著者
鍵山 恒臣 山口 勝 増谷 文雄 歌田 久司
出版者
東京大学
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.211-239, 1994
被引用文献数
11

霧島火山群・硫黄山周辺においてMT法による電気抵抗構造調査を行った.その結果,硫黄山を含む霧島の広い範囲において,水を多く含む層と考えられる低比抵抗層が,地下およそ100m以深に見られる事がわかった.また,硫黄山周辺は,低比抵抗域となっており,特に,硫黄山火口直下では2~3Ω・mであるのに対して,硫黄山を囲むように,1Ω・m程度の著しく低い比抵抗域が存在している事がわかった.熱的調査によれば,硫黄山山体には,高温の噴気が点在し,周辺には水の沸点程度の噴気地や温泉が見られる.こうした分布の特徴は,地下深部から供給される高温の火山ガスが,硫黄山山体部ではそのまま溶岩の隙間から噴出しているためにやや高い抵抗を示しているのに対して,硫黄山の周囲では,この地域に分布する帯水層の水との混合により低比抵抗領域が形成され,水の沸点程度の噴気や温泉の源となっている事を示すと考えられる.The volcanoes of Kirishima, located in southern Kyusyu, are a group of more than 20 volcanoes. At least three volcanoes have historic records of eruptions, and more than 10 volcanoes have been active within the past 22,000 years. This indicates that Kirishima is a multi-active volcanic group. According to seismological investigations, the Kirishima area is subject to NW-SE extensional stress; slight extensional stress is favorable for a fault system that allows magma to ascend at various points.
著者
上村 益永 高橋 祐 猿渡 洋 鹿野 清宏 近藤 多伸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.143, pp.43-48, 2008-07-11

本稿では,スペクトル減算処理過程で生じるミュージカルノイズ量の計量尺度を提案する.スペクトル減算法はミュージカルノイズと呼ばれる人工的で耳障りな歪みを生じ,音質の劣化が著しいという問題を抱えている.そのため数多くのミュージカルノイズ対策手法が提案されているが,ミュージカルノイズの評価尺度が存在しないために,その効果を定量的に議論することができない.我々は,スペクトル減算処理によるミュージカルノイズ発生量が処理強度と原信号の確率密度関数の形状に関係深いことを発見した.この関係に着目し,高次統計量を利用することで確率密度関数の形状を考慮できるミュージカルノイズ発生量の計量尺度を提案する.最後に,主観評価実験により提案尺度とミュージカルノイズが高い相関を持つことを示す.
著者
福原 幹夫
出版者
公益財団法人電磁材料研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

Ni中心の20面体Ni_5Zr_5Nb_3クラスターから構成されたセンチメートルサイズのNi-Nb-Zr-H系アモルファス合金リボンは約223Kまでの低温領域でアモルファス度の上昇に伴って銀より4桁良好な弾道伝導性を示した。~8GPaまでの超高圧の負荷によってもその効果は見られなかったが、アモルファス合金特有の負の温度電気抵抗係数(TCR)が22-25Kで金属結晶特有の正に変換する奇妙な現象を観察した。本アモルファス合金の弾道伝導機構はクラスター問の一電子のトンネリングによって説明がつく。
著者
大村 浩王 遠峰 菊郎 細川 尚
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.365-375, 1999-06-30
被引用文献数
2

