著者
常盤 洋子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.27-38, 2003-12-31 (Released:2010-11-17)
参考文献数
29
被引用文献数
9 16

目的産後うつ傾向は産褥早期に対処されることが期待される. そこで, 出産体験の自己評価と産褥早期における産後うつ傾向の関連を明らかにし, 出産後の心理的援助のあり方を検討する資料を得ることを目的とする。対象および方法研究期間は平成12年4~9月。産後1~7日目の褥婦1,500名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した (有効回答数932票, 回答率62.1%)。調査内容は, 出産体験の自己評価, 産後うつ傾向, 出産体験の自己評価に影響を及ぼす産科的要因, 心理・社会的要因であった。結果出産体験の自己評価が低い場合, 産後うつ傾向をもたらす可能性が高いことが明らかになった。また, 初産婦, 経産婦ともに「信頼できる医療スタッフへの不満」,「出産年齢が若年」,「出産時の不安が強い」が産後うつ傾向を規定する要因として抽出された。結論出産体験の自己評価に満足が得られない場合には, 初産婦, 経産婦ともに産後うつ傾向が高くなることが示唆された。また, 分娩期における信頼できる医療スタッフの存在, 出産時の不安への対処は, 出産体験の満足度を高め, ひいては, 産後うつ傾向の予防に貢献すると考えられる。
著者
本間 裕人 数岡 孝幸 徳田 宏晴 中田 久保 中西 載慶
出版者
日本食品保蔵科学会
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.189-198, 2013 (Released:2014-03-06)

ビールの抗酸化活性について,スタイルごとの品質特性を明らかにするため,様々なスタイルのビール類のDPPHラジカル消去能,スーパーオキシド消去能を測定し比較を行った。その結果,DPPHラジカル消去能はインペリアルスタウト,ボック類,IPAおよびスタウト等で高く,それぞれの平均値は254.1,232.7,201.0および195.8nmol Trolox/mlであった。一方,DPPHラジカル消去能が低かったのは発泡酒・ビール風飲料,ヴァイツェン類およびピルスナー等で,それぞれの平均値は54.7,110.9,120.9nmol Trolox/mlであった。スーパーオキシド消去能については,インペリアルスタウト,スタウト,ポーターおよびバーレーワイン等で高く,それぞれの平均値は90.0,74.0,72.5および71.3%であった。一方,ブロンドエール類,ピルスナー,発泡酒・ビール風飲料において活性は低く,それぞれ18.1,18.7および19.8%であった。これらのビール類の抗酸化活性をワイン類と比較すると,いずれも赤ワインよりは低値であったが,スタイルによっては白ワインよりも高値であった。また,DPPHラジカル消去能と総ポリフェノール量,苦味価,推定初期比重の相関性を調べたところ,DPPHラジカル消去能は総ポリフェノール量と高い相関性を示した。
著者
橋本 秀子 宮本 謙一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.207-210, 2007 (Released:2007-10-02)
参考文献数
10

薬剤師として1980年代にがん患者中心の病棟で臨床に密着した業務を展開する中で, 抗がん剤の副作用やがん末期の諸症状に苦しむ患者を目の前にし, 医師や看護師のがん患者への情報提供と彼らの意見を調査した. その後, 1996年と2005年にも同様の質問を行い, その変化に応じて薬剤師の患者への関わり方を探った. 1988年には72.7%の医師が早期がんでも病名告知しなかったが, 1996年には70%の医師が早期がんのみ病名告知するようになり, 2005年には100%の医師が, 進行度に関係なく病名を告知するとの回答を得た. しかし,「いつまで抗がん剤治療を続けるか」「終末期の症状緩和の技術が未熟である」といった新たな問題が生じており, 薬剤師がスタッフの中で独自の立場で主張することも必要となってきている.
著者
稲垣 圭一郎 高取 昇悟 平田 豊
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

