著者
月田 光 羽藤 英二
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.A_194-A_202, 2022-02-01 (Released:2022-02-18)
参考文献数
6

新たな交通モードの挿入により駅まち空間の改変が進むなか、近年では歩行者回遊が大きなテーマとなっている。歩行者の回遊行動は経路選択モデルで記述され、経路を列挙する必要が無い再帰的ロジットモデルが使われることも多いが、既存のモデルでは全ての交差点間で同じ所要時間が仮定されているなど、将来価値の低減が正しく評価されておらず、歩行者回遊の特徴である逐次的な意思決定を正しく評価できていない。そこで本研究では、リンク長が異なるネットワークにも適用可能な、リンク長に対して一般化された時間割引率を持つ再帰的回遊モデルの定式化を行った。8 つの駅まちネットワークでパラメータ推定とバリデーション比較を行うことでモデルの妥当性とパラメータの転移可能性を検証し、さらに従来型のモデルと尤度を比較することでモデルの優位性を示した。
著者
原田 健太郎
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.237-253, 2009-05-23 (Released:2019-05-13)
参考文献数
25

本稿では,大学の教科書を分析対象にして,大学教育の標準性の実態について基礎的・試験的な検討を行った.これまでの大学の教科書に関する研究の蓄積について整理した上で,索引を用いて,大学の教科書における標準性の共時的差異と通時的変化を明らかにした.標準性を測る指標としては,浦田(1987)で作成された合意度という指標を用いた.この分析に加えて,記載の頻度の高い単語に注目し,教科書の内容の変化についての検討も行った.結果としては,調査した三つの専門分野全てで標準化が進んでいること,文系分野よりも理系分野で標準性が高いこと,文系分野では会計学が教育学よりも標準性が高いこと,また,記載頻度の高い単語は,物理学では変化の程度が低く,教育学では変化の程度が高いことなどを明らかにした.
著者
林 あつみ 清水 真澄 七戸 和博 長谷場 健 木元 幸一
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.321-329, 1996 (Released:2010-02-22)
参考文献数
30

スナネズミの肝と胃における各クラスのADHアイソザイムの存在ならびにそれら組織におけるADH活性をマウス, ラット, モルモット等の超歯類と比較検討した。スナネズミは, 肝においては, 電気泳動により3本のADHバンド (A, B, C) が検出された。陰極側のバンドAは低濃度エタノールを基質とした場合に濃く染色され, 4-methylpyrazoleで強く阻害されたことから, クラスIと同定された。陽極側のバンドCはヘキセノールに対して強い活性を示し, エタノールを基質とした場合2.5Mまで活性が飽和せず, 4-methylpyrazoleにより阻害されないことより, クラスIIIと同定された。クラスとクラスIIIの間にみられたバンドBは, 肝に存在することおよびIとIIIの中間の酵素的性質を有することより, クラスIIと同定された。胃においても2本のバンド (D, E) が検出された。陰極側のバンドDは, 胃に特異的であること, エタノール1Mで最大活性を示したこと, また4-methylpyrazoleによる阻害感受性が肝のクラスI ADHより低いことより, クラスIVと同定された。陽極側のバンドEは肝のバンドCと同様の基質特異性および4-methylpyrazoleによる阻害感受性および移動度より, クラスIIIと同定された。以上のように, スナネズミのADHアイソザイムシステムは他の齧歯類と同様であった。スナネズミの肝におけるADH活性は, マウスやラットと同様, 15mMエタノールおよび5mMヘキセノールのいずれの基質でもモルモットより有意に高かった。一方, スナネズミの胃ADH活性はいずれの基質でもモルモットと同様, マウスおよびラットに比べ著しく低かった。また, 肝ADHはいずれの種においても, 15mM以上のエタノール濃度では活性の低下がみられたが, 胃ADH活性はマウスやラットにおいては逆に上昇し, 0.25M以上になると逆転し, 肝の活性より高くなった。このことは, 胃が摂取された高濃度のアルコールを代謝する場として重要であると考えられた。一方, スナネズミおよびモルモットにおける胃ADH活性は, 高濃度エタノールでも有意な活性の上昇はみられず, 低値のままであった。したがって, これらの動物種のアルコール代謝における胃の役割は小さいと考えられた。さらに, 動物種間における各ADHアイソザイム活性の相違は, とくに胃ADHのヘキセノールに対する活性で著しく, 各動物種の食性との関連が示唆された。
著者
阪本 要一 西澤 美幸 佐藤 富男 大野 誠 池田 義雄
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.38-41, 1993-10-20 (Released:2012-08-27)
参考文献数
14
被引用文献数
5