1997年8月4日および8月9日の2日間,群馬県の榛名山山麓においてオメガゾンデによる高層気象観測を行い,状態曲線の日変化と雷雲の発生・発達との関係を調べた.その結果,雷雲が観測された8月4日には,朝から日中にかけて,接地混合層の上端高度は上昇し,自由対流高度(LFC)は下降した.その結果,雷雲が発生した時刻にはCIN (convective inhibition)の値も小さくなり,対流が発生しやすい状態であった.さらに,LFCから大気上層の間には顕著な安定層が見られず,背が高い対流が発達可能な状態にあったことが示された. これに対し,雷雲が発達しなかった8月9日には,日中は接地混合層の上端高度は上昇した.しかし大気中層への暖気移流により顕著な安定層が形成され,上空の気温が高かったためにLFCは存在していなかった.このため,対流雲は存在していたが,背は低いままで発達しなかった.また,雷雲発生の有無にかかわらず,2日間とも日中から夕方にかけて大気安定度は同程度減少する日変化が認められた.
著者
齋藤 一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の成果は、第一に、北海道における「英学」の確立を目指しつつも中央/周縁の論理を反復してしまった玉井武(小樽商科大学)の業績を再検討し、論文として発表したことである。(付け加えるならば、北海道や広島での調査の結果、清水春雄(北海道出身、広島で被曝、岐阜と小樽においてホイットマンを研究した)の存在を発見することもできた。)第二に、沖縄戦と米軍占領を経験しつつもアメリカの文学を研究した沖縄の英米文学者(特に琉球大学)の著作や紀要論文等に彼ら彼女らの苦渋を読み取るための調査をおこなったことである。
著者
黒崎 直 岩本 正二
出版者
奈良国立文化財研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1.宮殿・宮衛遺跡や寺院跡の発掘調査で確認できる「造営尺」には、高麗尺(1尺=約35.6cm)と唐尺(1尺=約29.8cm)がある。前者は飛鳥寺や法隆寺の造営に使われ、後者は7世紀中ごろの前期難波宮の造営に使われている。高麗尺は後に「大尺」、唐尺は「小尺」と整理され、「大尺」は主として「測地尺」として使われている。藤原・平城京の条坊は、この「大尺」による。ただし7世紀前半に、再び「尺」の整理が行なわれ、地割り・建築遺構とも、1尺=約29.8cmが基準となっていく。2.出土品としての「物差」は、平城宮跡出土のそれは1寸が2.95cm、平安京跡では5寸が15.3cmで、1尺に換算するとそれぞれ29.5と30.6cmとなる。時代が下がるほど、基準尺が伸びる傾向がここでも裏ずけられる。3.木製容器(主として曲げ物)や土器から当時の基準の容量を復原しようとした。曲げ物の場合、直径15cm前後、高さ6cmのものが主流であることが判明したが、これをもって、基準容量とすることはできない。「令制」にみえる銅製升の実物が発掘調査で発見されることを期待したい。4.鉄製釘の寸法と重量を計測して、「鉄」についての実際の重量を考察し、あわせて鉄釘の名称を復原した。この作業に関連して、『延喜木工寮式』にみえる「打合釘・平釘」の鉄使用料の記載に齟齬を認めた。5.なお、重量復原の手がかりとして、「分銅」や「おもり」が出土しているが、最近平城京跡で発掘された「分銅型銅製品」は重さ329gで、ほぼ8両=半両に相当する。貴重な考古資料として注目できる。
著者
大野 泰之 渡邊 陽子 松木 佐和子 滝谷 美香
出版者
地方独立行政法人北海道立総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

食葉性昆虫の大発生した広葉樹二次林において,健全なウダイカンバが衰退(枝枯れ)・死亡に至る過程を明らかにした。観察した二次林では2006-2008年の3年間に食葉性昆虫の大発生が確認された。顕著な衰退は2009年に認められ,観察木の15%は樹冠部の枝の50%以上が枯損した重度の衰退木であった。解析の結果,食葉性昆虫が大発生する以前の20年間(1986-2005年)の年輪幅が狭く,食害の程度が大きかった個体ほど,重度の衰退木となりやすかった。これらの衰退木の約80%がその後の2年間に死亡した。これらの結果から,長期間の低成長は食害に対する感受性を増加させ,その後の衰退に影響する可能性が高い。
著者
高橋 一広 倉智 博久 山谷 日鶴
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

閉経後の内臓脂肪で11beta-HSD1の発現が増加することが明らかになり、ヒトでもエストロゲンは11beta-HSD1の発現を抑制すると考えられた。BMIの増加に伴い脂肪組織内のaromatase発現は増加するが、生理活性の低いE1が優位になるため、局所内のグルココルチコイド活性化を抑制できない可能性が想定された。皮下脂肪では閉経前後で脂肪酸の代謝に差は認められなかったが、閉経群の内臓脂肪で、脂肪酸の代謝産物が有経群に比較して高濃度に存在することが、メタボローム解析で初めて明らかとなった。閉経後の内臓脂肪では、脂肪酸代謝に変化がおきていることが示唆された。
著者
井岡 邦仁
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ガンマ線バースト(以後GRB)はブラックホールの形成と関係する宇宙最大の爆発現象である。本研究では宇宙一明るいGRBがどのように光っているのか、という基本的な問いを理論的に考察した。その結果、(1)GRBが90%以上という異常に高い効率で光っていることが分かった。(2)高効率を実現するモデル(衝撃波加速効率の時間変化モデルや電子陽電子モデル)をいくつか提唱し、(3)高エネルギーガンマ線や宇宙線による検証法を提案した。(4)新たに発見された暗いGRBに対しても理論モデル(中性子星からのジェットモデル)を立て、高エネルギーニュートリノ、宇宙線の量を評価した。(5)衝撃波による粒子加速効率を測定する新しい方法(偏光を用いた方法)を提案した。