著者
山田 勝士
出版者
福岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本研究では、ラットにおけるあくび行動の発現機序について検討を加え、以下の研究結果を得た。1.あくび行動は、選択的ドパミンDー2受容体作動薬のタリペキソ-ルの皮下投与によって誘発され、本あくび行動は、βーアドレナリン受容体遮断薬のピンドロ-ルあるいはαー1アドレナリン受容体遮断薬であるプラゾシンやブナゾシンの前処置によって増強された。2.ムスカリンMー1受容体作動薬であるRS 86およびAF102Bの皮下投与によってもあくび行動を誘発した。3.RS 86、AF102B、ピロカルピンおよびフィゾスチグミンの投与によって誘発されるあくび行動は、ピンドロ-ルの前処置によって増強されたが、プラゾシンやブナゾシンの前処置では影響を受けなかった。4.これらの薬物によって誘発される全てのあくび行動はムスカリン受容体遮断薬であるスコポラミンおよびαー2アドレナリン受容体遮断薬であるヨヒンビン、イダゾキサンあるいはラウオルシンの前投与によって著明に抑制された。5.ドパミンDー2受容体作動薬誘発あくび行動は、ジヒドロピリジン系カルシウムチャンネルアンタゴニストであるニフェジピンおよびニカルジピンの前投与によって増強されたが、非ジヒドロピリジン系のベラパミルやジルチアゼムでは増強されなかった。6.ムスカリンMー1受容体作動薬およびコリンエステラ-ゼ阻害薬によるあくび行動は、いずれのカルシウムチャンネルアンタゴニストの前処置によっても影響されなかった。以上の結果より、あくび行動は、高感受性ドパミンDー2受容体あるいはムスカリンMー1受容体の刺激を介して発現し、また本行動に関与するドパミン性神経ーアセチルコリン性神経連絡系のアセチルコリン性神経活動に対してノルアドレナリン性神経が抑制的に、さらにアセチルコリン性神経に続く未知の神経に対してアドレナリン性神経が抑制的に制御していることが明らかとなった。さらに、あくび行動の発現に関与するドパミン性神経活動においてカルシウムが重要な役割を演じていることが示唆された。
著者
川内 陽平
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

餌生物転換期(全長30m程度)前後において,スケトウダラ太平洋系群稚魚が好適な飼料・物理環境に適合することは重要と考えられるが,充分に検証されてこなかった。本研究では,2011、2012年の北海道噴火湾周辺における昼夜で計量魚群探知機による音響調査,海洋環境観測,稚魚と動物プランクトン採集を行うことによって,稚魚の分布と周囲環境との関連を詳細に検証した。稚魚の摂餌状態と餌料環境の結果から,30mm以上の大型稚魚は小型のものと比較してより大きなカイアシ類等を摂食し,中底層では大型稚魚の栄養状態は良かった。摂食量については全体的に夜間のほうが多い傾向にあった。大型の餌であるEucalanus属は大型稚魚に好適な中底層に多い傾向が確認された。しかしながら,昼夜・湾内外における各体サイズの稚魚の鉛直分布状況の違いや捕食者からの影響の可能性を考慮すると,当海域の稚魚は代謝や逃避等とのバランスをとって摂餌していた可能性がある。また,年のよって卓越した餌種が変わったことから,太平洋系群の各年級群の栄養状態や成長の違いに大きく関わると考えられる。一般化加法モデル(GAM)による2011年の湾全体の稚魚分布と物理環境との関係の結果から,全ての環境要因(水温,塩分,分布深度)が稚魚の分布選択の説明因子として有意であることが示された。また,おおまかに昼間は低温な中層で,夜間は温かい表層に分布する傾向があったものの,湾内外で詳細な分布特性は異なるものであった。これまでの局地的な結果とよく一致するとともに,さらにより広範囲かつ場所に応じた詳細な稚魚の分布特性を定量的に捉えることができたといえる。以上の結果を踏まえ,さらに経年的な解析を行うことで当該時期が太平洋系群に与える影響についての傾向明らかにしていく予定である。
著者
原口 朋比古 瀧 剛志 長谷川 純一
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌. D, 産業応用部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. D, A publication of Industry Applications Society (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.131, no.4, pp.565-571, 2011-04-01
被引用文献数
1

This paper presents a system based on the control of PTZ cameras for automated real-time tracking of individual figure skaters moving on an ice rink. In the video images of figure skating, irregular trajectories, various postures, rapid movements, and various costume colors are included. Therefore, it is difficult to determine some features useful for image tracking. On the other hand, an ice rink has a limited area and uniform high intensity, and skating is always performed on ice. In the proposed system, an ice rink region is first extracted from a video image by the region growing method, and then, a skater region is extracted using the rink shape information. In the camera control process, each camera is automatically panned and/or tilted so that the skater region is as close to the center of the image as possible; further, the camera is zoomed to maintain the skater image at an appropriate scale. The results of experiments performed for 10 training scenes show that the skater extraction rate is approximately 98%. Thus, it was concluded that tracking with camera control was successful for almost all the cases considered in the study.
著者
岡山 万里 高橋 敏之
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.30, pp.151-162, 2009-03-21

大原美術館が1993年から行っている幼児対象プログラムのうち,絵画鑑賞プログラム「対話」について,筆者らは14年間の実施記録をもとに考察して,以下のような結論を得た。環境との相互作用により発達する幼児に対して行われる美術館職員の発話は,人的環境からの言語的応答であると同時に,絵画という物的環境からの応答に代わるものとなり,対話は幼児と絵画作品の相互作用を促す役割を果たす。「対話」の中で,幼児は言語訓練の機会を得,絵画の諸要素に出会い,絵画や美術館との関わりの端緒を得る。
出版者
大阪商船
巻号頁・発行日
1900
著者
林 一也 鈴木 敦子 津久井 亜紀夫 高松 直 内藤 功一 岡田 亨 森 元幸 梅村 芳樹
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.589-596, 1997-07-15
被引用文献数
6

