著者
金 憲経 鈴木 隆雄 吉田 英世 島田 裕之 齋藤 京子 古名 丈人 大渕 修一
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

都市部在住後期高齢者におけるサルコペニア有症率は22.1%であった。サルコペニア高齢者の特徴を調べるために、サルコペニアと判定された304名とサルコペニアと判定されなかった正常者1,073 名の調査項目を比較した。その結果、サルコペニア群は正常群に比べて、年齢が高く、下腿三頭筋周囲、骨密度、BMI、筋肉量は有意に低値を、健康度自己評価で健康だと回答した者の割合、定期的な運動習慣を持っている者の割合は低かったが、外出頻度が少ない者の割合は高値を示した。既往歴においては、高血圧症、高脂血症は正常群より低い割合を示したが、骨粗鬆症の既往はサルコペニア群38.2%、正常群30.7%、60歳以降の骨折歴はサルコペニア群28.6%、正常群22.9%、過去1年間の転倒率はサルコペニア群26.5%、正常群16.4%といずれの項目においてもサルコペニア群が有意に高い割合を示した。以上のことから、サルコペニア高齢者は、転倒のみならず骨粗鬆症に伴う骨折危険性が高いことが示唆され、その予防策の早期確立が重要なポイントであることが強く示唆された。サルコペニアの早期予防を目的とした運動、栄養補充の効果を調べるために、介入参加者155名をRCTにより運動+栄養群38名、運動群39名、栄養群39名、対照群39名に分け、運動群には週2回、1回当たり60分間の筋力強化と歩行機能の改善を目的とした包括的運動指導を、栄養群にはロイシン高配合の必須アミノ酸3gを1日2回補充する指導を、3ヶ月間実施した。その結果、四肢の骨格筋量および通常歩行速度は運動群、栄養群、運動+栄養群の3群で有意な増加が観察された。しかし、下肢筋力を評価する膝伸展力は運動+栄養群のみで有意な向上が観察された。これらの結果より、サルコペニア予防のためには、運動指導に必須アミノ酸を含んだ栄養を補充する複合介入がより効果的であることを検証した。
著者
石田 淳 浜田 宏
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.109-125, 2005 (Released:2007-07-06)
参考文献数
16
被引用文献数
2

浜田・石田 (2003) は, J. ローマーの「機会平等の原則」というアイデアに基づき, 性別や親の地位などの機会の差を仮想的に調整した社会のジニ係数を分析する方法を定式化した. しかしながら, 浜田・石田 (2003) では, ローマー・モデルと仮想的機会調整分析法の仮定の違いが明確に規定されておらず, 機会不平等調整前後のジニ係数の差が統計的に有意であるかどうかも考慮されていなかった.そこで本稿では, ローマーの規範的モデルと仮想的機会調整分析法の違いを明確化しつつ, ブートストラップ法を応用することにより, 機会調整前後のジニ係数の有意差検定を行う手法を提唱する. さらに, 機会変数が比率尺度である場合の分割数に関する問題についても言及し, 分析法の理論的性質を明らかにする. また分析例としてSSMデータを用い, 不動産相続額を機会変数とみなして, 所有不動産額と世帯所得という結果の配分への影響を検証する.
著者
河本 美津子 荒川 秀俊 前田 昌子 辻 章夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.537-542, 1991-10-05
被引用文献数
3 1

還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を高感度に測定することを目的として酵素サイクリング法によりNADHを増幅させ, 化学発光法で測定する方法を検討した.酵素サイクリングに用いた酵素反応系はリンゴ酸デヒドロゲナーゼ/アルコールデヒドロゲナーゼ系で, 生成したリンゴ酸を過剰量のNADP^+とMalic enzymeによりNADPHとし, 既報の方法に従ってイソルミノール/ミクロペルオキシダーゼによる化学発光法で測定した.最適条件下でのNADHの検量域は0.01〜5pmol/assayで, 酵素サイクリングを用いない既報と比較して約1000倍感度が向上した.本法をアルカリホスファターゼの酵素活性測定に適用したところ0.036〜18amol/assayの検量域で既報と比較して約50倍感度が向上し, その精度は3.9〜6.3%(相対標準偏差)であった.更に本法を17α-ヒドロキシプロゲステロン(競合法)及びヒトじゅう毛性ゴナドトロピン(サンドイッチ法)酵素免疫測定法に応用した.
著者
峯木 茂
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

