著者
柴山 敦 WILLIAM Tongamp
出版者
秋田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

近年,銅鉱石中の不純物(ヒ素、アンチモン、フッ素など)が世界的に増加する傾向にある。本年度の研究では,選鉱プロセスで広く用いられる浮遊選鉱法(浮選)と,アルカリ浴で硫化剤を用いた浸出処理,さらに浸出后液からのヒ素やアンチモンの沈殿晶析の可能性を検討し,不純物を選択的に除去する技術の調査研究を行った。まず浮選では,pH4,捕収剤アミルキサントゲン酸カリウムを50g/t-ore,起泡剤メチルイソブチルカルビノールを200g/t-ore添加することで,鉱石中に含まれるヒ素の93%を浮上分離することができた。これらについては、ヒ素を含む主要鉱石の硫砒銅鉱が、他の鉱石に比べ疎水性並びに浮遊性に富むことが影響し、比較的早い浮上速度で分離されていることを究明した。一方、浸出法および沈殿法による高ヒ素含有銅鉱石からのヒ素の選択除去を行った結果,パルプ濃度1,000g/L,NaOH100g/L,NaHS200g/L,80℃での浸出により,鉱石中に含まれるヒ素の95%を浸出することができた。また,浸出后液に固体硫黄S^0を添加することで,液中に含まれるヒ素の約70%を沈殿物として回収することが可能であり,沈殿物はNa_3AsS_4として晶析することが確認された。またアンチモンが共存する四面銅鉱(Tetrahedrite: (Cu,Fe)_<12>(Sb,As)_4S_<13>)に対して同様のアルカリ浸出を行った結果、ヒ素に比べアンチモンの方が浸出速度が速く、浸出初期では浸出率が上回ることを確認し、チオアンチモンナトリウム塩の沈殿生成の可能性を見出した。これらの実験結果を通じ,浮選におけるヒ素含有鉱石の分離効果と影響因子,あるいはヒ素およびアンチモンの選択浸出の可能性と沈殿生成条件を論考し,化学的あるいは反応論的考察のもと、不純物除去につながるプロセス技術を究明することができた。
著者
松原 真
出版者
国文学研究資料館
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本年度の成果は次の二点である。(1)単著『自由民権運動と戯作者――明治一〇年代の仮名垣魯文とその門弟』を和泉書院より刊行した。「あとがき」にも記した通り、本書は、仮名垣魯文及びその門弟の明治10年代における活動実態を明らかにし、それを通じて、近代日本の基礎が築かれるこの期の文学空間をより立体的に再現する試みである。なかでも、彼等と自由民権運動、特に自由党との繋がりを見出すことを重視している。本書の結論はだいたい以下の四点にまとめられる。①仮名垣魯文は明治10年代に新聞人または続き物作家(新聞小説家)として多くの読者に支持され、門下生を多く輩出し、多方面にわたる人脈を持ち、文壇(新聞界)に巨大な権力を築いていた。②仮名垣魯文とその門弟の戯作表現は、社会的に無毒無害なものではなく、明治政府の意思に反する位相にあった。魯文達はこのことに強く意識的で、特に読者獲得のために、戦略的に自らの戯作表現を用いた。③上記二点に惹かれ、自由党系の民権家、政治小説家は魯文達にみずから積極的に近づいた。一方、魯文達もまた、新聞の経営上好都合ということもあって、彼らとの交流を積極的に受け入れた。④野崎左文(魯文門弟)の著名な回想とは異なり、実際には③の交流の中から、二世花笠文京(魯文門弟)のように民権家として自由民権運動のための小説を書く戯作者も現れた。――そして、この政治運動の衰退とともに仮名垣魯文とその門弟の時代は終わり、入れ替わるようにして、坪内逍遥唱える写実主義を始めとする新興文学が文壇を席巻する、というのが本書の史的見取り図である。(2)仮名垣魯文またはその門弟が所属した小新聞に連載された続き物(連載小説)について調査分析を行った。紙面を悉皆調査しどこに何が書かれているかを明らかにしたうえで、続き物を実際に読みメモを取った。本年度は特に「絵入自由新聞」(明治15~23年)を中心的に扱った。ただし、これについては引き続き調査分析を必要とする。
著者
稲田 秀洋 古川 欣也 石田 順造 斎藤 誠 加藤 治文
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.111-115, 2007
被引用文献数
6

