著者
中野 良顯
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.18-51, 2005-04-25

この論文では、臨床場面でサイエンスに徹し効果の実証された最善の技法を提供することが、行動分析家の倫理であることを主張する。サイコロジストが臨床場面でサイエンスに徹するべきであるという三張は、行動分析の内部より外部で強調された。主役となったのはより大きな時代精神としての「エビデンス・ベースの医学(evidence-based medicine, EBM)」の一環であるアメリカ心理学会第12部会特別委員会による「経験的に支持された治療(empirically supported treatment, EST)」運動だった。委員会の使命は経験的に支持された治療を同定する基準に無作為化比較試験(randomized controlled trial, RCT)を含め、それに合格した治療をリスト化し、その情報を普及促進することだった。ESTとして同定された児童版心理療法の数は少なく、自閉症などの領域でのESTは見出されていない。日本に行動分析の倫理を確立する上で考慮すべきEST運動の展望から得られた課題は、マニュアルとRCTを使った臨床研究を拡大すること、内外のEST文献の組織的展望を奨励すること、そして実践家がESTを提供しうるシステムを確立することである。
著者
MYONG Hyon Kook KASAGI Nobuhide
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
JSME international journal. Ser. 2, Fluids engineering, heat transfer, power, combustion, thermophysical properties (ISSN:09148817)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.63-72, 1990-02-15
被引用文献数
8

An improved near-wall k-ε turbulence model is proposed considering the two characteristic length scales for the dissipation rate, one very near the wall and the other remote from the wall, which are then related to the length scale for turbulent momentum transfer. Consequently, the function f_μ included in the eddy diffusivity model represents two distinct physical effects of low turbulent Reynolds number and wall proximity. The present k-ε model is evaluated for its application to fully developed turbulent pipe and channel flows and found to resolve two serious weaknesses common to previous k-ε models; i.e., it correctly predicts the wall-limiting behavior of the major turbulence quantities such as Reynolds stress, turbulent kinetic energy and its dissipation rate near the wall, and the distributions of eddy diffusivity of momentum and turbulent kinetic energy even in the region far from the wall.
著者
吉松 史彰
出版者
日経BP社
雑誌
日経バイト (ISSN:02896508)
巻号頁・発行日
no.264, pp.85-90, 2005-05

SOAPをエンタープライズ・アプリケーションの世界に持ち込もうとする試みは,本稿執筆時点で成功しているとは言えない。例えば米Microsoft社は2001年10月にWebサービス実現のためのフレームワーク「Global XML Web Services Architecture(GXA)」を発表したが,いまだに企業が実運用できる製品を出荷していない。
著者
増井 香名子
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.57-69, 2012-11-30

本研究は,DV被害者が「暴力のある生活」から「暴力のない生活」へ自らの状況をどのように変化させるのか,被害者が加害者から「逃れる」「離れる」という行動のプロセスに焦点づけ,そのプロセスと実現に導く諸要素を明らかにし,支援のあり方を検討することを目的とし,元DV被害者へのインタビューを基に,M-GTAを用いて分析を行った.分析の結果,被害者は「決定的底打ち実感」をエネルギーとし<行動する主体としての自分の取り戻し>を行うなかで<決意行動をつなぐ他者存在の獲得>をし,<脱却の不可欠資源の確保>に至る.それらは一方向のプロセス的側面をもつが,一方で相互作用し<「パワー」転回へのスパイラル>を生み出していた.さらに,行動のプロセスのなかで被害者は<超自己の感得>をし,<自己のよみがえり>を経験していた.暴力関係から「脱却」する行動のプロセスは「パワー」転回のプロセスである.被害者の決意と行動をつなぐための支援が重要であると示唆された.
著者
福井 貴巳 横尾 直樹 吉田 隆浩 田中 千弘 東 久弥 白子 隆志 北角 泰人 岡本 清尚 加藤 達史 山口 哲哉
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.68-72, 2001-01-01
被引用文献数
6

