著者
影山 穂波
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、ホノルルにおける戦後移住の日本人の「居住空間」とジェンダーの関係を明らかにすることである。そこで日本人女性を中心に展開されるネットワークに注目し、それぞれの活動内容と参加者のライフヒストリーの聞き取り調査を実施した。その結果、彼女たちが、自分たちの必要とおかれた状況に応じて居住空間を形成していることが分かった。彼女たちは、意識的にも無意識的にも周囲に期待される「日本人女性」としての役割を演じており、それがアイデンティティの再生産にもつながっていた。一方でこうしたネットワークを通じて、彼女たちはハワイ社会で自らの居住空間を形成していたのである。
著者
加藤 清明 得字 圭彦
出版者
帯広畜産大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

「ゆきひかり」とイネ4品種のそれぞれを65%含む飼料を4日間給餌したラットを解剖し、大腸での遺伝子発現をDNAマイクロアレイ法で比較解析した。他の4品種群と比較して、ゆきひかり群で4倍以上の発現レベルとなった184遺伝子と1/2以下の発現レベルとなった109遺伝子を選定した。ゆきひかりで発現減少していた遺伝子群には、受容体をコードするものが多く、発現が増加していた遺伝子群には、物質輸送に関わるものが多かった。続いて、上記トータルRNAを用いたリアルタイムRT-PCR法によって、ゆきひかり群で発現が減少している2種の遺伝子を特定し、ハイスループットスクリーニング法の基盤を整えた。
著者
石井 吉之 小林 大二
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇. 資料集 (ISSN:03853683)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.11-20, 1995-03

北海道北部の母子里試験地の山腹斜面において地温の連続観測を行なった。1991年11月から1994年8月までの期間に,南西向き及び北西向き斜面の各々4地点で50cm, 100cm, 200cm深の地温を観測した。融雪期には全ての地点で顕著な地温低下が観測されたが,温度変化は 200cm深で最も大きく,50cm深で最小であった。一方,夏の大雨時には50cm深で最大の温度上昇が起きた。こうした変化は土壌水の圧力水頭の変化傾向と一致し,水頭変化の顕著な場所で大きな地温変化が生じている。
著者
常田 聡 青井 議輝 星野 辰彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,様々な産業から排出される排水中の窒素・リンを高効率に除去する高度処理システムの開発に取り組んだ。特に,小規模事業場へも導入可能な単一槽型栄養塩除去プロセスである嫌気/好気/無酸素(AOA)プロセスの開発を行い,長期間にわたる安定した除去性能維持の実現をめざした。また,AOAプロセスとメンブレンエアレーション法を組み合わせることにより,槽内の微生物生態系を制御し,外部から基質を添加せずに窒素・リン同時除去に成功した。
著者
木暮 一啓 小川 浩史 砂村 倫成 河原林 裕 浜崎 恒二 常田 聡 西村 昌彦 浦川 秀敏 千浦 博 井上 健太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

