著者
佐藤 達全
出版者
育英短期大学
雑誌
育英短期大学研究紀要 (ISSN:09143351)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.43-58, 2003-02-01

「保育は人である」とよく言われる。乳幼児期の特性の一つが「まねる」(学ぶの語源)ことである点から,人的な環境としての保育者の一挙手一投足が子どもの行動の仕方や成長・発達の進み具合を左右し,さらには子どもの心にも作用して将来の人間性に大きく影響することは言を侯たない。それゆえ,保育者には「子どものお手本」としての行動が求められることは当然であるが,それだけでなく「人間」としてどう生きたらよいかについても日頃から考えておかなければならないのである。しかし,実際に保育者を目指している学生にはそうした意識は強くないどころか,さまざまな問題行動が存在するように思われる。そこで,学生の行動の実態と自己認識を調査し,さらに実習園からの評価と比較しながら考察した。その結果,望ましい保育者を育てるために重要ないくつかの問題点がみつかった。
著者
太田 弘一 森岡 公一 山本 幸男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.125-132, 1991
被引用文献数
5 35

ファレノプシスは近年生産の伸びが大きい花卉であり, その好適な栽培条件の設定のために研究が進められている. ファレノプシスの花序は低温条件によって誘導されることが知られており (17), 山上げ栽培や人工低温処理を行うことによって, 早期出荷が行われている. また, 温度処理の際の, 株の充実状態や光•変温条件などの環境要因も花序形成に影響することが知られている (3,8, 12,14, 17,18, 19).<BR>一方, ファレノプシスはCAM (Crassulacean acid metabolism) 植物として知られている (1,7). CAM植物は夜間に吸収したCO2を有機酸の形にして細胞の液胞中に蓄積し, 昼間にそれを分解して, 光エネルギーを利用してでんぷん合成を行うという特徴的な光合成を行う. この夜間と昼間を通した, CO2吸収からでんぷん合成に至る過程をCAM型光合成と呼ぶ (13, 14).典型的なCAM型光合成のCO2吸収の日周変動パターンは, 夜間の高い吸収 (phase I), それに続く光が当たった直後の高い吸収 (phase II) とその後の急激な減少およびCO2吸収がほとんど見られない期間 (phase III), そして, 夕方に再び低い吸収が見られる (phase IV), という四つの相に分けられる (13). そして, この過程を通して, 夜間に気孔を開き, 蒸散の多い昼間には気孔を閉じているために, CAM植物は強い乾燥耐性を獲得している (6).<BR>CAM植物には, 生育条件によってC3型光合成とCAM型光合成との間で変動が見られるfacultative-CAM plantと, 生育条件にかかわらずCAM型光合成を行うobligate-CAM plantがある (13). さらに,いずれのCAM植物も, 水分, 昼夜温, 光強度, 日長などの環境条件や葉齢, 窒素栄養条件によってCAM型光合成が影響を受けることが知られている (6, 11,13, 14).したがって, ファレノプシスのCAM型光合成も, これらの要因によって変動し, それが生育および花序形成になんらかの影響を及ぼすことが考えられる.<BR>本研究は, 上述の要因のうちで生育と密接に関連した外的要因の水分, 温度, 光の3条件および内的要因の葉齢と花序形成の有無に視点を当て, それらによってファレノプシスのCAM型光合成がどのような影響を受けるかを明らかにし, ファレノプシスの好適な栽培条件設定のための基礎的知見を得ることを目的として行った.
著者
山中 優
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2008-03-24

新制・論文博士
著者
山浦 悠一 天野 達也
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.261-276, 2010-07-31
被引用文献数
6

マクロ生態学は、大きな時空間スケールで生物の個体数・分布・多様性を扱う分野である。近年、人類が引き起こしている地球規模での環境変化が生物多様性に及ぼす影響が注目を集めるなか、マクロ生態学の重要性が認識されつつある。本稿では、まずマクロ生態学で扱われてきた課題とマクロ生態学の特徴を整理する。そして、マクロ生態学を発展させるための有望なアプローチの一つとして、生物の生態的特性の活用を挙げる。生態的特性とは、生物の形態的・生理的・表現的な特徴ことのを指し、生物の行動や環境への反応、資源(生息地)要求性、生態系内での機能、他の生物に及ぼす影響力なども含まれることもある。生態的特性を活用することにより、マクロスケールでの生物-環境の関係性の理解・予測が促進されるだろう。マクロ生態学の今後の課題として、局所生態学との統合や時間的視点の考慮などが挙げられるが、生態的特性の活用はこれら課題の解決に大きく貢献するだろう。人類が地球上で優占する現在、生物多様性を理解、予測、保全するうえで、マクロ生態学の更なる発展が望まれる。
著者
江原 宏 三島 隆 内山 智裕 内藤 整 豊田 由貴夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