敗血症性ショックを合併した超高齢者の虚血性大腸壊死症例に対して, 結腸大量切除術を施工し救命しえたので報告する.症例は102歳の女性.主訴は嘔吐と腹痛, 来院時, すでに敗血症性ショック状態にあり, 絞扼性イレウスの術前診断のもと, 全身麻酔下に緊急開腹術を施工した.結腸肝彎曲部より下行結腸まで広範な結腸壊死を認めたため, 上行結腸からS状結腸まで広範囲結腸切除術を施工した.病理学的検索にて, 虚血性大腸壊死と判明した.脱水, ショック, 高齢, 過大侵襲手術などの危険因子のため, 術後早期は極めて不安定な循環動態, 呼吸状態を呈したが, 無事救命しえた.この好結果は, 術直後からの血液浄化療法(PMX~【○!R】)の実施や, S-Gカテーテル留置による綿密なモニタリングのもと, 十分な循環血液量の維持を主眼とした全身管理によりもたらされたものと考えられた.
著者
稲橋 正明 武藤 貴史
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.11, pp.824-835, 2008-11-15
被引用文献数
5

きょうかい酵母を使用して, ふと疑問に思ったこと, これでいいのかな?と抱かれた数々の疑問が協会によせられる。そのような問い合わせの中から多くの方々にとって参考になりそうな事例をまとめていただいた。きょうかい18m号酵母に対するQ &Aが中心になってはいるが, 他の酵母や一般のもろみ管理に関しても示唆を与えてくれる一文である。
著者
長田 久美子 高木 絵理子 田村 俊秀
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.961-970, 1995-10-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
60

H.pyloriは極めて多量のウレアーゼを有しており,ウレアーゼの尿素に対する親和性は強く,その細胞内局在性は他の腸内細菌と異なり細胞質内だけでなく外膜にも存在する。ウレアーゼの遺伝子は9つの遺伝子群によって支配されており,その遺伝子のDNA配列には株間でバラツキが見られ,そのことは疫学的研究に応用されている。プロトンポンプ阻害剤(PPI)は,H.pyloriのウレアーゼ活性を阻害し,その阻害作用はウレアーゼの活性中心に関与するシステインのSH基のブロックによるものと考えられる。PPIはH.pyloriの増殖を特異的に阻害するが,その増殖阻害とウレアーゼの阻害には関連がない。H.pyloriのウレアーゼは病原因子の一つであり,産生されるアンモニアは胃粘膜に障害をあたえたり,菌の定着に重要な役割をしている。H.pyloriのウレアーゼ活性を中和する抗ウレアーゼモノクローナル抗体について述べ,ポリクローナルな抗体と比較した。
著者
吉川 昌利 岡田 直之 吉岡 豊城
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ea0343-Ea0343, 2012