近年の研究から、海洋の中心層には古細菌が広く分布することが分かってきた。1000m以深では、数的には原核生物のうちの半数近くを占めることが見出されてきたが、今のところ分離株が全くなく、その生態、系統、物質循環に対する寄与などについては殆ど未知の状況である。これらの環境は低温、高圧、貧栄養で特徴付けられるが、こうした環境は従来から知られていた古細菌の好熱性、好塩性、嫌気性などの性質からはずれがある。従ってこれらを非極限性の古細菌と呼ぶことにする。本研究はこの一群を中心とした古細菌に対する学際的研究である。本研究では様々な課題を扱ったが、最大の成果は外洋域中心層から複数の古細菌を分離し、その系統的位置づけおよび性情等についての検討を開始できたことである。これは我々の知る限り、世界で初めてのことである。さらに、それが系統的には好塩性の古細菌に近縁であることが分かったことから、非極限性古細菌群集の起源や古細菌の進化上の広がりなどについて新たな仮説を提示できる段階に至った。
著者
常田 聡 日比谷 和明 久保田 昇 平田 彰
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は小規模畜産農家でも導入できる小型で高効率な有機物・窒素除去システムの確立を目指し,単一槽内において窒素除去が可能なメンブレンエアレーション型バイオフィルムリアクタ(MABR)を開発し,その評価を行ったものである。1.生物膜内溶存酸素(DO)濃度分布解析先端径数μmのDO微小電極を作製し,生物膜内のDO濃度分布を測定した結果,生物膜厚みが大きいものは嫌気部位が存在することを明らかにした。この結果は生物膜厚みおよび酸素の供給速度を制御することにより,生物膜内に局所的に異なる反応場を創生することが可能で,単一槽内もしくは単一生物膜内において硝化・脱窒同時反応が起こせることを示唆している。2.MABRコンセプトの実現と処理能評価易分解性である生活模擬排水を用いて連続運転による有機物・窒素の同時除去試験を行い,MABRのコンセプトを実現できるかどうかを評価した。運転開始後50日目以降,有機炭素および窒素の除去率はともに90%以上を達成し,コンセプト通り単一槽内にて有機物・窒素を逐次的に除去することに成功した。3.MABRの畜産系排水への適用とその評価生活模擬排水への知見を応用し,MABRの畜産系排水への適用性について検討した。約1年間の長期運転で有機炭素および窒素成分の平均除去率96%,83%を得た。また,メンブレン表面積当たりの窒素除去速度は4.48g-N/(m^2・day)であり,生物膜内で高効率に窒素除去が行われていることを示した。生物膜内のDO濃度および微生物生態分布を解析した結果,生物膜内で好気・嫌気部位が存在し,その環境に応じた微生物群が生息していることを確認した。また,硝酸を経由しない亜硝酸型脱窒が主な窒素除去経路であることが推察された。以上より,MABRを用いることにより,窒素成分の比率が高い畜産系排水においても単一槽で高効率に窒素を除去できることが示唆された。
著者
平田 彰 木下 敦寛 村上 義彦 常田 聡 新船 幸二
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

融液成長法によって育成される半導体単結晶の高品質化手法の開発・確立を目的として,融液内のマランゴニ対流現象を解明するため,次の研究を行った.まず,温度差に起因する界面張力差に基づく駆動力の増大に伴い,液柱内のマランゴニ対流が二次元層流から三次元層流を経て三次元振動流へと遷移することを明らかにし,その機構を詳細に解析した.具体的には,微小液柱実験装置を用いた地上及び微小重力実験により,微小重力場では,地上で観察された超安定領域が消滅することを明らかにした.また,マランゴニ対流に起因する液柱内の温度振動状態が,定常層流,周期的伸縮振動,周期的回転振動,準周期的振動,そしてカオス振動のいずれかに分類できることを明らかにし,温度振動状態を表すモデル式を提出した.このモデル式は実験結果とよく一致しており,このモデル式より,各振動状態の特徴を明確に表すことができた.また,これらの遷移プロセスは液柱の形状・体積や重力レベルなどに依存することを明らかにした.また,非定常数値計算コードを開発し,落下塔実験で生ずる1GからμGへの重力のステップ変化に伴う固液界面上の熱流束を解析した.得られた数値解析結果は,実験結果と良好な一致を示し,熱移動現象を充分に良く説明することができた.さらに詳細に検討した結果,液柱長さを代表長さとした無次元座標,流動の駆動力を表すマランゴニ数,流体熱物性を表すプラントル数を導入することにより,固液界面上の熱流束分布を統一的に評価し得る事を明らかにした.また,宇宙環境においても存在する残存重力が融液の不安定化に及ぼす影響を検討するために,拡散係数測定法のひとつであるLong Capillary法を模擬した数値計算も行い,融液内の対流発生と残存重力の関係を明らかにした.以上の成果は,融液内のマランゴニ対流現象の微細機構を明らかにしたものであり,融液成長法による育成単結晶の高品質化ための操作条件決定などに有益なものと考える.
著者
常田 聡 平田 彰
出版者
早稲田大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2000

