著者
岩田 具治 田中 利幸 山田 武士 上田 修功
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J92-D, no.3, pp.361-370, 2009-03-01

分布が時間的に変化するデータが与えられたとき,最新データを高い精度で予測するためのモデルの学習法を提案する.提案法では,最新データに関する期待誤差を近似するように,時刻に応じてサンプルに重みを付ける.過去のサンプルも重みを付けて学習データとして用いることにより,頑健なモデル学習が期待できる.提案法では,時間発展をモデルに組み込む必要はないため,時間を考慮しない既存のモデルを,分布が変化するデータに容易に適用することができる.人工データ,及び,購買データを用いた実験により,提案法の有効性を示す.
著者
鍜治 伸裕 福島 健一 喜連川 優
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J92-D, no.3, pp.293-300, 2009-03-01

テキストマイニングでは,自然言語処理分野の基礎技術である形態素解析がモジュールとして利用されることが多い.しかし,ウェブには口語体のテキストが多く,新聞記事のような整ったテキストを対象としてきた自然言語処理技術では,十分な精度で解析を行うことは難しい.本論文では,形態素解析の精度低下は「ググる」などの片仮名用言が一因となっていることに着目し,それを大規模なウェブテキストから自動獲得する手法を提案する.
著者
加藤 芳秀 江川 誠二 松原 茂樹 稲垣 康善
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J92-D, no.3, pp.417-427, 2009-03-01

本論文では,言語構造を活用した用例文検索手法を提案する.本手法では,クエリとしてキーワード系列を受け取ると,単純にキーワードにマッチする文を検出するのではなく,出現するキーワードが依存関係(単語の修飾・被修飾の関係)にある文を検出し,キーワードが形成する依存関係のパターンに従って文を分類する.依存関係のパターンは自動的に同定されるため,従来手法のようにユーザが構造的なクエリを作成する必要はなく,言語構造を活用した検索を容易に実行できる.被験者実験を通じて,提案手法が,ユーザの必要とする文を高い精度で分類できることを確認した.
著者
吉川 雅博 三河 正彦 田中 和世
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J92-D, no.1, pp.93-103, 2009-01-01

本論文では筋電義手を制御するための,筋電位を利用して意図する手の動作をリアルタイムで識別する手法を提案する.本手法では特徴量に積分筋電位信号と筋電位信号のケプストラム係数を用い,サポートベクターマシン(SVM)により学習と動作識別を行う.SVMは様々なパターン認識問題に有効であることが分かってきているが,筋電位を利用した動作識別においても有効かどうかは明らかになっていない.8名の被験者によるオフライン動作識別実験の結果,SVMを用いた提案手法は線形判別分析,k-最近傍法,ニューラルネットワークを用いた手法よりも優れた識別性能を示した.また,リアルタイム動作識別実験を行った結果,動作識別が精度よく行われ,動作開始タイミングに遅れがなく応答性がよいことが示された.
著者
竹内 雄一郎 杉本 雅則
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J90-D, no.11, pp.2981-2988, 2007-11-01

ユーザの位置に応じたサービスを提供する街案内システムは,GPSの普及に伴い次第に広く利用されるようになってきている.しかし既存のシステムはユーザの現在位置に近い店やレストラン等の情報を返すのみであり,ユーザの好みを自動的にくみ取り,各々のユーザに合わせた細やかなサービスを提供できるシステムはこれまで存在しなかった.そこで本論文では,オンラインショッピングサイト等で広く利用されている商品推薦の手法を実世界の買い物に適用し,それぞれのユーザの好みに合った店を推薦する機能をもった街案内システムを提案する.システムがユーザの好みを知る過程では,新たに開発されたplace learningアルゴリズムが利用されている.東京都内で行ったシステムの評価実験から,我々のplace learningアルゴリズムが効果的にユーザの行動を学習できることが明らかになり,システム全体のアプローチの有効性を示唆する結果が得られた.
著者
井原 雅行 金田 洋二 上野 圭一 金山 英明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J82-A, no.5, pp.717-725, 1999-05-25

