- 著者
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新井 誠
- 出版者
- 日本選挙学会
- 雑誌
- 選挙研究 (ISSN:09123512)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.1, pp.81-93, 2018 (Released:2021-07-16)
公職選挙法は,禁錮刑以上の受刑者の選挙権を制限しているが,これは「成年者による普通選挙を保障する」日本国憲法15条3項との関連において正当化されるのか。近年,これに関連する訴訟がいくつか提起され,それに対する判決が出されている。本稿は,こうした受刑者の選挙権制限をめぐる裁判所の判決動向とその検討を行う。これについてまず,選挙権制限と憲法との関係を示す。その後,在外国民の選挙権(行使)の制限を違憲とした最高裁平成17年判決と,その判断枠組みに関するその後の影響を踏まえつつ,近年見られた受刑者の選挙権制限に関する2つの訴訟(大阪訴訟,広島訴訟)の地裁判決,高裁判決を概説,分析する。そして,それらを比較検討する過程で,特に最近示された広島高裁判決の論理的問題について検討する。以上をふまえて受刑者の選挙権制限を論じるにあたっての今後の課題を示す。