食品産業から排出される排水や廃棄物は生物由来の易分解性有機物中心である.そのため,有機物の循環,すなわちバイオサイクルという点から見て,これらの排出物は原料生産へフィードバックすることが可能である.廃棄物の処理および再生に関しては,現在さまざまな方法が開発・使用されているが,食品産業におけるバイオサイクルという流れから見た時に,どの方法がエミッション低減に有効であるかは,はっきりとしていない.本研究では原料生産と製品製造を一連のプロセスと考え,このバイオサイクルに出入りする物質およびエネルギーを定量的に把握し,その中でのゼロエミッション化をめざすことを目的とした.本研究では具体的な対象産業としてワイン醸造産業を選んだ.まずブドウ(生果)から作るワインの製造プロセスにターゲットを絞り,アンケート調査を行うことによって物質収支のフロー解析を行った.20,000kgのブドウから17,280Lのワインが生産される過程で,梗,果実・種,澱等約3,900kgの固形廃棄物,100tの排水が出ることがわかった。また,排水の処理工程(活性汚泥法)において発生する余剰汚泥量は,乾燥重量として68.6kgであることがわかった.次に原料および各廃棄物・排水について重量および元素分析(C,N,P)を行い,製造プロセス内における元素ごとのフロー解析を行った.元素によって動きが異なるものの,固形廃棄物(ブドウ梗・ブドウ粕)としての排出が大きな割合を占めることがわかった.特に窒素とリンに関しては,バイオサイクルへのインプットが主に肥料からであることを踏まえればこれらを有効的に農地還元させることがバイオサイクルを機能させる上で重要であるといえる.これらは含水率が低く,C/N比が高いので,先に述べた余剰汚泥のコンポスト化を行う際の調整剤となりうることが示唆された.
著者
常田 聡 平田 彰
出版者
早稲田大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

食品産業は生物系由来の原料が多いため,有機物の循環,すなわちバイオサイクルという観点から,食品産業排水中の成分は原料生産へフィードバックすることが可能である。しかしながらバイオサイクルという流れから見たときに,どのような排水処理がエミッション低減に有効かはっきりとしていない。そこで,このバイオサイクルに出入りする物質およびエネルギーを定量的に把握し,排水処理方式がこれらの値に及ぼす影響を数値化することによって,ゼロエミッションをめざした排水処理プロセスの構築を検討することが本研究の目的である。まず,ワイン製造プロセスについて原料,廃棄物および排水処理に関するアンケート取材を行った。その結果,ワイン製造プロセスについて,炭素重量基準での詳細な物質フローを求めることができた。次に,バイオサイクルに出入りする物質およびエネルギーを定量的に評価するため,独自のフローシートを提案し,微生物増殖速度式や化学量論式に基づいた評価式を作成した。そして,嫌気処理および好気処理を行った場合に発生する汚泥量などのエミッションを定量的に把握し,さらに汚泥を廃棄物と混ぜて堆肥化した場合やメタン回収した場合のエネルギー収支を算出した。今回収集したワイン製造排水に関するデータを用いて試算を行った結果,発生/使用堆肥量の関係から,汚泥を堆肥化して原料生産へ用いることは量的に可能であることが分かり,バイオサイクルが機能する可能性を示唆することができた。また,汚泥や廃棄物を堆肥化することによって削減できる化学肥料の量およびその生産に要するエネルギーを見積もった結果,バイオサイクルに投入されるエネルギーをかなりの割合で節約できることがわかった。一方,嫌気処理によって節約できるエネルギーおよび回収できるエネルギーはこの10分の1程度であることもわかった。
著者
常田 聡 青井 議輝
出版者
早稲田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

