著者
新山 智基
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度の大きな成果は、昨年度の調査を盛り込んだ博士論文「顧みられない熱帯病〈ブルーリ潰瘍問題〉に対する感染症対策ネットワーク構築と小規模NGOの役割」を執筆したことである。本論では次の5点について明らかにしている。第1に、グローバルな感染症対策ネットワークの構築可能性の論議に向け、感染症を取り巻く状況やミレニアム開発目標などの動向に加え、NGOのかかわり、ネットワーク構築といった先行研究の検討を行った。第2に、顧みられない熱帯病・ブルーリ潰瘍問題が抱える問題を明らかにした。第3に、第2で明らかにした問題に対して、どのような対策・支援が実施されてきたのか、ブルーリ潰瘍問題に取り組んできた国際機関(WHO)、政府(被援助国)、NGOの3者を取り上げながらの考察を試みた。第4に、支援団体のなかでも日本で数少ないブルーリ潰瘍支援団体である「神戸国際大学ブルーリ潰瘍問題支援プロジェクト」を取り上げ、活動などの分析を行った。第5に、以上のようなことを踏まえ、これまでブルーリ潰瘍問題に対して、どのような形での支援が展開されてきたのかを考察している。また、2011年3月には、ブルーリ潰瘍対策専門家会議(WHO Annual Meeting on Buruli Ulcer)での報告"An Integrated Approach to Education Aids in West Africa"を行った。
著者
坂本 寿 村上 恭通 林 彬
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.53, pp.29-33, 2004-05-12
参考文献数
5

2003年SCISにおいて小林邦勝らが提案した"ガウス整数環上のナップザック暗号"を検討し,まず一意復号が難しい場合があることを示す.次に鍵の生成法に変更を加え,一意復号が保証されるようにした.さらに変更したガウス整数環上のナップザック暗号に対して,Lagarias-Odlyzko法による暗号解読の計算核実験を行い,高い確率で解読できることを示す.
著者
間瀬 剛
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

申請者はLHC加速器を用いた超前方中性粒子測定実験LHCfに参加している。LHC加速器は平成21年3月に世界最大のエネルギーである3.5TeV+3.5TeV陽子同士の衝突を成功させた。また6月には100μradの角度をつけて衝突させることにも成功している。また低エネルギーである450GeVの衝突を2009年に引き続き行った。LHCf実験は上記のすべての条件でデータ取得を行い、450GeV衝突では約5万のイベントの検出、3.5TeV衝突では約5000万イベントの検出に成功している。申請者は平成21年1月31日から平成21年7月3日まで平成21年度優秀若手研究者海外派遣事業(特別研究員)に採用され、当該期間にLHC加速器のあるCERNで研究に従事した。申請者はLHCfメンバーの一員として24時間シフトを組んで共同研究者とともにデータ取得にあたった。さらに得られたデータのキャリブレーションとして使用している2007年度に行われたSPSビーム実験の再解析を行ない、LHCf実験で得られたエネルギー決定のパラメータを新しいものに更新した。過去に行われたシミュレーションに用いられているCosmos/Epicsというコードのバージョンが古いものであったため、新しいものとはエネルギー損失等に若干の差異がでることが予想された。そこでバージョンを最新のものにして新たにシミュレーションを行い、先人とは独立した解析によって新しくパラメータを決定し、以前のものと1%程度の相違があることを確認した。また新しいバージョンでのシミュレーション結果を使用して検出器のエネルギー分解能やエネルギースケールの評価を行った。
著者
池田 晃一 本間 茂樹 本江 正茂
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.15, no.31, pp.877-880, 2009-10-20 (Released:2009-10-26)
参考文献数
14

This study is focused on creative group works. Based on the detailed observations and recordings, we want to find the relations between working activities, results and satisfaction of workers. We put the camera array system on the ceiling of the workspace and took plan-like images of working activities at regular intervals and measured the movement of bodies and tools. This paper also reports on the method to visualize the movement of workers and tools based on the measured data.
著者
兎内 勇津流
出版者
専門図書館協議会
雑誌
専門図書館 : bulletin of Special Libraries Association, Japan (ISSN:03850188)
巻号頁・発行日
vol.244, pp.34-44, 2010-11