前庭動眼反射(VOR)は,小脳の運動学習が関与するモデルシステムとして古くから研究されている.VORでは,頭部回転方向を区別して非対称にパフォーマンスを変えるような柔軟な運動学習が実現可能である.本研究では,小脳両半球構造を詳細に記述した数理モデルによるシミュレーションにより,こうした柔軟なVOR運動学習を実現する小脳の内部メカニズムを考察した.
著者
山本 光正
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.165-181, 2003-10-31 (Released:2016-03-29)

近世の旅に関する研究は大きく分けて、旅における行動・見聞及び交通の実態を明らかにしようとするものと、社寺参詣そのものに重点を置き民衆の信仰を明らかにしようとするものがある。これらの研究はいずれも史料の関係から男性を中心としたものであったが、女性史研究の活発化に伴い、女性の旅についても研究成果が発表されるようになった。旅の研究は旅日記を主な素材として行われるが、女性の場合旅日記を書くことができるのは相当の教養を身につけた階層であるため、庶民女性の旅の実態をみることは困難である。女性の旅全般について把握するには、旅日記以外の史料の発掘が課題といってよいだろう。既に宿坊の台帳類や、供養塔等の石造物を利用した研究も行われているが、本稿では納経帳と絵馬によって女性の旅の一端を述べてみた。納経帳は千葉県市原市の万光院に同市勝間の茂手木氏が奉納したもので、同家の先祖「とら」が寛政七〜八年にかけて、西国・坂東・秩父の観音霊場及び四国八十八ヶ所を巡ったものである。納経帳は「とら」の足跡を追うことしかできないが、女性が一人でこれだけの旅をしたことは注目される。絵馬は信州の善光寺に参詣した女性達が千葉県岬町の清水寺に奉納したもので、明治から大正まで年代不明も含めて二六点が確認されている。図柄や墨書から旅のコースや参拝の様子・同行者の地域・名前を読みとることができる。絵馬は近代のものだが、近世においても同様の旅が行われていたと考えられる。納経帳・絵馬共に旅日記に比較すると情報量は少いが、これらのデータを蓄積することにより、近世における女性の旅の実態を明かにしていくことができるであろう。 Research on early modern travel can be divided into two main kinds. One seeks to clarify the actual forms of behavior, experience, and transportation related to travel, while the other attempts to clarify popular religious beliefs by focusing on temple and shrine pilgrimage as such.For reasons of research materials, both approaches have tended to focus on men. With heightened interest in research on women's history, however, the body of research on travel by women has now started to grow. While travel research typically relies on travel diaries as its principal source of materials, travel diaries by women are written only by women of considerable education, hence class, making it difficult to observe the actual forms of travel by commoner women.Clearly the effort to grasp travel by women as a whole makes the discovery of materials other than travel diaries a pressing concern. Some research has made use of registries from temple inns (shukubo) and statuary such as devotional pagodas (kuyoto). This study relies on a votive scripture ledger (nokyocho) and votive tablets (ema) to reveal a facet of travel by women. The ledger was offered to Mankoin Temple in Ichihara City, Chiba Prefecture, by the Motegi family (Katsuma, Ichihara City) and records the journey made by the family's ancestor "Tora" who visited the Kannon spiritual sites in Shikoku, Bando, and Chichibu and made the eighty-eight site Shikoku pilgrimage. The ledger only enables us to trace the footsteps of Tora, but the fact that a single woman could make such a journey deserves attention. The twenty-six votive tablets dating from the Meiji and Taisho periods, on the other hand, were offered to Kiyomizudera Temple in Misaki, Chiba Prefecture by women who had made a pilgrimage to Zenkoji in Shinshu. From the images and inscriptions on the tablets, we know the course they traveled, details of their pilgrimage, and their names and regions of origin. Although the tablets date from the modern period, it is believed that women in the early modern period conducted similar journeys.Votive ledgers and tablets do not provide the quantity of information available from travel diaries. Nonetheless, with the accumulation of information contained in such materials it should be possible to clarify further the nature of travel by women in early modern Japan.
著者
桂文庫
出版者
桂文庫
巻号頁・発行日
no.9, 1998-09
著者
渡辺 満久
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