背景.気管支動脈塞栓術(BAE)は内視鏡下に止血が不能な症例の有効な治療法として広く行われているが,突然の多量な気管支出血に対して早急にBAEを行うことは,患者の状態および病院の体制からも困難である場合が多い.今回,我々は続発性難治性気胸,肺瘻,有瘻性膿胸に対して末梢からの気漏を止め病態を改善させるために開発されたEndobronchial Watanabe Spigot (EWS)を用いて,出血をコントロールした再発肺癌症例の1例を経験した.症例.63歳男性.左S^8と左S^<1+2>の多発肺癌で左下葉切除術・リンパ節郭清術および左上葉肺部分切除術を施行した.術後7ヶ月目に多量な喀血を認め,土曜日午後6時に救急外来受診.緊急内視鏡施行したところ,左B^3からの持続する多量の出血を認めた.出血の吸引,ボスミン生食とトロンビン溶液の散布による止血を約1時間繰り返したが止血できないため,急濾EWS(M)1個を左B^3aに充填したところ内視鏡的に止血できた.2日後にBAEを施行し,完全に止血した.結語.EWSは難治性気胸,肺瘻を閉鎖する目的で開発されたシリコン製の充填材であるが,コントロール困難な気管支出血のコントロールにも有用である可能性が示唆された.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.952, pp.111-114, 1998-08-03

東証2部上場で港湾運送業の三井埠頭は6月4日、横浜地裁に会社更生法の適用を申請しました。100億円以上もの偽造と思われる当社名義の手形が乱発され、信用不安が起こりました。その結果、資金繰りに行き詰まったのが原因です。すでに大石泰廣社長は辞任しています。
著者
松田 稔樹
出版者
特定非営利活動法人日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.157-164, 2009-12-25

日本学術会議は, 2006年に「科学者の行動規範」という声明文を公表した.当該声明文は科学者個人宛のものであるが,そこには「科学者の行動規範の自律的実現を目指して」という大学や研究機関,学協会等にあてた要望が付け加えられている.本稿では,そこに示された事項に学会としてどのように向き合うべきかを一研究者の立場から考察している.特に,筆者は教育工学を専門としている立場でもあるので,「研究倫理教育の必要性」という項目に関連して,倫理とモラルとの関係や,教育手法としてのシミュレーション&ゲーミングの可能性を取り上げる.また,この問題に,トップダウンではなくボトムアップで取り組む観点から,学会誌でのこの問題の取り扱いにも触れたい.
著者
夏目 武 佐藤 吉信 小野寺 勝重 西 干機
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. R, 信頼性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.430, pp.27-30, 2006-12-08
参考文献数
29
被引用文献数
4

2006年IEC/TC56-Dependability,ディペンダビリティに関わる標準化国際会議が英国ロンドン市で9月11日から15日まで開催された。14カ国、50名の各国代表が参画、日本からは著者等4名が参加した。会議はWG1-用語、WG2-試験統汁道具立て、WG3-管理保全、WG4-システムとソフトウェアの作業グループ単位で作業が運営されていて、進捗状況の報告、まとめ、問題提起等は週の始めと終わりの半日を使った全体会議として運営された。今回は通常の規格審議の会議に加えて、日本から次の件が提案され説明された。1.廃版になったフォーマルデザインレビューのコンセプトを復活し、ディペンダビリティ管理体系を整備する事に関する新規作業項目(NWI)の正式提案前の意見調整、2.old IEC 60300-3-6:ディペンダピリティ管理におけるソフトアェアの側面の新たな考えかたで来春には日本提案として提出する基本的原案の概要説明と規格化のための進捗管理の新手法の提案。3.2007年秋季に予定されている東京会議の基本的計画案の経過をTC56と議長に報告し調整することでであった。この会議報告と併せて近年の動きと重ねて規格化の流れと技術的動向を考察する。
著者
Tatsuhiro Miura Keishoku Sakuraba
出版者
理学療法科学学会
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.323-329, 2014 (Released:2014-03-25)
参考文献数
64
被引用文献数
3 14

[Purpose] To clarify the influence of nonspecific low back pain (NSLBP) on force fluctuation and the myoelectric data of back muscles during isometric trunk extension at low to high force levels. [Subjects] Fourteen male subjects with NSLBP and 14 healthy male control subjects participated in this study. [Methods] All participants extended their trunk isometrically maintaining 10 levels of target force [2, 5, 10, 15, 20, 30, 50, 70, 80 and 90% of maximal voluntary contraction (MVC) in a random order] for about 4 seconds with visual feedback. A force transducer and tri-axis force sensor were positioned at the 7th thoracic vertebra to measure force output and the direction of force. Myoelectric activities of the back muscles (longissimus thoracis, L2 level; multifidus, S1 level) were recorded by surface electromyography. [Results] Force output of NSLBP subjects fluctuated more than that of healthy subjects at 30% and 50%MVC. Higher median power frequency in the multifidus was observed in NSLBP subjects at moderate to high force levels. [Conclusion] These results show that the properties of force output in NSLBP subjects differ from those in healthy subjects, suggesting that the assessment of force fluctuation of back muscles at moderate force levels is a useful index for evaluating and discriminating NSLBP.
著者
田村 香織 橋本 敬
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

