著者
多湖 千晃 柳田 則之 成内 秀雄 落久 保文子 倉田 毅
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.1625-1631, 1991

We investigated the role of immunological mechanisms in sensorineural hearing disorders and the relationship between inner ear and renal pathologies.<br>Controls, and NZB/kl and MRL/lpr strain mice, in which autoimmune disease can be spontaneously induced, were used in this study. The mice were tested for acoustic brain stem response (ABR), cochlear and renal pathology and circulating immune-complexes (CIC) serology, using enzyme immunoassay (ETA). For ABR, click and high frequency tone bursts were used as stimuli. Pathological studies consisted of tissue changes observed following hematoxylin-eosin (HE) and indirect immunofluorescent staining under light microscopy.<br>Compared to controls, hearing was impaired in NZB/kl mice while hearing remained unaffected in MRL/lpr mice. On HE staining, no histological changes were observed in the cochleae of either strain of mice. However, indirect fluorescent staining showed IgG deposits in the stria vascularis in both strains of mice. In both strains, renal pathology consisted of an immune-complex glomerulonephritis. CIC values were significantly higher in MRL/lpr mice, but were not correlated to stria vascular lesions. The lesions in the stria vascularis in the two strains were different, which probably explains the discrepancy in hearing impairment, whereas the lesions in the kidney were similar. NZB/kl mice that had hearing impairment showed severe stria vascular lesions and there was a correlation between the degree of hearing impairment and the severity of stria vascular lesions. However, no correlation was seen between stria vascular and renal lesions and CIC values.<br>These findings suggest that autoimmune mechanisms exist yin the cochlea, mainly in stria vascularis. The NZB/kl mouse can be a useful model of sensorineural hearing disorder secondary to immunological disorders.
著者
川嶋 かほる 小西 史子 石井 克枝 河村 美穂 武田 紀久子 武藤 八恵子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.216-225, 2003-10-01
被引用文献数
4

小中高の家庭科担当教師に調理実習の学習目標について質問紙調査をした結果,以下の点が明らかになった。1.実習の学習目標を「基本的な調理法や調理器具の扱いができる」や「安全衛生に気をつけて調理する」などにおく教師が多く,技能技術の習得を中心において調理実習観が根強いと考えられる。しかし,授業時間や子どもの生活体験の低下等の制約の中で,技能技術の習得達成を期待していない教師も多く、また技能技術の習得を確実にするための工夫は積極的におこなわれているとは言いがたかった。2.調理実習の学習目標には,社会的認識の目標設定が少なく,食生活教育の総合の場ととらえる視点は弱かった。3.調理実習を「楽しければよい」とする考えが一部に強くみられた。調理実習の楽しさを友達との共同的な学びとすることや技能技術の上達ととらえる回答は少なかった。4.食生活状況や子どもの問題状況の把握が学習目標にいかされているとはいえない結果だった。
著者
南日 俊夫
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.196-205, 1962
被引用文献数
1

日本附近の太平洋の表層水温の月平均値とその年変化を求めた。この年変化の輻は北に行く程大きくなる。この水温と黒潮流軸の位置との間には相関はみられなかつた。ただ暑い季節(7月)にはどの点の表面水温もお互いに高い相関をもつようになる。黒潮の流れに沿つて下流の方へ,水温は年を通じて300~500Km程度まで相関がみられる。又各観測点での水温の平均持続日数は90日程度である。室戸岬の気温.と黒潮表面水温には相関がみられる。
著者
佐藤 啓生
出版者
岩手大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
岩手大学大学院人文社会科学研究科研究紀要
巻号頁・発行日
no.20, pp.21-38, 2011-06

