著者
清水 翔太郎
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、近世大名家の儀礼、藩主家族構成員の役割、大名家同士の交際に注目し、政治権力世襲の体制を支えた仕組みやジェンダー構造を明らかにすることを目的とした。本年度は、前年度十分に検討することができなかった近世前期の大名家の婚姻成立過程の分析をまとめ、中・後期の事例を含め、その変遷を通時的に解明することができた。この成果は国史談話会大会で口頭報告し、前期の事例については学術雑誌に投稿することができた。なお、昨年度口頭報告を行った幼少相続時の「看抱」の刊行に関する論考は、「近世大名家における「看抱」」(『歴史』第126輯)として採録が決定している。また、幕末・維新期の動向についても分析を進める予定で、秋田県公文書館において史料の調査・収集を行った。その分析の核となる「御日記」について、史料学的な分析をする予定であったが、想像以上に多くの量が残されていたため、すべて収集することができず、また類似した「申伝帳」という史料が残されており、それも合わせて分析する必要があることから断念せざるを得なかった。幕末・維新期のこうした史料が多く残されているのは、佐竹家に限ったことではなく、他家の史料の残存状況を把握するなど、史料学的な分析を進めた上で近世大名家と大名華族家の「家」の問題を連続した視点で分析する必要があることがわかった。最終年度であった本年度は、これまでの成果をまとめ、ロシア、ノボシビルスク国立大学にて口頭報告し、研究成果を海外に発信することができた。
著者
杉原 厚吉 今堀 慎治
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

背景空間の計量的性質が時間とともに変わる環境の三つの事例に対してロバストな幾何計算アルゴリズムを構成した.第一に,時間変化する流れのもとでの船の最小到達時間として定義される距離の計算法を構成し,海難救助船経路計画などへ応用した.第二に,動画を見たときの主観的奥行き錯視量の推定法を構成し,不可能モーション錯視の創作へ応用した.第三に,材料から部品を切り取る際に材料の形状変化に起因する振動を避けるカッターパス計算法を構成した.
著者
早川 幸男
出版者
素粒子論グループ 素粒子研究編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.341-348, 1954-11

核子とπ中間子から成る体系について, Iスピンの保存則が成立つことは殆んど確からしい。そこでIスピンの保存に基いて,基本的なπ反応の荷電比を予測することができる。このような計算はすでに多くの人々によつて行われているが,前項の実験の綜合報告に続いてこゝにとりまとめておく。それ故本稿は原著ではない。またこの形で素研に出すことについて,南,長谷川氏等との討論に負うところが多い。
著者
吉田 恵美 (2008-2009) 吉由 恵美 (2007)
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

脊椎動物の胚発生において神経板は、新しく転写因子SOX2を発現した神経系原基細胞を後部神経板に付加させていくことによって伸長する。このSox2発現細胞は、原条前方部の両側に位置し神経系・中胚葉・表皮系の共通の前駆体であるStem zoneから生み出される。Sox2の発現を制御するエンハンサーのうちN-1エンハンサーは、Stem zoneと一致する領域とそこから生み出された直後の神経系原基細胞で活性を持つ。このことから、N-1エンハンサーの活性化とSox2発現の直後に起こる遺伝子調節は、Stem zoneから神経系原基細胞を生み出す過程に直接的な役割を果たしていることが考えられた。そこで、Stem zoneから神経系原基細胞を生み出す分子機構を明らかにするために、N-1エンハンサー欠失マウス胚を作成し、解析を行った。N-1エンハンサー欠失マウス胚でSox2の発現は、N-1エンハンサーが活性を持つ領域で欠失した。この結果から後部神経板尾部におけるSox2の発現はN-1エンハンサーに依存的であることが示された。しかし、このSox2発現の欠失は他のエンハンサーによって補完され、結果的には正常に神経管が形成された。次に、後部神経板尾部におけるSox2依存的な遺伝子調節を明らかにするために、8.5日胚、8 somite stageのN-1エンハンサー欠失マウス胚を使ってMicroarray解析を行った。その結果、幾つかのSox2依存的に制御される遺伝子の候補を同定することができた。これらの候補遺伝子について、さらに解析を進めることが、神経系原基細胞が生み出される分子メカニズムを明らかにし、Stem zoneについても新たな知見をもたらすことが予想される。
著者
増田 俊夫 阪口 壽一 金谷 利治 井上 倫太郎
出版者
福井工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