環境中では多種多様な微生物が雑多に存在する複合微生物系を形成している。本研究では個々の微生物の現象に着目するのではなく,生態系全体を一つのシステムとしてとらえるシステムバイオロジーの概念を微生物生態学に導入し,実験的手法および知識工学的手法を併用してコンピュータ上に微生物のコミュニティーを再構築し,微生物生態形成メカニズムの真の理解につなげる新規方法論を確立・提案することを目的とした。本研究では,特に,複合微生物系の一例として,多孔質膜を介して通気を行い,膜上にバイオフィルムを形成させる方法(いわゆるメンブレンエアレーション法)によって得られたバイオフィルムを取り上げた。本年度は,シミュレーション結果の精度に多大な影響を与える微生物パラメータを精査し,シミュレーション結果と実験結果を比較した。まず,バイオフィルムからサンプリングした従属栄養細菌(HB),アンモニア酸化細菌(AOB),亜硝酸酸化細菌(Nitrobacter,Nitrospira)を対象に,水質回分実験・呼吸活性実験・蛍光遺伝子プローブ法(FISH法)・レクチン染色・画像解析を行い,それぞれの徴生物の活性パラメータを評価した。一方,形成されたバイオフィルムを壊さずに,微小電極測定およびFlSHを行い,バイオフィルム内の基質濃度分布と微生物分布を得た。つぎに,この結果を,すでに得られた微生物パラメータを用いてシミュレートした結果と比較した。完全には実験結果をシミュレーションでは再現することはできなかったが,文献値のパラメータを用いてシミュレーションをした結果と比較して,多くの部分の傾向を再現することができるようになった。またMABの内部に存在する亜硝酸酸化細菌はNitrobacterであることが明らかになった。
著者
常田 聡 大坂 利文 加川 友己 大坂 利文 加川 友己
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、腸管の炎症抑制および腸上皮タイトジャンクションバリア機能の回復に寄与する腸内細菌を同定した。さらに、実験的腸炎マウスモデルを用いて、腸炎の寛解プロセスに寄与する腸内細菌および代謝産物のスクリーニングを行った。また、大腸陰窩における上皮細胞の増殖・分化機構の時空間的ダイナミクスを表現するシミュレーターの開発に成功した。
著者
平田 彰 XINGーRU Zhon 桜井 誠人 常田 聡 早川 泰弘 熊川 征司 ZHONG Xing-Ru ZHONG XingーR XIE Xie 岡野 泰則
出版者
早稲田大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本研究では,中国回収衛星を利用した微小重力場において,In_<1-x>Ga_xSb化合物半導体の単結晶成長実験を行い,結晶溶解・成長過程における拡散及び界面律速過程や面方位依存性を明らかにし,In_<1-x>Ga_xSb化合物半導体のみならず,各種化合物半導体単結晶の高品質化への知見を得ることを目的としている。本年度は1996年10月に実施した宇宙実験の試料及び地上対照実験試料を切断し,切断面におけるGaSb溶解領域及びIn_<1-x>Ga_xSb成長領域を電子線マイクロプローブ分析法(EPMA)により測定した。その結果,宇宙試料は長さ方向に平行に溶解し,地上試料は重力方向に末広がりに溶解していた。これは,地上試料では,比重の大きいInSbが重力方向に移動し,より多くのGaSbを溶解したものと考えられる。また,数値シミュレーションを実施した結果,実験結果と同様の結果が得られた。さらに,面方位依存性に着目してみると,両試料とも(lll)A面より(lll)B面の方がInSbに溶解し易いことが明らかになった。反対に,成長領域は,B面よりもA面の方が大きいことが明らかになった。なお本年度は,研究討論等を行うため,5月及び8月に延べ3名(早大:平田,村上,桜井)が中国に出張した。また,研究成果の発表のために,8月には中国,10月にはイタリアへ延べ2名(早大:桜井)が出張した。12月には2名(静大:早川,早大:桜井)が本研究の総括討論をするために,訪中した。
著者
平田 彰 常田 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

写真関連産業での現像液や定着液の使用状況・使用工程を調査し,排出の削減・防止策を提出することを目的として研究を行った。本年度は特に定着廃液を取り上げ,その物質フローの解析と再生技術の評価を行った。また,写真廃液の生物処理を実際に行い,写真廃液中に含まれる成分の生分解性を明らかにした。定着液の再生の際に必要となるのが(A)脱銀,(B)界面活性剤等の除去,(C)ハロゲン除去,(D)成分調整である。このうち,(A)および(C)の工程が必要なのは,銀,ハロゲンの残存によって定着速度が遅くなるからである。また,(B)は(C)のハロゲン除去を妨害するためである。各工程での必要技術は以下の通りであることがわかった。(A)廃液の再生に適している脱銀方法は,添加物や溶出物がない電解法である。電解法により脱銀を行うときは,電位の制御により硫化銀の生成を抑え,陰極室と陽極室をイオン交換膜等で分離して硫黄の生成を抑制する必要がある。(B)界面活性剤,現像主薬酸化物等は活性炭吸着あるいは膜分離法により除去することが望ましい。(C)硬膜剤として含まれるアルミニウムイオン(3価)や,ハロゲン化銀溶解剤として含まれるチオ硫酸イオン(2価)は保持し,ハロゲンイオンのみを除去するために1価選択性イオン交換膜を用いて電気透析を行う。(D)最後に成分の調整をする際,pHや各々の成分には最適な値が存在する。さらに,混合培養系で長期馴養した微生物群を用いて,写真廃液を生物分解した結果,1,000ppm程度のTOC成分が残存した。写真廃液を生物処理のみで完全無害化するためには,難生分解性の有機化合物(EDTAなど)を分解する特殊な細菌が必要であることが示唆された。
著者
平田 彰 常田 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

