著者
上加世田 宏 境 隆一 笠原 正雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論
巻号頁・発行日
vol.93, no.380, pp.1-6, 1993-12-15

Mix netを用いた電子選挙においては,センタが不正を行なった場合,異義申し立ては可能であるが,無効となった投票結果が露呈する欠点を有している.本稿では,投票用紙を複数の鍵で暗号化することにより,不正が行なわれた場合,各投票内容を明かさずに意義申し立てが行なえる方式を提案する.提案する方式は,はじめに各投票者が投票用紙を複数の鍵で暗号化し,それをMix netに送り,次に,Mix netは送られてきた投票用紙をシャッフルする.ここで,不正の有無を確認し,不正がない場合にのみセンタがVSS(verifiable secret sharing)を行ない復号する方式である.
著者
許 容碩 今本 健二 櫻井 幸一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.200, pp.149-156, 2004-07-14
参考文献数
30

SakoとKillianは無証拠性と全体検証性を満足するMix-net電子投票システムを提案した。それに対し、MichelsとHorsterは、Sakoらの電子投票システムにおけるプライバシと頑健性の問題を指摘した。本論文では、Golleらにより提案された普遍再暗号化を用いたMixnetを導入することにより、プライバシと頑健性、および無証拠性や全体検証性を同時に満たし、効率的な計算が可能な電子投票システムを提案する。また、普遍再暗号化を用いたMixnetにおけるミキシングの有効性を証明するため、既存のDesignated-Verifier Re-encryption Proofを修正し、提案システムへ適用する。さらに、提案システムでは通常の選挙で使われている投票用紙と類似の電子投票用紙、および上書き可能な公開掲示板を導入している。
著者
MIURA Koryo
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
ISAS report (ISSN:03721418)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.141-163, 1969-11

A proposition of a new shell form, which is cylindrical in a macroscopic sense and is concave polyhedral in a microscopic sense, is the purpose of this paper. It is shown that the inextensional post-buckling configurations of general cylindrical shells subjected to axial loading have peculiar geometrical characteristics, and that these configurations compose a general group of surfaces which may be designated as the pseudocylindrical concave polyhedral surface. Then the fixed idea that these surfaces are essentially failed forms is abandoned and is replaced by the idea that these are the basic forms of a new shell which could function superbly as the structure under some loading conditions. It is shown that the new shell, which may be called for convenience, the pseudocylindrical concave polyhedral shell and the PCCP shell for its abbreviation, has many useful characteristics as follows; inclusion of an arbitrary curvature distribution, developability of its midsurface, intrinsically high circumferential bending rigidity, and simplicity of elementary faces. The application of PCCP shells to large span shell structures, reservoirs, expansion joints, and others is suggested.
著者
前嶋 和弘
出版者
敬和学園大学
雑誌
敬和学園大学研究紀要 (ISSN:09178511)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.81-107, 2008-02

アジア系アメリカ人の政治参加と代議制の現状を分析するのが本稿の目的である。1965年移民法改正をきっかけにして、アジア系アメリカ人の人口は急速に増加しつつある。アジア系アメリカ人は、他の人種マイノリティ集団と比べ、比較的裕福であり、教育レベルも高いため、「経済的状況、あるいは教育レベルと投票率との問には高い正の相関関係がある」とするこれまでの様々な研究に従うと、アジア系の投票率は他の人種マイノリティ集団に比べて、高いはずである。しかし、実際はアジア系の投票率は比較的低い状況にある。これには様々な理由がある。例えば、アジア系には移民が多く含まれており、言葉の問題もあるほか、アメリカの政治制度に対する知識が十分とは言えず、投票についての政治的有効性を見出せない状況にある。アジア系の中のエスニシティ間の差も大きく、特に難民として入国したカンボジア系の場合などにこの傾向は強い。また、一般的に権威に比較的従順であるというアジア系の性格も関係しているという見方もある。アジア系の場合、十分に民主的とはいえないような出身国からの移民も多く、政治参加そのものに対する知識が十分とは言えない。さらに、アジア系は勤勉であるといわれており、平日を投票日としているアメリカでは、仕事を休んでまで投票をしないケースも少なくない。一方で、90年代後半からアジア系の投票促進(get-to-the-vote)運動も盛んになっている。これは連邦議会や一部の州レベルで主にアジア系を対象とする二力国語教育政策への反発や、アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)の制限などが目立ってきたため、これに危機感を感じてアジア系が団結し始めていることに関連している。アジア系の団結はアジア系の代議制にも影響している。アジア系の議員については、アジア系の人口が集中しているカリフォルニアやハワイ両州などの地域にこれまで限られてきたが、アジア系アメリカ人が多いとはいえない州についても変化が生まれている。特筆できるのが1996年にワシントン州の知事に当選したゲーリー・ロックの選挙戦である。この選挙ではアジア系アメリカ人が団結して1人の候補を応援した。また、この選挙では、アジア系以外のリベラル層にも幅広い支援を取り付けて成功したこともあり、今後のアジア系のや他のマイノリティ集団の選挙活動のモデルになるとみられている。
著者
小粥 良
出版者
山口大学
雑誌
山口大学独仏文学 (ISSN:03876918)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.57-69, 2004-12-24

