著者
高橋 研介 高橋 一志 大山 恵弘
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:21888655)
巻号頁・発行日
vol.2015-CSEC-69, no.20, pp.1-8, 2015-05-14

近年,代表的な Web ブラウザの一つである Firefox の拡張機能を悪用した攻撃の危険性が認識されており,悪意を持つ拡張機能による脅威が増している.一方,Firefox では拡張機能をインストールする際,その拡張機能がどのような操作を実行するのか一切通知されない.そのため,無害に見える拡張機能がバックグラウンドで悪質な操作を行っている場合,それを発見することは極めて難しい.本稿では,そのような状況への対策として,Firefox 拡張機能が実行しうる操作をユーザに通知するシステムの提案を行い,インストールする拡張機能が悪意を持つかどうかを判断する材料を提供する.また,セキュリティ対策の一環として 2015 年に導入される予定である Firefox 拡張機能の署名が,本システムに与える影響を考察する.
著者
正木 彰伍 五十嵐 大 菊池 亮 齋藤 恆和 千田 浩司 廣田 啓一
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:21888655)
巻号頁・発行日
vol.2015-CSEC-69, no.28, pp.1-6, 2015-05-14

パーソナルデータの安全な利活用には,データの安全性と有用性の両立が必要である.安全性については代表的な k-匿名性や,k-匿名性を確率的な指標に拡張した Pk-匿名性が提案されるなど,匿名化技術が広く研究されている.一方で,匿名化データの有用性についての議論は未だ限定的である.特に,レコード数などのデータの特徴と有用性の関係性を明らかにすることは,実用上非常に有益である.しかし,これまで行われてきた,ウェブ上で公開されている実データなどを用いた実験では,用いるデータの特徴が限定的になり,議論が困難となっていた.そこで本稿では,多くのデータを包含する一般的な模擬データモデルを利用した評価法を提案し,この模擬データに,Pk-匿名化を適用した実験を行う.さらに実験結果から,有用性と模擬データモデルのパラメーターの関係について調べ,特定のパラメーターから有用性を予測できることがわかった.
著者
大川 あゆみ 富原 一哉 オオカワ アユミ トミハラ カズヤ OKAWA Ayumi TOMIHARA Kazuya
出版者
鹿児島大学
雑誌
地域政策科学研究 (ISSN:13490699)
巻号頁・発行日
no.12, pp.69-89, 2015-03

Affective disorders are characterized by a significant dysfunction of controlling a person's emotional state ormood, inducing social maladjustment. Because women have approximately twice the risk for these disorders than men and the risk increases during peri-menstrual, pregnant, and menopausal periods, it is considered that gonadal hormones, such as estrogen and progesterone, are involved in women's vulnerability to the disorders. In this review, we focus on the risk factors of women's typical affective disorders and discuss the neuroendocrinological mechanisms regulating them. Many studies have provided evidence that the limbic system, including the amygdala and hippocampus, play an important role in regulating the emotional state, and that the GABAergic and monoaminergic neurotransmitter systems and Hypothalamic-Pituitary-Adrenal (HPA) axis are involved in the neurobiology of affective disorders. In addition, the brain areas involved in emotion are rich in estrogen receptors (ERs) and estrogens influence the functions of the neurotransmitter and neuroendocrine system. Especially, the distinct roles for two ER subtypes, ERα and ERβ, in HPA axis activity may be responsible for the development of women's vulnerability to affective disorders. Understanding this rucial mechanism will help provide a prophylactic and therapeutic preparation for women specific affective disorders.情動障害とは,情動機能がうまく働かず社会的な不適応が生じる障害であり,自殺との関連が高く,それらの疾患に対する施策やメカニズムの解明が求められている。また,その発症率は女性が男性の約2倍であり,月経関連症候群や産褥期精神障害など女性特有の情動関連障害も存在することから,女性は情動関連障害に対して脆弱性が高いと考えられている。そこで本論文では情動関連障害の発症要因とその神経内分泌メカニズムについて概観し,女性の情動関連障害への脆弱性に対するそれらの影響を考察することとした。 まず,女性の情動障害の発症要因としては,遺伝要因,女性特有のライフイベント,性腺ホルモンの関与などが考えられる。しかし,性腺ホルモンの影響は遺伝的要因の主要な発現経路の一つであり,女性特有のライフイベントも性腺ホルモンの変動時期と連動することから,エストロゲンやプロゲステロンといった性腺ホルモンを中心にしてこれらが相互作用していると考えることができる。 次に,女性の情動関連障害発症メカニズムを明らかにするために,性腺ホルモンと情動調節の神経解剖学的機構,神経化学的機構,ストレス反応の神経内分泌学的機構との関係を考察した。例えば,性腺ホルモンの投与は,扁桃体や海馬の構造や活性を変化させ,また,GABAやセロトニンなどの神経伝達物質の合成や受容体の発現を変化させることが示されている。さらに内分泌的ストレス反応を司る視床下部-下垂体前葉-副腎皮質系にも性腺ホルモンは影響を与え,ストレスに対するこの系の反応性を変容させる。このように性腺ホルモンが情動を司る脳・神経機構と強く関係することについては多くの報告がなされているが,その機序についての解明は未だ十分とはいえない。今後,これらの疾患の予防・治療に有効な知見を得るためにも,さらに情動調節を媒介する各要因とそのメカニズムの解明に注力していく必要があると考えられる。
著者
大谷 栄一
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.1-22, 2012-03-01