【目的】 厚生労働省の調査によると、ICD-10に基づく死因分類のうち、建築物内または周辺での日常行動に関連すると考えられる死因の中で、公共的建築空間及び街路等の公共的空間を発生場所とする死因は、「転倒・転落」が圧倒的であった。また、H.Luukinenら(2000)によると転倒によって死亡に至らなくても約1割は骨折や重篤な障害を引き起こし、日常生活を制限されることになるとしている。また、河野(2007)は転倒・転落による死者数の将来予測として2015年には年間4000人を超えると予測しており、急速化する高齢化に伴って拡大するリスク因子について検証することの意義は大きいと考える。その上で、鈴木(2006)は転倒の原因は男女ともに「つまずいた」が圧倒的に多く、次いで「滑った」あるいは「段差に気付かなかった」が続いているとしており、Saidら(2005)や齊藤ら(2010)をはじめ障害物のまたぎ動作に関する様々な研究や報告がなされてきた。しかし、それらは地域高齢者や脳卒中片麻痺患者を対象としたものが多く、疾患特性で検討した報告は少ない。今回我々は当院入院中の患者を対象に、対象物のまたぎ課題を行い、自己身体認知への影響やその傾向と対策を検証することとした。【方法】 当院回復期病棟入院患者で機能的自立度評価法(Functional Independence Measure以下FIM)の移動(歩行に限る)項目が5点以上の患者21名(男性8名、女性13名 平均年齢73.0±10.77歳)を1.下肢整形外科疾患群(以下整形群)、2.中枢神経疾患群(下肢疾患群以外の整形外科疾患を含む:以下中枢群)と大別し、バーの跨ぎ課題を実施した。実施手順は次の通りである。まず被験者が立位の状態で7m先にあるバーの高さを、自分が跨ぐことができると思われる最大の高さに設定する。設定はバーの高さを検者が操作し、被験者はそれを見て目的の高さになったら申告するという方法で行った。その後申告したバーの高さを変えずに、バーを被験者の50cm前方に移動した。7m前方で申告した高さを修正する場合は、7m前方での高さ設定と同様の方法でバーの高さを変更した。バーの高さが決定された後、実際に跨ぎ動作を実施し、その高さを跨ぐことができた場合はさらにバーを上げ、失敗した場合はバーを下げるという手順を2回繰り返し、実際の跨ぎ動作能力の最大値(以下、最大値)を測定した。【倫理的配慮、説明と同意】 臨床研究に関する倫理指針(厚生労働省)、個人情報保護法、ヘルシンキ宣言を遵守し、対象者には本研究趣旨を十分に説明、書面にて研究参加の同意を得た。【結果】 跨ぎ動作1回目での成功率は、整形群30%(3/10人)、中枢群81.8%(9/11人)と整形群において有意に失敗する傾向がみられた(p<0.01)。最大値と距離別予測値との相関を比較した結果、両群ともに距離に関係なく最大値と相関を認めた。また、距離別予測値と最大値との誤差は、7m予測値・50cm予測値ともに整形群で有意に誤差が大きく(p<0.05)、距離間に有意差は無いが50cm予測値との誤差がより大きい傾向を示した。【考察】 整形群では、またぎ動作1回目において失敗する傾向がみられ(p<0.01)、その際の値と最大値は負の誤差、つまり自己を過大評価する傾向にあった。岡田ら(2008)はリーチ距離と見積もり誤差の関係で負の誤差と転倒群の関連を示しており、本研究のtaskとは異なるが転倒予防の一助となる可能性を示唆している。上述のSaidら(2005)は脳卒中患者の障害物またぎ動作は健常者に比べ、障害物-足部間クリアランスの増大など、代償的ストラテジーにて行われると報告されている。つまり、中枢群では代償的ストラテジーの選択によりまたぎ動作をより安全に遂行した結果、初回での成功率が高値を示した可能性がある。また、距離別予測値と最大値の誤差は整形群で有意に大きく(p<0.05)、50cm予測値でその傾向は大きかったことからも、整形群では疾患による下肢の身体認知の誤差を代償するストラテジーの選択や指標の選択が乏しいと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 本研究により、整形群で有意に自己身体認知に誤差が生じる可能性が示唆された。その上で、生活環境に限局した動作練習たけでなく最大能力を認識させる課題の提供や評価、または身体や環境を指標とした課題の提供を行いフィードバックすることで新たな自己身体認知を確立する必要がある。今後、またぎ動作の方法をより細かく評価し代償パターンの検証や、指標の選択に何を用いたかを明らかにすることで加速的介入を図れると考える。
著者
橋本 充右 今村 正之 嶋田 裕 戸部 隆吉
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.1924-1929, 1992-07-01
被引用文献数
18

