著者
黒澤 昌志
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究では次世代型ディスプレイとして期待されるシステム・イン・ディスプレイの実現に向けて,透明基板(石英等)上に高品質な歪みシリコンゲルマニウム(SiGe)を形成するプロセス技術の開発を目標としている.本年度に得られた成果を以下に記す.(1)金属(Al,Ni)誘起成長法とSiGeミキシング誘起溶融成長法の重畳により,(100),(111),(110)方位に整列した単結晶Ge薄膜を石英基板上に同時混載することに成功した.得られたGe薄膜には積層欠陥等は存在せず,高いキャリア移動度(約1000cm^2/Vs)を示すことを明らかにした.(2)本プロセスで形成したGe(100),(111),(110)単結晶薄膜には,約0.6%の2軸性伸張歪みが印加されていることを明らかにした.この歪みが石英基板との熱膨張係数差に起因することを理論計算により明らかにした.(3)更なる伸張歪み増強を目指し,SiN歪み印加膜付Si,Ge薄膜へのUV光照射を試みた.500℃以下の温度にてUV光(248nm)照射をすれば,更に約0.7%の伸張歪み増強が可能であることを見いだした.この現象は,SiN膜中に含まれるH原子の脱離により,SiN歪み印加膜の応力が増大したためであると推測される.
著者
枡田 幹也 CHOI Suyoung
出版者
大阪市立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

トーリック多様体の微分同相による分類問題,特に,2つのトーリック多様体が同型なコホモロジー環をもてば微分同相かと問う問題(コホモロジー剛性問題)に取り組んだ.トーリック多様体の代数多様体(または複素多様体)としての分類は対応する扇の分類に帰着されるが,微分同相類または単に同相類における分類の研究は進んでいない.これまでコホモロジー剛性問題の反例は見つかっておらず,部分的な肯定的結果が得られているが,受け入れ研究者の枡田と,ある種の条件をみたすボット多様体に対しては,コホモロジー剛性問題が肯定的であることを示した.また,剛性問題が肯定的だとすると,コホモロジー環が同型であるトーリック多様体の特性類はコホモロジー同型写像で移りあう.ボット多様体に対してコホモロジー剛性は未解決であるが,この特性類の不変性は示すことができたのは大きな成果であった.トーリック多様体は複素代数多様体であるが,その実数版と言えるものとして実トーリック多様体がある.トーリック多様体は単連結であるが,実トーリック多様体は非単連結で,aspherical多様体である場合が多い.本研究では,実ボット多様体の分類を行った.この研究は受け入れ研究者の枡田が行っていたものだが,その研究がacyclic digraphという有向グラフと関係があることを見出し,幾何とグラフ理論の新たな関係を発見した.特に,実ポット多様体の微分同相による分類が,acyclic digraphの集合を3つの操作で移りあうものの同値類であることを示した.この3つの操作の内,一つはlocal complementationと呼ばれて既にグラフ理論で研究されていたものと一致したのは,驚きであった.
著者
小林 隆嗣
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

エステル結合を含むポリマーを遺伝情報に基づいて合成できれば,規則正しいポリエステルの合成が可能となる.本研究では,リボソームにおけるエステル結合の導入を実現するために,アミノアシルtRNA合成酵素のひとつを改変した.その結果,効率よくエステル結合の構成要素となるα-ヒドロキシ酸を認識する酵素が得られた.それらを用いることで,エステル結合を形成させるのに必要なα-ヒドロキシ酸が2つ連続して導入できる試験管内の系を確立することに成功した.
著者
田中 蕃
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
no.203, pp.36-37, 2004-12-25
著者
佐藤 徳
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

エージェンシー感とは「行為を引き起こしたのは自分だ」という感覚のことである。エージェンシー感がどのように成立するかについては主に二つのモデルがある。一方の説では順モデルによる動作の感覚結果の予測がエージェンシー感の成立に関わっているとされ、別の説では行為に先行する思考とその行為が一致し、他に原因が考えられなければ、エージェンシー感が体験されると考えられている。本研究では、エージェンシー感を、より基底にある非概念的、かつ、前反省的な感覚運動レベルのエージェンシー感と、概念的かつ反省的なエージェンシー判断に分け、前者の指標として感覚減衰、後者の指標として顕在的なエージェンシー判断を用い、前者が主に順モデルによる予測と実際の結果の一致性に、後者が順モデルによる予測と実際の結果の一致性と先行思考と結果の概念的一致性の双方に依存することを示した。また、順モデルによる予測と実際の結果の一致性や先行思考と結果の概念的一致性などの複数のエージェンシー判断手掛かりのうち、どの手掛かりがエージェンシー判断に大きな影響を及ぼすかは、それぞれの手掛かりの相対的な信頼性如何であることを示した。
著者
柄木田 康之
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究はミクロネシア連邦ポンペイ島,米国グアム島のヤップ出身者のアソシエーションの民族誌調査に基づき,移民と母社会が国家を超えた脱領域的公共圏を構成していると指摘し,アソシエーションの活動による民族アイデンティティの生成,リーダーシップの生成,募金活動による社会的連帯の生成について報告した。
著者
青木 善治
出版者
三条市立月岡小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

