著者
伊東 孝 鈴木 伸治 武部 健一 津田 剛 原口 征人 藤井 三樹夫 鈴木 盛明 小野田 滋 為国 孝敏
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

近年、「ハードな土木」に対し、土木政策や事業決定のプロセスなど「ソフトな土木」を解明することも土木史の重要な課題と考えられるようになった。本研究は、日本の高度経済成長の牽引役を果たしてきた高速道路に焦点をあて、欧米で普及しているオーラルヒストリーの手法を用いて、1)関係者がご存命のうちに、話を聞き、整理し、資料として後世に残すこと、2)あわせて土木史研究に適用できる方法論を確立することを目的としている。本研究成果の概要は、次の通りである。本研究は、土木学会土木史研究委員会オーラル・ヒストリー研究小委員会がおこなった。1)インタヴューの実施及び証言記録の作成と保管本研究では、4箇年の研究期間をとおして、戦後の道路行政の黎明期を代表する3人の技術官僚にインタヴューを実施し、証言記録の作成と保管をおこなった。(1)平成14〜15年度は、高橋国一郎氏(元建設省事務次官・元日本道路公団総裁):通算7回(2)平成15〜16年度は、井上孝氏(元建設省事務次官・元参議院議員・元国土庁長官):通算6回*井上氏は平成16年5月以降、体調をくずされ、11月に逝去された。今回のオーラルヒストリー・インタヴューが氏の最後のお仕事になった。(3)平成16〜17年度は、山根孟氏(元建設省道路局長・元本州四国連絡橋公団総裁):通算10回2)土木史研究におけるオーラルヒストリー手法の構築3人のインタヴュー対象者へのインタヴューをとおして、オーラルヒストリーの方法論構築に向けての内容蓄積と検討をおこなった。そして最終年度に、5冊の報告書(「実践編」3冊と「理論編」2冊)を作成した。それぞれのインタヴューは、「実践編」として3冊の速記録にまとめた。また蓄積したオーラルヒストリーの方法論を「総括編」とし、ワン・デイ・セミナー(16年度開催)の速記録とともに、2冊の「理論編」としてまとめた。
出版者
伊那県
巻号頁・発行日
vol.[初編], 1869
著者
上野 智貴 山本 民次 福岡 浩一
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.67-73, 2022 (Released:2022-03-10)
参考文献数
20
被引用文献数
1

瀬戸内海では, 長期的な窒素・リンの総量規制により, 近年では魚介類の漁獲量低下やノリの色落ちといった貧栄養化問題が指摘されている。対策の一つとして, 下水処理場等事業所からの排水の緩和が行われるようになってきたが, 陸域からの負荷は沖合まで届かない。そこで本研究では, 栄養塩を溶出させることで魚介類を増殖・成長させることを想定し, 実海域で使用できる施肥材を開発することを目的とする実験を行った。原料は完熟発酵鶏糞を主成分とし, これに鉄分と固化剤を加えてプレスした固形の施肥材を作成した。フラスコレベルで溶出試験を行い, 施肥材から溶出するN/P/Fe比が微細藻類の増殖にとって好適な比となるよう工夫した。現場用にサイズをスケールアップした施肥材を用いて溶出試験を行ったところ, 5か月以上の溶出持続性が確認された。以上より, 開発した施肥材が海域において持続的な栄養塩の供給機能を発揮できることを明らかにした。
著者
實川 幹朗
出版者
心の諸問題考究会
雑誌
心の諸問題論叢 (ISSN:13496905)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.27-61, 2009 (Released:2009-07-14)
参考文献数
18
被引用文献数
1

学術雑誌の投稿論文審査(査読)が適切に行われていない問題を検討し、改善策を探ることが本論の狙いである。問題の性格を明らかにするため、不採択となった心理学論文二編の内容と査読所見とを検討した。一編は論理的・形式的議論から、脳とは独立の魂の存在を推論するもの、もう一編は特殊な教育現場における心理療法の事例から、治療論と研究方法の見直しとを論じたものであった。対照的な性格を持つこれらの論文にはしかし、着想の斬新さという共通点があった。査読所見を検討したところ、いずれの論文についても、見解の共通点がほとんどなく、不採択理由のすべては誤解に基づくか、不適切なものであった。心理療法の論文については、不採択と結論しながら理由のまったく挙げられない所見や、自分に分からないことをもって理由とした所見が目立った。また再審査の場合には、前回の所見の指摘を無条件に正しいと見做し、投稿者の反論を考慮せず、指摘を採り入れないことをもって不採択とする傾向も顕著であった。言い換えれば、思い付きによるあら探しと権威主義とが、査読の全般的傾向をなしていた。これらの結果から、少なくとも心理学領域においては、投稿論文査読はふさわしい役割を果たしていないことが、強く示唆された。これはまた、この分野での大学・大学院教員の資質と行動の適格性への疑惑をも惹起する。また隣接する他の分野においても、類似の問題の生じている可能性が示唆される。投稿論文の原則的な全編公開と公開での評価が、解決策となるであろう。
著者
中濵 直之 安藤 温子 吉川 夏彦 井鷺 裕司
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2128, (Released:2022-04-28)
参考文献数
48

