著者
石井 康夫
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.19-30, 2007

It is recognized that ancient masks of Japan used for playing Noh were endowed with various facial expressions, meaning that manifold faces with agony, sadness, calmness, indignation, or pleasure are immanent in one mask. As for performing arts played in the Medieval Period of Japan, it is supposed that they were separated from Shinto rituals and independently developed during this era. People who engaged in those performing arts belonged to the class of humble people. Performing includes implication of purifying "impurity" which existed in birth and death, blood and decay, plague, or poverty, all of which are associated with everything of human life. Those humble people as performing artists wore clothes of monks as a lower religious order, meaning that they were not ordinary people who were never able to purify impurity. Purification was also involved in the activity of shamanism, including traditional Japanese dance. The dancers of shamanism attained a state of trance which expressed the words of Gods, which led to the primitive style of playing Noh. In the Medieval Period, as agricultural techniques developed, the level of people's lifestyle improved. A new type of Buddhism which parted from that belonging to the aristocracy spread into the people's spirit, encouraging people's economic and political power. In the Muromachi era, art theory was sophisticated through Japanese songs, tea-party, and pictures, particularly Indian-ink drawings. Yugen (subtletly), the philosophical idea of expression, was applied to arts, which became the core art theory of this era. This art theory was affected by another branch of Buddhism, that is, Zen. The charm of refined simplicity was promoted by religious meditation that was the essence of Zen thought. Particularly the Indian-ink drawings were art works reflecting the quiet precinct of poetical sentiment and philosophical meditation. While Kanami and Zeami established the foundation of Noh, the masks were mutually affected by other ancient masks which had been used in divine, religious rituals in local areas. The artistry of ancient masks implies the incantatory divinity which was related to the subtle profundity of the art spirit of this era. Consequently, the performing arts were supported by religious incantation which yielded the fundamental creativity of the Medieval Period.
著者
渡部 茂 大西 峰子 今井 香 河野 英司 浅香 めぐみ 五十嵐 清治
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.81-85, 1993-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
16

小児の食物咀嚼に唾液がどの様に関与しているかを知るために,食物咀嚼時間,および食物咀嚼によって分泌される唾液量について検討を行った.使用した食物はクッキー,タクアン,ソーセージ,マッシュポテト,リンゴ,ライスの6種である.5歳児で健全乳歯列を持つ男女各10人に対し実験を行った.唾液分泌量は,食物を通常通り咀嚼させ,嚥下の時期がきたら嚥下させず,あらかじめ計量してあるビーカーに吐き出させ,この重量から始めの食物の重量を差し引くことによって求めた(Chewing spit法).その結果,食物10gに対する平均の咀嚼時間はクッキーが最も長く(124.2±100.6秒),最も短いのはライス(32.6±19.9秒)であった.この10g咀嚼時間は始めの食物の水分量との間に負の相関がみられた(γ=-0.85,P<0.05).これは小児の食物咀嚼時間に食物の水分量が何らかの影響を与えていることを示唆するものと思われた.唾液分泌量に男女差はみられなかった.6種類の食物による平均唾液分泌量は3.6±2.7ml/minであった(クッキーが最も多く,ライスが最も少なかった).しかし食塊を吐き出した後,口腔内に食渣として残った食物量の平均値は13.7±6.4%であったので,今回得られた唾液分泌量の値は実際より若干下回るものと思われた.
著者
石田 昭夫 上野 友美
出版者
Japanese Society of Microbial Ecology · The Japanese Society of Soil Microbiology
雑誌
Microbes and Environments (ISSN:13426311)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.67-72, 1996-12-31 (Released:2009-10-05)
参考文献数
10

非好塩性細菌である大腸菌(Escherichia coli ATCC-9637)を用いて,海水環境下での菌の増殖及び耐塩性誘導とその保持について,天然海水の代わりに組成成分の明確な人工海水を使用し検討した。2.5倍濃度の人工海水に酵母エキスを加えた培地では,この大腸菌株はほとんど増殖できないが,通常濃度の人工海水であれば十分に増殖できることが分かった。さらに,通常濃度の人工海水に酵母エキス(1%)を添加した培地で,30分間前振盪処理をすることによって,無処理では増殖の観察できない2.5倍濃度の人工海水中でも菌増殖が可能となる耐塩性が誘導された。このような耐塩性の誘導には,培地の人工海水濃度が通常の1/2~1付近が最も効果的であること,さらに酵母エキスを必要とすることが分かった。このことは,淡水性の大腸菌が河口周辺または海水環境下で酵母エキスのような有機物の存在があれば,耐塩性が誘導され,より高濃度の塩分環境に適応出来ることを示唆している。誘導された耐塩性は,有機物なしでも人工海水中に低温下で菌体が保存された場合は,少なくとも2週間はほぼ完全に保持されそれ以降次第に消失することが分かった。耐塩性の保持に有効な人工海水の成分を検討したところ,浸透圧を維持するNaClとMgイオン及びCaイオンの共存が必要であることが分かった。一方,純水中で菌体を保存した場合は,耐塩性は1週間でほぼ消失したが,平板培養法で観察した生菌数はわずかの減少しか見られないことから,耐塩性の消失と菌の死滅は別個の機構によると考えられる。
著者
高月 義照
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 開発工学部 (ISSN:09177612)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.53-75, 2011-03-31

