著者
千場 梅子 山本 哲郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

結核菌(死菌)を血漿に曝すと、血液凝固反応に伴い、血漿中のリボソームタンパク質S19(RP S19)が結核菌膜上の負荷電領域を足場にして血漿トランスグルタミナーゼ(FXIIIa)により架橋二量体化され、単球のC5aリセプターを介して単球/マクロファージを動員することが明らかになった。 このことから、 結核菌が局所に侵入したとき、 血管外へ透過したRP S19が上記の機序で架橋されて単球/マクロファージを動員し、 菌を貪食処理すると考えられた。この単球走化には、補体活性化産物C5aも関与していた。結核菌感染に対する自然免疫反応に、補体系とともにRP S19も関わっていることが示された。
著者
田辺勝哉 著
出版者
会通社
巻号頁・発行日
1911
著者
スティックス G.
出版者
日経サイエンス
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.108-112, 2007-05

副作用の少ない天然化合物をもとにした薬剤開発は以前から行われてきた。アスピリンはヤナギの樹皮から採れたものだし,抗コレステロール薬のスタチンはカビから,抗マラリア薬のアルテミシニンは漢方で知られる青蒿(せいこう,Artemiesia annua)という植物から採取された。
著者
喜多 藍
出版者
法政大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本年度の最大の成果は、これまでの研究をまとめた博士論文が受理されたことである。本稿では、中国古典文学に描かれる厠と井戸の描写を分析し、古代中国の人々が厠や井戸をどのような場所と認識していたかを考察した。中国の厠については、主に六朝から唐代まで、どのような場所と考えられていたかを論じ、中国には多種多様な厠神に関する記述があり、出会っただけで人間に死をもたらす恐ろしい神と、富貴を与える神との二種類に大別されることが判明した。これは、日本の厠神が、不敬な行為を行わない限り禍をもたらすことのない、穏やかな神であるのとは大きく異なっている。また井戸については、文言小説に描かれる井戸がこの世と異界を繋ぐ境界であることが指摘されている以外、ほとんど研究が行われていない現状を踏まえ、従来取り上げられたことのない多くの文献を対象として、中国における「井戸観」を探求し、以下の三点について指摘した。1. 文言小説に加えて中国古典詩歌を検討し、詩歌では「境界としての井戸」は描かれず、詩歌と小説では井戸の何処に注目するかが異なっているとする新たな見解を提示した。2. 井戸で使われる釣瓶や轆轤に注目し、釣瓶は人間の魂の入れ物であり、釣瓶を上下させる轆轤は人の運命をもてあそぶものという象徴的意味があることを明らかにした。3. 唐・元稹「夢井」に「遶井(井戸をめぐる)」いう語が二度現れることを端緒とし、ものの周囲をめぐるという行為の民俗学的意義を考察し、中国では先秦時代から現在まで、死者を安置した棺や墳墓の周りをめぐるという死者を弔う習俗が途切れることなく行われてきたことを指摘した。以上を踏まえ、元稹「夢井」および李賀「後園鑿井」の新たな解釈を提示しつつ、李白「長干行二首」では井戸に関する習俗や婚姻儀礼における旋回の意義に基づいて、従来提起されていた多くの議論の中からひとつの結論を導いた。

1 0 0 0 OA 栄養管理とQOL

著者
山中 英治
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.799-803, 2014 (Released:2014-06-23)
参考文献数
6

高齢社会となり入院患者も高齢化している。栄養管理とくに強制栄養が、単なる延命治療ではないかとの批判もある。高齢者は入院時栄養不良も多く、栄養不良では術後の回復も遅れ、筋力や免疫能を始めとする体力も低下しやすい。 体力低下は離床の遅れにつながり、入院中の嚥下機能低下、誤嚥性肺炎、褥瘡なども発生しやすい。結果的に動けない、食べられない、家に帰れないことになれば、QOLは大きく低下する。ゆえに適切な栄養サポートは重要である。 周術期の栄養管理についても、不要な長期間の絶食や輸液は患者のQOLを低下させることになるので、科学的根拠に基づいた栄養管理で標準化すべきである。また、静脈栄養よりも経腸栄養が生理的で安全であるが、最もQOLが良好なのは、経口摂取すなわち食事である。生命維持だけが目的ではなく、美味しく食べてこそ、生きている喜びがある。
著者
東條 安匡
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

