著者
隅田 麻由 水本 旭洋 安本 慶一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.399-412, 2014-01-15

本論文では,個人の身体条件に適した負担度でのウォーキングを支援するシステムの実現を目指し,スマートフォンで利用可能な機能のみを用いた心拍数推定法を提案する.提案手法では,歩行中の心拍数を推定するために,機械学習を基に,加速度や歩行速度などの歩行データから心拍数を予測する心拍数モデルを構築する.心拍数の突発的な変化に対応するため,モデルの入力として心拍数変化と関連性が高い酸素摂取量に着目する.そして,加速度および位置情報などのスマートフォンで計測可能なデータから酸素摂取量の変化を正確に推定する方法を新規に提案する.また,学習データのない様々なユーザに対して心拍数を推定できるようにするため,過去の運動習慣を基に分類したユーザカテゴリごとに心拍数モデルを構築し,パラメータの最適化,心拍数データの正規化などを適用する.複数の被験者および歩行ルートについて実際に計測したデータに本手法を適用した結果,6.37bpm(拍/分)以内の平均誤差で心拍数の推定ができること,提案する酸素摂取量推定法が平均10bpm以上の誤差の軽減に寄与することなどを確認した.
著者
Chan-Ryul Park Woo-Shin Lee
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
Mammal Study (ISSN:13434152)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.17-21, 2003 (Released:2003-07-04)
参考文献数
29
被引用文献数
20

We developed a habitat suitability model for wild boar Sus scrofa in the Mt. Baekwoonsan region of Korea. We recorded wild boar field signs (dust baths, bedding sites, digging areas, feces and tracks) and habitat variables such as the nearest distance to watercourses (DWATER) and trails (DTRAIL), slope, aspect (ASPECT), forest type and forest age. Field signs and habitat characteristics were assessed within a 25 × 25 m quadrat along seven survey routes from August 1999 to July 2000. We conducted a CATMOD regression analysis based on 416 field signs at 50 points and classified them into 3 levels of habitat importance (high, medium and low) based on the relative importance of field signs. Habitat suitability indices (P) were calculated based on significant relationships between parameters such as DWATER, DTRAIL and ASPECT resulting in the following function: P = 1/(1 + exp – (3.82 × (DWATER) – 1.21 × (DTRAIL) + 1.35 × (ASPECT))). Important habitats of wild boar were distributed near watercourses and far from trails along east and south-facing slopes.
著者
飯田 元
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

広汎性発達障害(しょうがい)をはじめとする様々な障害レベルにある、いわゆる自閉症スペクトラムを有する未成年児を対象に、メールやブログ、SNS(ソーシャルネットワーキングシステム)といった電子的コミュニケーション手段に対するリテラシを障害レベルに応じて適切に教育し、また、実践を支援・補完する専用SNSプラットフォームを試作し、模擬的な療育プログラムの思考を通じて評価した結果、発達障害児の療育と社会参画支援のためのSNSプラットフォームが有するべき具体的機能要件および非機能要件をあきらかにした
著者
Hayato HASHIZUME
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
JOURNAL OF THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.365-372, 1968 (Released:2008-12-18)
参考文献数
3

1)花粉母細胞は11月下旬に減数分裂を開始した。分裂は12月下旬~1月上旬にオープン・スパイレーム期に達し,しばらく停滞するが,翌年の2月上旬になると急速に進行し,2月中旬~下旬の前半に第一分裂中期像が観察された。四分子は2月下旬に形成された。減数分裂の期間は約100日で非常に長い。花粉母細胞の減数分裂は平均湿度が10°C以下の低温の時期に行なわれる。 2)花粉母細胞の減数分裂にはしばしば異常が認められた。すなわち,遅滞染色体,染色体橋,隔膜形成の異常,退行現象などが観察された。このような異常分裂の結果,巨大花粉が形成された。巨大花粉には円形,広卵形,ひょうたん形のものがあった。成熟巨大花粉では,生殖核を1個有するものと2個有するものがみられた。前者は二倍性の花粉である。巨大花粉の平均直径は43.8μで,正常花粉よりも約10μ大きい。巨大花粉の出現率は個体によりちがいがみられた。 3) 四分子から分離した未熟花粉は3月上旬に急速に生長して,飛散の5~7日前から細胞分裂をはじめた。成熟花粉では生殖細胞と花粉管細胞の二つが認められた。飛散開始期は3月8日~15日であった。四分子形成から飛散までの所要日数は約15日であった。 4)人工発芽試験あ結果,花粉の発芽は飛散の5~7日前から認められた。発芽率は花粉の発育にともなって急速に増加し,飛散期に最高に達した。 以上の結果から,花粉の採取は飛散時に行なうのが最もよいように思われる。
著者
Michio Yanai Chengfeng Li Zhengshan Song
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1B, pp.319-351, 1992-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
127
被引用文献数
170 754

