著者
林 健太郎 野口 泉
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.279-287, 2006-09-01
被引用文献数
5

アルカリ含浸ろ紙を2段としたフィルターパック法を用いて,茨城県つくば市のシバ草地における2004年6月29日〜2005年1月11日のガス状の亜硝酸(HONO)および硝酸(HNO_3)の濃度および濃度勾配を観測した。暖候季および寒候季のHONO濃度はそれぞれ0.86および1.2ppb(v/v),HNO_3濃度はそれぞれ1.0および0.23ppbであり,HONO濃度はHNO_3濃度と同程度であった。一方,暖候季および寒候季の地上4-2m間のHONOの濃度勾配はそれぞれ-0.012および-0.027ppb m^<-1>,HNO_3の濃度勾配はそれぞれ0.10および0.008ppb m^<-1>であった。負の濃度勾配はネットフラックスが発生であることをあらわし,HONOが地表から発生していることに加えて,発生量が乾性沈着量を上回っていることが示された。地表からのHONOの発生は,気相-地表系の不均一反応による二酸化窒素からのHONOの生成によると考えられる。大気-地表間のHONOの交換はネットフラックスとして定量されるべきであり,沈着速度の推計では地表からのHONOの発生を考慮する必要がある。
著者
森迫 昭光 武井 重人 松本 光功
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、磁気異方性の大きな材料であり、化学的に安定な酸化物である六方晶フェライト薄膜を高密度垂直磁気記録媒体として、低雑音化・高記録分解能化のために磁性粒子の微細化を主な目的として行ったものである。具体的にはバリウムフェライトやストロンチウムフェライト薄膜に注目して、添加元素や下地層に関する検討を行ったものである。その結果、バリウムフェライト薄膜にビスマスを添加することにより、結晶化温度の低減化可能であり、しかも粒子の微細化が可能であることが明らかになった。保磁力は3.7kOe程度と比較的大きな値ではあるが、今後の高密度記録媒体としては不十分な値であった。従来は、バリウムフェライト薄膜の下地層としては基板界面における拡散層の影響をさけるため、非晶質層を用いていた。ここでは磁化容易軸である六方晶系のc軸配向を促進する目的で、ヘテロエピタキシ効果を期待できるc軸配向した窒化アルミ層を下地層として用いた。その結果、c軸配向性に優れ、粒子サイズも40〜60nmまで抑制された、バリウムフェラィト/窒化アルミ2層膜を形成できた。そして保磁力も4.5kOeと高保磁力化が可能となった。しかしながら下地層の窒素の拡散に問題点が見いだされた。そこで、下地層として非晶質の酸化アルミ薄膜を用いた場合、観察される粒子の大きさは20〜40nmにまで微細化が可能であった。これを磁気力顕微鏡で観察した結果40nm程度のクラスターとして観察された。粒子間の磁気的な結合は主に静磁結合であった。ビスマス添加のバリウムフェライト薄膜ハードディスクについては、記録分解能をD5Oで評価すると、210〜230frpiと高密度記録の可能性をが明らかになった。
著者
池田 昌之
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

中生代三畳-ジュラ系遠洋性層状チャートの層厚変動がミランコビッチサイクルと呼ばれる地球軌道要素変動に伴う日射量分布変動を反映した事を明らかにした(Ikeda et al., 2010a EPSL : 2010b ESF).今年度は,ミランコビッチサイクルが層状チャートの堆積リズムに反映されたメカニズムを解明するため,チャート・頁岩単層単位で連続的に元素分析を行い,層厚変動の要因を検討した.その結果,チャート層厚は生物源シリカの埋没速度を反映したことを明らかにした.さらに,層状チャート中の生物源シリカの全球的な堆積速度を推定した.その結果,現在の全海洋に堆積する生物源シリカの堆積速度と同程度から倍以上にも相当した.海洋に堆積する生物源シリカは溶存シリカの主要シンクであるため,この結果から,中生代以前においては層状チャートが海洋の溶存シリカの主要シンクであることを示した.一方,海洋の溶存シリカの主要ソースは陸域のケイ酸塩風化速度変動であるため,これが層状チャート中の生物源シリカの埋没速度の変動要因であった可能性を示唆した.天文学的周期におけるケイ酸塩風化速度変動は夏モンスーンに駆動されることが気候モデル(Kutzbuch,1994,2008)により示されている.これらのことから,天文学的周期における夏モンスーン強度変動でケイ酸塩風化速度が変動し,海洋への溶存シリカの供給量が変動した結果,層状チャートとして堆積する生物源シリカの埋没速度が変動し,層状チャートの堆積リズムが形成されたというモデルを提唱した.このモデルをペルム紀末大量絶滅からの回復過程にあたる下部-中部三畳系に適用した。その結果,前期三畳紀の生物源シリカの埋没速度は異常に高く,その後,中期三畳紀にかけて減少したことから,回復過程において陸域ケイ酸塩風化速度が徐々に弱まった可能性を示した.さらに,地層の周期を年代目盛としてサイクル層序を構築すると共に,長周期日射量変動と古環境変動,生物多様性変動との関連性の検討,およびその日射量変動の周期変調から太陽系惑星運動のカオス的挙動の意義について研究している.
著者
紅野 謙介 GO Young Ran
出版者
日本大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