The characteristic anthocyanin, vitamin C, dietary fiber and sucrose contents of new types of colored potatoes were studied. The total dietary fiber level in the violet, red and yellow potatoes w[ere 0.75, 0.66 and 0.85o%, respectively. The total vitamin C contents of the violet, red and yellow potatoes were 25.3, 14.l and 31.5mg/100 g, respectively, while the anthocyanin contents of the violet, red and yellow potatoes were 142,148 and 17 mg/100 g, respectively. The main anthocyanin structures in the violet and red potatoes were determined to be petanin and pelanin by FAB-M S and ^1 H-NM R analysis. The red potato anthocyanin was very stable to heat and UV irradiation. Sucrose in the red and yellow potatoes increased during low-temperature storage.
出版者
首相官邸
巻号頁・発行日
2011-11-10
著者
寺田 悠紀
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究は、テヘラン現代美術館の設立(1977)と変遷を事例として調査し、近代の概念・施設と言われる「ミュージアム」(美術館)を通して、イランにおける「近代」の受容と反発について理解を深めることを目指している。また、公共空間に展示される美術品の内容の変遷に注目しながら、「美」という概念と社会政治的要因の関わりについて明らかにすることを目的としている。今年度得られた成果は以下である。今年度はイラン・イスラム共和国テヘランを訪れ、1)昨年度収集することが出来なかった雑誌等のアーカイブの収集と、ペルシア語の資料を精読し用語の使い方等についての分析をすること、2)イランにおける「ミュージアム」の形成を更に深く理解するため、美術館だけでなく他多数の博物館の展示内容にも注目することを計画していた。1)についてはテヘラン現代美術館の付属図書館、ホセイニーイェ・エルシャード図書館、マレク国立図書館と博物館、イラン文化遺産・手工芸・旅行業協会などの機関を訪れ、革命後の博物館について書かれた専門誌「ムーゼハー」をはじめとする政府の文化政策の変遷を明らかにするための関連文献を収集した。また、1979年のイラン革命前に刊行されていた雑誌「タマーシャー」のバックナンバーやシーラーズ芸術祭(1967年から1977年までペルセポリスにて開かれた祭典)のために特別発行された新聞を入手した。これらのペルシア語の資料は、革命前後の変化を明らかにするために重要だと考える。2)については、2012年に建設された聖なる防衛博物館(イラン革命とイランイラク戦争に焦点を当てた展示)や旧アメリカ大使館の内部に設けられた博物館など、政府の政治的メッセージが強く打ち出されている施設に現代美術作品が展示されるという最近の傾向を概観し、調査対象の美術館への理解が深まった。
著者
坂上 倫久
出版者
愛媛大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

最近我々は、E3ユビキチンリガーゼの一つであるCUL3が血管新生に極めて重要であることを発見した。その中でCUL3は、VEGFR2 mRNAの安定制御を通じて血管内皮細胞機能に関与することを新たに見出した。本研究は、CUL3によるVEGFR2 mRNA制御機構に焦点を当て、血管内皮細胞においてCUL3が標的とする基質およびそのアダプタータンパク質を同定し、血管新生におけるCUL3複合体の果たす生理的役割を明らかにすることを目指すものである。はじめに、VEGFR2-3' untranslated region(UTR)をベイトとしたプルダウン法によって、VEGFR2 mRNA安定性を制御する因子の同定を行う計画を進めたが、ベイト調整が非常に困難で時間を要したため、アダプタータンパク質を同定する実験を優先的に進めるここととした。CUL3のアダプタータンパク質はBTBドメイン(BTBD)を持つことが知られ、ヒトでは180種程度存在することが知られている。この中で血管内皮細胞特異的に高発現するいくつかのBTBDタンパク質に対するsiRNAを合成し、VEGFR2 mRNAを制御するBTBDタンパク質のスクリーニングを行った。その結果、二つの因子(VEGFR2 regulating protein1 and 2)を同定することに成功した。これらのタンパク質を血管内皮細胞においてノックダウンすると、VEGFR2の発現が著しく低下することが分かった。これはCUL3ノックダウン時と同程度であった。一方で、本タンパク質を血管内皮細胞に過剰発現させると、VEGFR2の発現量が大幅に増強されることも分かった。また、293T細胞を用いたプルダウン実験より、同定した二つのBTBDタンパク質はCUL3と結合することを確認した。
著者
浅田 晴久
出版者
奈良女子大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究はインド北東地方、アッサム州のブラマプトラ川氾濫原に居住するムスリム移民の生業活動を明らかにし、ヒンドゥー教徒の在来民の生業活動と比較することにより、ブラマプトラ川氾濫原の自然環境に適応する技術を評価するものである。調査村落における現地調査の結果、ムスリム移民は在来民が適応できなかった氾濫原の自然環境を積極的に改変し、年間を通して土地生産性の高い生業を行っていることが明らかになった。従来の研究では生産力の違いが周辺住民との対立を生んでいるという見方であったが、生産物の交換を通して在来民との経済関係が保持されているという側面が見られることも分かった。

1 0 0 0 OA 支那語小講座

著者
春陽堂支那局 編
出版者
春陽堂
巻号頁・発行日
vol.第1卷, 1933