著者
瀬尾 美紀子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.68-82, 2016 (Released:2016-08-12)
参考文献数
66
被引用文献数
1 2

本稿では, 現在の教授・学習研究が「21世紀の学習・教育実践」に対しどのような役割を果たすことができるか明らかにすることを目的とした。「21世紀の学習・教育実践」に関する教育界の議論を踏まえ, この1年間の教授・学習研究を「学習の認知過程に関する研究」「主体的・自律的な学習に関する研究」「協同や相互作用を活かした学習に関する研究」の3つに分類して論評した。学習の認知過程に関しては, 思考・問題解決や言語表現に比べて, 知識獲得・記憶に関する研究が少ないことが明らかになった。一方, 言語表現に関する研究は, コミュニケーション能力の育成に具体的かつ実践的な示唆をもたらすものが多く見られた。主体的・自律的な学習に関しては, 特に, 不適応的な学習行動の適応的側面を見出す研究がリアリティのある実践提案に結びつく可能性が示唆された。協同や相互作用を活かした学習に関しては, 機能の解明から, 規定要因についての検討および協同を活かした教育実践研究へと研究関心が移ってきている可能性が述べられた。最後に, 21世紀の学習・教育実践に対して, どのような教授・学習研究が期待されるか今後の研究の方向性について展望した。
著者
辻 明日香
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.29-57, 2016-03-15 (Released:2018-03-30)

After the Islamic conquest, the landscape of Egypt underwent great changes. Arabization gradually advanced, and the Coptic language died out. However, the Islamization of Egypt, which was slower than that of other Middle Eastern areas, was never completed. This paper explores the little known history of the Coptic community in this period through an analysis of the names of the bishops and their sees of the Nile Delta; it seeks to determine which sees were occupied and which became extinct. Of the twenty-four bishoprics listed in the synod of 1086, ten were extinct and four were on the verge of extinction by the end of the twelfth century. In the thirteenth to the fourteenth century, a different situation emerged: Bishoprics were restored or newly created, mostly in the Gharbiya Province, the richest part of the Delta. The Coptic Church was still functioning in the Delta, as is also attested by the itinerary of Yuhanna al-Rabban, a Coptic saint who wandered in the Gharbiya from the late thirteenth to the early fourteenth centuries.

5 0 0 0 OA 国訳大蔵経

著者
国民文庫刊行会 編
出版者
国民文庫刊行会
巻号頁・発行日
vol.論部 第11巻, 1936
著者
川根 正教 石川 功 植木 真吾
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.12, no.20, pp.111-133, 2005-10-20 (Released:2009-02-16)
参考文献数
21

寛永通宝は,江戸時代を通じ数次にわたって鋳造された近世の代表的な銭貨である。文献資料から鋳造年代がある程度判明していること,各時期に鋳造された寛永通宝にはそれぞれ形態的特徴が認められることから,考古学的手法によって分類・編年を行うことにより,遺構や遺物の年代を推定する資料として有効な活用を図ることができる。また,文献史学・経済史学や自然科学などとの学際的研究を行うことによって,流通や銭貨製作の具体的様相を理解することも可能となろう。本稿では,千葉県三輪野山道六神遺跡B地点の近世墓から発掘調査によって出土した寛永通宝銅銭を研究対象資料とする。同一時期に鋳造された寛永通宝には様式(style)という概念を,彫母銭を同一とすると考えられる寛永通宝には型(pattern)という概念を与え,寛永期から元文・寛保;期までに鋳造された寛永通宝銅銭を文字形態などによってIa様式・Ib様式・IIa様式・IIb様式・IIIa様式・V様式の5様式に大分類し,同時に判明する資料については型分類を合わせて行なった。そして,分類した様式及び型について,計測値による形態的特徴の検討,金属成分分析による元素組成の特徴を検討した。その結果,各様式と各型は輪・郭の径及び重量などに固有の形態的特徴をもち,また銅・錫・鉛の主要元素や鉄・砒素・アソチモソなどの微量元素からなる元素組成の特徴も,各様式及び各型に認められることが判明した。このことから,各時期に鋳造された寛永通宝の銭貨としての品質的特徴は,該期の鋳造技術の水準や金属生産量と関連しつつ,貨幣経済発展に対応する幕府の銭貨政策を極めて端的に反映していることが明らかになった。
著者
中野 加奈子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会福祉学研究科篇 (ISSN:18834019)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.55-70, 2009-03-01