昨年に引き続き、日本と韓国の国会図書館に所蔵されているSCAPの朝鮮と日本での検閲資料を調べた。その成果の一部を韓国と日本の全国学会で発表した。韓国日語日文学会 夏季国際学術大会(韓国、国立全北大学、2005・6・18)で、「占領とマイノリティをめぐる言説編成-『新日本文学』における「眼の色」論争」について発表した。韓国では、東アジアの冷戦構図を露呈させて朝鮮戦争と五〇年問題の渦の中で、SCAP(アメリカ)への対抗を共通の基盤として持っていた共闘の言説について、歴史的な過程を見すえることなく、抵抗する主体・共闘する主体のみを浮上させることの危険性について議論した。本研究は、日本と韓国の研究の死角になっていた「在日の朝鮮人」、特に金達寿・許南麒ら朝鮮人文学者は、日米講和条約への反対運動で見いだされた被圧迫民族としての日本人の表象を模索する過程の中で誕生したことを明らかにした。また、SCAPの検閲のモデルだといわれる日本帝国の検閲システムと文学の関係について調べた。その中でも、1930年前後の植民地朝鮮のハングルの書物が、日本帝国の支配地域別の検閲制度の差異を利用し、上海や東京などで出版され朝鮮へ輸入されていったことがわかった。その代表的な例として、中野重治「雨の降る品川駅」(『改造』一九二九・二)と、その朝鮮語訳が掲載された雑誌『無産者』(同年五月、東京で発行されたハングル雑誌)に注目した。この調査の成果は、日本近代文学会秋季大会(國學院大學、2005・10・23)「フィクショナルな禁止-ジェンダー・セクシュアリティ・民族表象をめぐる抵抗と共犯」というパネルで「戦略としての「朝鮮」表象」というタイトルで発表した。
出版者
北海道大学観光学高等研究センター、日本交通公社 = Center for Advanced Tourism Studies, Hokkaido University, Japan Travel Bureau Foundation
雑誌
CATS 叢書
巻号頁・発行日
vol.3, pp.55-106, 2010-02-01

コミュニティ・ベースド・ツーリズム事例研究 ~観光とコミュニティの幸せな関係性の構築に向けて~ = Case Studies of Community-Based Tourism : Towards a Sustainable Happy Relationship between Tourism and Community
著者
川那部 浩哉 西平 守孝 甲山 隆司 阿部 琢哉 和田 英太郎 東 正彦
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1994

地球の温暖化や生物多様性の喪失など、地球環境問題の深刻化に伴い、生態科学が答えるべき社会的課題は大きくなっている。そこで「生物と佳境と相互作用」、「多様な生物間の複雑な関係」、「生物の進化と多様性」など、マクロなレベルでの生命現象の解明をめざすと共に、生態科学の立場から環境問題の解決に貢献できる体制を作る第一段階として、京都大学の生態学研究センターが1991年に設置された。さらにこれを発展させるべく、1992年に日本生態学会は国立生態科学研究所構想第7次案をまとめた。本研究は7次案の主な課題である「Center of Excellence」、「人事の流動と活性化」、「人と情報のネットワーク」、「国際的高等教育機関」、「本格的な共同研究を推進できる体制」などを全く新しいタイプのネットワークの構築を通して実現する道を提示することを目的として行われた。具体的な方法としては、研究会を開いて以下の項目を検討した。1)具体的な当面の最大の共通テーマ2)本格的な共同研究を推進するための、コアとなる組織と研究機関のネットワークの全体構造3)人事の流動化と活性化を促進メカニズムに関する斬新なアイデア4)共同利用を必要とする、これからの生態科学にとって最も有用な研究施設5)研究機関のネットワークの具体化6)生態学研究の飛躍的発展のためのPost Doc層の最大活用化7)国際対応できる生態科学における大学院教育のカリキュラム作成8)国際共同研究推進と有機的に連動した大学院生の国際交流検討結果を整理し、「国立バイスフィア研究ネットワーク構想」としてまとめた。この構想案は、生態学の研究を有効に進める新しい研究機関の設立を含めた、研究機関のネットワークを実現化するひとつの具体的な道のりを示すものである。