体脂肪の測定法として,近年いろいろな簡易法が開発されてきている。今回,生体インピーダンス法の応用として,立位で測定した両足間の生体インピーダンスから体脂肪を推定する方法を新たに考案し,皮脂厚法及びBMIとの相関性について検討した。その結果,皮脂厚法及びBMIのいずれとも高い相関性を示し,体脂肪の評価に有用である事が確認された。
著者
竹下 隆晴 野村 尚史 松井 信行
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.115, no.4, pp.420-427, 1995-03-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
10
被引用文献数
5 11

This paper presents a position sensorless drive of a brushless dc motor with a sinusoidal flux distribution. The estimation of position and emf is performed by using the integration of the current differences between the actual motor and model. The estimation speed is calculated by the differential calculus of the estimated position. The stability of the proposed algorithm and the design of the estimation gains are explained and it is shown that the parameter differences do not give serious effects on the estimation characteristics.In the experimental results using a 6-pole 1.2kW test motor, the speed control range from 35 to 1500rpm is obtained. To verify the proposed algorithm, the estimation and speed control characteristics are shown. Furthermore, the starting characteristics of the motor from arbitrary rotor position are shown.
著者
溝口 博之 山田 清文
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.153, no.5, pp.224-230, 2019 (Released:2019-05-14)
参考文献数
35

依存症は世界銀行・WHO(世界保健機関)が報告するDALY(障害調整生命年)によると,世界トップ10に入る健康を脅かす疾患である.中でも,アルコール乱用を初めとする物質依存・薬物使用障害のDALYは若年層において非常に高い数値を示している.国内に目を向けても,薬物逮捕ラッシュの芸能界が表すように薬物汚染は止まっていない.また統合型リゾート推進法の成立により日本でもカジノが解禁されることから,ギャンブル依存者の急増という社会的且つ医薬学的問題も懸念される.さらにWHOはゲーム障害を精神疾患と認定したことからも,新たな依存症の包括的理解に向けた機序解明と医学的に適切な予防対策や治療戦略の発信が期待されている.ではなぜ,私たちはゲーム,ギャンブル,薬物に〝はまる〟のか? なぜ,一度手を染めた人はリスクを負っても危険ドラッグや覚せい剤の売買をするのか? なぜ治療したはずなのに依存症は再発するのか? どうして自分をコントロールできなくなるのか? そして,こうした症状は脳のどこから生まれるのか? 私たちはちょっと変わった視点(意思決定)から,依存者の脳と心の問題に迫ってきた.一方,近年の目まぐるしい実験技術の進歩により,遺伝子発現を制御するための多種多様なウイルスベクターが開発された.細胞特異的に遺伝子を発現させ,その細胞・神経の活動をコントロールすることも可能となった.今ではウイルスベクターを用いた行動薬理実験が当然のように行われ,顕著で分かりやすい研究成果が発表されている.著者らもこの手法を用いて特定の脳領域の活動や細胞活性を操作した時の意思決定について検討してきた.本稿では,意思決定について概説するとともに,当研究室で行ったウイルスベクターを用いた意思決定・行動選択研究への応用について述べる.
著者
井手口 彰典
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.3-20, 2015-10-01 (Released:2020-06-20)
参考文献数
36

「童謡」という言葉は今日、子供のための歌(とりわけ大正時代以降に発表されたもの)を指す名称として一般に用いられている。だが具体的に何をもって童謡とするのかはしばしば曖昧であり、たとえば学校唱歌やアニメソング、また近年の子供向けヒット曲を童謡と呼ぶのか否かは文脈によって異なる。 童謡をめぐるこうした概念の揺れは、この言葉が持つ歴史性と深く関係していると考えられる。そこで本稿では、童謡が子供のための歌という基本的な意味を獲得した大正期から現代までを対象に、音楽学者E・W・ポープのモデルを援用しつつ、童謡の社会的イメージの変遷過程を明らかにする。ポープによれば、社会に登場した異文化由来の記号は、当初「エキゾチック(/国際的/モダン)」なものとして受容されるが、次第に「普通」のものとして定着し、やがて「懐かしい(/国民的な/伝統的な)」ものへと推移していくことがあるという。童謡もまた、このモデルに沿った変化を見せている。すなわち、大正期に登場した童謡はモダンかつエキゾチックなものであったが、昭和に入るとレコードとラジオの普及によって普通のものになり、さらに一九六〇年代末頃からは徐々に懐かしさの対象へと変わっているのだ。 今日我々が漠然と抱いている「童謡」観は、この「懐かしい」段階に相当するものである。だがそうした理解は決して絶対的なものではなく、状況次第では「エキゾチック」ないし「普通」の時代の認識が呼び戻されることも少なくない。このことが、「童謡」という言葉が持つ社会的イメージの多様さの原因になっていると考えられる。
著者
花田 匡利 及川 真人 名倉 弘樹 竹内 里奈 石松 祐二 城戸 貴志 石本 裕士 坂本 憲穂 迎 寛 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.93-98, 2022-12-26 (Released:2022-12-26)
参考文献数
20

