著者
鶴田 英也
出版者
梅花女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

・日本心理臨床学会の自主シンポジウム(波多江洋介企画)において、これまでの研究の外観を発表した。具体的内容としては、バウムに対する2種のパースペクティブ、すなわち垂直・水平軸のパースペクティブと柄と地のパースペクティブについて、その発想のもととなったいくつかのモチーフとともに紹介し、さらに臨床例を提示した。・昨年度に根っこ描写ありなしの二枚法で収集したバウムについて、根っこ描写あるいは地平線描写と描き手のしっくり感についての連関について統計的検定を行った。結果、根っこなしの方がしっくり感があるものとして選ばれやすいという結果が得られた。地平線描写としっくり感との連関は見られなかった。また根っこを描いたバウムからより病的な様相を強く感じるということが多く、根っこ描写のもつ特性を得られたことは有意義であったが、それだけに根っこ描写をこちらから指示することの責任の重さを痛感させられる結果であった。なお、この内容については日本箱庭療法学会にてポスター形式で発表した。・再度沖縄にてバウムを収集した。根っこ描写、地平線描写について統計的処理を行った後、梅花女子大学大学院心理臨床学専攻の大学院生数名とケースカンファレンス形式で個々のバウムを検討した。その内容については心理臨床関連の学会誌に投稿発表する予定である。・京都の鞍馬寺から貴船神社にいたる山道にある通称"木の根道"を調査した。木の根道とは、根っこが地表に張り巡らされており、その昔源義経が修行の場としたともされている場所であるが、その一種異様な雰囲気は、沖縄の見事な板根をもつサキシマスオウノキを訪れた時に感じた感覚とも似ているようだった。特に根っこに関するバウムイメージを膨らませる貴重な体験だった。
著者
山本 芳弘
出版者
高崎経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

研究課題1として、住宅用太陽光発電を効率的に普及させるための太陽光発電買い取り制度について研究した。社会厚生や電気料金負担の観点からは、設置家計が電力販売量を増やすためにどの程度電力消費を抑制するかが鍵になることを明らかにした。研究課題2として、廃棄物系バイオマス利活用事業の効果的な運営形態について研究した。効果的な運営形態は、投入するバイオマスや生産物の種類等に関連することが示唆された。
著者
太田 昌孝
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.33-33, 2010-12-10

最初のJIS漢字コードであるJIS C 6226-1978では1つのコードに複数の字体が対応し,包摂と呼ばれるが,包摂の工学的に適切な扱いのためには,包摂を入力における量子化誤差ととらえ,出力における偏り(誤差)と区別する必要がある.文字コードと文字の入出力を電圧のAD/DA変換と対比した結果,現行のJIS漢字コードであるJIS X 0208:1997には,入力における偏り(誤差)を考慮していない,出力の許容誤差が不必要に厳しい,などの各種の問題があることが分かった.この結果を反映してJIS漢字コードを改定する必要があり,既存の実装の精度を定義できる.実装内容の改定は不要である.JIS C 6226-1978, the first JIS Kanji code, maps multiple glyphs to a single code, which is called unification, proper engineering treatment of which requires recognition of unification as quantization error on input and distiction of the quantization error from offset (error) on output. By comparing character input and output to/from character code with AD/DA conversion of voltage, it is found that the current JIS Kanji code JIS X 0208:1997 have various problems such as ignorance on input offset (error) and unnecessarily strict error allowance on output. It is necessary to revise JIS Kanji code to reflect the result of this paper, which enables to specify precision of existing implementations, content of which do not need any revision.
著者
松下 光範
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的はテーブルを囲む少人数参加者の合議に焦点を当て、知識の非対称性を有する参加者間のコミュニケーション様態と議論結果との関連性を明らかにすること、及びその協同を円滑に支援するためのテーブル型システム実現のためのデザイン指針を明らかにすることである。そのために、対面協調作業参加者の間のコミュニケーション行為に着目し、そこで行われるインタラクションの特徴を3つの実験を用いて観察した。実験の結果、(1)反射的応答を必要とする課題では、指を用いた直示行為の利用可否が発話内容と課題達成度に影響する、(2)熟考することが求められる課題では、他の参加者の非言語モダリティの参照可否は課題達成度に大きな影響を及ぼさない、(3)発話長や発話頻度は課題のタイプや非言語モダリティの利用可否に影響を受けない、(4)結合型課題では、グループ全体の効用が参照可能な状況下、かつ全ての参加者の代替案集合に対する評価が静的である場合に、より参加者全体にとって効用の高い案で合意できる可能性がある、ということが観察された。
著者
新村 末雄 高橋 英太
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.713-719, 1995-08-25
被引用文献数
9 2