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律では、日本国内の絶滅の危険性が大きい生物種について安定的な存続を図るために「国内希少野生動植物種」に選定している。こうした国内希少野生動植物種では、近交弱勢や遺伝的撹乱などの遺伝的な問題を防ぐために保全遺伝学的研究が必要である。これまでに多くの国内希少野生動植物種で保全遺伝学的研究が実施され、またその基盤として遺伝的多様性や遺伝構造、遺伝マーカーをはじめとした遺伝情報が蓄積されてきた。しかし、保全遺伝学的研究の学術論文の多くは英語により出版されたものであり、保全の現場での利用が難しかった。そこで、保全現場における今後一層の活用を目指すため、これまでに国内希少野生動植物種で蓄積されてきた遺伝情報を整理した。 これまでに国内希少野生動植物種で明らかにされてきた遺伝情報を「遺伝的多様性・遺伝構造」、「ゲノム(オルガネラゲノムを含む)」、「遺伝マーカー」、「近交弱勢・有害遺伝子」、「その他」の 5つに区分し、分類群ごとの進捗状況をまとめた。その結果、脊椎動物においては遺伝情報が蓄積している種の割合が多く、また多くの学術論文が出版されていたが、その一方で無脊椎動物においては遺伝情報が蓄積している種の割合とともに学術論文数も少ない傾向にあった。維管束植物においては学術論文数が多かった一方で、指定種数が多いこともあり、種数に対する割合は低かった。 また、近年のハイスループットシーケンシングの隆盛とともにゲノムレベルの手法も使用されるようになり、より安価で大量の遺伝情報を得ることができるようになった。本総説ではこれまでに実施されてきた研究手法について概説するとともに、今後期待される展望についても議論する。

45 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1921年01月19日, 1921-01-19
著者
朴澤 泰男
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.14-25, 2014 (Released:2015-06-16)
参考文献数
30
被引用文献数
2

女子の大学進学率の都道府県間の差を、大学教育投資の便益の地域差に着目して説明する仮説の提起を試みた。地方に大学進学率の低い県が存在する理由は、大卒若年者の相対就業者数の少ない県ほど(相対就業者数は、大卒の相対賃金の高い県ほど少ない)、また、(先行世代の就業状況から期待される)出身県における将来の正規就業の見込み(正規就業機会)の小さな県ほど、(進学率全体の水準を左右する)県外進学率が低いためである可能性がある。
著者
岩本(大久保) 慧悟 竹橋 洋毅 高 史明
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.18229, (Released:2020-01-20)
参考文献数
23
被引用文献数
5

This study developed a Japanese version of the Stress Mindset Measure (SMM-J), which captures individual differences in beliefs on the nature of stress, and investigated its reliability and validity. Study 1 examined the reliability and factor structure of the SMM-J by analyzing survey data of 449 employed adults. The results revealed that the SMM-J was composed of two negatively and strongly correlated factors: harmfulness of stress and usefulness of stress. Study 2 (92 parents), Study 3 (349 undergraduates), and Study 4 (800 employed adults) examined the predictive validity of the SMM-J. The results showed that the SMM-J predicted subjective health and life satisfaction after controlling for the effects of traditional stress factors such as the amount of stress and the coping style. This result is consistent with previous studies. The importance of an appropriate stress mindset is discussed.
著者
山﨑 孝史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2021年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.35, 2021 (Released:2021-09-27)