およそ半世紀前までは,多くの人々が文学作品や映画などからいろいろな知識を吸収したものであった.ところがマンガ文化の普及とともにそうした文芸に代わってマンガが若者たちの主要な情報源になってきた.その意味で,マンガが現代の文芸に成長しているのである.文芸になったばかりでなく,マンガ文化は,今や世界各地に輸出され,多くの人たちに読まれ,またマンガから派生したコンテンツとともに「MANGA」は今や世界共通語となっている. このように,マンガが文芸へと成長し,世界に誇る日本を代表する文化の一つにまでなりえた秘密はどこにあるのか.その秘密の鍵はどこにあるのか,それを明らかにするのが本論文の目的である. その秘密を解く最大の鍵は,マンガにおける表現技法の進化にある.つまり,この半世紀の間に表現技法の上で様々な工夫が加えられ,進化を遂げてきたことによって,それまで子供の娯楽の対象でしかなかったマンガが大人の鑑賞と読書に十二分に値する文芸に成長してきたというのが私の考えである. それを論証するために,マンガの構成要素である「絵」と「文」と「記号(オノマトペ)」の3 つのそれぞれの表現技法にどのような進化があったのかを明らかにする. 「絵」については,イメージ重視の繊細な描写と精密な描写の進化があり,それに「コマ割り」の多様化によって心理描写が可能となった.また「文」についても「吹き出し」のパターン化と相俟って文字そのものによる感情表現が可能となった.さらに「記号」の多様化と多用によっていっそうダイナミックな表現が可能となったことなどが主な内容である.

45 0 0 0 図解科学

出版者
朝日新聞社
巻号頁・発行日
vol.(10月號), no.20, 1943-10

45 0 0 0 OA 側頭骨の外傷

著者
小池 正人
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.570-572, 2000-12-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
5
著者
武田 雅哉 濱田 麻矢 越野 剛 加部 勇一郎 田村 容子 向後 恵里子 藤井 得弘
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、中国における「乳房」の表象を、中華圏・ロシア・日本の各地域における表象と比較し、非西欧圏・社会主義圏における「乳房」イメージの生成、交流、変遷について明らかにするものである。分析の中心となるのは、19世紀から20世紀にかけての画報(絵入り新聞)・連環画(絵物語)・ポスターなどの図像資料、および新聞記事や文学などの文字資料である。研究成果は、株式会社ワコールの主催する「乳房文化研究会」の定例研究会「アジアにおける乳房観 Part3~中国人女性の身体意識と文化・ファッション~」において発表したほか、書籍として刊行予定である。
著者
Yasuhiro Ito Akira Miyauchi Minoru Kihara Yuuki Takamura Kaoru Kobayashi Akihiro Miya
出版者
(社)日本内分泌学会
雑誌
Endocrine Journal (ISSN:09188959)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.399-405, 2012 (Released:2012-05-31)
参考文献数
29
被引用文献数
10 41

Age is an important prognostic factor in papillary thyroid carcinoma (PTC). In this study, we investigated the difference in prognosis of 7 subsets of PTC patients without distant metastasis at presentation or a history of radiation exposure (20 years or younger, 21-30 years, 31-40 years, 41-50 years, 51-60 years, 61-70 years, and older than 70 years). The lymph node recurrence rate was high in patients 20 years or younger and those older than 60 years. Distant recurrence and carcinoma death rates significantly elevated in patients older than 60 years. The incidence of significant extrathyroid extension markedly increased with age, although that of large node metastasis or extranodal tumor extension did not differ much among the 7 subsets. With the Kaplan-Meier method, lymph node recurrence rate was poor in patients 20 years or younger and in those older than 60 years. Poor distant recurrence-free and cause specific survivals of patients older than 60 years were identified in the series of PTC patients with and without these aggressive features. It is therefore suggested that 1) Lymph node recurrence rate was high in patients 20 years or younger and those older than 60 years and 2) prognosis, including distant recurrence-free survival and cause-specific survival, of patients older than 60 years was poor regardless of clinicopathological features of PTC at initial surgery.