胸部食道癌切除術前の胃と術後再建胃管の胃底部と前庭部の2点で24時間pHモニタリングを行った.全測定期間中pH頻度分布曲線を,1型(高酸型),2型(中間型),3型(低酸型),4型(前庭部高酸型)に分類し,各型群間で胃内酸度を術前後で比較検討した.深夜,食事中,食後の各期間pH中央値は各群間で特徴を有し,この分類法が酸分泌の解析上有用と考えられた.深夜胃底部pHは1,2型群で低値となり,1,2型群において,深夜胃底部pH中央値の平均,深夜胃底部pHが3以下となる時間の割合には術前後で有意差はなかった.術後長期経過例でも深夜胃底部は低pHを示す症例が多く,再建胃管の夜間酸分泌が保たれており消化性潰瘍発生に注意すべきと考えられた.また,術後1,2型群深夜前庭部のpHが3以下となる時間の割合と空腹時血清gastrin値の間の有意な逆相関(p<0.01)も証明された.
著者
池田 健 古田 敏康
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.188-189, 1956-04-01
著者
高木 史人
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.47-55, 2007-05-10

日本の民俗学・口承文芸では、柳田國男の影響の下、「世間話」の語を一般に用いて研究してきた。けれども、柳田じしんの著作を読むと、「噂」という語も浮かび上がる。「噂」は従来の民俗学・口承文芸では用いてこなかった。この論文では、柳田による「噂」の語を検討し、そこから古代の「風聞」や「世語り」の語と対応するのが「世間話」だけであったのかを考えてみた。
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.295, pp.32-35, 2001-01

食材にこだわりを持つ料理人達の間で密かな人気を集めているのが、「天然」「野生種」などの食材。そうしたニーズを敏感に感じ取った生産者や食材業者の並々ならぬ努力によって、一度は忘られかけていた、太古の品種が蘇りつつある。 最近、古代人が食べていたような昔の食材や「野生種」復権の動きが著しい。その典型例が、古代米と自然薯だ。
著者
坂井 義人
出版者
天文台アーカイブプロジェクト(京都大学総合博物館・研究資源アーカイブ+理学研究科附属天文台+理学研究科宇宙物理学教室)
雑誌
第5回天文台アーカイブプロジェクト報告会集録
巻号頁・発行日
vol.5, pp.5-10, 2015-01-15

研究資源アーカイブ映像ステーションイベント : 京都大学映像ステーション, 2014/8/6
著者
井上 正望
出版者
早稲田大学史学会
雑誌
史觀 (ISSN:03869350)
巻号頁・発行日
no.169, pp.1-19, 2013-09-25
著者
細谷 実
出版者
関東学院大学経済学部教養学会
雑誌
自然・人間・社会 : 関東学院大学経済学部総合学術論叢 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
no.57, pp.1-25, 2014-07

本稿では、絵画や写真などの視覚的表象が何らかの弊害をもたらす条件およびその弊害の査定について考察する。表現は、一方で、あれこれの弊害をもたらすとされ、批判や規制の対象になっている。他方で、表現の自由は、近代社会における大切な原理として尊重されている。J.S.ミルを代表とするリベラリズムの考え方では、「言論の自由市場」での批評や非難はともかく、法的禁止という強い措置をおこなうには他者危害の存在が要件となる。他者危害として、自然・社会環境の破壊のような社会への危害を主張する論者もいるが、本稿では、個人への、しかも心理的な危害に焦点化して論じる。また、特定個人を名宛人にする加害には名誉棄損や侮辱での刑罰があるが、「女性」や「韓国人」といった一般名詞あるいは広範囲の集合への加害については、数的考慮によって問題視しないのが、従来の司法判断である。この点についても批判的考察をおこない、視覚的表象による個人に対する危害とそれへの対応について論じる。
著者
坂井 義人
出版者
京大天文台アーカイブプロジェクト(京大総合博物館、理学研究科附属天文台、理学研究科宇宙物理学教室)
雑誌
第4回天文台アーカイブプロジェクト報告会集録
巻号頁・発行日
vol.4, pp.4-14, 2014-01-15

研究資源アーカイブ映像ステーションイベント : 京都大学映像ステーション, 2013/08/01