著者
山口 重樹
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.460-470, 2004 (Released:2005-05-27)
参考文献数
41

血液ガス分配係数が小さく, 刺激臭が少ないセボフルランは吸入麻酔薬による導入法に適した麻酔薬である. 高濃度セボフルランによる麻酔導入法は, 静脈麻酔薬による麻酔導入法に取って代わるものではないが, 麻酔導入から維持への移行が速やかで, 循環動態が安定しており, 筋弛緩薬の作用発現を促進するなどの利点を有するため, 有用な麻酔導入方法として選択肢の一つと考えられる. そのためには, おのおのの症例に適した高濃度セボフルランによる麻酔導入の手法を選択する必要がある. 本稿では, 高濃度セボフルランによる麻酔導入のさまざまな手法をいろいろな角度から検討し, その特徴を述べた.
著者
清水 裕士 小杉 考司
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.132-148, 2010 (Released:2010-02-20)
参考文献数
35

本論文の目的は,「人々が対人行動の適切性をいかにして判断しているのか」について,一つの仮説を提案することである。本論文では,人々が対人行動の適切性をある原則に基づいた演繹によって判断しているものと捉え,演算の依拠する原理として,パレート原理を採用する。次に,Kelley & Thibaut(1978)の相互依存性理論に基づいて,パレート解を満たす葛藤解決方略を導出した。さらに,これらの理論的帰結が社会現象においてどのように位置づけられるのかを,Luhmann(1984)のコミュニケーション・メディア論に照合しながら考察した。ここから,葛藤解決方略は,利他的方略・互恵方略・役割方略・受容方略という四つに分類されること,また,方略の選択は他者との関係性に依存することが示された。そして,このような「行動の適切性判断のための論理体系」をソシオロジックとして定式化し,社会的コンピテンス論や社会関係資本論などへの適用について議論した。
著者
石井 択径 別府 成 中西 あゆみ 森木 啓 安田 研 田原 則雄 山中 典子
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.355-359, 2012-05-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

繁殖雌牛200頭を飼養する黒毛和種牛繁殖農場で,腐敗したサツマイモを給与された妊娠牛45頭中30頭が呼吸器症状と下痢を呈し,2頭が死亡した.死亡牛は,肉眼的に肺のうっ血と水腫,間質の肥厚,肝臓表面の出血斑が,組織学的に肺血管周囲のリンパ球集簇が認められた.また,発症牛の血清検査成績から,肝機能低下が示唆された.死亡牛の主要臓器から有意な細菌及びウイルスは検出されなかった.給与されたサツマイモからは,Fusarium属菌様の菌糸と胞子が検出された.また,サツマイモ抽出物の薄層クロマトグラフィーにより,イポメアマロンが検出された.以上のことから本症例については腐敗甘薯中毒が強く疑われた.薄層クロマトグラフィーは,特殊な測定機器が不要であり,腐敗甘薯中毒の迅速な診断に有用であると考えられた.
著者
毘留舎耶谷 纂輯
巻号頁・発行日
vol.[2], 1700

5 0 0 0 OA 筋を科学する

著者
市橋 則明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.217-221, 2014-06-20 (Released:2017-06-27)

5 0 0 0 OA 鐘が鳴ります

著者
北原 白秋[作詞]
出版者
ビクター
巻号頁・発行日
1939-02
著者
牧迫 飛雄馬 島田 裕之 土井 剛彦 堤本 広大 堀田 亮 中窪 翔 牧野 圭太郎 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11253, (Released:2017-04-22)
参考文献数
31
被引用文献数
2

