著者
右田 雅裕 多田 昭雄 中村 良三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.538, pp.9-16, 2003-12-15

本橋では,CREW-PRAM並列計算機モデルのもとで,DAG (Directed Acyclic Graph)の最長路を求める効率よい並列アルゴリズムを提案する.また,従来の推移的閉包行列の計算方法を用いない並列トポロジカル整列アルゴリズムを示し,これを用いて最長路を求める並列アルゴリズムである.具体的には,はじめにDAGのトポロジカル整列を行い節点のランクを求め,次にその逆向き線形リストに対して同様の方法でランクを求めて,これらのランクを用いてすべての最長路を求める並列アルゴリズムである.DAGにおいて節点数n,辺数mとすると,提案するアルゴリズムの計算量はCREW-PRAM並列計算機モデルでプロセッサ数がO(n+m),時間量がO(log^2m)である.
著者
山沢 和子 加藤 宏治 上野 良光
出版者
東海学院大学・東海女子短期大学
雑誌
東海女子短期大学紀要 (ISSN:02863170)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.31-35, 1986-03-31

クワイ脂質から苦味成分を分離し,その性状について検討した。(1)クワイの総脂質は生クワイの0.28%を占め総脂質中の中性脂質,糖脂質およびリン脂質の組成は38 : 24 : 39であった。このうち,中性脂質画分で強い苦味が認められた。(2)中性脂質画分からの苦味成分の分離法としては,展開溶媒にヘキサンーエチルエーテルー酢酸の溶媒系を用いるシリカゲル薄層クロマトグラフィーが有効であった。(3)クワイの中性脂質は,シリカゲル薄層クロマトグラフィーで10個の化合物に分離された。そのうち3化合物(苦味A,BおよびC)に苦味が認められ,最も苦味の強かった苦味Bがクワイの主たる苦味成分と考えられた。さらに,苦味Bは,本実験で用いた標品(トリグリセリド,ジグリセリド,モノグリセリドおよび遊離脂肪酸)とは異なる化合物であった。(4)シリカゲル薄層クロマトグラフィーで分離した苦味A,BおよびCは,温度および酸素の影響を強く受け,大気中・25℃の保存で1週間後にすでに苦味を消失していた。
著者
新田 孝彦 坂井 昭宏 千葉 恵 石原 孝二 中川 大 中澤 務 柏葉 武秀 山田 友幸
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究プロジェクトは、認知と行為の総合理論の基礎を据えることを目的として発足し、行為の合理性の分析を軸として、隣接諸学との関連をも視野に入れた研究を行ってきた。認知と行為の関連は、古くは「知と徳」の問題として、あるいはカントにおいて「理論理性と実践理性」の問題として問われ続けてきたように、哲学の中心的な問いの一つである。本研究プロジェクトでは、研究成果報告書第I部に見られるように、プラトンの対話篇を素材としたシンポジウム及びその背景となった研究において、生全体の認知と、そのもとに営まれる行為との関連のありさまを、哲学的思索の根源的な形態において理解しようとした。また、「プラグマティズムと人間学的哲学」シンポジウムにおいては、外国人研究者の協力も得て、日本及び東アジアの思想とヨーロッパにおける合理性概念の検討を行った。ともすれば、近代ヨーロッパに起源をもつ合理性概念にのみ着目してきた従来の哲学研究を、このような形でいったん相対化することは、合理性概念そのものの深化にとって不可欠である。さらに、シャーバー氏のセミナー及びシンポジウムでは、道徳的実在論に焦点を当て、より直接的に行為の合理性理解の可能性を問題にした。また、研究成果報告書第II部では、行為の合理性の分析と並んで、本研究プロジェクトのもう一つの柱である、哲学的な合理性概念と隣接諸学との関連にかかわる諸問題が論じられている。それらは社会生物学やフレーゲの論理思想、キリスト教信仰、認知科学、メレオトポロジー、技術者倫理と、一見バラバラな素材を取り扱っているように見えるが、それらはいずれも価値と人間の行為の合理性を軸とした認知と行為の問題の解明に他ならない。認知と行為の関連の問題は、さまざまなヴァリエーションをもって問われ続けてきた哲学の根本的な問題群であり、さらにその根底には人間とは何か、あるいは何であるべきかという問いが潜んでいる。これについてはさらに別のプロジェクトによって研究の継続を期することにしたい。
著者
大貫 隆 北川 東子 黒住 真 杉田 英明 増田 一夫 村田 雄二郎 網野 徹哉 安西 信一 安岡 治子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