はじめに「地政学」は20世紀初頭にヨーロッパで誕生し,二度の大戦を経て列強に浸透した.戦後は学知として停滞するものの,その発想は大国の国政術に受け継がれていく.地理思想史や政治地理学の分野では,地政学は欧米を中心に学説史的に再検討され,批判的に再構築される.よって,現代の地政学は戦前からの流れを汲む伝統地政学に留まらず,新しい多様な知の形式を含む.近年日本においては一般読者向けの教養書として「地政学」を冠する書籍が数多く刊行されている.このほとんどは伝統地政学を再参照している.この「地政学ブーム」の中で,発表者も雑誌『現代思想』や『地理』の地政学特集に寄稿し,『現代地政学事典』の編集に参画するとともに,日本学術会議で国際地理学連合と政治との歴史的関係についても講演した.本発表では,こうした「地政学ブーム」に対して日本の地理学がどう向き合いうるのかについていくつかの論点を示したい.国際関係の緊張と学問日本における地政学書の出版は,戦前も戦後も日本をめぐる国際関係の緊張を認知する世論の高まりと関わっていると考えられる.特に2010年代以降の周辺諸国との「領土問題」の緊張は地政学書の出版を促していると推定される.本来,地政学は外交・軍事という国政術に地理的知識を応用しようとする実践的性格が強かったことを鑑みれば,そうした応用への期待が社会的に高まっているのかもしれない.しかし,同時にそれは出版社の利害とも深く関わることは留意されねばならないし,そうした応用への期待は地理学だけに向けられるものでもない.こうした国政術上の要請に大学がどう応えるかが問われたのが,2015年に発足した防衛装備庁による「安全保障技術研究推進制度」をめぐる問題であった.日本学術会議は1950年と67年に戦争や軍事を目的とする科学研究を行わないとする声明を発し,2017年にも過去の声明を継承する旨の声明を出した.日本地理学会も1950年に「世界平和の維持確立に関する決議」を行い,2017年の日本学術会議の声明を受けて,軍事的安全保障研究に関する声明を公表している.この声明は,GISなどの地理的技術や,地政学を含む地理学の研究成果が軍事研究にも応用されうるとし,外部資金による研究が「軍事・戦争のための研究に転化」されないよう会員に注意を促す.応用の困難性本発表は刊行が予定されている日本地理学会編『地理学事典』に寄稿した地政学に関する拙稿をベースとしている.この事典は地政学関連項目を「地理学の応用と現代的課題」という部に置く.何がそうさせ,それは上記の声明とどう関わるのであろうか.発表者は1990年代以降の日本の地理学界においては,伝統地政学については「忘却」が支配的であったと考えている.地政学に関する,戦後の歴史的・批判的検証を正しく踏まえない,肯定的・否定的論評は地理学関係誌にも散見される.また,上述のように,日本地理学会自体が地政学の応用に倫理的懸念を示し,会誌『地理学評論』には地政学はもとより政治地理学の論考もほとんど掲載されていない.これらから,地理学を地政学的に応用する学会の基盤が存在するとは考えられない.そこには日本の地理学に支配的な分析スケールの問題も含まれる.ただし,それは地政学に対する地理学の弱みでは決してない.新しい視座の構築へ世界を国家間の利害が対立する空間と認識する伝統地政学は,単純化された大陸や海洋の配置から国際政治を俯瞰的にとらえる点で「反地理学的」である.綿密な現地調査から地理的現実を実証的に積み上げる地理学は,地域や住民の視点から国家中心的な地政学を相対化できる学問分野でもある.国際関係の緊張や対立の渦中に置かれてきた地域(特に国境地域)は日本にも存在する.発表者がフィールドとする沖縄県は,太平洋の多くの島々とともに,歴史的に大国による地政学に翻弄されてきた.そうした地理的現実の上に,安全保障政策と地域政策との望ましい均衡を模索することは地理学なら可能であろう.19世紀末にクロポトキンは地理教育が民族主義的対立を超える相互理解の手段となると信じ,20世紀末にサックは,地理学に内在する倫理性は,世界の現実に対する大衆の理解を深めることと,それを補完する多様性と複雑性に満ちた世界に価値を置くことにあるとした.この間,世界は戦争を繰り返し,地政学は浮き沈み,今また浮上しつつある.地理学の倫理的価値とその戦後の成果を生かすならば,地政学に向き合う視座はありえよう.本発表では,地政学に向き合う上で,地理学の倫理的価値とその戦後の成果を生かしうる視座について考えたい.
著者
小山 真人 早川 由紀夫
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.133-162, 1996-04-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
50
被引用文献数
17 17