私たちが言葉による謝罪を行なう場合には,「ごめんなさい」「すみません」といった,謝罪の意味を表わす定型表現を使用することが多い。これらの定型表現は,用例を細かく見ていくと,感謝や通行時の挨拶など,明確な謝罪以外の意味を表わす場合もあるが,基本的には謝罪の文脈で使用されることが多い。よって,謝罪の意味を表わすことのある定型表現を,本稿では「謝罪言葉」と呼ぶこととする。「謝罪言葉」に関する先行研究では,定型表現ごとの言葉としての性質の違いや,表現ごとの使い分けが起こる要因となっている文脈上の要素について,様々な観点からのアプローチが行なわれている。しかし,多岐に渡る要素同士の相互関係に触れたものや,個々の表現ごとにどのような要素の傾向が見られるか,つまりは具体的に何によって使い分けられるのか,といったことをまとめた研究は少ない。そこで本稿は,ドラマの脚本から用例を得て,先行研究で取り上げられた,または今回の研究で有効と判断した,謝罪言葉の使い分けに関わる要素を,相互関係も含めて整理したい。またそれにより,「ごめんなさい」「すみません」といった,いくつかの代表的な謝罪言葉について,それぞれどのように使い分けられているのかを提示する。
著者
佐藤 啓生
出版者
岩手大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
岩手大学大学院人文社会科学研究科研究紀要
巻号頁・発行日
no.20, pp.21-38, 2011-06

私たちが言葉による謝罪を行なう場合には,「ごめんなさい」「すみません」といった,謝罪の意味を表わす定型表現を使用することが多い。これらの定型表現は,用例を細かく見ていくと,感謝や通行時の挨拶など,明確な謝罪以外の意味を表わす場合もあるが,基本的には謝罪の文脈で使用されることが多い。よって,謝罪の意味を表わすことのある定型表現を,本稿では「謝罪言葉」と呼ぶこととする。「謝罪言葉」に関する先行研究では,定型表現ごとの言葉としての性質の違いや,表現ごとの使い分けが起こる要因となっている文脈上の要素について,様々な観点からのアプローチが行なわれている。しかし,多岐に渡る要素同士の相互関係に触れたものや,個々の表現ごとにどのような要素の傾向が見られるか,つまりは具体的に何によって使い分けられるのか,といったことをまとめた研究は少ない。そこで本稿は,ドラマの脚本から用例を得て,先行研究で取り上げられた,または今回の研究で有効と判断した,謝罪言葉の使い分けに関わる要素を,相互関係も含めて整理したい。またそれにより,「ごめんなさい」「すみません」といった,いくつかの代表的な謝罪言葉について,それぞれどのように使い分けられているのかを提示する。
著者
坂上 貴之
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.5-17, 2005-04-25

ヒトを参加者とした研究の倫理基準(American Psychological Association, 1992版)は以下のようにまとめられる。(1)倫理的自己制御とその限界、(2)他者の権利の尊重、(3)より上位の規定や勧告の遵守、(4)強制のない参加の保証、(5)情報操作の禁止、(6)秘密の保持。このうち、はじめの2つのクラスターを除けば、それらは参加者の対抗制御、特に倫理審査機関、説明付き同意(書)、そして倫理的問題の事例の歴史に関するインターネットによる情報の公開を利用した対抗制御と深く関連している。研究参加者による、対抗制御の行使のための環境随伴性の設計が倫理的行動を促進するために必要であるが、ルール支配行動といった、その他の倫理的行動の特性もその設計が計画される際には考慮されなくてはならない。最後に、従来の応用倫理学的なアプローチに対する可能な候補として、行動倫理学を提案することができる。なぜなら、この学は、ルール支配行動と対抗制御についての概念的、実験的、応用的分析を用いることで、倫理的行動の具体的な環境制御を研究することが可能であるからである。
著者
坂上 貴之
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.5-17, 2005