ユダヤ、キリスト、イスラームの三大一神教を「アブラハム的伝統」と捉え、そこに内在する差異、および他の宗教との差異を、地域文化研究に特有な多元的視点でもって分析、理論化した。その作業によって、「文明の衝突」論に見られるような、文明(西洋)/野蛮(非西洋)という図式の看過や行きすぎを指摘、訂正するとともに、世俗性もしくは世俗化についても、社会のあり方に応じて多様な形態がありうることを示した。
著者
堤 康央 角田 慎一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、有効かつ安全な粘膜ワクチンシステムの開発を目的に、サイトカインアジュバントの最適化および、ナノキャリアによる抗原送達システムの構築を図った。その結果、粘膜ワクチンに最適なサイトカインアジュバントを探索し得る方法・基盤技術を確立すると共に、優れた粘膜ワクチン効果を発揮可能であること、ナノキャリアとの併用により、さらに効果が期待できることを先駆けて見出した。
著者
木村 繁
出版者
土木学会
雑誌
土木学会誌 (ISSN:0021468X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.p38-45, 1979-01
著者
若林 功
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.5-32, 2009-03-30

発達障害者の就労支援に関する応用行動分析学的な手法を用いた研究に関する文献レビューはわが国ではあまり見られない。本稿では、米国における発達障害者の職業に関するスキル習得の報告を中心に、まず70年代から90年代中盤までの研究の流れを概観した。続いて、1998年以降の応用行動分析学に基づいた発達障害者への就労支援に関する研究について概観し、「作業技能(正確性・効率)」「作業技能(作業の自発的開始・課題従事・終了)」「対人生活技能」「問題行動低減」「就労支援者への指導」に分け内容を述べた。そして、米国の研究報告では、十分にエビデンスレベルが確保されているとは言えないまでも、有効な支援方法を開発しようとする流れが確かにあることを確認した。一方で、軽度発達障害者への取り組みや職業相談・職業評価等に関してはあまり応用行動分析学に基づいた研究が行なわれていないことも示された。また、なぜ応用行動分析学が発達障害者の障害者就労支援に有効なのか考察した。
著者
鈴木 義昭
出版者
早稲田大学語学教育研究所
雑誌
講座日本語教育
巻号頁・発行日
vol.第21分冊, pp.78-88, 1985-07-01
著者
原 直
巻号頁・発行日
2011-10-31 (Released:2011-12-08)

名古屋大学博士学位論文 学位の種類 : 博士(情報科学)(課程) 学位授与年月日:平成23年10月31日
著者
社本 基宏
出版者
Waseda University
巻号頁・発行日
2004

データマイニングの研究分野の一つとして頻出パターン抽出問題がある.しかし,抽出される頻出パターン数も膨大になる可能性があるため,膨大な頻出パターンから有用な知識を発見しやすいように情報を絞り込んだ制約付き頻出パターン抽出手法が求められている.制約付き頻出パターン抽出手法とは,トランザクション内に出現する各アイテムが持つ数値を利用して,ユーザが指定した制約条件と最小サポート値を同時に満たした頻出パターンを抽出する方法である.本論文では,最小サポートを満たし,制約の計算値が上位となる頻出パターンをユーザに順次返す手法を提案する.従来手法の制約付き頻出パターン抽出の実行には3つの入力が必要であったが,提案手法の実行は,上位となる頻出パターンから抽出することにより,閾値の入力をユーザに求めず,「最小サポート」と「制約の種類」の2つのみの入力で可能にし,ユーザビリティの向上を実現した.
著者
徳岡 聖二 田中 美栄子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.48, no.19, pp.68-74, 2007-12-15