客観解析したFGGE II-b高層観測データを用いて、1978年12月から1979年8月までの9ヶ月間のチベット高原及びその周辺領域の大規模循環場と熱・水蒸気収支の解析を行った。客観解析には、FGGEデータに加えて1979年5月-8月に中国が行った「チベット高原特別気象観測」データも用いた。夏季アジアモンスーンの始まりにつながる冬から夏にかけての顕著な季節変化を同定するために、大規模循環、温度、外向き長波放射(OLR)および鉛直循環の時間的発展を記述した。チベット高原は、熱的に駆動された大規模垂直循環を維持しているが、この循環は地球規模のモンスーン循環とはもともとは別なものである。上昇流は冬には西部高原だけに限られているが、季節の進行とともに高原全域に広がる。アジアモンスーンの始まりは高原が誘導する循環と、北上する主要な降雨帯に伴う循環との相互作用によってもたらされる。冬の期間、高原は冷源となっているが、周囲はさらに強い冷源域となっている。春には高原は熱源となるが、周辺域は引続き冷源である。高原上での主要な熱源は地表からの顕熱輸送である。しかし、その他に凝結熱の貢献も、西部高原では年間を通して、更にもっと重要なことには東部高原ではとりわけ夏に観測されている。持ち上げられた高原表面の顕熱加熱と周辺域の放射冷却によって水平温度傾度が維持され、それが熱的直接循環を生じている。夏季アジアモンスーンへの2つの移行期間-5月の東南アジアのモンスーンの始まりと6月のインドモンスーンの始まり-の上部対流圏の昇温過程を詳しく調べた。その結果、最初のオンセット時の東部高原での気温上昇は、主に、非断熱加熱の結果であるが、次のオンセット時直前のイラン-アフガニスタン-西部高原の気温上昇は、強い下降流によってもたらされていることがわかった。高原上の境界層や垂直循環には大きな日変化が存在する。地表からの加熱によって、高原上では夕方(1200 UTC)に温位がほぼ一様な深い混合層がみられる。このことは熱の垂直輸送に果たす熱対流の役割の重要性を示唆している。しかし、水蒸気は垂直方向にあまり混合しておらず、また、境界層には大きな水平温度傾度がある。晩春から夏にかけて、境界層は乾燥対流に対してより安定となる。一方、晩春以降の相当温位の垂直分布は、下層の水蒸気量の増加に伴って、湿潤対流に対して条件付き不安定な成層を示す。
著者
酒井 治孝
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.701-716, 2005 (Released:2006-03-01)
参考文献数
91
被引用文献数
2 8

私達の研究により,ヒマラヤの変成岩ナップは~14 Maに出現し,11~10 Maに前進を停止し,1 Maにはヒマラヤの前縁山地が上昇したことが判明した.また11 Ma以前に,ヒマラヤは現在の高度以上になっていたことが明らかになった.またチベット高原からヒマラヤにかけて分布する東西引張り性の正断層群の形成時期,チベット高原から産出した中期中新世の植物化石や酸素同位体を使った古標高の推定結果は,いずれも山塊が14 Ma頃までに現在の高度に達していたことを示す.モンスーン開始の証拠とされた10~8 Ma頃の湧昇の活発化は,インド洋のみならず太平洋や大西洋からも報告されており,南極氷床の拡大とリンクしている可能性もある.今後はチベット高原の中部地殻が広く部分溶融しているという新しい知見を取り入れながら,ヒマラヤ・チベット山塊の進化と上昇,およびそのモンスーンシステムの発達との相互因果関係を解明して行かなければならない.
著者
池田 哲郎
出版者
日本英学史学会
雑誌
英学史研究 (ISSN:03869490)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.15, pp.195-215, 1982 (Released:2009-09-16)
参考文献数
7