1.はじめに下北半島北西部においては、南へ傾動するような地殻変動が進んでおり、MIS 5eの旧汀線高度は大間岬付近では約60m、約10km南方の佐井周辺では約20mまで低下している(渡辺ほか、2012、活断層研究、No.36)。このような高度変化は、四国の室戸岬に見られるものに匹敵し、日本では最大級のものである。また、大間岬周辺には、間欠的隆起が起こっていることを示す隆起ベンチも認められ、その高度も北ほど高い。このような地殻変動をもたらす原因として、大間の北方海域から下北半島北西部の地下へと連続する、低角度の活断層の活動が想定されている(渡辺ほか、2012)。大間原子力発電所は、このような地殻変動が進行している地域の北端部(最も隆起が大きい地域)において建設が進められようとしている。発表者らが上記の事実を指摘するまで、事業者(電源開発)と当時の評価組織は、異常な隆起現象を認識していなかった。現在、事実関係は概ね認めてはいるが、その原因は定常的で緩慢な隆起運動であり、地震性隆起を否定している。しかし、過去80年間の水準点測量結果によれば、そのような地殻変動は進行していないことが明らかにされている(渡辺ほか、2012)。本発表では、大間原子力発電所の敷地内には、多数の「将来活動する可能性のある断層等」が存在することを報告する。現地調査には、平成25~27年度科学研究費補助金(基盤研究(C)研究代表者:渡辺満久)の一部を使用した。2.将来活動する可能性のある断層等大間原子力発電所建設敷地には、MIS 5eとMIS 5cに形成された海成段丘面が分布している。これらの段丘堆積物の基盤を成すのは、後期中新統の易国間層である。易国間層中には、S-10断層・S-11断層・cf-1断層などが確認でき、後期更新統の海成段丘堆積物を変形させている。S-10断層は、電源開発がシームS-10と呼んでいるものであるが、これに沿って変位が生じていることは明らかであり、ここではS-10断層と呼ぶ。S-10断層は、易国間層中の層面すべり断層であり、MIS 5cの段丘堆積物を切断して(変形させて)いる。複数の活動履歴が読める可能性がある。 S-11断層は、S-10断層と同様に、電源開発がシームS-11と呼んでいる断層である。S-11断層も、易国間層中の層面すべり断層であり、MIS 5cの段丘堆積物を切断して(変形させて)いる。電源開発は、変位が生じていることは認めているものの、それらは岩盤の強風化部の変状であるとしている。ただし、そのメカニズムは不明である。cf-1断層は、易国間層を切断する断層である。MIS 5c以降には活動していないことは確認されているが、MIS 5e~MIS 5cの間の活動の有無は確認されていない。また、cf-1断層は、上述のS-10断層を切断している。なお、電源開発の図面では、易国間層上部を切断するcf-1断層が、上部層と下部層の境界で突然消滅するように描かれている。その他、易国間層を切断する、E29断層・E33断層などがあり、MIS 5eの段丘堆積物を切断して(変形させて)いる。3.地盤の安定性上記したように、大間原子力発電所敷地内には、多数の「将来活動する可能性のある断層等」が存在している。S-10は、原子炉予定地の直下、10~20mの位置にある。いくつかの施設は、S-11やE-29などの断層を掘削して建設するように見える。コントロール建屋は,cf-1断層の直上にある。このような不安定な地盤に原子力施設を建設することは合理的であるとは思えない。原子力施設は、理学的に健全な土地を選び、工学的に安全に建設すべきである。なお、電源開発の図によれば、断層の上盤を除去すれば施設への影響を取り除ける、という考えが読み取れる。本当にそれでよいのだろうか?
著者
吉田 治雄 小林 喜久二 佐藤 吉之 梅田 尚子 酒井 慎一 平田 直
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

GAを用いた地震観測記録の逆解析により関東平野内の地下構造の推定を実施した。使用した観測点はK-NET、KiK-net(防災科研)、MeSO-net(東大地震研)である。各点の推定地盤モデルに基づいて3次元堆積平野モデルを構築し3次元差分法により地震動のシミュレーションを実施した。既往の地盤モデルによるシミュレーション結果との比較により本研究の計算波は観測記録との適合性がより良いことが確認された。
著者
檜垣 巧
出版者
密教研究会
雑誌
密教文化 (ISSN:02869837)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.188, pp.1-28, 1994-10-25 (Released:2010-03-12)
参考文献数
24
著者
松永 是
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.1488-1492, 1989-10-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
10

