壽太郎
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山醫學會雜誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.23, no.262, pp.928-934, 1911-11-30 (Released:2011-11-14)
参考文献数
17
著者
中井 検裕
出版者
公益社団法人 都市住宅学会
雑誌
都市住宅学 (ISSN:13418157)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.17, pp.48-55, 1997-04-07 (Released:2012-08-01)
参考文献数
6
被引用文献数
1
著者
日浦 幹夫 織田 圭一 石渡 喜一 前原 健寿 成相 直 牟田 光孝 稲次 基希 豊原 潤 石井 賢二 石橋 賢士 我妻 慧 坂田 宗之
出版者
日本脳循環代謝学会
雑誌
脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌) (ISSN:09159401)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.297-302, 2017

<p>運動介入が脳機能の保持・改善に重要な役割をもつことが疫学および臨床研究により提唱されてきた.運動が脳機能に及ぼす影響と関連する生理学的背景を探索する目的で,PETを活用して有酸素運動による局所脳血流量(regional cerebral blood flow: rCBF)と脳μ-オピオイド受容体系の変化を検討した.oxygen-15-labeled water(<sup>15</sup>O-H<sub>2</sub>O)を用いたPET研究では有酸素運動中に一次運動感覚野,小脳,島皮質などで広範な脳領域でrCBFが増加することが示され,このような変化は局所の神経活動の亢進や周辺の神経受容体への影響を介して運動による神経可塑性の発現のメカニズムに関与することが推測される.<sup>11</sup>C-Carfentanil を用いたPET研究では有酸素運動後に生じるポジティブな気分変化や激しい運動に伴う疲労の発現に辺縁系や下垂体に分布するμ-オピオイド受容体系が関与し,その変化には運動強度の違いや気分変化の個人間差が影響することが提示された.PETを活用した神経画像研究は,運動に伴う脳機能変化のメカニズムに関与する要因であるrCBFおよび神経受容体系の変化を検証するために有用な手法である.</p>
出版者
巻号頁・発行日
vol.[1],
著者
今村 宏 平谷 民雄 内田 勝久 山口 英世
出版者
日本医真菌学会
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.275-291, 1988

ピリミジン基を含む新しい3-ヨードプロパルギル誘導体である rimoprogin の <i>in vitro</i> 抗菌活性を同じ3-ヨードプロパルギル誘導体に属する既存の抗真菌剤 haloprogin およびイミダゾール系抗真菌剤として知られている isoconazole nitrate を対照薬剤として比較検討した結果, 以下の知見が得られた.<br>1) 本剤は広い抗菌スペクトルを有し, 酵母状真菌, 皮膚糸状菌, <i>Aspergillus</i> および類縁菌, 接合菌, 二形性真菌および黒色真菌を含むほとんどすべての病原性真菌に対してのみならず, グラム陽性細菌に対しても低濃度で発育阻止効果を示した. これらの菌群間で本剤に対する感受性を比較すると, 二形性真菌が最も高く, 次いで皮膚糸状菌, <i>Aspergillus</i> および類縁菌, 黒色真菌, 酵母状真菌, 接合菌の順であった.<br>2) 各種真菌に対する本剤の最小発育阻止濃度 (MIC) は接種菌量および培養時間により, 軽度しか影響を受けなかったが, 培地pHによる影響は顕著にみられ, 酸性側で高い抗菌活性を示した. また血清の添加により抗菌活性は低下したが, その程度は対照薬剤に比べて軽度であった.<br>3) <i>Candida albicans</i> および <i>Trichophyton mentagrophytes</i> を rimoprogin 存在下で培養した場合, 2.5μg/ml以上の薬剤濃度では6時間以内に明らかな生菌数の低下が認められ, 本剤が感受性菌に対して殺菌的に働くことが示唆された.
著者
山口 清
出版者
九州産業大学
雑誌
九州産業大学国際文化学部紀要 (ISSN:13409425)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.137-152, 1996-03

幕末期に,洋学者柳河春三は"洋算用法初編"を著し,西洋算術の解説を行った(安政4年)。同書では,アラビア数字を用いて,西洋数学の考え方を基に,筆算による計算四則,比例計算が述べられている。本稿の目的は,"洋算用法初編"のなかで述べられているオランダ語の数学用語{己号とそれらの日本語訳について,同書の解説との関連において考察すること,及びこれらの数学用語・記号が現在の小学校算数教材のどの部分に対応しているかを調べることである。