パプアニューギニア北部の東セピック州では,サゴヤシ民俗変種を,「大きい」(背が高い;樹高が大きい),「樹中の実(髄)が多い」といった樹体サイズなどを表す語,葉柄が白い,あるいは緑色といった特性,あるいは葉柄の基部の葉鞘に当たる部分の蝋状物質の蓄積程度の差を基準として仕分けているものと考えられた。同国ニューアイルランド島ケビエン地域においても,「木のように背が高い」との意味を示す語を名称とする民俗変種が分布するなど,樹体サイズの特徴が民俗分類で重要なことが明らかになった。また,胸高直径が特に大きな,多収性と考えられる民俗変種も認められた。ニューギニア島インドネシア領の西パプア州では,乾物率や澱粉収率の低い個体は,地下水位の高い地区に生育していたことから,生育環境が澱粉生産性に及ぼす影響の大きさが窺われた。一方,葉痕間隔が長いことは,生長速度が大きいことを意味するが,その値がニューアイルランド島の調査で幹胸高直径と負の関係にあることが窺われ,生長の早いタイプ,あるいは地域では,幹が細いということと考えられ,極めて興味深い結果を得ることができた。また,葉痕間隔とデンプン含量にも負の関係が認められ,生長の早いタイプでは低収傾向があることが窺われた。
著者
河口 淑子 多治見 左近
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.59-68, 1999
被引用文献数
1

本研究は、情報誌"ぴあ"の音楽・演劇公演状況を分析することにより、関西圏の各都市における催し物の開催数や種類の分布の実態を明らかにすることを目的としている。人の流動状況や立地状況などの都市の性格と催し物の数やジャンルとの間には関係のあることがわかった。観客を供給する規模や地域的な広がりに違いはあるが、大阪市と京都市は催し物の供給に関して、関西圏の中心的な都市であることが分かった。また、都市の立地状況の違いにより、開催されるジャンルには違いがあることが把握できた。
著者
縣 拓充 岡田 猛
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.503-517, 2009-12-30
被引用文献数
1 2

近年の大学教育には,単に多くのことを知っているだけでなく,それを基に新たなものを創造し,表現する,言わば「能動的な知」を持つ教養人を育成することが求められるようになってきている。しかしながら,これまでの教養教育において,学生が社会で行われている創造活動それ自体について知ることができるような授業はほとんど行われてこなかった。そこで本論文では,「アーティストとの協働の中で,真正な美術の創作プロセスに触れること」をコンセプトに据えた授業をデザインし,実践した。大学1年生11名を対象に授業は行われ,実践終了後約1年半経過した時点でのインタビューによってその教育効果を検討した。その結果,参加した学生は本実践を通じて創造や表現に関する認識を改め,また表現をすることへの動機づけを高めていたことが示唆された。さらに,実践は学生それぞれの記憶に強く残り,生き方の探索にも生かされる重要な体験として位置づいていた。このような成果は,創造的領域の熟達者になることを目指すわけではない大学生に対しても,教養として何らかの創造活動に触れる機会を提供する意義を提起するものであると考えられる。
著者
高塚 皓正 田中 正行 奥富 正敏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.93, pp.73-80, 2006-09-08
被引用文献数
2

顔検出はコンピュータビジョンにおいて,近年注目されている技術の一つであり,様々な研究が行なわれている従来の顔検出に関する研究の多くは,切り取られたサブウィンドウが顔かどうかを判別する識別器を改良することを主な目的としている.この識別器は顔検出を行なう際の?プロセスとして重要であるしかし,これらの識別器は各サプウィンドウに対して,独立に顔または非顔を判定するため,識別器の出力(顔らしさ)の高い非顔画像を誤検出してしまうことがよくある.本報告では,顔と非顔における顔らしさ分布の違いに着目し,この違いを陽に利用した新しい顔検出の枠組みについて提案する.提案手法では,顔らしさ分布を生成し,統合処理により顔と非顔の違いを強調することで,従来手法で誤検出していた非顔を正しく分類することが可能になる.実験では,テストデータセットと実画像を用いて,提案手法の有効性を確認したその結果,それぞれ20%と10%の検出率の向上が見られた.Face detection is a useful technique in computer vision. Many face detectors have been developed in the literature. Almost all approaches for face detection focus on the face detectors which classify a given subwindow into face or non-face. However, in face detection process, since the detectors also evaluate the scanned sub-windows independently, non-faces with high face likelihood are often misdetected. In this paper, we propose a novel face detection algorithm which explicitly uses difference of face likelihood distribution between faces and non-faces. The proposed algorithm can correctly classify the non-faces misdetected by the existing algorithm. The face likelihood distribution is generated and integrated to emphasize the difference between faces and nonfaces. Experiments with pre-scanned data set and real-world images show that the proposed algorithm improves the detection rate approximately by 20% and 10%, respectively.
著者
肥田 登 新見 治 HIRAOKA Mari MAIA Jose Gu 西田 眞 JOSE GUILHERME Maia
出版者
秋田大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