培養マウス胚盤胞の収縮運動をタイムラプスビデオを用いて観察した.ハッチング前の期間において,83.3%(25/30)の胚盤胞が収縮を行なったが,ハッチング中およびハッチング後10時間までの期間では,すべての胚盤胞が収縮を行なった.これら3期間において,弱度(20%未満の体積の減少)および強度(20%以上の体積の減少)の収縮の平均回数および1時間当たりの平均収縮回数は,いずれもハッチング中の期間で有意に多かった.また,ハッチングを完了した胚とハッチングを完了しなかった胚において,胚盤胞形成後32時間までの弱度の収縮回数に差はみられなかったが,強度の収縮回数はハッチングを完了した胚で有意に少なかった.以上の結果から,胚盤胞の収縮運動,特に,弱度の収縮はハッチングに役割を果たしているが,強度の収縮はハッチングとは関係なく,ハッチングを完了できないような胚で多発するものであることが考えられた.
著者
堀 泰智 村上 春翔 佐藤 千早 中川 明奈 三浦 弘 菊池 元宏 大浪 洋二
出版者
日本獣医循環器学会
雑誌
動物の循環器 (ISSN:09106537)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.37-42, 2010 (Released:2010-11-06)
参考文献数
24

13歳のビーグル犬が腹囲膨満と呼吸器症状を主訴に来院した。胸部X線検査から心拡大が確認され,心エコー図検査から三尖弁閉鎖不全症が診断された。右心房圧は正常であったが,右心室圧は上昇していた(収縮期/拡張末期;69/5.0 mmHg)。血中ANP濃度は正常範囲であったが,血中NT-proBNP濃度は1,583 pmol/Lと高値であった。内科治療としてエナラプリル,トラセミド,メチルジゴキシンを処方したところ,治療後30日目には臨床兆候は改善し,右心室圧も低下していた(収縮期/拡張末期;20/-2.3 mmHg)。また,血中NT-proBNP濃度は1,245 pmol/Lに低下していた。本症例では,右心不全に伴う右心室圧の上昇によって血中NT-proBNP濃度が上昇していたと推察される。
著者
荒井 茂夫 田村 慶子 加納 寛 福田 和展 田中 恭子 レオ スリヤディナタ 賢 強
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

調査表回収率は全体で5割ほどであった。458部は十分とは言えないが、丁寧な聞き取り調査によって数値を補うことができた。インドシナ諸国華僑華人の移動は政治的混乱と戦争が最大の要因で新概念による分類が必要となった。従来は旧華僑・華人、新華僑の2分類であったが、難民華僑という分類である。彼らは受け入れ国、脱出国、中華文化の三者に濃淡差のあるアイデンティティを持つ点が他地域の華人と異なる点である。また欧米の難民華僑社会は民族・文化的共通の通信回路を持つエクスターナル・チャイナ的領域の拡大と見ることもでき、ワン・ガンウの理論は合致するが、移動に関して華僑大衆は生活次第で定住する傾向があり、難民華僑成功者も受け入れ国に資産を置きながらだ出国に帰国投資するもので、一族挙げて戻ることはない。この点ワン氏の理論は問題はあるが、都市間の移動という点では当てはまる。
著者
鈴木 洋
出版者
日経BP社
雑誌
日経情報ストラテジ- (ISSN:09175342)
巻号頁・発行日
vol.19, no.7, pp.100-103, 2010-08

今回は海外子会社(製造業の現地工場)の経営層の視点からIFRS(国際財務報告基準、または国際会計基準)適用プロジェクトに対する悩みどころとその落としどころを整理する。中堅企業クラスの子会社を想定しお読みいただきたい。主体的な調査・検討に着手 私は製造業の海外現地法人(グループ子会社)である部品製造子会社で経理、経営企画、人事の統括取締役を務めている。
著者
高木 一義 高木 直史 矢島 脩三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション
巻号頁・発行日
vol.93, no.81, pp.85-92, 1993-05-27

