著者
坂本 雅樹 林 祐一 今藤 裕之 高山 悟 可児 久典 大橋 純子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.531-534, 2015 (Released:2015-06-22)
参考文献数
20
被引用文献数
1

消化器がん患者では黄疸による皮膚掻痒感を訴える例が多く,さまざまな治療・ケアが提供されるが,症状緩和に難渋することも多い.進行がんによる黄疸が原因の皮膚掻痒症に対して,牛車腎気丸が有効と考えられた 2例を経験した.【症例1】68歳男性,胆管細胞がん.閉塞性黄疸による掻痒感が持続し,内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(endoscopic nasobiliarydrainage; ENBD)にて減黄しても掻痒感は軽減せず,種々の対症療法も無効であった.牛車腎気丸 7.5g分 3を投与開始し,睡眠が改善した.【症例 2】81歳男性,C型肝硬変,肝細胞がん.黄疸の進行により皮膚掻痒感が出現し,種々の治療は無効であった.牛車腎気丸を 5.0 g分 2で開始し,掻痒感 NRSが 10→3に減少した.黄疸による皮膚掻痒感に牛車腎気丸が有効であり,同様の症例に対して試してみてよい治療法と考えられた.
著者
ロー トッド 伊藤 英則 世木 博久
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.849-861, 1995-08-15
被引用文献数
4

本論文は、ファジィ推論を用いた濃淡値イメージからのエッジ抽出について述べる。ここではエッジ抽出はイメージフィルター段階、抽出段階およびトレーシング段階の3段階に分ける。イメージフィルターの段階では局所的な画像特徴によってガウス関数の広さと方向を制御する。つぎに、フィルター処理されたイメージから、局所的な画像特徴によって様々なピクセルのファジィメンバーシップ値を評価することにより、エッジ抽出を行なう。最後に、ファジィ推論を行ない、高いファジィメンバーシップ値を持つピクセルをトレースして、エッジを構造的に組立てる。なお、フィルター、抽出およびトレーシングのアルゴリズムを複数のイメージに応用し、既存のエッジ抽出方法との比較についても述べる。
著者
佐藤 庚 西村 格 高橋 正弘
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.14-19, 1965-06-30
被引用文献数
1

マメ科牧草の維持管理が比較的むずかしい火山灰土の川渡農場で,イネ科牧草に窒素を多用して,マメ科を混播した場合と同様な乾物収量や蛋白質生産を得ることの可否を明らかにする目的で,圃場試験を行なった。試験期間は1962年秋から,1964年秋に至る3年間である。Orchard単播,Orchard-Perennial ryegrass混播,Orchard-Perennial ryegrass-Redclover-Ladino clover混播の3草地を設け,これに3段階の窒素施用を行い,年間4回の刈取を行なって,乾物生産,粗蛋白質生産,およびこれらの年間の分布,草種組成の変遷,個体密度の変化を調べた。(1) 2年間の収穫を通じて総乾物生産は,少窒素の場合には,マメ科を混ずる草地のほうが収量が高まるが,多窒素になると両者間の差異は明瞭でなくなった。粗蛋白質生産においても,少窒素の場合,マメ科を混ずる効果が特に大きいが,多窒素ではほとんど差が見られなかった。従ってマメ科を混播しなくても,窒素を多用すれば,イネ科牧草のみで乾物ならびに粗蛋白質の生産を多くすることは可能であると考えられた。殊に雑草の飼料価値を考慮に入れると更にこれらの生産が高いといえよう。(2)イネ科のみの草地では,窒素を多用するほど夏を経過する過程で牧草の個体数が激減し,最終刈取期の牧草生産も急減した。同時に雑草の著しい侵入を受けた。しかるに翌春1,2番刈には再び牧草収量は回復した。従ってこの草地では年間収量は1,2番刈収量に左右される。少窒素の場合には個体数の減少が少ないので年間を通じて安定した生産をするが,年間の総乾物量および粗蛋白質の生産はやはり少窒素ほど少なかった。マメ科を混ずる草地でも同様の傾向を認めたが,窒素を多く与えた場合の刈取毎の収量の変動はイネ科草地ほど大きくはなく,初年度は雑草の侵入もなかった。(3)高温,乾燥の長引いた1964年においては,Perennial ryegrass,Red clover,Ladino cloverなどはOrchardgrassに比べて個体の減少が著しかった,この地帯でのイネ科牧草としてはPerennial ryegrassはあまり期待がもてないようである。(4)マメ科を混ずる草地では窒素の多用につれてマメ科の生長が抑制されると共に,イネ科の播種量がイネ科単播の場合より少ない時には,イネ科牧草の生産量も著しくは増えず,結局窒素多用の効果が顕著に表われない。
著者
大久保聡
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.867, pp.94-103, 2004-02-16
被引用文献数
1