戦後京都の宗教者平和運動は,1950年4月に結成された宗教人懇談会と1954年5月に設立された京都仏教徒会議の活動によって本格的に生起した。両団体は1954年3月の第五福竜丸事件を契機とする原水爆禁止運動に呼応し,京都の原水爆禁止運動の一翼を担いながら,運動を展開した。運動の担い手は仏教教団の指導者や大学関係者(教員・学生)が多く,この点は,各宗派の本山や多くの宗門系大学を抱える京都ならではの特徴であろう。1950年代を通じて,京都の仏教者・仏教系知識人たちは全面講和運動や原水禁運動に積極的に関わり,京都の労働組合や平和団体,地域組織との連携を通じて活動することで,戦後京都の秩序形成や府民たちの「平和」認識に対する一定の公共的役割をはたしたと評価できるのではないか。
著者
坂東 靜 浅野 裕俊 野澤 昭雄
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.135, no.5, pp.520-525, 2015-05-01 (Released:2015-05-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 3

A digital book has become popular along with the popularization of electronic medium. It is needed that assessment of not only subjective assessment about readability or usability, but also objective assessment of psychosomatic health impact. The objective of this study is an objective assessment of physiological and psychological effects of reading books using electronic or paper medium. This paper focused on hemodynamic parameters. The measurement item was VAS and POMS as a psychological index and hemodynamics parameters as a physiological index. As a result, low vigorous and unreadable were significantly recognized (p<0.05) in reading a book using an electronic medium comparing with a paper medium. Cardiovascular system became active coping because of sympathetic hyperactivity in the hemodynamic reaction. By contrast, using an electronic medium did not fit into stress coping. It was also found that parasympathetic nervous system enhanced with illegibility of the sentence and fatigue by usinig an electronic medium. For all of these results, it became identified a difference in a way to manage in physiologically with reading a book using an electronic and paper medium.
著者
隈 正雄
出版者
日本生産管理学会
雑誌
生産管理 (ISSN:1341528X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.37-42, 2002-07-10 (Released:2011-11-14)
参考文献数
5

本論は, ERPと簡易なレベルの異なる2つのパッケージソフトの機能を比較して, システムの機能レベルの差異を分析したものである。そして, この差異をビジネスプロセスとの関連で考察し, システムのシンプル化への留意点を提言するものである。
著者
小川 昭利
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.407-419, 2014-09-01 (Released:2015-05-12)
参考文献数
90

The aim of functional magnetic resonance imaging (fMRI) studies of perception is to unravel the neural basis of the computational processing of the targeted perception. A standard fMRI study of perception generally uses simple stimuli, such as geometrical graphics in vision and pure tones in audition, and measures brain responses to such artificial stimuli, which are generated carefully. The target brain activity of percep-tual processing has been investigated using a contrast between stimulus conditions, to cancel out other processes. In contrast, the brain’s response to naturalistic stimuli is considered not to be a combination of responses to simple stimuli. The uncontrolled per-ceptual processes that are evoked in parallel hamper the analysis of the data in a simple factorial manner. In this article, I briefly reviewed fMRI studies that used naturalis-tic stimuli (e.g., photos and movies) and introduced nonstandard analytical methods. One was the computational model-based analysis of a hypothesis-driven study, and the other was the intersubject correlation of data-driven research. A model-based fMRI study can directly predict the brain responses to the processing of dynamic perception (e.g., motion perception in the middle temporal area). Intersubject correlation can be used to evaluate the reliability of fMRI signals in response to naturalistic stimuli. In addition, I introduced a decoding technique using pattern recognition, which has been used widely not only in the engineering but also in the neuroscience fields. Although the number of studies using naturalistic stimuli and novel analytical methods has in-creased, the standard fMRI study using simple stimuli and analysis remains the most effective approach to identify the neural bases of perception. I expect that these stan-dard and novel fMRI studies will contribute complementarily to the elucidation of the brain processes for naturalistic stimuli.
著者
藤若 雅也
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.570-574, 2015-05-15

