著者
大上 雅史 松崎 由理 松崎 裕介 佐藤 智之 秋山 泰
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.91-106, 2010-10-25

タンパク質間相互作用 (Protein-Protein Interaction,PPI) に関するネットワークの解明は,細胞システムの理解や構造ベース創薬に重要な課題であり,網羅的 PPI 予測手法の確立が求められている.タンパク質立体構造データ群から網羅的に相互作用の可能性を予測するために,我々は立体形状の相補性と物理化学的性質に基づくタンパク質ドッキングの手法を研究してきた.本研究のプロジェクトの一環として新たに開発した MEGADOCK システムは,高速なドッキング計算を行うための様々な工夫を取り入れており,なかでも rPSC スコアと呼ぶスコア関数は,既存ツールの ZDOCK と比べて同等の精度を維持しながらも約 4 倍の速度向上を実現し,網羅的計算を現実のものとした.本論文では MEGADOCK システムの構成および計算モデルについて述べる.ベンチマークデータセットに適用した結果,従来手法を大きく上回る最大 F 値 0.415 を得た.さらにシステム生物学の典型的な問題の 1 つである細菌走化性シグナル伝達系のタンパク質群に MEGADOCK を応用した.その結果,既知の相互作用の再現をベンチマークデータと同等の精度 (F 値 0.436) で行うことに成功し,かつ生物学的に相互作用の可能性が高い組合せであるにもかかわらず,現在までに報告されていないものとして,CheY タンパク質と CheD タンパク質の相互作用の可能性を示唆した.
著者
岩出 和也 山口 翔
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 社会科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.197-210, 2017

日本のアニメーション産業は,2015年には,市場規模が1兆2,542億円に達するなど,年々拡大を続けている。しかし,市場構造の変化などにより,制作現場には疲弊しており,今後の健全な成長を考える上では課題も多い。 この先,日本的なアニメーション表現の多様性を確保しつつ,世界市場に向けてコンテンツを制作・発信可能な形で制作現場の業務フローを改善していく上では,基本的な制作フローの情報化を業界全体として推し進める必要がある。その上で,課題や改善点についての知見を個別に蓄積するのではなく,業界全体として共有する枠組みも重要になると考えられる。本論文では,アニメーション産業全体の市場構成と整理,制作現場がかかえる課題と情報化による事業効率化の可能性を検討する。
著者
細川 瑠璃
出版者
『年報 地域文化研究』編集委員会
雑誌
年報地域文化研究 (ISSN:13439103)
巻号頁・発行日
no.20, pp.68-89, 2016

Pavel Alexandrovich Florensky (1882-1937), philosopher, priest, scientist and mathematician, showed a unique cosmology in Imaginary points in geometry. He argues that from the viewpoint of the theory of general relativity the cosmos must be closed non-Euclidean space. His conclusion is that the Ptolemaic system, central to the cosmos of Dante's Divine Comedy, is valid. This study addresses the interpretation of Florensky's cosmology, focusing especially on his thought related to mathematics and space. The cosmos, for Florensky, consists of two spheres: the terrestrial sphere, which real number represents, and the celestial sphere, which imaginary number represents. These two spheres are united discontinuously and form the whole. The essential concepts in Florensky's mathematical thought are discontinuity and actual infinity. Under the influence of Nikolai Bugaev(1837-1903), a prominent mathematician in the 19th century, Florensky studied discontinuous function and then applied the concept of discontinuity to various studies beyond mathematics. Florensky argues that the concept of continuity is dominant in every field in the 19th century. However, not all phenomena are explained by continuity and furthermore, discontinuity precedes continuity. Non-Euclidean space is discontinuous on his view. Actual infinity, the concept of which was invented in the set theory of Georg Cantor, is related to discontinuity. While potential infinity is conceived as infinite process, actual infinity, which is larger than any other number, is regarded as a mathematical real existence. Florensky expands the concept of actual infinity into the theological thought and describes God as actual infinity. Florensky's cosmology, which is featured by non-Euclidean space and discontinuity, must be seen as an attempt to overcome the values of the 19th century and to visualize the whole relation between the earth and God, describing God as actual infinity.
著者
月時 和隆 林 三徳 柴戸 靖志
出版者
福岡県農業総合試験場
雑誌
福岡県農業総合試験場研究報告 (ISSN:13414593)
巻号頁・発行日
no.24, pp.130-133, 2005-03