45 0 0 0 OA 日本憲法要論

著者
佐々木惣一 著
出版者
金剌芳流堂
巻号頁・発行日
1932
著者
久保田 雄大
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100286, 2015 (Released:2015-04-13)

赤石山脈を通過するリニア中央新幹線のトンネル建設は、史上最大の環境破壊である。東京—名古屋間で約250 kmのトンネルを掘り、残土の量は6200 m3にのぼる。通気口、非常坑口もあちこちに掘られ、とてつもない範囲で環境に影響が出る。 その中でも一番の渦中にあるのは大鹿村だ。南アルプスに抱かれるような谷間集落が点在するこの美しい村は、過去50年間人口流出に悩まされて来たが、いま大鹿にのこって住んでいる人々は、不便な中にも辺境の村で暮らす幸せを持っている。移住者も増え、200人とも300人とも言われている。 大鹿村は10年以上リニアトンネルの掘削工事に悩ませることとなる。残土運搬ダンプの台数は、最大一日1700台という数字が示された。トンネル付近の沢では50~80%の水量低下、生活用水の影響など、アセスメントで示されたものだけでも生活に相当のダメージを与える。「リニアによるメリットは、大鹿村には、何も無い」。住民も、村役場も、JRでさえもこのことを認めている。 住民は、様々な方法で要望を伝えて来た。パブコメで。役場を通じて。環境アセスメントの手続きにのっとり、県知事意見書経由で。JRは、しかし、一度たりもまともな説明はなく、現場で工事が次々と始まっているのが現状である。 10月に国交省の着工認可が出て、工事に関係する東京-名古屋間の市町村すべてで、すぐに説明会が始まった。2014年11月10日JR東海が大鹿村で開いたリニア中新幹線の事業説明会には約300人の住民が集まり、質疑応答は延長に延長を重ね2時間半に及んだ。工事への理解を求めるJR東海に対し、住民からは「リニア計画は白紙に戻すべきだ」「山に手をつけなければ失われる命(山、水、動植物)はない」「風景は一度失ったら取り戻せない」など根本的な反論が相次いだ。今までJRが説明責任を果たして来なかった不満も爆発した。JRは「地元との合意がなければ、着工できないとおもっています」という言葉を繰り返した。議論はなく、結局は平行線に終わった。 11月下旬、JRは地区単位の説明会を行った。それも骨抜きの内容で「今後、詳しく説明します」に終始し、地主と直接交渉をし、集落の至近距離の土地を借り上げ、工事を着手している。 JRとの合意形成に住民が関わる最後の場として、大鹿村では、他の町村に先んじて「対策委員会」がつくられたが、突如「着工ありき」議論しかしてはいけないことになり、残土置き場をどこにするか、JRが議論するダンプの通行道ルートどの道にするかなど具体的な妥協案を住民がだしていくことが求められた。JR+政府⇒役場⇒住民という力でねじ伏せて行くやり方への不快感が、「対策委員会」メンバーの住民や村会議員からも聞こえてくる。 南アルプスを貫くトンネル工事や、残土処理に関しては、地元在住の専門家達が最も危険を警告していることである。世界でも造山運動が最も活発な南アルプスの掘削と、断層段丘である伊那谷での残土処理は、最近頻発する集中豪雨による災害の危険と隣合わせだ。国交省自身が、伊那谷のほとんどの場所が深層崩壊の危険地に指定しているので、矛盾している。アセスでは残土処理に関してはすっぽり抜けていて、地域に処理の方法を考えさせようとしている。責任を回避しようとしているように感じられる。自民党色の強い自治体では大量の残土で土地を造成する計画を既に進めているところもある。
著者
大津 雄一
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.98-102, 2000-11-10
著者
野村 祐基 磯村 太郎 板井 陽俊 安川 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIS, スマートインフォメディアシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.575, pp.7-12, 2007-03-01
被引用文献数
6

人の足音は歩き方や履物の種類,床面などの環境によって違いが現れる.足音を用いて個人を特定することができれば,セキュリティシステムの一環への利用が期待出来る.他にも,左右の足音のばらつきや歩き方を分析することにより,骨格のバランスや健康状態の推定に利用できる可能性がある.このように,足音の識別が可能となれば,様々な分野への応用が考えられる.歩行足音を用いた個人識別に関する研究は幾つか紹介されているが,従来の研究では特徴量抽出を中心に議論されている場合が多い.歩行足音は音声等と同様に時間変化する信号であり,足音が継続する時間長は非線形に伸縮すると考えられる.本稿では,収録した歩行足音に短時間フーリエ変換を施し,周波数成分のコサイン距離の総和をDPマッチングで求めるという手法を利用して個人識別を行った結果を示す.