ハインリッヒ・フォン・クライストの『O侯爵夫人』は1808年2月、クライスト自身が編集していた雑誌「フェーブス」に2回に分けて発表された。完成時期は遅くとも1807年の末と推測されている(Schmidt 197)。この作品を通してクライストは何を訴えようとしたのか。筆者は一学期間(ドイツ語を履修したことのない学生がほとんどだったので、英訳テキストを用いた授業ではあったが)この作品をテキストとして授業を行い、テキストの精読を通じて考察してみたが、むしろ謎は深まるばかりであった。授業においては、ヨッヘン・シュミットの解釈を参考にしながら、啓蒙主義的な女性の自立の物語として読むという方向を取ったのであるが、そうするうちに多くの疑問を抱かざるを得なかった。この物語には、たしかにヨッヘン・シュミットが指摘するように、「偏見に対する批判、特に偏見によって固定された権威に対する批判」(Schmidt 200)が込められていて、政治と宗教の結託した支配制度に対する当てこすりと見える点が多々存在する。しかし、はたしてシュミットの言うように「クライストの叙述の第一の目標は、ひとりの女性の解放の物語を物語ること(注: 点を付した部分は原文では斜字体)」(Schmidt 202)なのであろうか。そして、もしそうであるとしたら、それは啓蒙的理性による解放と言えるであろうか。これが筆者の抱いた最も大きな疑問である。物語の中心は、むしろ、人間理性の限界の方にあるのではないか。開示されるのは「世界の脆い仕組み」(Kleist 49, 32-33)であり、それを克服するものは諦念であり、そこから立ち現れる寛容に基づいた赦しであると筆者には思われる。
著者
廣島 麻揚 笠井 翔太
出版者
京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
雑誌
京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻紀要 : 健康科学 : health science (ISSN:18802826)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.31-38, 2013-03-31

To clarify how patients with depression perceived their living difficulties, two case studies were performed: of patients with depression with and without Typus melancholicus. Semi-structured interviews were conducted in accordance with an interview guide, and data were analyzed using the KJ method. Data from the interviews of the patient with depression with Typus melancholicus could be summarized under the title "Perception of Living Difficulties in Patients with Depression: the Process of Resolving Distress." The interview data from the patient with depression without Typus melancholicus could be summarized under the title "The Self-contained Cycle of All or Nothing and a Hint on How to Get out of it." In each case study, patients expressed either of the following: "I am consumed by my own thoughts and what I consider to be 'depression,' and can't shake off the sense of tiredness" (Fatigue) or "Because I think it has to be all or nothing, I drown myself in a 'worthless me' attitude and get depressed because I think I can't do anything" (Quicksand). A common factor between them was "I am caught up in my own thoughts and thus feel bad." The findings suggested that patients with depression perceive their living difficulties in this way.
著者
永井 学
出版者
日経BP社
雑誌
日経トップリーダー
巻号頁・発行日
no.312, pp.112-115, 2010-09