【目的】地域在住高齢者に適するようにShort Physical Performance Battery(以下,SPPB)算出方法の修正を試みた。【方法】高齢者4,328 名をSPPB(0 ~12 点)で評価し,歩行速度と椅子立ち座りは対象者の測定値(四分位)を基に,立位バランスは立位保持の出来高によって配点した地域高齢者向けのSPPB community-based score(以下,SPPB-com)(0 ~10 点)を算出し,24 ヵ月の要介護発生との関連を調べた。【結果】対象者の78.7% でSPPB が,10.5% でSPPB-com が満点であった。SPPB-com が4 点以下で要支援・要介護発生率が高く(12.8%),SPPB-com,年齢,女性,MMSE が要支援・要介護発生と有意に関連していた。【結論】SPPB を再得点化したSPPB-com は地域在住高齢者の要支援・要介護リスクを把握する指標として有益となることが示唆された。
著者
藤田 将史
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1_393-1_415, 2020 (Released:2021-06-16)
参考文献数
34

国際制度論においては、国家は基本的に国際協調を実現するために国際制度を利用すると考えてきた。しかし現実には、国家行動をあまり変えられないという意味で有効性の低い国際制度を、国家は多く利用してきたと指摘されている。では、なぜ国家は敢えて有効性の低い国際制度を利用するのだろうか。先行研究は、有効性の高い制度を構築することの困難・経路依存性・政策判断の誤りといった要因を提示してきた。しかし、それらの要因が存在しなくても国家は有効性の低い制度を利用する場合があり、先行研究の知見だけでは有効性の低い制度利用の事例群を十分に説明できない。本稿の主張は、国家行動を変化させない制度であっても国内政治上の効用があり、そのために政府によって利用される場合があるというものである。具体的には、政府が対立する国内主体からの批判を回避するために、有効性の低い国際制度を利用できるという仮説を提示する。そして、先行研究の逸脱事例であり本稿の仮説の最不適合事例に当たる、為替操作国認定問題での米国のIMF (International Monetary Fund) 利用の事例を用い、仮説を実証する。
著者
下島 桐 東 祐圭 若月 大輔 笹井 正宏 久野 越史 池田 尚子 前田 敦雄 前澤 秀之 江波戸 美緒 鈴木 洋 嶽山 陽一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.3, pp.S3_129-S3_134, 2012 (Released:2013-09-25)
参考文献数
7

症例は74歳,男性.主訴は心肺停止.2010年5月ころより失神発作が出現するようになったが,1分程度で自然回復するために放置していた.2010年11月失神発作出現.12誘導心電図でデルタ波を認めWPW症候群と診断されたが,頻拍発作がとらえられず経過観察となった.2011年5月夜間胸部不快感の後心肺停止となった.救急隊到着時心室細動(VF)であり心肺蘇生,電気的除細動施行されVFは停止した.近医に入院し脳神経系異常なく,精査加療目的で当院に転院した.CAGでは有意狭窄なし,アセチルコリン負荷中に冠攣縮誘発は認められなかったが,AFが誘発されVFに移行した.VFはDCで停止.電気生理学的検査(EPS)施行,Kent束付着部位は左後側であると同定.洞調律中,順伝導はKent束で,逆伝導は房室結節であった.プログラム刺激で心拍数185bpmのwide QRS tachycardiaが誘発されたが,順伝導はKent束で,逆伝導は房室結節であり逆方向性房室結節リエントリー性頻拍(antidromic AVRT)であった.AVRT中血圧は40mmHgまで低下した.心肺停止の原因はAVRTから心房細動(AF)に移行し,VFに至った可能性が示唆された.Kent束をアブレーションしKent伝導ブロックに成功し,その後症状なく経過している.Antidromic AVNRTが心肺停止の原因であった1例を報告する.
著者
工藤 恵理子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-21, 2003 (Released:2004-02-17)
参考文献数
20

血液型性格関連説を信じている程度が,対人認知過程において選択的確証情報の使用と確証的判断に異なった影響を及ぼす事を検討した。2つの実験において実験参加者は,刺激人物の記述を与えられ,その人物が仮定された血液型かどうか判断を求められた。両実験において,血液型性格関連説を信じる程度に関わらず,実験参加者は確証的情報をその他の情報に比べてより重要であると評定していた。一方,刺激人物の血液型の判断においては,血液型性格関連説を信じる程度により違いが見られた。血液型性格関連説を強く信じる者はそうでない者に比べ,より確証的な判断をする傾向が見られた。これらの結果は,血液型性格関連説を信じる程度が対人認知の過程の中の異なった段階で異なった形で働くという予測を支持するものであった。実験2では,血液型性格関連説についての知識が選択的確証情報の使用にどう影響するかをも検討した。