ホームレス問題が社会問題化した1990年代後半以降には,ホームレス問題に取り組む研究者や支援者達によって様々な調査研究がなされ,ホームレス状態におかれる人々の生活実態が明らかになってきた。また2002年には「ホームレスの自立支援等に関する特別措置法」が制定されるなど政策的にも大きな動きがあった。しかし,これまでに生活再建に関わるソーシャルワークの課題として,Iホームレス問題」が取り上げられてきたことは少なかったように思われる。そこで本稿では,ホームレス問題についての先行研究や,制度政策の変遷,また実態調査の結果を振り返りながら,ホームレスの生活実態や,生活問題を捉える視点について考察し,ホームレスの生活史から,「ホームレス問題」を捉える事の重要性を検討する。そして,ホームレスの生活問題の特質と生活が変化していく過程を捉え,生活再建の意味とソーシャルワークに求められる機能を検証していく。
著者
原口 耕一郎
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.204-188, 2008-06-25

『古事記』『日本書紀』においては、かなり古い時代の記事から隼人は登場する。この隼人関係記事の信憑性をめぐって、大きく二つの議論がある。一つは天武朝以降の記事からならば、それなりに信を置くことができるとする理解であり、これは現在の通説になっているといえよう。もう一つは、天武朝より前の時期の記事にも史実性を認めようとする理解である。小論は、これまでの隼人研究史を回顧し、隼人概念の明確化をはかり、『記・紀』に史料批判を加え、天武朝より前の隼人関係記事については、ストレートには信を置きがたいことを論じようとするものである。つまり、可能な限り通説の擁護を目指すことが小論の目的である。まず、文献上にあらわれる隼人様を整理し、隼人概念の明確化を行う。次に考古資料と隼人概念との対比を、最近の考古学研究者の見解を踏まえながら行う。さらに畿内隼人の成立について触れる。その結果、『記・紀』編纂時における政治的状況、すなわち日本型中華思想の高まりの中で、政治的に創出された存在としての隼人の姿が明らかにされるであろう。このような、現在の隼人理解において中核的なテーゼをなす、「隼人とは政治的概念である」という主張を確認したうえで、天武朝より前の隼人関係記事は漢籍や中国思想により潤色/造作を受けていることを明らかにする。
著者
望月 詩史 Shifumi Mochizuki
出版者
同志社法學會
雑誌
同志社法學 = The Doshisha Hogaku (The Doshisha law review) (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.979-1021, 2016-07-31

本稿では、清沢洌の提案により1928年に発足した二七会の活動状況について検討した。活動の中心は、毎月27日に開催された定例懇談会である。政治や経済などをテーマに議論したり、時折、来賓を招いて時局談を聞いたりした。会員は主に、『中央公論』に寄稿していた評論家と文学者である。この会は学術組織ではないため、会員の間で思想的な統一性や時局に対する共通の見解が存在したわけではない。だが、そこには「自由」に特徴付けられる独特の雰囲気が存在していた。
著者
宮原 聡子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.1305-1310, 1995-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
11

オリーブ花粉は, 地中海沿岸地域における主要吸入抗原の一つである. 著者は, 国内有数のオリーブ生産地である小豆島におけるオリーブ花粉の飛散状況と, オリーブ花粉症の有無について免疫血清学的臨床調査を行った. その結果, オリーブ花粉症と考えられる患者 (15名) を認めた. またオリーブ花粉症患者血清においてカモガヤ (イネ科) 花粉との交叉反応が示唆された. オリーブを含むモクセイ科花粉とイネ科花粉との共通抗原性が報告されており, 今回の結果から国内においてもイネ科花粉症患者がモクセイ科花粉によってアレルギー反応が誘発されていると推測された.

5 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1926年09月27日, 1926-09-27
著者
Hiroshi Koga Atsushi Yamagishi Atsushi Takayanagi Kohji Maeda Takashi Matsukubo
出版者
Tokyo Dental College, Japan
雑誌
The Bulletin of Tokyo Dental College (ISSN:00408891)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.119-128, 2007 (Released:2007-12-05)
参考文献数
16
被引用文献数
7 9

Fluoride dentifrice has been accepted widely for use in caries prevention and its effectiveness has been confirmed. In order to enable the use of fluoride dentifrice effectively in daily brushing, the present study was performed to examine the relationship between fluoride uptake and the amount of fluoride dentifrice used and brushing time for adults. We examined the relationship between fluoride uptake into the surface layer (4-6 μm)of enamel and the active fluoride concentration in vitro and the relationship between the amount of fluoride dentifrice (1,000ppmF) used and the fluoride concentration in oral fluid in vivo. It became clear that fluoride uptake into the enamel was increased at the concentrations of 300ppmF or more. Fluoride uptake at 300ppmF was increased for 2min and became saturated thereafter. The results of the relationship between the fluoride concentration in the oral fluid and the amount of fluoride dentifrice used indicated that the amount of dentifrice that could maintain the mean fluoride concentration at 300ppm or more for 2min was 1.0g or more. From these results, the recommended amount of fluoride dentifrice (1,000ppmF) is 1.0g or more for adults.