7月11日、参院選投票日の日曜日。東京都新宿区で開かれた留学仲介業者、サクシーオ(東京都港区)の債権者集会に怒号が渦巻いた。同社は5日に東京地裁に破産手続きを申請。11日に開始決定を受けた。負債額は約8億3200万円だった。
著者
齊藤 壽彦
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.51-75, 2007-01

赤川元章教授退任記念号債券の発行による資金調達・債券への投資という資金運用は,支払約束を信頼した取引である。したがってそれは信用という取引の一形態であるということができる。とはいえ,債券発行・債券投資の信用的性格は,銀行信用,すなわち銀行の預金業務・貸出業務とは形態的差異がある。債券発行・債券投資は売買取引を通じて行われ,価格変動リスクを伴う。このような点においてそれは信用と異なる性格を有するのであり,償還期日前の債券の売買取引が貸付・返済取引に見せかけられるという点において,それは株式投資と同じく擬制信用的性格を有するのである。本論文はこれらのことについて詳しく論述している。
著者
古谷 雅年 佐藤 敦俊
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HI,ヒューマンインタフェース研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.65-69, 2002-09-20
参考文献数
4

電子投票特例法の施行に伴い、一部の公職選挙において、投票日当日の投票所での電子投票が可能になった。これまで、日本国内ではタッチパネル式を中心に検討が進められてきたが、報告者は、市議会議員選挙など候補者が多数に及ぶ場合に、投票者への視認性を確保したまま候補者の一覧表示による公平性を担保する2次元コードスキャナ式を提案してきた。一方、公職選挙では、大多数の有権者にとって使いやすいユニバーサルデザインも求められる。本報告では、本方式で用いる候補者選択用紙、二次元コードスキャナ、画面表示などについて、使い勝手の視点から今後の課題を明らかにしていく。
著者
村尾 俊道 藤井 聡 中川 大 松中 亮治 大庭 哲治
出版者
日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.103-108, 2009-10-25
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究では、京都都市圏での通勤交通における課題を明らかにするとともに、京都府での実際のプロジェクトを紹介することを通じ、職場MMの実行過程に着目し成功要因や課題を整理する。その結果、実施に至る準備段階においての関係者間の合意、組織の意思形成が重要であることを明らかにするとともに職場MM成功のための知見を提供した。これは、今後、職場MMを他地域で展開される際に極めて有益な知見となる。
著者
蒲生 忍 柳澤 厚生
出版者
杏林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

終末期における医療の選択は患者と医療者の両者にとり非常に重要な問題である。米国においては、選択は患者の「自律尊重」が重視されるが、本研究では患者と医療者の共同のツールである「事前計画Advanced Care Planning」としての「医師による延命治療指示書POLST」について調査した。また、自律を強く求める人々の終末期の医療選択の一つとして、オレゴン州に続いて2008年11月にワシントン州で尊厳死法が制定され、発効した。ワシントン大学の医療提供者を中心に直接面談して、その制定の背景について調査した。
著者
岩本 一樹 西田 雅太 和﨑 克己
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC)
巻号頁・発行日
vol.2013-CSEC-62, no.60, pp.1-8, 2013-07-11

大幅に増加する Android のマルウェアを効率よく検出するために,我々は Android アプリの Dalvik のバイトコードを静的解析することでマルウェアを検出する方法を提案してきた.しかし我々が提案するバイトコードの静的解析だけでは,完全に新規に作成されたマルウェアやバイトコード以外にマルウェアとしての原因がある場合,たとえばネイティブコードや HTML + CSS + JavaScript でマルウェアが作成されているときには検出できない.マルウェアの検出率を高めるためには,我々のこれまでの提案と別の方法を組み合わせて,複数の方法でマルウェアの検出を試みる 1 つのシステムを構築する必要がある.そこでバイトコードを解析せずにマルウェアを検出する方法として我々が今回提案する Android アプリを配布する Web サイトのドメインからマルウェアを特定する方法に加えて,これまでに提案されたセカンドアプリを内包するアプリを見つける方法と署名情報を利用する方法について検証を行った.検証の結果,これらの方法でマルウェアを検出できる可能性を確かめることができた.