菌体内にマグネタイトの磁気微粒子を合成する走磁性細菌は,地磁気を感知する能力をもつ微好気性の細菌であり,磁場の向きにより,その運動方向が決まる.走磁性細菌が合成する磁気微粒子は,単磁区構造を示し,その大きさも約100nmと小さく,さらにそのまわりは脂質を主成分とする有機薄膜で覆われていることが確認された.酵素・抗体固定化担体として,この磁気微粒子を利用したところ,酵素・抗体固定化量は人工の磁気微粒子に比べ多いことが示された.また,磁気微粒子は赤血球・白血球などへ導入可能であった.さらに,走磁性細菌をマイクロ磁気センサーへ応用し隕石のつくる磁力線の方向の測定を行った.
著者
三宅 恒方
出版者
農商務省農事試驗場
雑誌
農事試驗場特別報告
巻号頁・発行日
no.31, pp.1-203, 1919-01
著者
藤山 千紘 小林 一郎 西本 伸志 西田 知史 麻生 英樹
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

我々は、常に次の状態を予測しながら日常生活を送っている。これは、我々がもつ脳の大脳皮質における予測符号化の機能が行っていることであり、近い将来を予測することによって生物としての個体を守っている。 本研究では、この機能を模倣した深層学習モデルに対して、画像刺激を受けている際の脳活動との相関関係を考察する。
著者
WU HONGLE 加藤 隆史 山田 朋美 沼尾 正行 福井 健一
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

The quality of a good sleep is important for a healthy life. Recently, several sleep analysis products have emerged on the market; however, many of them require additional hardware or there is a lack of scientific evidence regarding their clinical efficacy. We proposed a novel method via clustering of sound events for discovering the sleep pattern. This method extended conventional self-organizing map algorithm by kernelized and sequence-based technologies, obtained a fine-grained map that depicts the distribution and changes of sleep-related events. We introduced widely applied features in sound processing and popular kernel functions to our method, evaluated their performance, and made a comparison. Our method requires few additional hardware, and by visualizing the transition of cluster dynamics, the correlation between sleep-related sound events and sleep stages was revealed.
著者
森川 展男
出版者
東亜大学
雑誌
総合人間科学 : 東亜大学総合人間・文化学部紀要 (ISSN:13461850)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.105-121, 2001-03

近年の犯罪傾向を見ると、行為者の精神の障害又は未確立に起因する事件の数が急増している。このような状況下、従来の刑法上の責任能力概念及びそれを判定するための精神鑑定のあるべき姿についても変革が求められる。刑法は第39条において心神喪失・心神耗弱という形で責任能力について規定すると共に、第41条において14歳未満の少年の責任無能力を規定する。また少年法は、20歳未満の少年について原則として刑事処罰の対象としない旨規定する。しかし、近時、凶悪犯罪の多発を受け、責任能力や処罰対象を広く認めようとする傾向が出てきている。これは、行為に対する非難可能性に刑罰の根拠を求める責任概念の趣旨に反するもので、被疑者・被告人の人権と社会秩序維持の調和の観点からも好ましくない。しかし、従来の責任概念のあり方にも問題無しとはしない。これをより精緻化し、国民の理解を得られるものとするために、その判断の根拠を可及的に客観的にする必要がある。そのためには、精神鑑定の基準を客観化するとともに、第三者機関を設立することによって恣意的な鑑定がなされることを排除する仕組の確立が必要である。最後に、責任能力概念及び精神鑑定は、社会の安定及び個々人の人権を守るための手段に過ぎないとの理解から、真に安定した社会の実現に向けた抜本的解決を模索する。家庭、教育現場、地域共同体が緊密に協力し、犯罪予防の実効性の高い社会を小さな単位から構築し、それを情報技術などを利用して社会全体のシステムに昇華させていくことが真に秩序ある社会の構築のための最善の方法であると考える。