「共同研究の依頼が100件近くも寄せられたんですよ。プリンターで文字を打ち出すように,電気回路を描きたいと考えるメーカーがいかに多いのかに驚きました」(セイコーエプソン 生産技術開発本部 本部長の森昭雄氏)。太陽電池やディスプレイ,センサに無線タグなど,多種多様な電子デバイスを製造する全く新しい方法が登場する注1)。
著者
筒井 昭仁 藤井 東次郎 松尾 忠行 本郷 啓成 境 脩
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.257-265, 1995-04-30
被引用文献数
15

フッ化物配合歯磨剤の普及状況を知ることを目的に,福岡市内2保健所の1歳6ヵ月児健康診査の受診者349名とその保護者348名,および1幼稚園の3歳から6歳の167名とその保護者164名を対象に質問紙法による調査を行い,以下の知見を得た。1)歯磨きを毎日するものは,1歳6ヵ月児健康診査受診者で54%,園児で85%以上,保護者では90%以上と高く,園児,保護者においては歯磨きは生活習慣として定着していた。2)1歳6ヵ月児健康診査受診者のほとんどが歯磨剤を使用していなかった。園児については60〜85%が,いつもあるいは時々使用していた。同じく,保護者では80%以上が使っていた。3)フッ化物配合歯磨剤使用者は,1歳6ヵ月児健康診査受診者で5%,3,4歳から6歳の園児で32%から56%,保護者では36%であった。4)歯磨剤選択の理由は,幼児,保護者ともに「むし歯予防のため」,「フッ素が入っている」が上位を占めていた。「歯科専門家の指導による」としたものはほとんどいなかった。また,歯磨剤を使わない理由として「歯科医にいわれて」と答えたものが多くみられた。5)使用歯磨剤中のフッ化物配合歯磨剤の割合をみると,幼児で76%,保護者で39%であった。フッ化物配合歯磨剤のう蝕予防効果は20〜25%と報告されており,わが国における今後の普及が期待される。この点については,歯科医師,歯科衛生士等の専門家による正しい情報の普及や指導が大きな鍵となるであろうことが考えられた。
著者
関屋 幸平 山本 響子 江上 健 川内 撞恵
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.314-314, 2003