Darwin's “Origin of Species” was introduced into Japan for the first time by Morse, Edward Sylvester, an American professor of biology in Tokyo University, Dept. of Scienece in 1879; twenty years after the publication of the original.Morse gave publicity to various fields of society like a university extension. His lectures in Tokyo University was published in Japanese after six years by his student Isikawa Tiyomatu.Since then in conseqence of the Darwin's views adopted by most Japanese scientist and which will ultimately, as in every other case, be followed by Japanese intelligentsia who are not scientific.I am going to write a brief history of Darwinism in Japan for last one hundred years, 1 st translation, books, essays, both natural and social sides.Bibliography of Darwinism in Japan is added as an appendix.
著者
河原田 康史
出版者
京都産業大学日本文化研究所
雑誌
京都産業大学日本文化研究所紀要 (ISSN:13417207)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.254-214, 2017-03

宮崎友禅斎は、洛東の知恩院門前辺りに居住し、天和~享保(1681~1736)頃に活躍した。友禅斎は「絵扇」で一躍有名になり、その絵模様を「小袖」にも描いた。友禅斎の名前にちなみ、現在では「友禅染」という名称が、広義では「キモノの染物全般」を、狭義では「挿し彩色」を指して用いられることが多い。友禅斎については、生没年や生没地、妻子の存在、加賀友禅との関係などにおいて不明な事柄が多い。 本稿では、北法相宗音羽山清水寺が所蔵する宮崎友禅斎筆「白衣観音図」扁額について論じる。扁額右下には、「奉納者である歌舞伎役者名」と「制作者である友禅斎」の署名がある。「奉納者である歌舞伎役者名」を判読できると、友禅斎が京都で扁額を制作した年号が大方理解できる。 本稿の構成として、最初に研究報告会で発表した内容を基に、「白衣観音図」扁額に関する先行研究について整理する。次に先行研究における私見を述べると共に、扁額右下にある署名を判読するために、扁額の拡大写真を用いて「奉納者である歌舞伎役者名」について考察する。最後に研究報告時に筆者が仮説として立てた「奉納者である歌舞伎役者名」の真偽を検証するため、その後の研究によって新たに明らかになった事柄について考察する。
著者
伊土 耕平
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
岡山大学大学院教育学研究科研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
vol.166, pp.63-71, 2017-11-28

古事記における主語の表示/省略の傾向を整理すると,①▽→φ→φ…,②φ→▽→φ…,③φ→φ→φ…,④▽→▽→▽…,という4つの型に整理できる(▽=表示,φ=省略)。①は,最初の文で主語を表示し,次の文以降は主語を省略するタイプである。オーソドックスな主語連続で,特別な表現効果は発揮しない。それに対して,②以下は特異な主語表示である。まず②は,最初の文では主語を省略し,次の文で主語を表示する。人物は異常な登場をする。言わば,アンチヒーロー登場型である。③は①の後続部分などに現れる。物語の展開がスピーディーになったり,読み手が登場人物に同化したりする,緊密型である。④は全表示型である。複数の登場人物が紛れないようにするため必要であるときと,ある種の表現効果を発揮するときがある。以上のうち,②は現代語には見られない。
著者
井尻 香代子
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.163-179, 2017-03

現在多様な言語で作られているハイクの普及プロセスと特色を明らかにするため,筆者はアルゼンチンのケースについて,受容プロセス,季語,韻律,価値観の変化という四つの視点から調査・分析を行った。その後,季語については現地特有の動植物や時候の変化,生活習慣や宗教的,文化的行事を表現する多くの言葉が,豊かな意味と感性を含み受け継がれていることに気づくようになった。移民国家であるアルゼンチンにおいてこうした言葉のグループはさまざまな側面を含みつつ,徐々に共有されることとなった感受性の目録と捉えることができる。本稿では,現時点で重要と思われる言葉を中心に歳時記構築への第一歩を踏み出すことを目指している。第1 章では日本の伝統詩歌において季語がどのように誕生し,変化してきたのかを概観し,現代の俳句季語をめぐる状況を考察する。第2 章では,国際ハイク研究者や実作者の近年における季語の扱いを検証する。そして第3 章では,アルゼンチンのハイク作品集から季語としてふさわしい語を抽出し,歳時記構築に向けた試みに向けていくつかの例を提示したい。この作業は,アルゼンチン・ハイクの特色を理解し,ひいては国際ハイクの現状をあぶり出す試みとなるだろう。
著者
上野 祐樹 北川 秀夫 柿原 清章 寺嶋 一彦
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.78, no.789, pp.1872-1885, 2012 (Released:2012-05-25)
参考文献数
11
被引用文献数
6

