著者
森田 敏
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.52, pp.1-78, 2009-08

近年、西日本を中心に多発しているイネの高温登熟障害の発生に及ぼす日射量、施肥、品種、高夜温の影響とその要因について解析した。1. 人工気象室で登熟期の気温を平年より3℃高くすると玄米1粒重と玄米外観品質が低下したが、作期移動など登熟期の気温と日射量がともに上昇する条件では玄米1粒重は低下せず、良質粒歩合の低下程度は小さかった。高温と低日射が重なると、普及品種ヒノヒカリでは高温耐性品種にこまるよりも粒重増加速度が低下し、玄米1粒重と玄米の粒張りが低下した。2. 穂肥の量を増やすと、高温年では玄米1粒重が増加し外観品質が向上した。穂肥を出穂前後の1ヶ月間に15回に分けて与える施肥法では2回与える慣行法に比べて、また、にこまるではヒノヒカリに比べて、それぞれ未熟粒歩合が低下した。これらの品質向上の要因として、穂揃い期の茎葉における貯蔵炭水化物の増加が考えられた。3. 玄米1粒重は高夜温(22/34℃)で低下し、高昼温(34/22℃)ではほとんど低下しなかった。穂と茎葉に別々に高夜温処理を与えた実験や粒重増加推移の解析、胚乳細胞の画像解析などにより、高夜温条件では粒重増加速度と玄米への乾物分配率の低下および胚乳細胞の成長抑制が玄米1粒重の低下に密接に関与していることが示された。以上、本研究では高温低日射条件でも登熟が不良になりにくい品種特性や施肥法を示したほか、高夜温が成熟期の玄米1粒重を低下させるプロセスを明らかにした。
著者
森田 敏
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.52, pp.1-78, 2009-08 (Released:2011-03-05)

近年、西日本を中心に多発しているイネの高温登熟障害の発生に及ぼす日射量、施肥、品種、高夜温の影響とその要因について解析した。1. 人工気象室で登熟期の気温を平年より3℃高くすると玄米1粒重と玄米外観品質が低下したが、作期移動など登熟期の気温と日射量がともに上昇する条件では玄米1粒重は低下せず、良質粒歩合の低下程度は小さかった。高温と低日射が重なると、普及品種ヒノヒカリでは高温耐性品種にこまるよりも粒重増加速度が低下し、玄米1粒重と玄米の粒張りが低下した。2. 穂肥の量を増やすと、高温年では玄米1粒重が増加し外観品質が向上した。穂肥を出穂前後の1ヶ月間に15回に分けて与える施肥法では2回与える慣行法に比べて、また、にこまるではヒノヒカリに比べて、それぞれ未熟粒歩合が低下した。これらの品質向上の要因として、穂揃い期の茎葉における貯蔵炭水化物の増加が考えられた。3. 玄米1粒重は高夜温(22/34℃)で低下し、高昼温(34/22℃)ではほとんど低下しなかった。穂と茎葉に別々に高夜温処理を与えた実験や粒重増加推移の解析、胚乳細胞の画像解析などにより、高夜温条件では粒重増加速度と玄米への乾物分配率の低下および胚乳細胞の成長抑制が玄米1粒重の低下に密接に関与していることが示された。以上、本研究では高温低日射条件でも登熟が不良になりにくい品種特性や施肥法を示したほか、高夜温が成熟期の玄米1粒重を低下させるプロセスを明らかにした。
著者
引原 隆士
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.943-950, 2010-08-15
被引用文献数
5

スマートグリッドに関連した用語が新聞の紙面で飛び交い,昨今基盤技術として先進の技術からは顧みられることが少なくなっていた電力・エネルギー分野が,情報技術の適用にとって新しいフロンティアとして着目され,新しいエネルギー技術,持続可能社会実現への入り口として脚光を浴びている.動力を電気エネルギーに変換する発電機の発明は19 世紀に遡る.現在の交流電力の大規模ネットワークは,この発電機間を電力を融通する線路でつなぐと同一周波数に収斂する性質に依存している.この性質を維持しつつ必要な電力を供給する大規模システムの運用において,ICT 技術がブレークスルーを与える技術となり得るであろうか? スマートグリッドなどの技術がエネルギーシステムに革新を与えるか否かは,この点を抜きに議論することはできない.本解説は,人の生活環境,すなわち建物内からボトムアップに電力分野を通信・情報分野と融合させる手法として,電力パケットを導入する方法とそのルーティングの可能性を,周辺技術の現状に基づき述べる.
著者
宅野 嗣大 小山 めぐみ 引原 隆士
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会 研究発表講演会講演論文集 第54回システム制御情報学会研究発表講演会
巻号頁・発行日
pp.204, 2010 (Released:2010-08-19)

近年,分散電源の普及により,家庭で用いる電力が複数の電源から供給される状況になりつつある.しかし,現在,電力は供給電源によらずに全て均質として扱われ,負荷に分配されている.本研究では,家庭内における電力の管理,電源分別を目的とし,パケット通信の考え方を電力分野に導入した電力パケットを用いた配電を検討する.特に,電力パケットルーティングにおける電力量調整方法について述べる.
著者
高田 裕介 レオン 愛 中井 信 小原 洋 神山 和則
出版者
土壌物理学会
雑誌
土壌の物理性 = Journal of the Japanese Society of Soil Physics (ISSN:03876012)
巻号頁・発行日
no.123, pp.117-124, 2013-03