ヒトを参加者とした研究の倫理基準(American Psychological Association, 1992版)は以下のようにまとめられる。(1)倫理的自己制御とその限界、(2)他者の権利の尊重、(3)より上位の規定や勧告の遵守、(4)強制のない参加の保証、(5)情報操作の禁止、(6)秘密の保持。このうち、はじめの2つのクラスターを除けば、それらは参加者の対抗制御、特に倫理審査機関、説明付き同意(書)、そして倫理的問題の事例の歴史に関するインターネットによる情報の公開を利用した対抗制御と深く関連している。研究参加者による、対抗制御の行使のための環境随伴性の設計が倫理的行動を促進するために必要であるが、ルール支配行動といった、その他の倫理的行動の特性もその設計が計画される際には考慮されなくてはならない。最後に、従来の応用倫理学的なアプローチに対する可能な候補として、行動倫理学を提案することができる。なぜなら、この学は、ルール支配行動と対抗制御についての概念的、実験的、応用的分析を用いることで、倫理的行動の具体的な環境制御を研究することが可能であるからである。
著者
治部 眞里 長部 喜幸
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.40-48, 2015-04-01 (Released:2015-04-01)
参考文献数
7

国家基幹技術(国家戦略コア技術)策定に資するエビデンス提供のため,新しい指標に基づいた特許技術の現状俯瞰を試みた。今回は,JST指標テクノロジーフロント,ジェネラリティー・インデックス,占有率という手法により,国家戦略コア技術の候補について検討した。
著者
勝木 渥
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, 1994-06-05
参考文献数
5
被引用文献数
1

私は小谷正雄先生とは実はあまりご縁がない.ただ1977年6月15日に物性研究史の「聞書き」でお話をうかがったことがあり(その記録と補遺が『数理科学』No. 365-369,1993.11-1994.3に掲載されている),その「聞書き」を準備する過程で,先生に手紙を差し上げ,お返事を頂いた.以下に述べることは,その時のお話,および頂いたお手紙に書かれていたことに基づいている.「聞書き」のとき,語り手として犬井鉄郎先生も小谷先生のお誘いで同席された.[上記「聞書き」記録の発言には,すべて番号が振ってある.以下の文章の随所に現れる( )付きの数字および(補遺-n)は,その記録の発言番号,および補遺の番号を示す.なお,以後,敬称を省く.]また,東京理科大学の定期刊行物「SUT Bulletin」に高木佐知夫・目黒謙次郎による「聞書き」記録が8回にわたって連載されている(1990.9-1991.3および1991.5)が,随時この記録も援用する[(B-n)は同誌連載n回目の記事に基づくことを示す].
著者
高橋 晃一
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.1229-1235, 2009-03-25

近年,瑜伽行派とアビダルマの思想的関係について,様々な角度から論じられているが,『瑜伽師地論』の中でも古層とされる『菩薩地』『声聞地』「摂事分」とアビダルマの関係に言及することは少ないように思われる.本論文は,アビダルマの人無我説と深く関わっているManusyakasutraに着目し,『瑜伽論』の古層におけるアビダルマからの思想的影響の一端を示すことを目的としている.Manusyakasutraは『雑阿含』第306経に相当する経典であり,『倶舎論』「破我品」では人無我説の教証として引用されている.ところで,その描写と非常によく似た表現が『菩薩地』第17章「菩提分品」にも見られ,『菩薩地』の注釈者サーガラメーガはその記述がManusyakasutraに基づくものであることを指摘している.さらに「摂事分」にこの経典への言及が見られるほか,『声聞地』にもこの経典の一節と一致する表現が見られる.こうしたことから,『瑜伽論』の古層において,アビダルマと重要な伝承を共有していたことが分かる.これは単に両者が共通の典籍を保持していたことを示すだけではない.この経典は,「衆生」などの表現は諸蘊に対して付与された単なる名称に過ぎないと説いており,『倶舎論』に説かれるアビダルマの人無我説を端的に表している.一方,『菩薩地』で説かれる法無我説は,アビダルマの人無我説と一見して類似しており,色などの諸蘊が存在する場合に,「人」などの表現が可能となるように,vastuが存在する場合に,「色」などの諸法が表現可能となるとしている.『菩薩地』や「摂事分」では,人無我説とは直接的には関係ない文脈でManusyakasutraに言及しているが,この経典がすでに『瑜伽論』の古層を形成する部分で引用されているという事実は,早い段階から瑜伽行派がアビダルマの思想的影響を受けていたことを裏付けるものと考えられる.