5 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1935年10月16日, 1935-10-16
著者
深尾 正
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.g71-g72, 1991-04-25 (Released:2017-02-23)

化学的に活性の高いフッ素 (以下F) がエナメル質の脱灰過程に存在すると, きわめて著明な脱灰抑制を示すことが報告されている. Intraoral fluoride releasing device (以下IFRD) は, 口腔内に長期間一定量のFを放出することが可能で, 低濃度のFがエナメル質に効果的に取り込まれ, 齲蝕抑制効果が期待できる新しいF応用法である. そして, このIFRDから放出される低濃度のFにも同様の脱灰抑制があると考えられる. IFRDによるエナメル質へのFの取り込みやエナメル質の結晶性および耐酸性の向上については, 報告されているがIFRDから放出される低濃度Fによる脱灰過程のエナメル質における脱灰抑制効果については未だ研究されていない. そこで本研究では, IFRDによる特徴的な脱灰抑制効果を検討するため, 脱灰液中にFを添加し, ウシエナメル質の脱灰におよぼす影響を検討した. また, IFRDを口腔内に長期間使用した場合を想定すると, すでにFが取り込まれたエナメル質に齲蝕が侵襲することも考えられるので, すでに取り込まれたFと新たに口腔内に放出されたFとの複合効果についても検討した. ウシ下顎永久切歯唇面から6×6×3mmのブロックを作製し, エナメル質試料とした. エナメル質試料をNaFの添加により, 0, 0.3, 1.0, 10.0, 100.0ppmの5段階のF濃度のフッ化物溶液に30, 60および90日間浸漬した. 同試料を37℃, 24時間, 1M KOHに浸漬後, 0.5M HClO_4で連続脱灰を行い, Fは, F複合電極 (オリオンリサーチ, 96-09) で, また, カルシウム (以下Ca) は, 原子吸光分光光度計 (日立製作所, 508) でそれぞれ測定し, エナメル質の層別F濃度を算出した. 次に脱灰液中のFの脱灰抑制効果を検討するために未浸漬のエナメル質試料を用い, NaFの添加により, 0, 0.3, 1.0, 10.0, 100.0ppmの5段階のF濃度でpHを4.4に調整した0.2M酢酸緩衝液で48時間脱灰した. また, 複合効果を検討するために, フッ化物溶液に浸漬後のエナメル質試料を用い, 浸漬液と同一のF濃度の酢酸緩衝液で同様に脱灰した. 脱灰後, 溶出Ca量を原子吸光分光光度計を用い, 溶出リン (以下P) 量をEASTOE法によりそれぞれ測定した. さらに脱灰エナメル質面をSEM (日立製作所, X-560) 観察するとともに, エックス線マイクロアナライザー (日立製作所, X-560) でCa, PおよびFについて同面の元素分析をそれぞれ行った. また, Weatherell et al. のabrasive法を用いて脱灰エナメル質中のF濃度およびCa濃度を測定した. さらに微小部エックス線回折装置 (リガク社, RAD-RC+PSPC/MDG) で脱灰後の反応生成物の定性分析を行った. その結果, 以下の結論を得た. 1) 脱灰液中のF濃度が高いほど脱灰量は減少した. また, 脱灰時間が経過するに従って脱灰量は減少傾向を示し, その傾向は脱灰液中のF濃度が高いほど著明であった. 2) Abrasive法により脱灰エナメル質に取り込まれたF量を測定したところ, 脱灰液中のF濃度が高いほど多量にエナメル質深部にまでFが取り込まれていた. また, いずれの実験においてもエナメル質の脱灰層に多量のFが認められた. 3) 脱灰後の反応生成物をエックス線回折法で定性分析を行った結果, 脱灰液中のF濃度が100.0ppmでは, エナメル質の最表層部にCaF_2の形成が認められた. 4) フッ化物溶液に浸漬したエナメル質をFを含む脱灰液で脱灰した場合, 脱灰量は著明に減少した. 以上のことから, IFRD法を想定し, Fをエナメル質の脱灰過程に作用させると脱灰部にFが取り込まれ, 同部が強化され, 脱灰が抑制されるとともにF濃度100.0ppmではCaF_2が形成されることが明らかになった.
著者
松田 睦彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.183, pp.187-207, 2014-03