ホオズキ新品種'姫提灯'は、着果率が極めて高い'京築地域在来系統A'と、宿存ガクの形状が良好な'京築地域在来系統B'を交配した組み合わせの中から選抜し育成した。'姫提灯'は宿存ガクの先端が尖り、表面の凹凸が少なく良好な形状をしている。宿存ガクの大きさは5cm前後であり、既存の主要品種'タンバホオズキ'と同等である。下位第6節から第20節の着果率は90%と'タンバホオズキ'よりも高く、着果が優れる。切り花長は'タンバホオズキ'や親系統と同等かやや長く、切り花品質が優れる。
著者
近野 英吉
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.337-351, 1940

竹材の形状及び材積を竹林の施業と竹材の利用とに關聯して論究せんとする。<br> <b>1.</b> 竹材の太さと長さの關係節間の大小配列等が竹の種類により異り,マダケはマダケの形状を具ふる。而して母體内榮養素の多少と温度濕度の適否とが筍の發育を左右し,竹材の形状に多少の變異を生ずる。從つて竹林の完全なる構成を圖つて筍の發育を良好ならしむることは或る程度迄可能である。<br> <b>2.</b> マダケの全長は筍が適當に發育すれば目通周圍の約60倍(7寸竹上)65倍(6寸竹)70倍(5寸竹)あつて,枝下はその中央より2~3節上位にある。全長短く枝下低い竹林に於ては立竹の疎密配置その他手入に注意を要する。<br> <b>3.</b> 竹の節數は大竹に多いが竹材の中部に於ける節間の長さに關係少く,節數の多い竹は主として梢部に於て節間が短縮する。<br> <b>4.</b> 竹材は部分的に大小形状を異にして用途に適不適がある。節間の太さ厚さ配列は順次増減し,太さは最太部位,厚さは初め急に減じ長さの最大部位附近に於てその差甚だ少く,長さの配列は往々不規則で,長さの最大部位附近にその變化が多い。5~6寸以上のマダケ竹材各部の位置及び大さは大體次の如し。<br> <b>イ.</b> 目通高は普通地上第7節間で,その節間の長さ9~10寸・肉の厚さ2分内外。<br> <b>ロ.</b> 中央高は第20節間の上下2~3節間の部位で,目通高に比し1.5~2.5割細く,2.5~4.0割長くして肉の厚さは1.2~1.3分。<br> <b>ハ.</b> 第1枝節直下の節間は疎生と密生とによりその位置異り,中竹は中央高と略一致し大竹は中央高より2~3節上位する。從つてその大さは中央高と略同じか僅に小さい。<br> <b>ニ.</b> 竹材の最太部位は根元を別として普通第10節間附近が上部で以下數節間同大の事がある。5~6寸の中竹はI/4高にも上下し大竹は目通高とI/4高との間にあつてその太さは目通高と同じかそれより1~3分周り太い。<br> <b>ホ.</b> 節間の最長部位はI/4高とI/2高との間I/2高に近く,その長さは目通高節間長の約中竹2倍餘大竹2倍近く大。<br> <b>5.</b> 竹材の材積は大小竹共にマダケ1束の幹材容積は12立方尺締の3/10空洞を除いた實積はそのI/3即ち1/10尺締に近接し,適度に密生して發育の良い竹は容積も實積も多い。普通の施業竹林は年々1町歩實績約50石の竹材を生産することになる。
著者
末弘 由佳理 池田 仁美 Yukari Suehiro Hitomi Ikeda
雑誌
生活環境学研究
巻号頁・発行日
no.2, pp.42-45, 2014-09-01