建設混合廃棄物の選別残渣を中心に,硫酸イオンや石膏を含む材料を対象に一般環境中での利用を想定した硫化水素生成について検討した.選別残渣からの硫酸イオンの溶出傾向は,対象とした他材料と大きく変わらなかったが,有機物の溶出量は多く,長期間継続する傾向にあった.残渣からの溶出する有機炭素は,固体中の有機炭素の約1%であり,固相有機物の多くは難溶出性であった.選別残渣からの硫化水素生成はpHが高く維持されれば阻害され,再生砕石との混合が有効であった.
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒の教育
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.36-43, 1935-02
著者
江上 由里子 安川 孝志 廣田 光恵 村越 英治郎 垣本 和宏
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.171-181, 2012-06-20 (Released:2012-07-18)
参考文献数
18

インドネシアは中央政府主導による保健医療制度の整備により健康水準の向上を図ってきたが、2001年以降の急速な地方分権化政策は、地方の保健医療制度やその機能に大きく影響を及ぼし、保健医療サービスにおいて地域間格差を広げた。リーマンショック後の経済成長率は2010年に6%を超えるなどインドネシア経済は好調であり、保健政策はより具現化し、保健指標も改善してきている。そこで本稿では、インドネシアの公衆衛生に深く関わった筆者らが最新の資料などを収集し、インドネシアの保健医療に関わる関係者に有用な資料として包括的にまとめた。保健指標保健指標は全体的に改善傾向にあるが特に母子保健指標はASEAN周辺国と比較してまだ悪い。感染症疾患も多く、まだ多くの顧みられない熱帯疾患(Neglected Tropical Disease, NTD)も発生している。鳥インフルエンザ(H5N1)人発生例の報告数は依然世界で発症例・死亡例とも最も多い。生活習慣病や喫煙など新たな課題もでている。保健医療制度インドネシアの保健医療制度の概観を述べた。地方政府の保健医療行政能力を向上し同時にコミュニティーの再活性化を図ることを重視しているほか、保健所を治療のみならず地域の予防およびアウトリーチ活動の中心と位置づけ、その運営支援を行っている。保健予算は増額しているがまだGDP比で2%に留まっている。医療施設も医療従事者数も増加しているが充足していない。国民皆保険を目標として貧困者向けのコミュニティー健康保険の適応を拡大し、無料診療を受ける人が増加している。保健政策保健省戦略計画2010-2014を保健政策の軸として、コミュニティーが自立して保健の向上に取り組むことおよび公平性を展望としている。結語疫学的かつ人口動態的な移行期にあるインドネシアは、感染症や妊産婦死亡・栄養問題といった発展途上国に典型的な保健問題とともに、成人病や事故など非感染症の増加という二重疾病負担になっている。また、国民皆健康・ユニバーサルヘルスカバレージを目標としている現在、保険制度の拡充とともにその制度に対応できるだけの保健医療サービスの拡充も求められ、将来を見据えた保健医療サービスの拡充や人材育成が望まれる。
著者
舘 卓司 中村 達
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

1)DNAデータと比較形態による双翅類の高次系統解析をおこない,DNAデータでは,ヤドリバエの単系統性およびクロバエとの姉妹群関係を示した.形態研究では,ハエ類成虫の後胸部の比較形態学をおこない,その側板の相同性を再定義した.環縫群とアタマアブ科では腹部との関節構造を持ち,それが共有派生形質であることを示した.2)ブランコヤドリバエ属の寄主利用の変遷は,これまでに記録された寄主情報を分子系統樹上で最適化することによって解明された.3)アワヨトウを使ってヤドリバエ2種の累代飼育実験のベースを構築された.これは将来的にヤドリバエの一齢幼虫の寄主適応能力を調べるためである.
著者
小木曽 裕
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.561-564, 2009
被引用文献数
3 1