Holonomic omni-directional mobile robots are very useful at narrow or crowded areas because of their high mobility performance, and omni-directional mobile robots equipped with normal tires are desired for their ability to surmount the difference in ground level as well as their vibration suppression and ride comfort. Up to the present, the caster-drive mechanism using normal tires has been developed to realize a holonomic omni-directional mobile robot, but some problems have been left. In this paper, we present an effective system to control the electric caster-drive wheel of omni-directional mobile robots, Differential Drive Steering System (DDSS) using differential gearing is proposed to improve the operation ratio of motors. The proposed DDSS generates the driving and the steering outputs effectively from utilizing two motors. Simulation and experimental results show that the proposed system is effective for both of the mobility and energy saving.
著者
宮脇郁 編
出版者
参文舎
巻号頁・発行日
1906
著者
Ikuo KABASHIMA Ryosuke IMAI
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
Japanese Journal of Electoral Studies (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.5-17,180, 2001-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
10

「神の国」をはじめ一連の発言で首相としての資質を問われた森首相に対する評価は2000年総選挙での有権者の投票行動に影響していたのか。本稿の目的は,2000年総選挙を題材に,従来あまり注目されることのなかった党首評価と投票行動の関連を明らかにし,日本の投票行動研究に新たな理論的貢献を試みることにあった。分析の結果明らかになったことは,次の3点である。第1に,投票行動に党首評価は影響を与えており,しかもその影響は小選挙区よりも比例区に顕著に見られた。第2に,党首評価は小選挙区•比例区の2票の使い方,いわゆる分割投票にも影響を与えていた。そして第3に,森首相に対する評価には内閣業績評価,「神の国」「国体」など一連の発言に対する評価,自公保という連立の枠組に対する評価が影響を与えており,中でも発言に対する評価の影響が最も大きかった。
著者
河田 治男 森 康夫
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集 (ISSN:00290270)
巻号頁・発行日
vol.38, no.315, pp.2843-2853, 1972-11-25 (Released:2008-03-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1
著者
Yusuke TAKAMURA Mitsuru NOMURA Akira UCHIYAMA Satoshi FUJITA
出版者
Center for Academic Publications Japan
雑誌
Journal of Nutritional Science and Vitaminology (ISSN:03014800)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.339-348, 2017 (Released:2017-12-08)
参考文献数
58
被引用文献数
20

Insulin resistance reduces insulin-induced muscle protein synthesis and accelerates muscle protein degradation. Ginseng ingestion has been reported to improve insulin resistance through the phosphoinositide 3-kinase (PI3K)/Akt signaling pathway. We hypothesized that panaxatriol (PT) derived from ginseng in combination with aerobic exercise (EX) may further promote protein synthesis and suppress protein degradation, and subsequently maintain muscle mass through the amelioration of insulin resistance. KKAy insulin-resistant mice were divided into control, panaxatriol only (PT), exercise only (EX), and EX+PT groups. EX and EX+PT ran on the treadmill for 45 min at 15 m/min 5 d/wk for 6 wk. PT and EX+PT groups were fed a standard diet containing 0.2% PT for 6 wk. Homeostasis model assessment for insulin resistance (HOMA-R) values was significantly improved after exercise for 6 wk. Moreover, EX+PT mice showed improved HOMA-R as compared to EX mice. p70S6K phosphorylation after a 4 h fast was significantly higher in EX than in the non-exercise control, and it was higher in EX+PT mice than in EX mice. Atrogin1 mRNA expression was significantly lower in EX than in the non-exercise control, and was significantly lowered further by PT treatment. EX and EX+PT mice showed higher soleus muscle mass and cross-sectional area (CSA) of the soleus myofibers than control animals, with higher values noted for both parameters in EX+PT than in EX. These results suggest that aerobic exercise and PT ingestion may contribute to maintain skeletal muscle mass through the amelioration of insulin resistance.