北海道大学スラブ研究センターは、ロシアをはじめとするスラブ・ユーラシアの地域研究に携わる、国内の中核的機関であり、2010年には共同利用・共同研究拠点の指定を受けた。その図書室および北大附属図書館等の関連コレクションは、国内最大規模のものであり、内外の多くの研究者から活用され、高く評価されている。その運営は、主題専門家の教員を中心に行われている、国内的では少数の例のひとつであるが、収集水準の維持・向上、地域的バランスの改善、収蔵スペースの確保などが課題である。
著者
蓮井 亮二 毛利 公美 森井 昌克
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OIS, オフィスインフォメーションシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.529, pp.17-22, 2006-01-13
被引用文献数
1

ソフトウェアの脆弱性を利用した不正アクセスやDoS攻撃が社会問題化し, 脆弱性検査とソフトウェアのアップデートは重要になっている.これまでにも脆弱性監査ツールとしてNessusやNSAT等が開発・公開されている.しかし, これらのツールでは検査時に検査項目を設定する必要があることや検査結果を有効活用して対策を行うには専門的な知識が必要となることから簡単に利用できるとは言い難い.本稿では専門知識の乏しい管理者でも利用できる管理・運用を容易にするネットワーク資源脆弱性自動検査システムを提案する.提案システムでは既存の脆弱性検査ツールと比較して「脆弱性検査時の検査項目を自動的に設定する」「Web上から最新の脆弱性情報を自動的に取得する」といった特徴を有する.また, 既存の脆弱性ツールにはなかった「ネットワーク内部のパケット情報を記録し, 脆弱性が検出されたPortのパケット受信状況をグラフ化して表示する」という機能を持たせることによって, 脆弱性のあるPortに対するアクセス状況を把握することができる.
著者
久保田 文次
出版者
孫文研究会
雑誌
孫文研究
巻号頁・発行日
no.47, pp.1-27, 2010-03
著者
永井 雅代
出版者
独立行政法人国立長寿医療研究センター
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は神経変性疾患の共通の病理学的特徴である、タンパク質の異常凝集体の形成に酸化ストレス、特に脂質過酸化反応が関与して神経細胞死を引きおこしていることを明らかにし、脂質過酸化反応を食品成分により抑制することで神経変性疾患の発症を予防するための基盤データを得ることを目的としている。これまでにパーキンソン病の凝集体の主要構成タンパク質であるα-シヌクレイン(Syn)に対し、ω-3不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)は、in vitroにおいてタンパク質の重合化反応を促進し、凝集体を形成、この凝集体構成タンパク質にはDHA酸化物(PRL)による修飾が生じていることを明らかにした。そして、DHAが神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞に対して濃度依存的に毒性を示し、細胞内活性酸素種の産生増加とともに、細胞内のPRL修飾タンパク質がミトコンドリア、核・膜画分でDHA濃度依存的にPRL修飾タンパク質が顕著に増加していることを報告した。さらに、α-シヌクレイン遺伝子を導入したSH-SY5Y(Syn-SH)細胞もSH-SY5Y細胞と同様にDHA濃度依存的に毒性を示した。蛍光免疫染色法による観察から、DHAを添加したSyn-SH細胞の細胞内にはSynの増加とその凝集体の形成促進が認められた。加えて凝集体形成を促進すると報告されているリン酸化Synの増加が観察された。これらの結果は、神経細胞においてDHAによる酸化ストレス亢進はSyn凝集体形成とともに神経細胞死を促進することを示している。SH-SY5Y細胞にDHAとともに食品成分を添加することでDHAによるタンパク質凝集および神経細胞死が抑制されるかどうか検討したところ、大豆イソフラボンを予め添加して培養したSH-SY5Y細胞においてSyn/DHAによる神経細胞死を抑制することが分かった。しかしながら、DHAによる神経細胞死は抑制しないことから、大豆イソフラボンは抗酸化作用とは異なる機序で神経細胞死を抑制していると考えられた。
著者
松崎 拓也 増田 勝也
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