1 0 0 0 修証義講話

著者
大洞良雲著
出版者
大法輪閣
巻号頁・発行日
1942
著者
大田 守雄 源河 圭一郎 石川 清司 国吉 真行 川畑 勉 野村 謙
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.7, pp.832-837, 1999-11-15
被引用文献数
7 3

症例は18歳の女性.喀血を主訴として近医を受診した.胸部X線写真で左下肺野に無気肺像を認め, 気管支鏡下生検で腺癌と診断された.精査加療目的で当科を紹介され入院となった.気管支鏡検査で左下幹の完全閉塞を認めたが, 腫瘍は易出血性であり観察のみとした.後日, 腫瘍からの出血に備え全身麻酔下の生検により低悪性度の粘表皮癌と診断された.腫瘍は左下葉支B^6入口部から発生しポリープ状に気管支内腔へ発育し, 左主気管支内腔まで達していた.左肺上葉を温存するため, 上葉気管支形成術を伴う左肺下葉切除を施行した.術後1年7カ月を経過したが, 再発の徴候を認めない.本邦における40歳以下の粘表皮癌29症例を集計し, その臨床像について検討を加えた.
著者
Swei-Pi WU Cheng-Pin HO Chin-Li YEN
出版者
National Institute of Occupational Safety and Health
雑誌
Industrial Health (ISSN:00198366)
巻号頁・発行日
pp.1110130103, (Released:2011-10-20)
被引用文献数
1

A wok with a straight handle is one of the most common cooking utensils in the Asian kitchen. This common cooking instrument has seldom been examined by ergonomists. This research used a two-factor randomized complete block design to investigate the effects of wok size (with three diameters - 36 cm, 39 cm and 42 cm ) and handle angle (25°, 10°, -5°, -20°, and -35°) on the task of flipping. The measurement criteria included the maximum acceptable weight of wok flipping (MAWF), the subjective rating and the subjective ranking. Twelve experienced males volunteered to take part in this study. The results showed that both the wok size and handle angle had a significant effect on the MAWF, the subjective rating and the subjective ranking. Additionally, there is a size-weight illusion associated with flipping tasks. In general, a small wok (36 cm diameter) with an ergonomically bent handle (-20°±15°) is the optimal design, for male cooks, for the purposes of flipping.
著者
早田 武四郎
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.109-112, 1994-03-31

「英語の歌」と聞けば,楽しいイメージを持つ人は多い。中学校,高校,大学と続く英語学習の中で,英語の歌を教えてもらった経験のある人は,そう多くはないと思われる。筆者も教えてもらった記憶がない。教えてもらったら,さぞ楽しいだろうなと思ったことがある。そのような思いが,教師になってからの筆者に,英語の歌を授業に取り入れさせることになった。取り入れるといっても,年に1,2回であった。大学生を対象とするようになってから,1983年度,英語の歌をグループ・ワークの課題にしたことがあった。この時は,何もしない群と比べて有意差は現れなかった。8年後の1991年,英語の歌のテキストとテープ(歌詞の朗読,カラオケ付き,米国の女性歌手吹き込み)を受講生全員に購入させ,授業外に自習させた。そして後期の定期テストの前に英語の歌のテストを行った。本稿はこの時のデータによって英語の歌の効果を検討する。
著者
都筑 明 中桐 忠彦 牧野 正勝 松本 正邦 橋本 義基
出版者
一般社団法人日本時計学会
雑誌
日本時計学会誌 (ISSN:00290416)
巻号頁・発行日
no.163, pp.34-39, 1997-12-20

We developed a display device for motion picture. The display elements of each dot are composed of rotors of small stepping motors and are able to display one of four colors such as cyan, magenta, white and yellow. The stators, coils and magnetic circuits are arranged compactly in the cylindrical display element. The display elements are able to rotate and stop rapidly because they have small inertia and are well fitted to drive pulses. We made two display devices with the dot pitches of 6 mm and 20 mm, and they can display 30 frames and 15 frames of picturs per second, respectively.
著者
桑山 顕
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.131, no.10, pp.801-804, 2011-10-01 (Released:2011-10-01)
参考文献数
7

The mega-solar demonstration project named “Verification of Grid Stabilization with Large-scale PV Power Generation systems” had been completed in March 2011 at Wakkanai, the northernmost city of Japan. The major objectives of this project were to evaluate adverse impacts of large-scale PV power generation systems connected to the power grid and develop output control technologies with integrated battery storage system. This paper describes the outline and results of this project. These results show the effectiveness of battery storage system and also proposed output control methods for a large-scale PV system to ensure stable operation of power grids. NEDO, New Energy and Industrial Technology Development Organization of Japan conducted this project and HEPCO, Hokkaido Electric Power Co., Inc managed the overall project.