最小カット線形配置問題は、グラフの節点の線形配列のうち、枝の重なりの最大値が最小のものを求める問題である。木に対しては、この問題を解く多項式時間アルゴリズムが知られているが、一般のグラフに対してはNP-完全である。本稿では、完全p-q dagに対する最小カット線形配置問題のアルゴリズムを二つ提案する。p-q dagは、有向非巡回グラフの一つのクラスであり、ある種の繰り返し構造を持つ回路の結合網として用いられる。第一のアルゴリズムは、動的計画法に基づくものであり、グラフのサイズに対して多項式オーダの計算時間と計算領域を要する。第二のアルゴリズムは、線形配置の性質に基づく近似アルゴリズムである。最後に、これらのアルゴリズムの応用として、多オペランド加算器の組織的なVLSIレイアウト手法を示す。
著者
原 千亜
出版者
桜美林大学言語教育研究所
雑誌
桜美林言語教育論叢 (ISSN:18800610)
巻号頁・発行日
no.7, pp.133-146, 2011
被引用文献数
1

日本語教育において「多言語多民族共生」という言葉を目にする機会が多くなったとはいえ、ミャンマー人は在日外国人の中のマイノリティであり、まだスポットライトを当てられる機会が少ない。そのような背景の下、日本語教室に在籍するミャンマー人学習者五人に日本での生活について半構造化インタビューを行い、在日ミャンマー人の社会文化的インターアクションを言語の社会化という視点から記述、分析を行った。協力者のアイデンティティは、「在日ミャンマー人」という一括りの枠ではなく、一人一人異なっており、ディアスポラ的な移動に伴って変化するハイブリッドで暫定的なものであった。そして、どのようなアイデンティティを持っているかが、インターアクションの個別性の一要因であった。協力者たちは様々な領域でネットワークを構築し、そのネットワークとのインターアクションを通して「言語の社会化」を図っていた。それは、日本社会という異文化社会をどう捉え、その中でどう生きるかということに通じていた。本稿は、修士論文である原(2008)の一部をまとめ、加筆したものである。
著者
井ノ口 馨 岡田 大助 大川 宜昭 鈴木 章円 Shehata Mohammad 鈴木 玲子 西園 啓文 野本 真順 横瀬 淳 村山 絵美 趙 埼 北村 貴司
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

「記憶のアップデート機構」は知識の形成を通じて精神活動の基盤となる。記憶のアップデートは記憶同士の連合により行われるが、そのセルアセンブリレベルのメカニズムは不明であった。本研究では、二つの記憶情報が連合する回路レベルのメカニズムを明らかにするために、(1)CS-US連合(2)行動タグ(3)高次の連合のそれぞれについて、記憶が連合(相互作用)するセルアセンブリレベルのメカニズムを解析した。その結果、記憶が連合(相互作用)する際には、それぞれの記憶の対応する神経細胞集団の同期活動によるオーバーラップが重要な役割を担っていることが示され、記憶がアップデートされる脳内メカニズムが明らかとなった。
著者
根岸一乃
雑誌
あたらしい眼科
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.463-466, 2005
被引用文献数
1
著者
原田 三千代
出版者
桜美林大学言語教育研究所
雑誌
桜美林言語教育論叢 (ISSN:18800610)
巻号頁・発行日
no.7, pp.1-16, 2011

グローバル化に伴う国際競争力推進の下で、大学の教育カリキュラムは専門化、即戦力に主眼が置かれている。しかし、大学や大学院での研究では、アカデミック・スキルの習得と同時に、自分自身や研究について思考する内容重視の言語教育が必要であり、それが研究者としての持続可能な生き方にも通じるのではないかと考えられる。本研究では、大学院進学予備教育のプログラムにおいて、ツールと同時に内容に重点を置く持続可能性日本語教育を試行した。現職の日本語教師を対象に、研究に対する態度構造の変化を探ることを目的とし、教室活動参加当初、活動終了直後、活動終了半年後にPAC分析を実施した。その結果、活動参加当初は研究に対するイメージが漠然としており、「知る」ことに重点が置かれていたが、活動終了時点は「知る」より「絞る」「深める」を重視し、データの量よりも研究に合ったデータをとることが強調された。活動終了半年後の研究に対するイメージは「研究と実践のリンクする持続可能性」「協働的なスタンス」として収束されていた。研究と実践が相互補完的に関係づけられ、協働的スタンスがそれを下支えするといった構図が示唆される。
著者
李 麗麗
出版者
桜美林大学言語教育研究所
雑誌
桜美林言語教育論叢 (ISSN:18800610)
巻号頁・発行日
no.7, pp.17-31, 2011