1研究目的造形的な活動を通して、子どもたちが周囲のもの、人、こととの関係において、自己をつくり変え、自分が生きている社会や文化との通路をつくりだしていくためには、子どもたちの学習活動を生きることと学ぶことを一体化した全人的な人間形成の視点から捉えなおし、真に学びがつくられていく学習状況へとつくり変える必要がある。そこで、これまでの造形教育を成り立たせてきた個人活動モデルの枠組を問い直し、次の点について明らかにすることを目的とした。(1)一人ひとりの子どもが教材(もの)、場(状況)、活動、他者(人)とのかかわり合いを通して、社会的で文化的に新たな行為をつくり生きることが可能となる行為と活動の論理を明らかにすること。(2)こうした行為と活動の論理に基づきつくられた学習状況において、子どもたちが行うつくり表す行為を、もの・こと・人との相互行為の視点から捉えなおす試みを繰り返すことにより、全人的な表現活動を展開することが可能となる教育実践の在り方とその開発研究の在り方を実践的に明らかにすること。2研究方法造形的な学習場面をビデオカメラを用いて記録し、会話、相互作用、相互行為、造形行為を記述し、子どもの活動世界とつくり表していくものとの世界とが、どのような関係性において相互的につくられていくのか、相互行為分析を行い捉えなおした。3研究成果子どもが学びを生成していく行為や活動の論理に基づき、新たな活動状況を開発し再実践することにより、子どもたちがもの・こと・人との相互行為を通して、自身の行為や活動の論理と、学びを拡張する在り方について検証と考察を行った。その結果、子どもたちがもの・こと・人と生き合う学びの過程をつくり成り立たせていく「学力」や「基礎・基本」、その過程を支援していく「評価」のあり方を研究開発する上で基本となる臨床的な実践研究開発法において大切なことを実践的に明らかにすることができた。
著者
工藤 章
出版者
福島大学経済学会
雑誌
商学論集 (ISSN:02878070)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.p71-123, 1977-01
著者
大嶽 卓弘
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.321-337, 1984-03

論文III 人民保守派の成立 1 対立の激化と勢力の逆転 2 ヤング案問題と人民保守派の成立IV 結びに替えて
著者
守屋 正彦 井川 義次 山澤 学 柴田 良貴 藤田 志朗 木村 浩 菅野 智明 程塚 敏明
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

儒教は、日本では古代より受容され、中国を中心とした東アジアでの一大文化圏を形成してきた。儒教は地域特有の文化と融合もし、礼拝のあり方、また聖像やそれを荘厳する絵画・彫刻は、東アジアの、また日本の各地域に展開し、礼拝の「かたち」は、儀式のあり方、礼拝の諸像の形式や配置、また唱道する詩文や作法などに見られた。その表象について、本研究では東アジアのいくつかの孔子廟を調査し、地域間の文化の同一性と民族的な表現の相違について確認し、5年に及ぶ研究期間中に国際シンポジウムを開催するとともに、年次報告書を作成して研究成果を発信した。
著者
CHAO E. C. T.
雑誌
Science
巻号頁・発行日
vol.132, pp.220-222, 1960
被引用文献数
3 214
著者
石原 万里
出版者
福島工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的はジェイムズ・シャーリーの『宮廷の秘密』の二つのテキストである手書き原稿(manuscript)と1653年に出版されたテキストとの比較を通して、作家ジェイムズ・シャーリーの作劇に迫り、さらには作家、出版業界、劇団の力関係の考察にある。手書き原稿には削除、修正、加筆があり、その版を数えるとテキストは三つ存在することとなる。精査な比較を通し、同じ言葉が違う意味合いで使われていることがわかることから、作家シャーリーが、何度も原稿に手をいれる作家であったことは明らかである。シャーリーの特徴が、印象深い主人公にではなく、会話の積み重ねによって構築される人間対人間のドラマにあることも読み取れた。『宮廷の秘密』が収められているSixNewPlaysの六作品一作ずっに書かれた献辞は、劇場閉鎖前後の時勢を反映するものであり、作家シャーリーと出版業者HumphreyMoseleyとの密接な関係をも表している。
著者
岡本 勝
出版者
同志社大学
雑誌
同志社アメリカ研究 (ISSN:04200918)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.47-61, 1993-03-25

研究ノート, Note
著者
森 朋子
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

昨年度まで,独自の手法により開発したアフィニティ樹脂(Moli-gelと呼称している)の表面化学特性について精査し,また,担持する生理活性物質の周りの環境を制御することにより,標的タンパク質の捕捉に有利になることを実験的に証明してきた。本年度もさらに,細胞膜表面と同じ構造を有する2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine(親水的側鎖を有する)を用いて,Moli-gelに担持した4-carboxybenzenesulfonamideの周りの環境を制御し,タンパク質捕捉実験を行った。結果,予想通り,4-carboxybenzenesulfonamideの標的タンパク質であるCarbonic anhydraseII(親水的環境に存在)の捕捉を有利にできることがわかった。さらに,本年度は,湖沼等の淡水で産生される藍藻毒の一つであるミクロシスチン-LRの標的タンパク質探索を行った。ミクロシスチンが有するビニル基,または,カルボキシル基の異なる官能基をそれぞれ反応点としてMoli-gelに担持し,ブタ肝臓から調製したlysateを用いてタンパク質捕捉試験を行った。さらに,捕捉したタンパク質をSDS-PAGEにより分離し,バンドをゲルから切り出し,トリプシンを用いてゲル内で消化した後,LC-MS,および,Mascot databaseによりタンパク質を解析した。その結果,L-3-hydroxyacyl CoA dehydrogenase (HDHA)や,glutathione S-transferase (GST)が標的タンパク質の候補として挙げられた。ミクロシスチン-LRの新たな標的タンパク質候補を検索することに成功した。
著者
狩野 直禎
出版者
東洋史研究會
雑誌
東洋史研究 (ISSN:03869059)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.579-603, 1975-03-31