ピレン資化性細菌Mycobacterium sp.H2-5を無機培地でピレンを炭素源として培養し、ピレン分解に関与するジオキシゲナーゼ(ピレン酸化酵素)のサブユニットであるNidAとNidBを取得した。NidBはピレン分解時に特異的であり、大サブユニットNidAと結合してジオキシゲナーゼを構成するとされているので、この遺伝子がピレン資化能のプローブとして利用できそうであった。N末端付近のアミノ酸配列情報から当該タンパク質の遺伝子nidAとnidBを獲得して、塩基配列を決定した。次いで、その配列情報から蛍光標識したプローブを作製し、蛍光in situ hybridization(FISH)解析をする予定であったが、標的となるmRNA量が少ないためにやや難しいと考えられたので、先ずは豊富に存在すると考えられる、16S rRNAに対するFISHを試みることにした。H2-5株のFISHに先立ち、E.coilに対して、Alexa Fluore 488で5'末端を蛍光ラベルしたユニバーサルプローブEUB338およびアンチセンスであるNONEUBを用いてFISHを行った。菌体をパラホルムアルデヒドで固定し、ゼラチンコートしたスライド上に結合させた。次に、上記プローブをハイブリしたのち、蛍光顕微鏡で観察した結果、EUBとDAPIに関して、明瞭なシグナルをうることができた。次いで、TSB栄養培地で純粋培養したH2-5株のFISHを同様な方法で行った。その結果、EUB338とDAPIで強いシグナルが得られたものの、E.coliに比べると不明瞭であった。現在、シリコナイズしたスライドガラスを用いてlysozymeとachromopeptidase処理をしてプローブの浸透性を向上させるべく、実験を継続している。
著者
石田 淳
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.97-108, 2005 (Released:2007-07-06)
参考文献数
13
被引用文献数
1

数理社会学は, 社会学の一分野であるという意味で, 経験科学に属する. 本稿ではこの基本的な認識を確認しつつ, FKモデルにおけるモデルの検証にかんする問題を指摘する. 具体的には, モデルの初期条件となる「客観階層システム」の想定の仕方によって, モデルと経験的データとの適合度が変わるという問題を指摘し, 理論的に検討を加える. モデルの検証についての厳密な検討を経ることによって, FKモデルの, ひいては数理社会学のより一層の発展が期待される.
著者
石田 誠 河野 剛士 澤田 和明
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.33, no.39, pp.51-56, 2009-10-01

センサ・MEMSデバイスとLSIを一つのチップに融合することにより、これまでにない特徴を生み出し、これまで不可能であった計測を可能にし、新たな応用分野を開拓することができる.このようなチップをスマートマイクロチップと称している.ここではLSI技術とセンサ・MEMSデバイスが融合したことにより実現したデバイスとして、神経電位計測/薬液注入チップとpHイメージセンシングチップを紹介する
著者
森江 隆 石川 聖二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.94, no.6, pp.459-463, 2011-06-01
被引用文献数
2

車載用及びロボット視覚用の知的画像認識で必要となるHOG,SIFTなどの基本アルゴリズムを紹介するとともに,筆者らが開発した画像認識手法を紹介する.現在の画像処理はより並列的・階層的になり,脳での視覚処理モデルに近づいているともいえるが,人の高い知覚機能に近づくには更なるブレークスルーが必要である.そのために,脳型画像処理技術とそれを実現する集積回路及びナノ構造の利用を含めた脳型デバイス開発の必要性を述べる.
著者
石田 誠 澤田 和明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.94, no.6, pp.483-488, 2011-06-01

集積回路技術とセンサ技術を融合して高感度・高機能化を目指した新しい原理のセンサについて,豊橋技術科学大学エレクトロニクス先端融合研究所(EIIRIS)では開発を進めている.センサ・MEMSデバイスとICを一つのシリコンチップ上に融合することにより,これまでにないセンシングの特徴を生み出し,不可能であった計測を可能として,新たな応用分野を開拓することができる.このようなチップはスマートマイクロチップと称しているが,特にバイオ関連技術と集積回路技術を融合したインテリジェントバイオチップについて現状と将来を解説する.
著者
山口 健也 向井 泰二郎
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.55-65, 2001-04-25