本論文では,ユーザの潜在的好みを推定する手法を提案する. 同手法では,ユーザ本人のアクセス履歴に加え,好みの似ている他ユーザ(=類似ユーザ)を探し,そのアクセス履歴も活用する. そのため,ユーザ本人が未アクセスの情報集合の中に埋もれていて潜在的好みに合致する情報を推薦提示できる. 本推定手法は「直接的類似ユーザ探索手法(SUSM:Similar-User Search Method)」と 「間接的類似ユーザ探索手法(ISUSM:Indirect Similar-User Search Method)」から構成される. SUSMはユーザ本人と他ユーザのアクセス履歴を比較し,共通にアクセスされた情報が最も多い他ユーザを探す手法である. ISUSMはSUSMにより探し出された類似ユーザの情報を用いて間接的に類似ユーザを探す手法である. 本手法を音楽検索システムに適用し,潜在的好みに合致する情報を類似ユーザのアクセス履歴から探して推薦曲とした. 実験の結果,ユーザ本人のアクセス履歴のみから推薦曲を選ぶ場合と比較して,提案手法の場合はユーザ本人の好みに合致する推薦曲(=有効推薦曲)が2倍以上に増加することを確認した.
著者
服部 正典 長 健太 大須賀 昭彦 一色 正男 本位田 真一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.J86-D1, no.8, pp.543-552, 2003-08-01

ユビキタス環境において状況依存型のコンピューティング環境をすることを目的とした「ユビキタスパーソナライズエージェント」について述べる.本技術はユビキタス環境において収集が可能となる様々なユーザ関連データやイベント情報からユーザの状況を自動認識する「状況認識エージェント」とユビキタス環境に存在する各種デバイスとサーバシステム間でパーソナライズに関する処理の適切な分散を実現する「軽量知的モバイルエージェント」によって構成される.本論文では特にモバイルエージェント適用の効果に関して,実証実験を通した評価を実施することでその有効性の確認と考察を行う.
著者
青江 順一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09135713)
巻号頁・発行日
vol.J71-D, no.9, pp.1592-1600, 1988-09-25

キー検索の応用において,あらかじめ基本的キー集合を構築しておき,後に使用者がキーを適宜追加して拡充させる場合が多々ある.このようなキー集合に対するキー検索法を準静的検索法と呼ぶ.本論文ではこの準静的検索法に適したディジタル検索法を確立するために,複数の静的なキーのパターンマッチングに利用されていたデータ構造(ダブル配列と呼ぶ)を拡張する.本拡張法では,ディジタル検索木において分岐なしに終端のノードまで連続する遷移列をダブル配列とは別のデータ構造TAILにストリングとして格納する.そして,このダブル配列とTAILを使ったディジタル検索の検索,追加,削除アルゴリズムを提案する.キーの長さをk;ダブル配列上で冗長に定義される状態番号数をm;入力記号の種類をeとするとき,検索,削除,追加の最悪の計算時間がそれぞれO(k),O(m),O(m・e+e2)となることを示す.また,1,000個以上のキー集合に対する種々の実験結果から,このmはダブル配列に定義されるべき全状態数に対して,1パーセント以下の小さな値となることがわかった.
著者
森 友則 朝香 卓也 高橋 達郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J92-B, no.1, pp.54-68, 2009-01-01