本稿では、日本語教育専攻の中国人大学院留学生(以下中国人院生)を対象とした半構造化インタビューを通して、中国人院生がアカデミック・インターアクション(AI)に関わる実践共同体へ十全参加を進めていく過程を明らかにすることを試みた。正統的周辺参加理論に沿って分析・考察した結果、以下の3 点の変容が明らかになった。1. 中国人院生のAI 能力の向上の程度には個人差と多様性がある。2. 参加するAI 活動が豊富になり、他者との協働関係と親密関係が構築された。3. 中国人院生のアイデンティティは「日本語学習者」から「日本語先生の卵」、「研究者」などの熟練したアイデンティティに変容した。周辺的参加から十全的参加へと移行する大きな突破口は他者肯定と個人の意欲による情意面の要因に密接にかかわっているが、その根本には研究効力感が重要な役割を担っていることがわかった。
著者
Horiuchi Hisashi SUZUKI Yasuyuki
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
理論物理学の進歩 (ISSN:0033068X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.1974-2004, 1973-06-25
被引用文献数
33

Alpha-decay widths of SU_3, deformed oscillator and cluster model wave functions are calculated quantitatively for the ground band levels of ^<8>Be and the first K=0^<-> band levels of ^<20>ne. Tails of the reduced width amplitudes of these model wave functions are amended by two methods, of which one is to connect smoothly the inner original reduced width amplitude with the resonance tail given by the release energy of α particle, and the other is to apply the Green's-function method developed by Kawai and Yazaki for the calculation of the radial form factor for the stripping or pick up reactions. From comparisons of the calculated results with experiments it is concluded that the SU_3 model is insufficient to reproduce large α-decay widths. It is further shown that the deformed oscillator model is also considered to be inappropriate for the general explanation of the (rotational) levels with large cluster widths. From these consequences on SU_3 and deformed oscillator models and by the numerical confirmation that the cluster model wave functions can naturally reproduce the experiments consistently with the variational energy calculations, the importance of the molecular viewpoint in light nuclei is emphasized.
著者
三原 裕子
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, 2000-09-30

日本語では,語によってマ行音とバ行音が交替する現象が知られるが,この音韻現象は,表記を通してもうかがうことができる。そこで,本発表では後期咄本に現れた「ま」・「は」・「ば」行表記の推移を観察して,その推移の諸要因を明らかにし,併せて,そこから見て取ることのできる後期咄本の資料性を検討する。現れた表記のうち,交替以前の語形を反映していると思われる表記と,「ふをむと読む」,所謂「読み癖」の表記は文章語的なものと位置付けられ,交替後の語形を反映していると思われる表記は口頭語的なものと位置付けられると考える。このような見地から,各語の状況を整理してみると,以下のようなことが言える。調査した語の表記推移の要因として想定されるものには,(一)「意味分担によって,表記にもその使い分けが反映したと思われるもの」(「灯」ほか)や(二)「語の本義に関する記憶の薄れが,表記変化に拍車をかけたと考えられるもの」(「禿」ほか),(三)文章語として認識されていた語が丁寧な語から日常語へと一般にひろまり,口頭語として広く使われてきた語が,その地位を下げるといった「文体的価値の低下が表記に反映したと思われるもの」(紐)などがある。さらに,調査した語の中には,語形変化の過渡期をうかがえる語(「禿」)や,「ふをむと読む」伝統を踏襲した保守的表記で表される語(「居眠り」「煙」)もあった。従来後期咄本のような口語的性格を持つ表記が現れ易い資料は,口語資料としての価値を有すると考えられるが,その一方で,同資料には伝統的な「は」行表記を比較資料よりも多く残すことなど,表記の保守性もうかがうことができる。咄本製作者には,このような保守的表記を選択するものがおり,読者にもそれを許容して享受するという教養層が存在したことが指摘できる。
著者
大畑 篤四郎
出版者
早稲田大学法学会
雑誌
早稲田法学 (ISSN:03890546)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1-2, pp.133-151, 1976-03-20