極性基やねじれた置換基を有するポリアセチレンを合成し、気体透過性を検討した。スルホン酸基やイミダゾリウム塩含有ポリマーは二酸化炭素を選択的に溶解させるため、高い二酸化炭素透過選択性を示した。ねじれた置換基を有するポリマーは高い酸素透過性を示した.ポリメチル化インダン部位を有するポリアセチレンの局所運動性を準弾性中性子散乱を用いて検討した。数十ピコ秒の時間スケールの局所運動が大であるほど、気体透過性が増大した.置換ポリアセチレンの気体透過性の経時変化を調べた。非常に高い気体透過性を示すポリマーでは物質吸着および緩和現象により気体透過性が減少した。
著者
金 京南
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.1089-1086, 2006-03-20
著者
菅野 勉 MACEDO Manuel C. Bono Jose A.
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-8, 1999-04-30
被引用文献数
4

Brachiaria decumbens品種Basilisk及びBrachiaria brizantha品種Maranduのリン施用に対する生育反応を比較するためにブラジルマットグロッソドスル州カンポグランジの温室においてポット試験を行った。オキシソルを充〓したポットに0, 25, 50及び200kg/haのリンを施用し, 上記2種の幼苗を移植した。33, 62, 103及び132日の育成後, 生育調査を行い収量生長速度(CGR), 純同化率(NAR)等を推定するとともに, 132日目の植物体及びポット残土のリン含有量を測定し, 施用リンの利用効率(乾物生産g/施用Pg), 施用リンの吸収率(吸収Pg/施用Pg), 吸収リンの利用効率(乾物生産g/吸収Pg), 根のリン吸収効率(吸収Pg/根重g)等を推定した。リン施用量の増加に伴いBD及びBBの葉面積が増加し, その結果, CGR及び植物体乾物重が増加した。リン施用がNARに及ぼす影響は葉面積に及ぼす影響に比較して小さかった。BBのNARは生育初期においてBDよりも有意に高かった。しかしながら, BBは, 生育後半において土壌中にリンが十分残存するにもかかわらず, NARを顕著に減少させた。このことから, BBはBDに比較してより早い時期に利用される必要があること, 及びP以外の成分の追肥が必要であることが示唆された。一方, BDは施用リンの吸収率, 根のリン吸収効率がすべてのリン施用区においてBBより高く, こうした吸収特性がBDの優れた低肥沃土壌耐性に関連しているものと考えられた。
著者
渡邊 悟 深井 克明 長岡 俊治 羽柴 基之 高林 彰 森 滋夫 YAMAZAKI Yoshihisa 山崎 由久 和田 佳郎
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

コンピューターグラフィクス(CG)により立体視可能なバーチャルリアリティ画像を作成し、ゴ-グル上に投影し、動的視覚刺激を行った際の立位姿勢の変化に関するを行った。体動揺の発生と前庭機能との関連を調べるため直線加速度負荷装置を用い、負荷加速度と視覚刺激CGの動きを解析することを目論んだ。平成7年度、8年度の2年間でCG作成が完成させ、更にこの間平成7年度は視覚刺激を用いない正弦波様の直線加速度負荷中の立位姿勢の変化について検討し、比較的低い負荷加速度(0.02-0.04G)では加速度に応じて体の揺れを生じるが、高い負荷加速度(0.06-0.06G)では頭の位置が安定しほぼ垂直位に固定され、前庭-頚反射の関与の大きい事が明らかにされた。解析には身体各部の動揺をビデオトラッカーにより記録し、頚部、躯幹、下肢の筋電図の記録により行った。平成8年度、9年度は専らバーチャルリアリティ画像による視覚刺激を立位姿勢の被験者にゴ-グルを介して与えた。ゴ-グルのスクリーン上に投影された運動画像の提示は姿勢動揺を誘発する。この姿勢動揺と運動画像によって生じる自己運動感覚(vection)との関係を解析した。その結果、視覚刺激の速度成分とvectionの大きさ及び体動揺の大きさにほぼ比例関係を認めた。しかし、周波数のみの変化には殆ど依存しない。正弦波刺激は予測反応がかなり早く現れる。体動揺は暗算負荷により大きな影響を受ける。この際、vectionもはっきりと減少することが明らかとなった。この様なvectionの成因には周辺視野における広い視野の運動感覚が必要であり、視野の運動が自分自身の運動と間違えるという、心理的な現象であり、引き起こされる体動揺が高次な神経活動による結果とみなすことができる。今後、更に視覚系と体動揺によって生じる前庭系との関連に関して解析を行う予定である。
著者
西浦 麻美子
出版者
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科
雑誌
人間文化創成科学論叢 (ISSN:13448013)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.161-168, 2007