うつ病の予後に影響を及ぼす因子としては, 発症時の症状, 身体的因子, 心理的因子, 社会的因子などの諸要素が考えられる.このような因子と予後の関連を, 外来で対応可能な軽症から中等症のうつ病患者について調べた.初診時の症状を包括的精神病理学尺度を用いて評価し, 身体的因子, 心理的因子, 社会的因子, 治療経過を説明変数とし, 予後を目的変数として, 多変量解析である林の数量化理論II類を用いて検討した.対象は, 近畿大学医学部付属病院精神神経科外来にて, 1990年11月19日から1995年5月1日までの期間に, DSMIV診断基準(diagnostic and statistical manual of mental disorders fourth edition)にて, うつ病性障害のうち, 大うつ病性障害-単一エピソード(code : 296.2), 大うつ病性障害-反復性(code : 296.3), 気分変調性障害(code : 300.4)と診断されたもので, 1年の経過を追跡しえた, 男性22名, 女性23名, 合計45名, 平均年齢50.9歳±15.3のうつ病患者であった.その結果, 性別, 年齢, 前医の有無はほとんど影響がなく, 身体合併症は難治例と同様に予後の悪さの指標となることがわかった.薬物療法との関連からは, 睡眠薬, 抗うつ剤の使用が良かった.sulpiride, 抗不安薬も弱いながらも効果があった.精神症状と予後の関連では, 患者本人がはっきりと自覚しやすい, あるいは苦しさが前景にでる症状ほど治りやすいと考えられた.対人関係の観点からは, 主治医との関係及び家族関係が良好なほど予後は良いと考えられた.うつ病の治療においては, 薬物療法, ついで精神療法さらには家族による環境的配慮が重要であると考えられた.判別的中点は-0.1417,判別的中率は91.1%であり相関比は0.7463であった.
著者
下田 学 福永 哲夫 金久 博昭 川上 泰雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.87-97, 2008-06-30 (Released:2008-09-13)
参考文献数
33

The purpose of the present study was to investigate the effect of varying inter-contraction intervals on central and peripheral muscle fatigue during intermittent contractions. Six healthy men carried out maximal unilateral isometric plantar flexions 50 times, separated with an interval of 2, 4, 10, or 30 s. Supramaximal electrical stimuli (twitches) were imposed percutaneously on the tibial nerve during and after every 10th contraction to assess the level of voluntary activation. The surface electromyogram (EMG) was recorded from the medial and lateral gastrocnemius (MG and LG) and soleus (Sol) muscles. Plantar flexion torque and other parameters were maintained over contractions with 30-s intervals, while the torque as well as EMG activity of the MG, LG and Sol and the level of voluntary activation decreased significantly under conditions using 2-, 4-, and 10-s intervals. The amount of decrease in the parameters was greater for shorter intervals. With 2-s intervals, the twitch torque decreased significantly, the half-relaxation time of the twitch torque increased significantly, and the EMG mean power frequency of the MG and LG shifted significantly toward lower frequencies, whereas no significant changes were found under other conditions. These results indicate that there are differences in the contributions of central and peripheral fatigue, both of which are a function of inter-contraction interval.
著者
北島 正樹 若吉 浩二 高橋 篤史 高橋 繁浩 野村 照夫 荻田 太
出版者
日本水泳・水中運動学会
雑誌
水泳水中運動科学 (ISSN:18806937)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.31-38, 2006 (Released:2007-04-25)
参考文献数
28

The purpose of this study was to determine the critical combination of all four elements which expressed the threshold of fatigue in interval training by using the critical swimming velocity that was an effective index when we set training strength, and to make a model that we could use as an indicator when we prescribed the training menu that accepted an individual. Only for 50m at repeated distance, we set a different rest time in three phases of different swimming velocity each and performed a test to let subjects repeat exercise up to fatigue. In addition, we measured the maximum repetitions that could repeat exercise. As a result, it became clear that the maximum repetitions that could repeat interval training without reaching fatigue in a certain swimming velocity was in proportion to the total rest time. And then, we were able to see the relations with the repetitions and the rest time in three phases of different swimming velocity. Furthermore, we were able to get relations with the rest time and the swimming velocity which expressed the threshold of fatigue in the arbitrary repetitions by fixing the repetitions. It was concluded that we were able to determine the critical combination from the above-mentioned by this study.
著者
古谷 翔 角 康之 西田 豊明
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)
巻号頁・発行日
vol.2009-UBI-22, no.19, pp.1-8, 2009-05-08

本稿では,共有体験におけるコミュニケーション支援システムであるPhotoChatで行われる仮想的な会話の構造分析について報告する.PhotoChatユーザは,撮影した写真とそこへの書き込みを無線で共有することができ,気軽に興味対象を伝えたりチャットを行うことが可能である.実会話の構造分析においては,会話場への参加・離脱における関与の仕方(参与構造)や,そこでの様々な周辺言語や振る舞い(発話交代,立ち位置や顔の方向の変化,うなずきやあいづち等)の役割について分析が行われてきた.PhotoChat上のチャットは,写真撮影を会話場形成,写真閲覧を会話場への参加,書き込みを発話と考えると,一種の会話現象とみなすことができる.本稿では,PhotoChat上のユーザの振る舞いデータに対して会話分析を行うことで,会話の盛り上がりシーンの特定や,会話構造理解の可能性を議論する.
著者
石田 喜助
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會誌 (ISSN:00214728)
巻号頁・発行日
vol.60, no.466, pp.1207-1210, 1957-11-05