株価の日中変動を記録したtickデータが研究資料として手に入るようになってまだ日が浅いが,日次変動とは異なる様相を示すことが様々な分野の研究者の興味を惹きつけ,精力的な数値解析が行われてきた結果,株価は完全なランダムウオークではなく,数分以下の短期価格変動には強い相関が存在することが明らかになってきた.このことは数分先の株価が上昇するか下降するかを科学的手法に依拠して予言できることを示唆している,そこで本論文では,過去の価格情報から抽出した様々な知識を活用しながらそのときどきの価格パターンに即した戦略的意思決定を自動生成するシステムを設計することを試みた.価格情報としては,時系列そのもののほかに,過去の平均価格や長期・短期移動平均との比較等,テクニカル分析において用いられる複数の指標を同時に利用しつつ,進化計算により過去の価格変動のパターンを学習することによって10-tick先,すなわち数秒から数分後の価格の上昇/下降を予測するシステムを作成し,それを用いて過去の実データにより予測を行った結果,IBM株で80%以上,8銘柄の平均で65%という予測的中率を得た.これにより,tick価格が少なくとも10-tick先までの記憶を有すること,および上記の方法により価格変動のトレンドを自動予測するシステムが機能することが実証された.While tick-wise price data have become available for computer-aided analysis only recently, novel patterns observed in those new data have attracted much attention of researchers in wide range of expertise. The results of extensive numerical work have shown that the stock price fluctuations are not strictly the random walk, but are strongly correlated to the prices at other times. This fact implies predictability of future trends of price movement in high precision. In order to see this, we have constructed a computer program utilizing multiple technical indices, including moving averages, etc., implemented in the framework of evolutional computation. As a result, we have obtained a positive result having 80% of correct hitting rate for IBM, and 65% for the average over 8 different stocks in New York Stock Exchange Market in the year of 1993. The result strongly supports the existence of long-term memory to extend at least for 10-ticks, and the effectiveness of our prediction generator system.
著者
長谷部 正
出版者
東信堂
雑誌
感性哲学 (ISSN:13467999)
巻号頁・発行日
no.8, pp.97-113, 2008-09
著者
築島 裕
出版者
訓点語学会
雑誌
訓点語と訓点資料 (ISSN:04546652)
巻号頁・発行日
no.36, pp.35-47, 1967-11-25
著者
TranMinhTuan 李珍泌 小田嶋哲哉 朴泰祐 佐藤三久
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.53, pp.1-8, 2011-07-20

GPU アーキテクチャの汎用化と高速化によって,GPU クラスタは高いコストパフォーマンスと演算性能,省電力化を HPC 分野にもたらしている.これまで汎用計算における GPU の高速化効果を目的とするプログラミング言語モデルの拡張やライブラリが数多く提案されてきた.しかし,これらは GPU を搭載するシングルノード環境を対象とする拡張が多く,GPU クラスタなどのメモリ分散システムを対象とするものがまだ少ない.multi-node GPU クラスタにおける高い性能プログラミングは通常の 1 ノード内のホストーGPU の拡張だけでは不十分,それぞれのノードにまたがる GPU どうしのプログラミングも意識する必要がある.そこで,現在,我々は Partitioned Global Address Space(PGAS) プログラミングモデルをベースとした並列プログラミング言語 XcalableMP を GPU クラスタに適用可能とするための拡張を行っている.本稿では,行列積計算を対象に,GPU クラスタにおける XMP-ACC 拡張のプログラミングコストと性能について調査した.その結果,4 ノードの GPU クラスタにおいて,CPU のみを用いた XcalableMP プログラムよりも,それに数行の XMP-ACC 指示文の追加したプログラムのほうが約 42 倍の速度向上が得られた.
著者
山本 秀樹
出版者
弘前大学
雑誌
文化紀要 (ISSN:04408624)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.115-129, 1997
著者
寺門和哉 RaytchevBisser 玉木徹 金田和文
雑誌
画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011)論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.753-756, 2011-07-20