[はじめに]脳血管障害に下肢切断を伴う症例は少なくない。今回、脳血管障害に伴い閉塞性動脈硬化症(ASO)にて非麻痺側下肢大腿切断によりADL能力が低下した患者の、寝返り・起き上がり動作に対する理学療法アプローチについて報告する。[症例紹介]78歳女性で、平成12年12月心原性脳塞栓症にて左片麻痺。平成14年7月に右側下肢ASOと診断され同月に右側下肢大腿切断術を施行した。B/S上肢II,下肢IVであり、MMTで右側上肢筋力はG、体幹筋力はFレベル。身辺ADL能力は、切断前において寝返り・起き上がり動作ともに監視から軽介助レベルであったが、切断後では寝返り・起き上がり動作とも全介助レベルに低下した。[アプローチとその経過]寝返り動作に対しては右側上肢にてベッド柵を握り肘関節の屈曲動作により体幹を右側へと回旋させる方法を指導した。訓練開始当初は肩甲帯の回旋後、骨盤の回旋が難しくベッド柵から手を離すと背臥位に戻ってしまい半側臥位までしか寝返りを行えなかった。そこで、開始肢位をベッド30度ギャッジアップし体幹を軽度屈曲位とすることで骨盤の回旋に続く麻痺側下肢の回旋が行いやすいのではと考え実施した。その結果介助を必要とせず寝返る事が可能となった。その後も1・2週間ギャッジアップを利用して徐々に角度を低くすることで、背臥位からの寝返り動作を獲得できた。また、寝返り動作訓練と並行して起き上がり動作訓練も実施してきた。起き上がり動作は切断前動作の再獲得を目指した。訓練開始当初では、起き上がる際断端部への荷重痛が強いこと、体幹筋の筋力低下のため介助なしでは頭部の挙上しか行えなかった。そのため、体幹筋の筋力強化訓練を追加し反復訓練を実施した結果、軽介助にて起き上がることが可能となった。[今後の課題]現在、リハ室内でベッド柵使用にて寝返り動作は自立、起き上がり動作は監視から軽介助レベルである。しかし、病棟においては患者の依存心が強く、獲得した動作を活用できていない。今後の課題としては獲得した動作の実用化にあるのではと考える。そのためにも患者への指導だけでなく、病棟スタッフとの連携が重要と考えている。 [まとめ]非麻痺側下肢の機能を失ったことで、残された機能を生かし寝返り・起き上がり動作の獲得を目標にアプローチを実施してきた。ベッド柵使用であるが、ADL能力は向上してきたといえる。
著者
真柄 正直 高瀬 善次郎
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Journal of Antibiotics, Series B (ISSN:04478991)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.71-73, 1959-04-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
3

産婦人科領域における感染症, すなわち産褥熱や子宮癌の場合における術前術後の感染症, および子宮付属器炎等について, 我々は以前から嫌気性菌を指標として, 諸種の抗生物質の実験的ならびに臨床的効果について, 種々検討して来たのであるが, その結果によると, StreptomycinやPolymyxin B等を除く他の抗生物質に対して, 一般に嫌気性菌は高い感受性をもち, 中でもTetracycline系 (以下, TC系) 抗生物質の効果は顕著であつた。更に近時, 多くは子宮癌手術後の患者についてであるが, 抗生物質を使用した後に, 大腸菌群を主な原因菌とする腎盂膀胱炎の発現率が以前に比較して多い事実は明らかな菌交代現象とは断定し難いとしても, 興味ある問題として注目されている。今回, 我々は日本抗生物質学術協議会からPyrrolidinomethyl-tetracycline (以下, PRM-TC) の提供をうけ, これを産婦人科領域における感染症の治療および予防に使用したので, その成績について報告する。PRM-TCは, Hoechst社において部分合成的な方法でつくられたTC系抗生物質で, その抗菌スペクトラムは従来のTC系抗生物質と同様であり, 従来のTC系抗生物質の静注用のものに較べて, 次のような特長があるといわれている。1) 注入箇所の静脈刺激, 血栓形成等がなく, 高濃度の溶解液を静脈内に投与できる。2) 血中濃度が非常に高い。3) 腸内排出が僅かである。4) 尿中濃度が高く, 持続も長い。
著者
野原 俊一
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Journal of Antibiotics, Series B (ISSN:04478991)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.163-173, 1966-06-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
30

今日, 腟トリコモーナス症に対しては, 局所療法のみでは不十分で, 経口投与による全身療法が必要であることは文献に明らかなところである。一方, 腟トリコモーナス患者のうち, 妊娠中の患者は12~30%といわれており1, 2), 著者の調査では, 27.5%に及んでいるが, この事実は, 腟トリコーモナス症の治療に当つては, 妊婦に抗トリコモーナス薬剤を投与する機会が多いことを物語つている。 ところで, 妊娠中に薬剤を投与するばあい, その薬剤が, 妊婦, 胎児に対し, 安全でなければならないが, 現今, 使用されている経口抗トリコモーナス薬剤については, まだこの問題が解決されていない。私は, 本問題について1つの解答を見出すため, 現在, 使用されている経口抗トリコモーナス薬剤, Azalomycin F monoacetate, Piperanitrozole, Metronidazoleの妊娠マウス胎仔に及ぼす影響について実験的検索をおこない, 以下に報告する結果を得た。
著者
藤井 英一 上野 輝彌 島口 天
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館研究報告 C類 地質学・古生物学 (ISSN:18819079)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.89-93, 2007-12