平成8年度の研究成果の概要については,リオ・ネグロ川の水位の年変化特性を中心に述べる。第1に,マナウス地点におけるリオ・ネグロ川の水位は,6〜7月頃に最高となり,10〜11月頃に最低となる。水位は11月頃から上昇に転じ,約8か月間を要してゆっくりと最高値に近づき,7月頃から約4か月間という短い期間の内で再び最低値にもどる。このように各年の水位は,主要因としては流域の雨季と乾季の降水量に反映されて,滑らかなサインカーブのように見える規則的な年変化をくり返す。この規則性は,20年平均のカーブで示すことによってより明瞭に見てとれる。第2に,年間を通しての最高水位の出現日は,1975年から1995年までの21年間の平均を算定した結果,6月22日となった。この間,最高水位の出現日の頻度は,10日間の間隔ごとに見ると次のようにほぼ正規分布を示す形で現れる。5月中:1回,6/01-6/10:3回,6/11-6/20:4回,6/21-6/30:8回,7/01-7/10:4回,7/11-7/20:1回。最高水位の出現日の最も早かったのは,5月20(1992年)であり,最も遅かったのは,7月16日(1986年)である。この間の開きは,約2か月である。なお,最高水位に達する日数は,多くの年の場合,2〜4日間程度は続くので,その間の第1日目を最高水位の出現日として採用した。第3に,年間を通しての最低水位の出現は,1975年から1995年までの21年間の平均を算定した結果,11月7日となった。この間,最低水位の出現日の頻度は,10日間の間隔ごとに見ると次のように現れる。10/01-10/10:1回,10/11-10/20:3回,10/21-10/31:5回,11/01-11/10:4回,11/11-11/20:2回,11/21-11/30:4回,12/01-12/10:1回,それ以降1回。最低水位の出現日の最も早かったのは,10月08日(1980年)であり,最も遅かったのは,暦年を越えた01月16日(1989年)であった。この間には,3か月余りの幅がある。最低水位の出現する期間の幅は,最高水位の出現する期間の幅よりも約1か月延びく。しかも,最低水位の出現日の頻度は,最高水位の出現日の頻度に比べてバラツイており正規分布を示す形ではない。上に示したとおり,最低水位が比較的多く現れる時期は,10月
著者
文室 政彦 宇都宮 直樹
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1146-1148, 1999-11-15
被引用文献数
4 4

加温ハウス内において根域制限ベッドに植栽した7年生カキ'刀根早生'を供試し, 地中加温が新梢生長と果実発育に及ぼす影響を検討した.1月12日から4月15日まで, 地中に埋設したパイプに温湯を循環させて地温を20℃に維持する区と無処理区を設けた.地中加温は発芽および開花期にはわずかな影響しか及ぼさなかったが, 新梢生長および果実の成熟を促進し, 可溶性固形物含量を増加させた.しかし, 果実の結実率と肥大生長は地中加温によって低下し, 減収した.
著者
内田 裕之
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

純水素を高効率に大量製造可能な高温水蒸気電解(SOEC)、これを逆作動したSOFC発電用の高性能・高耐久性電極を研究開発し、以下の主な成果を得た。1)噴霧プラズマ合成法により、電子ーイオン混合導電性サマリアドープセリア(SDC)またはガドリニアドープセリア(GDC)粒子にNiやNi-Co合金ナノ粒子触媒を高分散することに成功した。2)固体電解質のイオン導電率が高いほどNi-Co/SDC水素極の性能が向上することを見出した。3)(Sr_<1-x> Ce_x) MnO_<3±δ>を合成し、SOFC酸素極として良好に作動することを見出した