本論文では新しいアピアランスベースの姿勢推定手法であるLocal Procrustes Regression (LPR)を提案する.LPRでは,全ての学習サンプルとその姿勢パラメータ空間とのマップを学習するのではなく,テストサンプル近傍の学習サンプル同士の距離関係を学習に利用し,テストサンプルの姿勢パラメータを推定する.このとき Procrustes Analysis を用いてテストサンプル近傍の学習サンプルの低次元空間と,それに対応する姿勢パラメータ空間との位置合わせを行う.物体ごとに2つの回転軸において5度ずつサンプリングされた703枚の画像データセット Object Pose Estimation Database (OPED) を用いて実験を行った結果,提案手法の姿勢推定精度は半数以上の物体でSupport Vector Regressionより優れていることが示された.
著者
長滝 祥司
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.47-52, 1994

フッサールが指摘したように(1), ガリレイ以来発展してきた自然科学によって, われわれは世界や事物を数量化して把握することに馴染んできた。こうした数量化によって, 事物把握が間主観的になり科学的客観性が生じてくる。科学的客観性とは, 個人的で一回的な事物経験が数量化され, 間主観的, 全時間的になることによって成立してきたものである。またそれと相即的に, 知覚され経験される事物は因果的連関のうちにあり, 自然科学が発見した精密な因果的法則に支配されていると見なされる。そこでは, 主観性は因果連関のなかに組み込まれるか, あるいは無視されている。しかし, こうした事態は世界についての客観的, 因果的把握も, 直接的に経験された知覚世界 (フッサールの用語に従えば, 生世界 [Lebenswelt] に基づく認識方法の一つであるということが忘却された結果である。言い換えれば, 人間の生と自然科学とが完全に切り離された結果といえよう。近代の自然科学に範をとる実験心理学も, こうした忘却の上に成立していた。<BR>では, 知覚世界と科学とはいかなる関係にあるのか。フッサールに従えば, そもそも知覚世界とは科学的世界 (科学によって規定される世界) の出発点であり, その基底にあって科学に素材を提供し, その根拠となるものである。つまり, 精密な科学も知覚経験から出発して得られたものである。そうならば, 知覚経験のなかに科学へと繋がる萌芽が看取できるであろう。換言すれば, 知覚経験のなかに科学的客観性の起源が見出されるはずである(2)。われわれの知覚経験が, まったく秩序を持たずきわめて不安定なものであったなら, それは精密科学に素材を提供することなどできなかったと考えられるからである。したがって, その素材とは知覚経験におけるある種の安定性であるともいえる。もちろん知覚経験とは, 身体の運動などによってつねに変動し, 人によって異なることもあるなど, 不安定なものである。しかし, それでもわれわれは, ある事物の見え方が様々に変異するなかでそれを同一のものとして把握し, 身体を同じ場所に置くことによって緩い意味での間主観性も成立する。つまり数量化して把握する以前に, われわれは事物についての安定的な経験を持っているのである。本稿ではこの安定性を"知覚的客観性"と名づける。<BR>本稿の目的は, 心理学の知覚研究において知覚と実在の関係, 知覚における安定性, 客観性の問題がどのように取り扱われてきたかを整理し, 現象学的知覚論との対比をつけることである。心理学からは, 実験心理学の始祖であるヴントと, 彼への批判から始まったゲシュタルト心理学, そして後者の継承者であるギブソンを扱う。また, 現象学ではメルロ=ポンティの知覚論を主題的に論じていくことにする。そして, 知覚的客観性をめぐって, ギブソンとメルロ=ポンティの議論を比較してみたい。もちろん, この二人のあいだに直接的な影響関係があったわけではない。しかし, ゲシュタルト心理学が要素主義を克服したことに対する彼らの強い共感を考えると, 両者を比較することはあながち不毛なこととは思われない。そして, 両者の対比を通じてあらためて知覚的客観性の問題を考察することにより, 知覚と科学の結び目を確認したい。