A fossil barbourisiid whalefish collected beside the Arakawa River, Aomori City, and believed to be from the Middle Miocene Wadagawa Formation, is described as a new genus and species, Miobarbourisia aomori in the family Barbourisiidae. The genus Miobarbourisia is more primitive to other whalefishes (including Barbourisia) in having large, long pelvic fins, a more anterior dorsal fin and an anal fin far behind the origin of the dorsal fin. This specimen is the first whalefish fossil discovered worldwide.
著者
谷口 重徳
出版者
広島国際学院大学現代社会学部
雑誌
現代社会学 (ISSN:13453289)
巻号頁・発行日
no.8, pp.3-19, 2007

本稿の目的は、「サークルアーティスト」(谷口[2001])とよばれる芸術家と支援者の存様態について理論的な視点から検討を試みることにある。サークルアーティストとは、分自身とその支援者の密接な関係性に活動の基盤を置く芸術家を指す概念である(谷口2001])。本稿では、まず近年の芸術社会学や文化社会学等において、"Distributors"が論的に重視されつつあることを論じる。これは狭義の「流通」にとどまらず、芸術(作品)と社会との関係や、芸術作品の作り手と受け手との関係を媒介するという意味を含む、広義の「流通の担い手」として位置づけられる。次に、本稿は、H・ベッカーによる「芸術世界」の概念を取り上げ、サークルアーティストの概念と関連づけつつ議論を進めていく。関与者による芸術活動の共同性を重視する「芸術世界」の概念は、サークルアーティストの存在様態を検討するうえで、大きな手がかりを与えてくれる。サークルアーティストは、芸術活動のキャリアを通じて、不特定多数ではなく、「比較的閉じられた人間関係の範囲」に活動の基盤を置く。この「比較的閉じられた人間関係の範囲」は、同時に、芸術家とその支援者たちにとっては芸術に対する認識を醸成する場でもありうる。しかし、このことは、作品の不特定多数の受容者への流通可能性を妨げる原因にもなりうる。サークルアーティストにとって、支援者は「流通の担い手」でもあるのだが、支援者は、芸術への認識について、支援対象の芸術家の影響を強く受ける。そのため、不特定多数を対象とした「文化産業システム」に見られるような、作品の流通可能性を高めるための重層的な「フィルター」の機能が期待できない。結果的に、作品の不特定多数への流通可能性が高まらず、作品は、支援者を中心に流通していくのである。本稿は、このようなサークルアーティストとよばれる芸術家とその支援者の関係性を検討することで、芸術活動における媒介の問題をとらえるひとつの視点を提示しようとするものである。 The purpose of this paper is to reconsider the relationship of artists and their support personnel in making artwork. The analysis is largely based on Howard S. Becker's conceptual model of the 'Art Worlds'. Becker argues that the arts are embedded in what he calls 'art worlds,' which is a network of people whose cooperative activity, organized via their joint knowledge of conventional means of doing things, produces various art works. Becker emphasizes that art is a collective activity, not the product of lone geniuses. Some individuals are called 'core personnel' because they contribute most of the creative work, have the special skills of an artist, and are the central organizers in creating a piece of artwork. Other individuals are called 'support personnel' because they perform the remaining activities that require administrative skills, business acumen, or some other supplemental ability. Thus, thecore personnel' and the 'support personnel' are bundled in an art world. Once the 'artists' (the core personnel and the support personnel) complete a work, they need to distribute it and invest additional time, money, and materials in the work so that more future resources will be available with which to make more works. Becker discusses three types of distribution systems, including those based on self-support, patronage, and public sale. This paper considers the self-support type. Self-support occurs when 'artists' (the core personnel and the support personnel), distribute their own work by themselves or through small networks. The latter includes networks focused on friends, family, or partners. The most important limitation of the self-support distribution is that the audience is small. As Paul M. Hirsh discussed, distribution systems are affected in some way by gatekeepers in order for new cultural products or ideas to reach the larger public. Yet for self-support distribution, the artwork is already partially delivered through the distribution system.