21世紀になり地球環境への関心は、急速に高まっている。その中で都市緑地の重要性の認識もされてきていて、公共において保全、整備する緑地は基より、民有地の緑地についても期待が寄せられている。今日、環境共生や生態学的な配慮をする上で、ビオトープの創出が行われているが、都市再生機構においても団地空間の中にビオトープの整備を行ってきていて、平成4年に高槻・阿武山団地(大阪府)で実施したのが最初である。高槻・阿武山団地のビオトープは事業地区の公共施設である調整池を整備したものである。団地内に整備した団地は、首都圏において平成17年度末で15団地ある。その中で山崎団地(建替後:レーベンスガルテン山崎)は、平成8年度からコンセプトワークを始め、環境共生型住宅として整備を行ってきた。そして、レーベンスガルテン山崎における、地域環境と連携した計画・設計及び調査や効果については、平成13年から20年までの間、継続して報告している。そこで、本研究では、今日期待される居住環境に身近な場所での生態系への配慮や、居住者の利用としての緑地整備の一手法であるビオトープに関して、継続して報告しているレーベンスガルテン山崎において、利用者である居住者の認識と評価を把握し、居住者の求めるビオトープの姿を明らかにすることを目的とした。
著者
Zhai Jing Robinson William H.
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.157-162, 1994-08-20
被引用文献数
1

雄のチャバネゴキブリを用い, 殺虫剤処理面から脚のふ節盤を通して致死量の薬剤を取り入れるのに要する時間と噴霧薬液滴の大きさ, 密度および薬剤の濃度の関係について調べた.ふ節盤への直接処理とガラス板に処理した薬液残渣の上を歩かせる間接処理を行なった.ふ節盤のガラス面への接触面積とガラス盤上でのゴキブリの移動速度を測定した.薬剤処理ガラス板からふ節への薬剤の移行量をゴキブリの1分間の移動距離, ふ節の接触面積, 平方センチメートル当りの薬剤量から計算で求めた.直接処理の結果から計算すると, 0.1%のcypermethrinを噴霧した場合, 50%のゴキブリが致死するためには感受性のVPI系で33滴, 抵抗性のRHA系で3174滴の残渣に触れなければならない.10μg/cm^2のcypermethrinを処理したガラス面でのKT_<50>はVPI系で5.4分, RHA系で15.6分であった.0.049μg/cm^2の処理面でのKT_<50>はVPI系では8.4分であったが, RHA系では24時間以上になった.
著者
吉川 昇
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

近年、薄型テレビの出現により旧来のブラウン管は廃棄される傾向にある。ブラウン管用ファンネルガラスは鉛を含むため、廃棄には脱鉛が必要である。本研究はマイクロ波加熱を利用した鉛の迅速酸浸出を行い、ガラスの廃棄/再利用を可能にする事を目的とする。本研究ではマイクロ波印加鉛ガラスの酸浸出速度に関する基礎的研究と、大気系での大量処理の可能性を調べた。
著者
俵佑方人
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.113-118, 1992-12
被引用文献数
2

愛知県におけるアサリ関係の調査研究は、明治27〜35年にかけての産卵期調査、大正4〜5年の養殖適地調査、大正6〜10年のアサリ養殖試験、および昭和26〜28年のアサリ資源調査等が報告されている。これらの知見を基にして昭和27年から沿岸漁業振興事業の一環としてブルドーザー等を使用して浅海内湾開発事業が行われ、また昭和28年からは主にアサリを対象とする貝類保護水面も設置されたが、これが本県におけるアサリ増殖場造成の嚆矢であった。その後福江湾槍ヶ崎根部堀削水路造成、吉田地区作澪耕転整地事業、ダイナマイトによる深部耕転2)、腐泥域における人工砂場造成、ハチの巣状人工干潟造成等の各種事業や試験が行われたが、これらの経験や知見を基にして昭和57-63年にかけて福江湾大規模増殖場造成事業が実施された。以下、愛知県におけるアサリ増殖場造成事例及び福江湾開発について報告する。