18世紀末フランスにおけるアングロマニー(イギリス心酔)の実態を、貴族の回想録や書簡、同時代の記述をもとに明らかにした。1775年にアメリカ独立戦争が勃発すると、フランスは植民地の独立を支援する立場からイギリスと対立した。この時「アメリカ熱」がそれまでのアングロマニーに取って代わる勢いを見せ、さらにアングロフォビー(イギリス嫌い)の気運が高まった。イギリス人の仕草や服装を真似たイギリスかぶれの貴族の若者たちは、率先してあこがれの国を敵にまわした戦争に乗り出しており、この事実は、一見アングロマニーの消滅を物語っているかのように見える。しかしそこには、敵を敬いつつも、アメリカの独立を願う気持ち、イギリスを模範として称えつつも、フランスの制海権を取り戻そうとする気持ち、さらには自らの武勲を望む気持ちが入り交じっていたことが指摘でき、戦争による敵対関係が必ずしも彼らのアングロマニーを妨げていなかったことがわかる。またこの時期の「アメリカ熱」は、「自由」という共通する記号によってアングロマニーと結びついており、戦後、結果的にアングロマニーが勢いを増して復活したことからも、「アメリカ熱」はアングロマニーのもうひとつの形であったといえる。
著者
山崎 正氣
出版者
恵泉女学園大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:09178333)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.23-36, 2003-03-20

バングラデシュは,総面積144万km^2の国土(日本の0.4倍)に1億4千万の人口をかかえ,その80%は農村部に居住している.1971年のパキスタンからの独立以降,政情の不安,行政制度の未整備,天然資源の不足,輸出力の低さ,農村の貧困,さらに,度重なる自然災害等の諸問題を抱える中で,食糧自給の達成は,国の最優先課題として取り組まれてきた.就業機会の65%を創出する農業は,稲作を中心に,畑作,園芸,畜産,水産,林業等が密接に絡み合った営農形態をもち,農家の70%は10ha(2.5acre)以下の小規模農家層や土地無し農民で,その割合は増加の傾向にある.しかし国土のほとんどが平坦で,耕地率は66%と極めて高く,農地の拡大は不可能で,貧農層にとっては内延的な充実による営農改善の余地しか残されていないと言える.近年における農業部門の特徴は,これまでの穀物生産優先政策から,各地に適した作目・畜目の多様化と選択的拡大を図ろうとするもので,特に,近年の灌漑事業の進展や改良品種の導入・普及に伴い,作目の多様化を促進してきた栽培システム研究(Cropping Systems Research)の経験を基礎に,園芸,畜産,水産,林産部門を加え,農家の土地・労働・資本の総合的な活用を図ろうとする営農システム研究(Farming Systems Research)への展開は,小農経営の改善にとってその成果が期待されよう.バングラデシュの栄養水準は,他のアジアの国々に比べても低く,特にタンパク質と脂肪の摂取量は最低の水準にあると言われている.FAOの試算では,一日の平均必要熱量を2,120Kcal,蛋白質を61.5gとしているが,カロリーでは人口の44%,蛋白質では78%が水準以下の栄養不良の状態にあると見られ,都市部の30〜40%と農村部の30%の人口が絶対的貧困レベルに置かれていると言われている.農村生活の改善は,栄養改善,衛生改善,家族計画,教育の向上,地域住民の互助組織等が総合的に結びついて効果が発揮されてくるものであるが,まずは,食糧生産の増加によって,食生活における栄養水準が少しずつでも向上する様な段階を維持してゆく事が最優先の課題となっている.本稿においては,近年の農業生産多様化の下で,栄養収量が高く,栽培技術体系の定着が注目されている大豆生産の振興事業に焦点を当て,その沿革や,研究・普及組織,生産と消費の動向,そして,国際協力等の展開について考察する.
著者
竹内 良英
出版者
パーリ学仏教文化学会
雑誌
パーリ学仏教文化学 (ISSN:09148604)
巻号頁・発行日
no.5, pp.55-73, 1992-05-30
著者
安立 清史
出版者
九州大学大学院人間環境学研究院
雑誌
共生社会学 (ISSN:13462717)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-15, 2006

非営利組織(Non Profit Organization)に関する社会学的理論は、まだ十分に展開されていない。そこで非営利組織に関する隣接諸社会科学による理論的アプローチの先行研究のレビューを行う。主なものは「政府の失敗理論(多様性理論)」「市場の失敗理論(信頼の理論)」「ボランティアの失敗理論(相互依存の理論)」「供給サイドの理論(社会的起業家の理論)」「利害関係者の理論」などである。こうした諸理論の検討を行い、非営利組織の社会学的な理解との接点を考察し、ありうべき非営利組織の社会学理論の展開を考える基礎作業を行う。
著者
張 欣
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度学仏教学研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.64-67, 2005-12