構文解析など基本的な言語処理を施した大量のテキストデータを用いて、そこから必要な情報を動的に抽出することで種々の言語処理技術を高精度化することを目指し研究を行った。具体的な成果として、大規模半構造化データベースに対する高速な検索システムを開発し、それを応用した知的テキスト検索システムを実現した。また、大量テキストデータから動的に抽出した統計量を従来の解析モデルに統合する枠組みに関する基礎研究を、構文解析および共参照・照応解析を対象として行い、それぞれについて高精度な解析システムを実現するとともにテキストベースとの統合へ向けての知見を得た。
著者
Hideyuki Nemoto Kazue Ikata Hideki Arimochi Teruaki Iwasaki Yoshinari Ohnishi Tomomi Kuwahara Keiko Kataoka
出版者
The University of Tokushima Faculty of Medicine
雑誌
The Journal of Medical Investigation (ISSN:13431420)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3,4, pp.235-245, 2011 (Released:2011-09-16)
参考文献数
35
被引用文献数
16

The aim of this study is to investigate the prebiotic effects of brown rice fermented by Aspergillus oryzae (FBRA) on the intestinal environment in vitro and in healthy adults. Methods: Fresh fecal slurries from six healthy adults were incubated with FBRA to confirm prebiotic potentials of FBRA. Another thirty-six healthy adults were randomly allocated to 2 groups for the clinical study. Subjects consumed 21.0 g/day of either FBRA or control food for 2 weeks, followed by a 12-week intermission and then 2-week ingestion vice versa. Main outcome measures were bifidobacterial numbers and organic acid concentration in feces. Sub outcome measures were fecal microbiota, fecal environments and bowel function. Results: Incubation of fecal slurries with FBRA in vitro resulted in increased organic acids with individual-specific patterns. Bifidobacterial numbers were increased during incubation. In the clinical study, all participants safely completed this study. FBRA had little effect on fecal number of bifidobacteria, concentrations of organic acids or putrefactive metabolites, fecal pH, or fecal microbiota. Conclusion: FBRA has the potentials as a prebiotic, however, we could not detect its effects on the intestinal environment in vivo. The results in a clinical study indicated that FBRA could be safely used for healthy adults. J. Med. Invest. 58: 235-245, August, 2011
著者
吉井 秀夫 SEONG JeongYong
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

本年度は、研究代表者の吉井の指導の下、研究分担者が日本および中国における資料の実見調査を精力的におこなった。中国での調査については、5月に遼寧省の朝陽・瀋陽周辺の鮮卑系考古資料を見学し、この地域の騎馬に関わる文化が、4・5世紀の百済の馬具とどのような関係にあるのかについて検討をおこなった。日本での調査については、これまで研究分担者が訪れる機会のなかった中部・関東地方の資料を集中的に調査することにした。5月には、大室古墳群に代表される、長野市周辺の渡来系考古資料の見学と検討をおこなった。また岡山県でおこなわれた、古代山城である鬼の城についてのシンポジウムに参加して、百済山城との関係を議論し、城門を復元中の鬼の城の現地を見学した。7月には福井県・東京都・群馬県・埼玉県・千葉県で資料調査を行った。福井県では、福井県立郷土若狭歴史民俗博物館などを訪れ、若狭を中心とする渡来系考古資料の実見調査をおこなった。東京都では、東京国立博物館および宮内庁書陵部が所蔵している日本各地出土の渡来系考古資料(主に馬具類)を集中的に見学した。群馬県・埼玉県・千葉県では、群馬県観音山古墳・観音塚古墳、埼玉県埼玉古墳群、千葉県金鈴塚古墳など、関東における環頭大刀や青銅製容器が多量に出土した古墳の現地を訪れ、また出土資料を見学して、百済との関係について検討をおこなった。個人的な事情から、今年度の研究費による調査を中断せざるをえなくなったが、昨年度の調査と含め、日本および中国において、百済との関係が深い考古資料の概要を大まかに把握することができたのが最大の成果であった。この成果をもとに今後も、引き続き百済の対外交渉について、東アジア的な視角から研究を進めていきたい。
著者
Yasunori MAEJIMA Hiroki NAKATSUGAWA Daiki ICHIDA Mayumi MAEJIMA Yasuo AOYAGI Takashi MAOKA Hideo ETOH
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry (ISSN:09168451)
巻号頁・発行日
vol.75, no.9, pp.1708-1712, 2011-09-23 (Released:2011-09-23)
参考文献数
25
被引用文献数
18