Unstructured型P2Pネットワークでは,オーバレイネットワークの隣接ピア数(次数)分布やコンテンツのリクエスト数分布がべき乗則に近い性質をもつことが報告されている.このUnstructured型P2Pネットワークでは,高次数ピアに負荷が著しくかかってしまうこと,低人気コンテンツがネットワーク上から消滅してしまうため,ネットワーク全体のヒット率が低下してしまうといった問題がある.これらの問題に対し,キャッシュ置換えや複製配置の観点から解決を図った方式等が提案されている.しかし,キャッシュ置換えでは素早くコンテンツを広めることができない,複製配置では高負荷がかかるといった問題がある.本論文では,このような問題点を解決するためキャッシュ置換えと複製配置を組み合わせた,新たな複製配置の方式を提案する.本方式では隣接ピア数に応じて各ピアがそれぞれ異なる複製配置を行うことで,P2Pネットワーク全体としてヒット率を向上させながら隣接ピア数の多いピアにかかる過剰な負荷を隣接ピア数の少ないピアへ分散させることができる.また,本論文ではシミュレーションによる評価を行い,提案方式の有効性を示す.
著者
田端 利宏 谷口 秀夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J92-D, no.1, pp.12-24, 2009-01-01

本論文では,複数プロセスの実行における多重仮想記憶の問題点を解決するために実現したヘテロ仮想記憶について述べる.ヘテロ仮想記憶とは,多重仮想記憶を拡張し,一つの仮想記憶空間内に0個以上のプロセスが存在できる機能,プロセスが仮想記憶空間間を移動できる機能,及び任意の仮想記憶空間にプロセスを生成できる機能を実現したものである.また,ヘテロ仮想記憶を,多重仮想記憶機構をもつTender オペレーティングシステムに実現する手法について述べる.最後に,Tender 上で,HVSの有効事例を明らかにするために行ったOS機能の評価結果,及びApache Webサーバでヘテロ仮想記憶の機能を利用するための実装方式とその評価結果について述べる.評価の結果,ヘテロ仮想記憶の機能を活用することで,Webサーバの応答時間を1%~6%程度短縮できることを確認した.
著者
清水 拓也 土方 嘉徳 西田 正吾
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J91-D, no.3, pp.538-550, 2008-03-01

現在,商用Webサイトで利用されている推薦システムの多くは,協調フィルタリングを用いている.従来の協調フィルタリングによる推薦方法は,推薦の精度を向上させることに重点を置いて開発されてきた.そのため,既に知っているアイテムが多く推薦されるという問題があった.この推薦は,好みのアイテムをリストアップしてもらうことだけを考えたときには良い推薦といえるが,ユーザの満足度を考えたときには発見性の欠如のために必ずしも良い推薦とはいえない.本研究では,ユーザがどのようなアイテムを知っているかという情報をユーザから獲得し,この情報を用いたいくつかのアルゴリズムを提案する.これらのアルゴリズムは,ユーザの知らない好みのアイテムがどれだけ推薦されるかを示す特性であるNoveltyを向上させることを目的としている.本研究では,ユーザがどのようなアイテムを知っているかという観点でのユーザ間,アイテム間の類似度を計算し,ユーザが知らないであろうアイテムを推測する.この方法と従来の嗜好に基づく協調フィルタリングを組み合わせることで,ユーザが知らない好みと思われるアイテムを推薦する.
著者
井上 光平 浦浜 喜一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J83-D2, no.3, pp.957-966, 2000-03-25

共起関係行列すなわち個体と項目の共起関係の表に基づいて個体及び項目をファジークラスタリングする方法を提案する.ここで用いる方法は固有値問題に帰着させるグラフスペクトル法と呼ばれる方法の一種であり,逐次にクラスタを抽出する.類似度行列に基づく方法を共起関係行列に応用し,階層的ファジークラスタリングにも拡張する.本方法では個体のクラスタリングと同時に項目のクラスタ情報も得られる.本クラスタリング法の応用例としてキーワードによるデータ検索を挙げる.クラスタリングは大域的なデータ構造をある程度抽出しているので,Latent Semantic Indexing法のように個々のデータのノイズに頑健な検索が行える.ファジークラスタリングはハードクラスタリングでは落ちてしまう細かい情報も保持するので個体レベルの検索も行える.
著者
石井 抱 石川 正俊
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J81-D2, no.8, pp.1920-1926, 1998-08-25