近年,間質性肺疾患に対する呼吸リハビリテーションに関する報告が集積され,診療ガイドラインにおいても弱いながら推奨されるレベルに位置付けられている.しかし,不均質な病態かつ,難治性疾患という本疾患の基本的特徴は呼吸リハビリテーションに様々な影響を及ぼし,COPDを対象として確立されたエビデンスの高いプログラムを適用できないことも少なくない.そのため今後,従来の呼吸リハビリテーションとは異なる疾患特異的な方法論の確立,さらには維持プログラムのあり方が重要な課題となる.
著者
瀬川 凌介 及川 真人 花田 匡利 名倉 弘樹 新貝 和也 佐藤 俊太朗 澤井 照光 永安 武 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.110-116, 2022-12-26 (Released:2022-12-26)
参考文献数
19

【目的】肺癌の外科治療では,術後に遷延する呼吸不全によって酸素療法の継続を余儀なくされる患者も存在する.本研究は,退院時に酸素療法を必要とした患者の割合と,その臨床的特徴を明らかにすることを目的とした.【対象と方法】本研究は単施設の後方視観察研究であり,2009年から2018年に長崎大学病院にて肺切除術を施行された肺癌患者を対象とした.診療録より,対象者背景,術前の呼吸機能および身体機能,手術関連項目,術後経過,退(転)院時転帰を調査した.【結果】解析対象者は1,256件で,そのうち46件(3.7%)が酸素療法継続となった.酸素療法継続に対して重要度が高い評価項目を推定するランダムフォレスト解析において,術前の肺拡散能や6分間歩行試験中の酸素飽和度低下が抽出された.【結語】肺切除術後患者において,術前の肺拡散能や6分間歩行試験中の酸素飽和度低下は,術後の酸素療法の必要性を予測する指標となる可能性が示唆された.
著者
Susumu Yagome Takehiro Sugiyama Kosuke Inoue Ataru Igarashi Ryotaro Bouchi Mitsuru Ohsugi Kohjiro Ueki Atsushi Goto
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
vol.32, no.10, pp.476-482, 2022-10-05 (Released:2022-10-05)
参考文献数
25
被引用文献数
11

Background: Regular visits with healthcare professionals are important for preventing serious complications in patients with diabetes. The purpose of this retrospective cohort study was to clarify whether there was any suppression of physician visits among patients with diabetes during the spread of the novel coronavirus 2019 (COVID-19) in Japan and to assess whether telemedicine contributed to continued visits.Methods: We used the JMDC Claims database, which contains the monthly claims reported from July 2018 to May 2020 and included 4,595 (type 1) and 123,686 (type 2) patients with diabetes. Using a difference-in-differences analysis, we estimated the changes in the monthly numbers of physician visits or telemedicine per 100 patients in April and May 2020 compared with the same months in 2019.Results: For patients with type 1 diabetes, the estimates for total overall physician visits were −2.53 (95% confidence interval [CI], −4.63 to 0.44) in April and −8.80 (95% CI, −10.85 to −6.74) in May; those for telemedicine visits were 0.71 (95% CI, 0.47–0.96) in April and 0.54 (95% CI, 0.32–0.76) in May. For patients with type 2 diabetes, the estimates for overall physician visits were −2.50 (95% CI, −2.95 to −2.04) in April and −3.74 (95% CI, −4.16 to −3.32) in May; those for telemedicine visits were 1.13 (95% CI, 1.07–1.20) in April and 0.73 (95% CI, 0.68–0.78) in May.Conclusion: The COVID-19 pandemic was associated with suppression of physician visits and a slight increase in the utilization of telemedicine among patients with diabetes during April and May 2020.