Fermented buckwheat sprouts (FBS) are used as multifunctional foods. Their production process includes fermentation with lactic acid bacteria. The major strains were found to include Lactobacillus plantarum, Lactobacillus brevis, Lactobacillus pentosus, Lactococcus lactis subsp. lactis, and Pediococcus pentosaceus in an investigation of the lactic acid bacteria. We searched for the functional components, and nicotianamine (NA) and 2″-hydroxynicotianamine (HNA) were identified as angiotensin I-converting enzyme (ACE) inhibitors. NA and HNA increased during fermentation. Indole-3-ethanol was identified as an antioxidant (a SOD active substance), and may have been generated from tryptophan during fermentation because it was not contained in green buckwheat juice. A safety test demonstrated that FBS contained were safe functional food components, showing negative results in buckwheat allergy tests. Any buckwheat allergy substances might have been degraded during the fermentation process.
出版者
PHP研究所
雑誌
ボイス (ISSN:03873552)
巻号頁・発行日
no.405, pp.13-17, 2011-09
著者
斉藤 史哲 長谷川 修
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.266-278, 2010-04-15 (Released:2010-07-02)
参考文献数
21

近年,移動ロボットの自己位置・状態推定にニューラルネットワークを用いる手法が多く提案されている.これらの手法はある特定の静的な環境に対してロボットを適応させることに主眼が置かれており,異なる環境に置かれたときに頑健に振舞うことが出来ない.一方,包摂アーキテクチャは動的環境でも頑健に振舞うことができると期待されている.しかし,包摂アーキテクチャは環境の構造に依存するタスクには向いていない.そこで,本研究では包摂アーキテクチャに基づく行動則と学習により獲得した行動則を状況に応じて切り替えるハイブリッドモデルを提案する.強化学習の状態空間には,状態数を事前に決定する必要がなく追加学習に頑健な自己増殖型ニューラルネットワークを改良した力学的自己増殖型ニューラルネットワークを用いた.本提案の有効性は,移動ロボットが複数の環境(迷路)上で獲得した行動則を環境の変化に応じて適切に切り替えながら振舞う事ができることをシミュレーション実験により確認した.
著者
大森 一伸
出版者
Waseda University
巻号頁・発行日
2003-07

制度:新 ; 文部省報告番号:乙1808号 ; 学位の種類:博士(人間科学) ; 授与年月日:2003/7/16 ; 早大学位記番号:新3620
著者
Kenji ARITA Aimi YAMAMOTO Yukari SHINONAGA Keiko HARADA Yoko ABE Keizo NAKAGAWA Shigeru SUGIYAMA
出版者
The Japanese Society for Dental Materials and Devices
雑誌
Dental Materials Journal (ISSN:02874547)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.672-683, 2011 (Released:2011-10-08)
参考文献数
39
被引用文献数
40 63

The aims of this study were to improve the mechanical and chemical properties of conventional restorative glass ionomer cement (GIC) by adding hydroxyapatite (HAp) preparations with different characteristics, and to investigate the underlying reaction mechanisms. Fuji IX GP® was used as the control GIC. The experimental GICs consisted of four HAp-particles with different characteristics added at 8 mass% to Fuji IX-powder. All cements were prepared by mixing with Fuji IX-liquid (P/L=3.6). Four HAp-particles were analyzed, and then the mechanical strengths and the fluoride-ion- release-recharge-behaviors of five GIC groups were evaluated. The results of this study demonstrate that the addition of HAp particles with highly reactive properties such as high specific surface area can enhance the flexural strength and fluoride ion release properties of conventional restorative GIC. Our results further indicate that HAp functions as an adsorbent and an ion exchangeable agent, resulting in improved mechanical and chemical properties of GIC.