わが国の農耕地における土壌情報で特に重要なものがデジタル農耕地土壌図と土壌環境基礎調査データベースである.本研究では,公開されている土壌情報の利活用の一例を示すために,土壌情報閲覧システムに収録されている農耕地土壌図および作土層の理化学性データベースを用いて炭素および窒素賦存量の全国試算を行い,それらの時空間的な変動を解析した.作土層中の炭素および窒素賦存量の平均値は有機質土壌グループおよび黒ボク土グループで高かった.また,炭素賦存量の主たる土壌群毎の経時変化は,水田で一定,普通畑で減少傾向,樹園地および牧草地で増加傾向にあった.他方,窒素賦存量の平均値は全ての地目において増加傾向であり,炭素/窒素比は減少傾向となった.作土層中の炭素および窒素総量は235から218TgCへ,また窒素総量は19.0から18.4TgNへと減少したが,農耕地面積の減少傾向とは一致しなかった.本結果は適切な土壌管理によって,耕地面積の減少による炭素および窒素賦存量の減少を抑制できるということを示している.
著者
高田 靖司
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.109-115, 1983-03-25 (Released:2010-08-25)
参考文献数
21

名古屋市緑区の農地に散在する休耕地において, 小哺乳類の記号放逐試験と捕殺を行なった。採集された小哺乳類はアカネズミ, ハツカネズミ, カヤネズミ, ジネズミおよびコウベモグラであった。そのうちで, アカネズミとハツカネズミは個体数が多く, 優占的にみられた。アカネズミ, ハツカネズミおよびカヤネズミは, 相互の分布の重複が少なく, 互いに排他的であることが示された。すなわち, アカネズミはセイタカアワダチソウ, ススキやヨシなど草丈が高く, 下草の豊富な草地を選択していたが, ハツカネズミはイヌムギ, エノコログサ, ヌカキビなど草丈の低いイネ科1年草の草地に強く結びついていた。これに対して, カヤネズミは特定の群落との結びつきが前2者程明確でなかった。
著者
荒川 好満
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.46-51, 1984-11-30
著者
箭内 匡
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

原発被災とイメージの問題に関して、本発表では二つの作業を行う。第一の作業は、関連する様々なドキュメント(文字あるいは写真や動画映像によるもの)を検討しつつ、〈可視的なもの〉と〈不可視のもの〉の関係を、イメージ概念を軸にして考察することである。第二の作業は、本分科会の発表者の一人である武田直樹がつくば市で行ってきた、福島避難者支援のネットワークに関する映像記録資料について考察することである。
著者
鈴木 章泰 内藤 美保 功刀 利夫
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.500-503, 1994
被引用文献数
3

ポリメタクリル酸メチル (PMMA) フィルムのネッキングゾーン延伸における臨界ネッキング応力 (σ<SUB>c</SUB>) と延伸温度 (T<SUB>d</SUB>) との関係を調べた. その結果, ガラス転移温度 (T<SUB>g</SUB>=110.4℃) 以下の温度域で<SUB>c</SUB>T<SUB>d</SUB>の低下に伴いほぼ直線的に増加することが確認された. そこで, T<SUB>g</SUB>以下の温度域でのσ<SUB>c</SUB>をT<SUB>g</SUB>T<SUB>d</SUB>の差 (T<SUB>g</SUB>-T<SUB>d</SUB>) についてプロットしたところ, 次式で示されるような簡単な実験式を得た. σ<SUB>c</SUB>=C (T<SUB>g</SUB>-T<SUB>d</SUB>) (ただ, T<SUB>g</SUB>>T<SUB>d</SUB>) なお, この定数Cは0.490MPa・℃<SUP>-1</SUP>となり, ポリエーテル・エーテル・ケトン (PEEK) フィルムの0.539MPa・℃<SUP>-1</SUP>およびポリ (エチレンテレフタレート) (PET) 繊維の0.546MPa・℃<SUP>-1</SUP>に近い. 種々のT<SUB>d</SUB>でネッキングゾーン延伸して得られたフィルムのネッキング延伸倍率 (λ<SUB>n</SUB>) では, T<SUB>g</SUB>以下で延伸したフィルムのλnがT<SUB>g</SUB>以上で得られたィルムより大きく, また, T<SUB>g</SUB>以下の延伸ではT<SUB>d</SUB>が高いほどλnが大きくなる傾向にある. 負の複屈折 (Δn) を示すPMMAで, T<SUB>d</SUB>=80℃で延伸したフィルムのΔnは-16×10<SUP>-4</SUP>であるが, T<SUB>d</SUB>の上昇とともに負の値が小さくな, T<SUB>d</SUB>=132℃で延伸したフィルムはほとんど無配向である.
著者
阿辺川武 間下亜紀子
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.19, pp.1-6, 2013-03-08

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