神奈川県の葉山町に位置するビーチサンダル専門店である有限会社ゲンベイ商店1)が主催する「ビーチサンダルコンテスト」に参加した報告である。今回のコンテストは,「げんべい」と本学武庫川女子大学のコラボレーション企画である。コンテスト会場は西宮阪急(阪急百貨店)2)であり,西宮阪急「誕生祭」5周年『地域で子育て,みんなで子育て』のテーマの下,実施されたものである。学生は『家族愛』をテーマに,「げんべい」で2014年に販売される ビーチサンダルのデザインを行った。本学短期大学部生活造形学科アパレルコース所属の50名がデザイン画を提出し,西宮阪急の来店者による投票の結果,上位3名の作品が商品化され,西宮阪急の子供服売場にて販売された。

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出版者
巻号頁・発行日
vol.29-30,
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュータ = Nikkei computer (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.960, pp.66-68, 2018-03-15

富士通クラウドテクノロジーズは利用者に対し、西日本への移行を促すことに決めた。実は障害前から西日本でもオブジェクトストレージの準備を進めており、提供開始を前倒しした形だ。1月22日から希望者を募り、26日までにユーザーの約2割が西日本に移行し、サ…
著者
モートン ユージン.S
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.69-78,99, 2000-09-10 (Released:2007-09-28)
参考文献数
22
被引用文献数
16 27

コミュニケーションは資源を巡る競争において闘争の代わりをつとめる.コミュニケーションは直接鉢合わせになってしまう危険が無いように他の動物の行動を制御する.メスはつがいの相手になるオスの資質を見定めるためにコミュニケーションを用いる.このように,性選択はコミュニケーションに大きく影響を受けている.音声コミュニケーションの起源は,最初の陸上動物である両生類に今でも見られる.カエルは鳥類や哺乳類と違って,性成熟に達した後も体の成長が続く.大きな個体は小さな個体よりも低い鳴き声を発することができ,闘争すれば強い.両生類では低い鳴き声は他のオスに対しては威嚇的であり,メスにとっては魅力的である.重要なことは,発声のための身体的な構造と音声の持つ機能とが直接的に関連していることである.音声の機能と発声の機構との関連は,人間の言葉のように任意なものではない.鳥類での体の大きさと鳴き声の音程との関係は,どのようにして証明されるのだろうか.体の大きさと音程との関係はより象徴的であり,さえずりを行う鳥の動機を最も良く説明している.鳥は攻撃的なときには低く耳障りな発声を,争いを鎮めようとしたり,おそれているときには高く調子を持った発声を行う.この体の大きさと鳴き声の音程との関係は動機-構造規則モデルと言われる.このモデルは大きさの象徴的意味と動機とを関係づけるとともに,体の大きさと闘争能力という基本的な関係から導き出される.この動機-構造規則モデルは,発生機構の身体的形態と機能との関係を実験するための仮説を立てるのに便利である.ほとんどの鳥の歌のように,長距離のコミュニケーションに用いられる発声は別の問題である,この場合は通常,近くの相手に対する発声ほどには動機は重要ではない.私は,鳥たちが互いの距離をどのように測っているかを説明するために「伝達距離理論」を創り出した.音と音との間の非常に短い時間の間隔を分析する鳥の能力は,音の減衰を知覚するのに役立っている.この減衰とは,歌い手から歌が伝播して来ることによって起こる反響などの変化ではなく,音が球状に広がることによって起こる周波数や振幅の成分変化のことである.彼らは聞こえてきた歌と自分の記憶にある歌とを比較することによって,その音がどの位遠くから伝わってきたかを判断することができる.伝達距離理論は方言や歌のレパートリー,歌の複雑さと同様に,いくつかのグループで歌の学習がなぜ進化したのかを説明する助けになる.