有機塩素化合物は脱油脂やドライクリーニングなどさまざまな分野で使用されているが,発ガン性や催奇性があるため,土壌中から地下水に浸透した場合,飲料水として使うことは不可能である。地下水については光触媒反応を利用して有機塩素化合物の分解が試みられているが,地下水中に含まれているミネラル分がヒドロキシラジカルのスカベンジャーとして作用するため,効率が上がらない。本研究では,有機塩素化合物ガスを脱イオン水へ移動させ,紫外線(UV)ランプを備えた気泡塔型UVリアクター内で分解する手法を提案した。この手法における最大のメリットは,リアクター内の有機塩素化合物がUVランプからの光子や,気液界面ならびにバルク液相でのヒドロキシラジカルと反応できるため,高速かつ副生成物の少ない分解処理が可能になる点である。本研究では,上記リアクター内における物質移動および有機塩素化合物ガス分解の速度論的解析を行い,装置設計や操作条件の最適化を行った。その結果,テトラクロロエチレン(PCE)を対象汚染物質とした場合,PCE/過酸化水素の化学量論比がPCE分解速度に大きく影響を与えることがわかった。また,PCE分解の初期段階で塩素原子がはずれて塩化物イオンが生成し,これらの蓄積がPCE分解速度に影響を与えることもわかった。次に,各種センサーを備えた気泡塔型紫外線リアクターの作製を行い,空隙率分布の影響を確認するために,UVランプの近傍に局所的に気泡が集中するような多孔質板,およびUVランプの周りに均一に気泡が生成するようなリングタイプの散気板を用いて実験を行った。その結果,まず,UVランプ近傍の空隙率の分布を特殊な導電率プローブを用いてオンラインでモニタリングすることに成功した。また,空隙率の分布が反射・散乱などの効果により光の吸収に影響を与えることを明らかにした。
著者
平田 彰 新船 幸二 桜井 誠人 常田 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、単結晶育成時における温度差と濃度差に起因するマランゴニ対流の相互干渉機構を厳密に解明し,それに基づいたマランゴニ対流の抑制・促進等の制御手法を確立し,単結晶の高品質化手法を確立することを目的として研究を行っている。本年度は、前年度に引き続き,半導体単結晶育成の一つである水平ブリッジマン法によりInSb結晶成長実験を行い,初期融液濃度を変化させることにより温度差および濃度差マランゴニ対流が同方向に作用する系(促進系)と,互いに逆方向に作用する系(抑制系)の融液自由界面上の界面流速を測定した。その結果,抑制系においては,自由界面流れの方向が、融液から結晶方向(温度差マランゴニ対流による)及び結晶から融液方向(濃度差マランゴニ対流による)が同時に存在し,流動の淀み点(2方向の流れが衝突する点)が存在する場合があることが明らかになった。これは,同時に行った数値シュミュレーションからも同様の結果が得られた。さらに抑制系に関しては,航空機を利用した微小重力場においても実験を実施した。その際,放物飛行中の到達重力レベルを変化させ,自然対流が融液自由界面流れに及ぼす影響を観察した。その結果,本実験系においては,自然対流は表面流速にはほとんど影響を及ぼさないことが明らかになった。以上の結果から,結晶成長時の融液側移動現象が,自然対流よりも,結晶成長時の偏析現象に伴う濃度差マランゴニ対流に強く影響を受けることが明らかになった。
著者
山本 泰彦 太 虎林
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

血液の赤血球中に酸素運搬体として存在するヘモグロビンが示す高い酸素運搬能は、協同的酸素結合機能によって支えられている。私共は、ヘモグロビンにおいて酸素が結合する部位であるヘムの電子構造に着目し、従来の研究とはまったく異なる新しい観点で研究を行い、ヘム、ヘム鉄、そして軸配位子ヒスチジンの間の電子的な相互作用がヘモグロビンの協同的酸素結合機能の調節に重要であることを実証することに成功した。
著者
金子 裕一郎
出版者
龍谷大学
雑誌
龍谷大学経済学論集 (ISSN:09183418)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1-14, 2013-03-29