その場にない対象について表現し伝え理解できるという超越的コミュニケーションについて、描画コミュニケーション実験で調べた。この実験では、送り手が目の前にない対象を描画し、受け手は描画から対象が何かを返答する。これを繰り返すことで、両者は「自分に関する仮説を持った相手」に関する仮説という入れ子を深めていく。この過程の分析から、コミュニケーションにおける自己他者モデルの形成と超越性との関係を議論する。
著者
菅原 琢
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本課題では、日本の国政選挙での有権者と候補者のそれぞれの過程における地元志向(選挙においてその地域の代表であることなどを重視する傾向)について研究を行っている。かつての衆院の中選挙区制では、強い地元志向が自民党の一党優位体制を生みだしていたが、参院選挙でもSNTVの理論予測であるM+1ルールを阻害することで自民党を利していた。また、新制度下では同一政党の公認候補同士の争いがなくなったことから選挙における地元志向は消えると考えられたが、政党の公認過程に地元志向の反映の場面が移動したという仮説を立てて分析を行っている。
著者
河原 研二 永井 教之 長塚 仁 GUNDUZ Mehmet
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

近年インターネットの発達は目覚ましいものがあるが、高齢社会の生活習慣病(高血圧、糖尿病)の多遺伝子性疾患、オーダーメイド医療への転換のための疾患感受性遺伝子(SNP)の解析が行われている。これらの多量の個人情報の解析及び研究技術のグローバル化を目指し、無料のネットワーク、インターネット回線を利用し、国内で最も太い回線のTAO (Japan Giga Network : JGN)によるデータ配信をサーバー構築して試みた。今回、LIVEの実験操作として、総務省直轄の(TAO)ギガネットの接続許可を戴き、本学部にセットされた光ファイバー155Mbps超高速インターネット回線による動画像配信と教育効果の改善を目指した。研究代表者がTAO回線での接続経験を有する岡山市内の岡山理科大学との双方向けの動画像配信(70Mbps)のテストを数回行い、カリキュラム発信のHPやTV会議用のサーバーとしても役立つことを示した。1年目は本学部に設置したATM回線(155Mbit)に接続するサーバー(購入備品)の構築を行った。稼働できる整備が備わっていた。2年目は研究計画としてネットワークを構築する必要があり、以下の通りに行った。(1)セキュリティーの面で接続先のインターネット、グローバルIPを現在使用のIPv4・プロトコールから個別を特定できるIPv6・プロトコールに変更した。ルーティング作業は河原が約3ヶ月かけて実証実験した。(2)接続先には高速インターネット回線ギガビットネットワークセンター経由で英語により国内外に向けて発信を計画し、学会セミナーの企画、開催で韓国ソウル大学歯学部を訪問し、両者が接続できることを確認した。(3)研究代表者の永井、長塚、Gunduzは口腔癌等の遺伝子を解析し、国内外に情報発信することを可能にした。
著者
小林 敦子 松本 ますみ 武 宇林 蔡 国英 馬 平 王 建新
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

(1) 中国の少数民族地域である寧夏回族自治区においては、回族の女性教員の増加に伴い、女児・女子青年の教育レベルが向上している。(2) 日本のNGOの教育支援によって養成された回族女性教員は、結婚・出産後も小中学校教員として働き、地域における女性のエンパワーメントの上で貢献している。(3) 民族の特性を生かした女子アラビア語学校の卒業者である回族女子青年は、経済発展の著しい広州や義烏で通訳として活躍している。家庭の経済的困窮等の事情から、普通高校への進学を断念した回族女子青年にとって、アラビア語学校はセイフティネットとなっている。
著者
岩爪 道昭 武田 英明 西田 豊明 太田 衛 高岡 良行 水上 雄一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OFS, オフィスシステム
巻号頁・発行日
vol.97, no.212, pp.33-40, 1997-07-25

本稿ではオントロジーとドキュメントベースに基づく現場技術情報の共有支援法を提案する. 技術者・作業者は, 業務を遂行する過程でさまざまな技術情報を参照する必要がある. 企業内では, 円滑な業務遂行のために基準・規定類が整備されている. また, 近年ネットワーク技術の進歩により, これらの書類は電子化され, イントラネット(Intranet)上に蓄積されるようなってきた. しかし, これらの技術情報の利用方法は必ずしも自明ではなく, 業務に利用するためには, 長年の専門知識やノウハウを必要とした. 本研究では, 対象に関するオントロジーを用いて, ベテラン技術者の専門知識やノウハウの継承を促進する現場技術情報共有支援システムを提案し, 配電用変電所における流用変圧器の改修計画業務支援を対象としたプロトタイプを構築した. これにより筆者らの手法の有効性および構築したシステムが十分実用的であることを検証した.