著者
杉原 真晃 橋爪 孝夫 時任 隼平 小田 隆治
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.341-349, 2015-03-20 (Released:2016-08-11)

本研究では,大学初年次教養教育科目としてのサービス・ラーニングにおける現地での活動の質の向上という課題に対して,地域住民とともに活動を行う参与型の実践,評価者に地域住民も加わる実践,地域住民と教員が協働で評価基準を開発・活用するケースについて,評価基準の協働作成と学生への提示の有効性を検討した.その結果,現地での活動の目標の意識化・再設定,意義・方法・役割の明確化,現地の人々や他学生との意義の共有・一体感の獲得等に対して,評価基準が有用であることが明らかとなった.学習成果との関連については,評価基準に示された項目の中で,現地にて重要視されており,学生がそれを達成し,評価基準がそれに対して有用であったと感じられた項目が多い結果となり,本授業で活動・学習の質の保証・向上が概ね達成されており,協働作成した評価基準が有効に機能したことが明らかとなった.
著者
藤田 慎一
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-22, 2002

電力中央研究所は, 関係諸機関の協力のもとに広域的な観測網を展開し, 1987年10月から足かけ10年にわたって東アジアの酸性雨の調査を行った。観測データをもとに, 降水成分の湿性沈着量, 硫黄化合物の収支, 降水組成の季節変化と経年変化, 東アジアの降水化学などの解析を行うとともに, 長距離輸送モデルの検証を進めてきた。<BR>本論文は既往の研究成果をふまえて, 降水成分の濃度と湿性沈着量の地理分布, 季節変化, 経年変化を解析し, 観測の立場から東アジアの酸性雨について総合的な考察を加えたものである。
著者
桑原 克也 高橋 まさみ 大堀 智也 三木 静恵
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.58, pp.85-89, 2011-12-01 (Released:2013-01-25)
参考文献数
11

群馬県では,施設キュウリのネコブセンチュウの防除対策として,フスマを用いた土壌還元消毒 (以下フスマ還元) が普及しているが,十分な防除効果が得られない事例があった。そこで,低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒 (以下エタノール還元) およびフスマ還元による下層土のネコブセンチュウに対する防除効果について,2009年と2010年の圃場試験により検討した。2010年試験でのフスマ還元後の土壌では,深さ20cmまでしかジピリジル反応を示さなかったのに対し,エタノール還元処理後では深さ50cmの土壌までジピリジル反応を示し,下層土まで還元状態が維持されていることが確認できた。2009年試験でのフスマ還元後の表層ではネコブセンチュウ第2期幼虫は検出されなかったが,深さ20cm以降の土壌層で検出され,栽培終了時にネコブセンチュウ密度が著しく増加した。一方,エタノール還元処理後では2か年とも深さ50cmまでの土壌層からは検出されず,栽培終了時でのネコブセンチュウ密度の増加はわずかであった。2か年の試験ともエタノール還元の防除価は,フスマ還元の防除価より高かった。よって,低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒法では,下層土壌まで還元状態を維持しており,下層土のネコブセンチュウに対して安定的な防除効果があると考えられた。
著者
丸山 茂穂
出版者
日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.155-157, 2013

To understand the origin and evolution of life and to predict the future of life is the ultimate goal of geochemistry that we need to reach. Here, I will show the history of geochemistry and future outlook on the Earth, the universe and Astrobiology.
著者
高 軼倫 笹尾 和宏 桜井 新
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュータ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.835, pp.100-105, 2013-05-30

KLMでは、「マウスの移動時間」は全て平均化された単一の時間として扱われ、移動目標の対象の大きさや、移動距離、選択肢の数を考慮していない。しかし、実際のマウスの移動(タッチスクリーンの場合は指の移動)は、UIオペレーションの中で大きな割合を占め…
著者
影井 昇 PURBA YUNITA 坂本 修
出版者
Japanese Society of Tropical Medicine
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.165-168, 1992
被引用文献数
5