We reveal the detailed syn-and post-caldera eruptive history of Izu Oshima Volcano, Japan, by tephra and loess stratigraphy. Twenty-four tephra layers, which overlie the slope outside the caldera, show that 24 eruptions occurred since the formation of the caldera (about 1, 450 years ago). These eruptions are separated by 10-200 years clear dormant periods, which can be identified by eolian dust (loess) interbedded with tephra layers. The 24 eruptions can be classified into three types : 1) eruption with scoria and ash falls (12 eruptions), 2) eruption only with scoria falls (7 eruptions), and 3) eruption only with ash falls (5 eruptions). While tephra discharge mass of the type 1 is generally large (1.5×1010 to 7×1011 kg), that of the type 2 or 3 is small (0.6 ×109 to 1 ×1011 kg). The 1986 eruption is classified into the type 2. Debris avalanches, which occurred just before the caldera formation and covered almost all of the Izu Oshima island, demonstrate that the present caldera wall was formed by slope failure of an old edifice. The tephra-discharge stepdiagram, which shows a relationship between time and cumulative discharge volume / mass of magma, shows : 1) the average tephra-discharge rate is constant (92 kg/ s before the N1.0 eruption and 25 kg/s after the N1.0 eruption), showing an abrupt decrease of the rate at about the time of the N1.0 eruption, which occurred about 900 years ago and was the most voluminous eruption for the past 1, 450 years, 2) both before and after the N1.0 eruption, the type 1 eruption shows volume-predictability, that is, the discharge volume / mass of a next type 1 eruption can be predicted, 3) a type 1 eruption should occur sometime in the future again, and when it occurs, the discharge mass of tephra should attain to as much as 2×1011 kg or more.
著者
商業興信所 編
出版者
商業興信所
巻号頁・発行日
vol.第23回(2/2), 1915
著者
高木 浩光
出版者
情報法制学会
雑誌
情報法制研究 (ISSN:24330264)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.78-102, 2020 (Released:2020-06-05)

The discussions made in the revision of the Act on the Protection of Personal Information in 2015 revealed the issues that could not be achieved with the amendment, and highlighted that a number of unresolved problems remain in current legislation. One of the issues that could not be achieved is that it was not realized despite being understood that it was necessary to include individual behavioral data recorded with device identifier as the subject of protection under the Act. And the unresolved problem with current legislation is, for example, that the interpretation of the sentence “can be easily matched with other information” in the definition of personal information has not been clarified. This series of papers attempts to propose a direction to solve the remaining issues for the next revision of the Act. Specifically, by focusing on the difference between “personal information” and “personal data”, by clarifying the difference in inter pretation between the sentence “can be easily matched with” and “can be matched with”, we aim to unify only the provision on “personal information file” in the private sector and the public sector.
著者
井上 純一
巻号頁・発行日
2004

2004年度に工学部情報工学科3年生を対象にして開講された講義「グラフ理論」の講義ノートです。前提とする数学的な知識を必要とぜずに理解できるように作成しました。多くの例題、練習問題を含み、それらの解答を出来る限り平易に説明してあります。なお、当講義は新カリキュラムに移行する2007年度以降は開講されませんが、アルゴリズムの計算量評価や最適化問題と絡んだ場合の数の数え上げ等の問題にグラフ理論を用いたい場合、グラフ理論の基本的な部分を手早く学びたい際には有用なのではないかと期待しています。
著者
秦 正樹
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.45-55, 2016 (Released:2019-12-01)
参考文献数
34

本稿は,18・19歳の新有権者における政治関心の形成メカニズムについて,サーベイ実験を通じて明らかにした。若者の政治行動に関する先行研究では,主として政治的社会化理論を背景に議論される。しかし先行研究では,初期社会化と後期社会化の効果を独立に検証するがゆえに,各社会化の相互の影響については明らかにされていない。そこで本稿では,初期社会化が含意する政治規範の伝播と,後期社会化における政治利益の追及に関するシナリオを用意し,それぞれの情報が,新有権者(若年層)と既存有権者(年長層)に与える影響を明らかにすべくサーベイ実験を行った。実験結果より,新有権者は政治規範にのみ,逆に既存有権者は政治利益にのみ反応して政治関心を高める傾向が示された。以上の分析結果より,新有権者は利害に関わらず,政治システムそのものの在り方に関心を向ける傾向にあることが示唆された。