小稿は山から石を切り出す採石業に従事する石屋が祀る山の神について,その祭祀の実態を明らかにすることを目的とする。しかし,この目的を達するためには,生業と信仰の関係に注目した研究を取り巻く3 つの問題点を克服しなければならない。すなわち,取りあげられる生業が限定的であること,祭祀の形態についての報告が多くその実態が明らかでないこと,そして,特定の職と職能神との固定的な関係性を前提としていることである。小稿では,この3 つの問題点をふまえたうえで,瀬戸内海地域で活動してきた石屋の山の神祭祀を具体的に検討した。その結果,祭神については特定の神仏と結びつかない例のほか,大山祇神社の大山祇命や石鎚山の石鎚大神といった近隣の社寺の祭神などを祀ることが明らかとなった。また,祭日については正月・5 月・9 月の7 日または9 日という例が多いが,これは近畿から中国,四国に広がる7 日または9 日を山の神の祭日とする考え方と,九州地方を中心に広がる正月・5 月・9月を山の神の祭りを行なう日とする考え方が融合したものである可能性を指摘した。さらに,祭場については山中の特定の場所に簡易に祀るものから神社として祀るものまで多様であり,祈願内容については不慮の事故の防止や良質の石材の産出などが挙げられた。ただ,こうした祭祀の様相は,祭祀の実態を示すものではない。そこで,山の神祭りを行なってきた当事者の語りに注目し,それを同じく石屋の祀る神であるフイゴ神の祭祀についての語りと比較した。すると,これまで石屋の祭祀の中心をなすと考えられてきた山の神に対する信仰が,必ずしも熱心だとは言い難いものであることが明らかになった。こうした結論は,3 つの問題点の3 番目に挙げた特定の職と職能神との固定的な関係を前提とした研究のはらむ危険性を示すものでもある。This paper is aimed at revealing the real state of religious rites of stonemasons who engage in quarrying in mountains and worship mountain gods. To this end, it is necessary to overcome three problems caused by the study focusing on relations between occupation and religious belief. More specifically, the occupation covered by the study is limited. In addition, despite many reports about the form of rites, their real state remains unknown. Furthermore, the study is premised on the fixed relationship between a particular occupation and occupational gods.With these three problems in mind, we specifically examined the religious rites of mountain gods performed by stonemasons in the Seto Inland Sea area. The results discovered that some shrines are not connected to specific deities while others are sacred to neighboring gods such as Ohoyamazumino- Mikoto from Ohyamazumi Shrine and the God of Ishizuchi from Mount Ishizuchi. There are many festivals on the seventh or ninth of January, May, and September, and the study indicated that this custom might be developed by mixing the idea spreading in the Kinki, Chugoku, and Shikoku regions that the seventh or ninth of the month is the feast day of mountain gods with the idea spreading centered on the Kyushu region that January, May, and September are the feast months of mountain gods. Moreover, there are a variety of worship places, ranging from shrines to simple religious sites at specific places in mountains, and stonemasons pray for protection against unforeseen accidents, production of quality stone, and so on.These forms of rites, however, cannot clarify their realities. Therefore, we paid attention to talks of people involved in mountain god festivals. By comparing it with talks about gods of forges that stonemasons also worship, we revealed that their belief in mountain gods is not necessarily strong. This argument indicates the risk of study premised on the fixed relationship between a specific occupation and occupational gods, as described above.