直線や円などの特定の形状に基づく画像特徴は,環境に対応したロボットの視覚制御を行う場合に有効なものであり,ハフ変換などのアルゴリズムの高速化が重要となる.特に,従来のビジョンシステムの限界であったビデオ信号(30Hz)を大幅に上回る高速なフレームレートを実現する超並列・超高速ビジョンチップの開発が進むにつれ,画像のフレームレートの高速性を生かしたアルゴリズムが実現可能となる.本論文では,フレームレートが高速なビジョンの特徴を用いることにより単純化された直線抽出法を提案し,超並列・超高速ビジョンチップシステム上においてμsオーダで高速に処理可能であることを示す.
著者
広田 裕 川島 英之 梅澤 猛 今井 倫太
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J89-A, no.12, pp.1090-1103, 2006-12-01

本論文は,複数のアプリケーションが共通参照可能なセンサネットワークの設計モ デルとしてセマンティックセンサネットワークを提案する.センサからのデー タは単なる数値の時系列であり,数値のみから意味のある情報を引き出せない. センサと物体の取付け関係のもとで解釈して初めてデータが意味のある単位と なる.セマンティックセンサネットワークは,センサと物体の取付け関係 を管理し,メタデータとセンサデータの対を環境記述の最小単位とする.また, 論理表現に基づく推論規則をもち,物体同士や物体と環境との関係を記述する. 環境記述は時系列データとして蓄えられ,アプリケーションに提供される.特 徴的な点は,物体に関するクラス定義をもち,センサと物体の取付け関係を インスタンスとすることで,物体を中心とした世界モデルをセンサネットワー ク上に構築できることである.実装例として,実世界指向メタデータ管理シス テムMeTを構築した.RFIDタグを用いて物体とセンサの取付け関係を拾得し, クラスからインスタンスの生成を可能にした.更に,アプリケーションとし て知能ロボットとGUIを用意しMeTの動作を検証した.
著者
岡田 将吾 長谷川 修
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J91-D, no.4, pp.1042-1057, 2008-04-01

本研究では,オンライン教師なし学習手法であるSelf-Organizing Incremental Neural Network (SOINN)を用いて各状態の出力分布を自己組織的に近似可能な時系列データの学習モデルを提案する.提案手法は従来手法であるストキャスティックDP法を拡張した新規の手法である.ストキャスティックDP法では各状態を一つの多次元正規分布で近似しているのに対し,提案手法では各状態の出力分布がSOINNによって自己組織的に近似される上,各状態の出力分布が詳細に近似されるため,時系列データの頑健なモデル化が可能となる.提案手法の有効性を検証するために,動画像から得られる動作及び音素を用いた認識実験を行った.HMM (Hidden Markov Model)及びストキャスティックDP法と認識精度を比較することで提案手法の有効性を示す.
著者
相原 恒博 大上 健二 松岡 靖
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J74-D2, no.10, pp.1486-1487, 1991-10-25

人間の顔を識別する特徴パラメータとして,横顔の輪郭線をP形フーリエ記述子で表し,識別に有効な係数の個数を実験的に求めた.横顔輪郭線の4個のフーリエ係数で,31人の横顔認識が100パーセント正しく行えることを確かめた.
著者
安在 大祐 原 晋介
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J91-B, no.6, pp.666-676, 2008-06-01

センサネットワークでの重要なアプリケーションの一つにセンサノードの位置推定やトラッキングがある.センサネットワークにおける位置推定法として受信信号電力による位置推定法が提案されているが,マルチパスフェージングの影響を強く受ける実環境ではその位置推定精度は低いといった問題がある.そこで,本論文は,従来の受信信号電力を用いた位置最ゆう推定法の推定精度を向上させ,更に,同時にノードの方向も推定する複数送信アンテナを用いた位置・方向推定法を提案する.また,様々な室内での実験による性能評価を行い,本提案法が実環境において有効であることを示す.