本来は猿やその他の霊長類の腸管内に寄生する条虫, <I>Bertiella studeri</I> (AnoPlocephalidae) の北スマトラにおける人体感染の2症例を見出し, インドネシアにおける第11例目 (3歳, 女性) と第12例目 (成人男性) として報告した。<BR>共に詳細な病歴は不明であったが, 排出虫体の形態によって<I>B.studeri</I>と同定された。現在, 世界的には総計47例の本虫感染例報告のある中で, インドネシアにおける本虫感染例が, 極めて目立って多い事が解った。<BR>本虫の感染は自由生活性のダニ類の経口摂取にある所から, 人体への感染は偶然の機会に行われ, その感染予防の為には, 終宿主となる猿類を椰子の実取り等の労働に使用したり, ペットとして飼育する際に十分な注意を行う事が, 最も重要と考えられた。
著者
片山 恵子 伊藤 雄太 濱田 裕子 宇野 裕和 中田 土起丈 末木 博彦
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.480-485, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
21

掌蹠膿疱症は原因不明の難治性疾患であるが,誘因として病巣感染,喫煙,金属アレルギー等が指摘されている.本症における金属アレルギーを検討する目的で,22年間のパッチテスト結果を検討した.1990年4月より2012年3月までに昭和大学病院附属東病院皮膚科を受診し,歯科金属シリーズのパッチテストを施行された1,025名 (男210名,女815名,4~85歳, 平均年齢40.1±18.1歳) を対象に,掌蹠膿疱症患者群 (148名) と他疾患患者群 (877名) との間で陽性率の比較を行った.パッチテストは18種類の金属試薬を健常皮膚に貼付し,48時間後に除去した.判定は72時間後にICDRG (International Contact Dermatitis Research Group) 基準に基づいて施行し,+~+++を陽性とした.掌蹠膿疱症患者群と他疾患患者群とで金属の陽性率を比較すると,0.5%塩化白金酸に対する陽性率が前者では6.8% (148名中10名)であったのに対して,後者では2.6% (877名中23名) であり,χ2検定で両群間に有意差が認められた (p<0.05).したがって,掌蹠膿疱症においては白金(Pt)に対するアレルギー反応が重要な役割を担っている可能性が高いと考えられた.本症のパッチテスト結果について,1施設での長期間にわたるデータの検討結果は報告されておらず,新知見を与える研究と考えられる.
著者
大野 久
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.17-26, 1997-02-24 (Released:2017-05-15)

NISHIHIRA (1995) found factors accounting for powers of recovery in ego by analysing biographies. The factors are 1) basic trust (Erikson, 1959) and health throughout the infant period, 2) competency (Erikson, 1959) from childhood to adolescence, 3) first, second and third psychological weaning, 4) a sense of mission as an identity. The purpose of the present study was to examine why Beethoven didn't commit suicide by analysing his HEILIGENSTADTER testament and his life history. Conclusions are the following. 1) He had basic trust and health throughout his infant period thanks to his relationship with his mother. 2) He had musical competency from childhood to adolescence. 3) His father influenced his super-ego, and his grandfather influenced his ego-ideal. Finally, Beethoven identified with his great grand father. 4) He felt a sense of mission in his historical identity as an artist. Thus, we can conclude with certainty that Beethoven had the powers of recovery inherent in a young ego, and this is the reason why he didn't commit suicide.
著者
TOMA Takako MIYAGI Ichiro OKAZAWA Takao HIGA Yukiko LEH Moi Ung
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.281-308, 2010
被引用文献数
1

マレーシア・サラワク州のクチン周辺の海岸地帯には大小の椰子園があり,園内には緑色(未成熟)の椰子の実が落下している.落下した果実の多くは地上でネズミやツパイにより穿孔され,果実内には腐敗した水が溜まる.これらの水溜りには多数のクロヤブカ亜属(<i>Armigeres</i>)の幼虫が発生している.<br>これらの果実内から多数の幼虫を採集し,室内で個別飼育により,幼虫・蛹の脱皮殻・羽化成虫からなる一連の標本約200個体を入手した.標本を雄の生殖器の形態的特徴により比較検討し同定した結果,クロヤブカ亜属の蚊5種, <i>Ar. confusus</i>, <i>Ar. jugraensis</i>, <i>Ar. moultoni</i>, <i>Ar. malayi</i>, <i>Ar. setifer</i> が混生していることが明らかになった.これら5種の内,前3種の成虫は1900年初頭に英国の研究者により新種として記載されたが,原記載は不完全で,幼虫,蛹はこれまでに全く記載されていない.本論文でこれら3種の全ステージ(卵を除く)を詳細に記載した.また,椰子園に生息する5種の,成虫,雄生殖器,蛹,幼虫の形態を比較し,同定のための検索表を作成した.