ビックデータ分析において,一般に参加者を募集して参加者同士でその分析・予測精度を競わせる機械学習コンテストが広がりを見せている.また,機械学習コンテストの場をプラットフォームとして提供する企業も登場しており,MiscrosoftやAmazonといったトップ企業も活用している.コンテストでは,単に参加者が結果を競うだけでなく,情報交換フォーラムやチーム形成によりお互いが切磋琢磨できる場にもなっている.本記事では,その背景やコンテスト参加のメリットについて解説するとともに機械学習コンテストの場として世界最大であるKaggleにフォーカスを当て,具体的なコンテスト事例や参加方法を紹介する.
著者
井田 明男 金田 重郎 熊谷 聡志 藤本 明莉
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1340-1350, 2015-05-15

今日ビジネスアプリケーション開発の現場では空前のアジリティが求められている.また,システムはよりいっそうデータ指向的になってきている.そのため,アプリケーションの中核となるモデルとして構築されるドメインモデルは,1)問題領域を端的に記述し,2)ドメインの専門家と開発技術者との意思疎通を促進し,3)ドメインの論理要件を満たして,4)データベース設計のデータモデルへの変換もストレートフォワードに行えるようなモデルであることが要求される.しかしながら,オブジェクト指向の発想だけでは,このようなドメインモデルを構築することは難しく,かといってデータ項目主導型の正規化理論をそのまま持ち込むことは困難である.そこで,本稿では,存在従属性に着目したドメインモデルの構築手法とUMLのクラス図をベースとした表記法を提案する.ホワイトボードに手書きできるくらい簡潔でありながらも識別子の関係が手に取るように理解できるモデルを目指す.存在従属性の概念は理解しやすく,ドメイン中のいたるところで見出されるため,提案手法により,第4正規形と同等以上の正規化レベルを持ったドメインモデルが自然に構築できる.提案手法がオブジェクト指向手法において正規化に似た役割を果たし,ドメインエキスパートとシステムエンジニアが共同で参加するモデリング作業の一助となれば幸いである.
著者
渡部 孝幸 宮崎 佳典
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1417-1427, 2015-05-15

数式は多くの科学分野において広く用いられているものであり,電子的な文書中に記述されることも多い.電子的な文書の特長として,検索を行うことができるという点があげられる.しかし,数式の検索を行うことは容易ではない.なぜなら数式では,通常の言語とは異なり,文字が二次元的に配置されるためである.そこで本研究では,二次元的な文字の構造に対して文字列のパターンマッチング(文字列探索)に基づく検索を行うことで,文書から特定の数式が記述された箇所を見つけ出す,文書内検索の機能を実現する手法を提案する.また,本研究で提案する手法は,数式のパターンマッチングにおいて正規表現を利用することも可能である.正規表現を用いることで,複雑なパターンを処理することが可能となり,検索の利便性が飛躍的に向上する.さらに,パターンにマッチした数式のハイライト表示および数式の置換の実装についても述べる.
著者
亀井 邦裕 児玉 公信 細澤 あゆみ 成田 雅彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1351-1362, 2015-05-15

企業情報システムは変化する企業環境に対し,柔軟で機敏な対応を迫られている.そこで稼働するビジネス系アプリケーションは短期間での構築が可能で,なおかつ変化に強い構造を持っており,再利用開発が可能でなければならない.それは経験に裏打ちされた合理的な概念構造を持ち,変化する部分と固定部分が明確に分かれた実装構造となっているはずである.本論文は,そのようなアプリケーションを開発するための1つの取組みとして,概念モデルに基づく実装方法を試行し,消費税計算などの公開可能な題材を用いた概念モデル,実装モデルなどを成果として提示する.
著者
山本 文彦 古川 眞一 須田 裕之 小山田 弥平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会秋季大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1994, no.2, 1994-09-26
被引用文献数
3

分岐形光線路を用いた1.31/1.55μm波長多重(WDM)伝送システムが検討されている。本稿では、分岐形光線路について、インサービス時に光加入者ネットワーク装置(ONU)または光線路内に故障が生じた場合に、故障の切分けを行う技術について検討し、その結果を示す。
著者
太田 昌孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PN, フォトニックネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.236, pp.59-64, 2005-08-12
参考文献数
11
被引用文献数
34

光スイッチの真価は、波長多重などで利用可能な全帯域を個々のパケットの伝送に利用しその帯域全てを同時にスイッチすることで発揮される。1500Bのパケットを1Tbpsで伝送すると12nsだが、ナノ秒程度で動作する高速な光スイッチが実用化されつつあり、ナノ秒程度では制御は電子回路で十分間に合うので、全光データパスルータの実現が視野に入ってきた。その全光データパスルータを構成するために必要ないくつかの要素について検討した。平均パケット長500Bとパケット間隔6nsで、1Tbps(平均実効速度400Gbps)4ポート全光データパスルータは256個の1:2光スイッチから構成でき、その消費電力は640Wとなる。