著者
秦泉寺 久美 渡辺 裕 岡田 重樹 小林 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.758-768, 2001-05-01
参考文献数
13
被引用文献数
15

新しい画像符号化標準のMPEG-4が標準化されつつある。これは、低いレートにおいてはH.26XやMPEG-1,2に代表される従来符号化法と比較してより高品質の画像を提供するものである。また、新しい機能であるオブジェクト単位の符号化を提供するものである。筆者らはインターネット等に適用できる超低ビットレート符号化方法の開発を行っている。従来法に比べて劇的な符号量削減が可能であるMPEG-4の符号化ツールである「スプライト符号化」に着目し、前景、背景の2層からなるビデオオブジェクトの自動抽出アルゴリズムを提案する。生成した前景、背景のビデオオブジェクトをそれぞれMPEG-4オブジェクト符号化並びにスプライト符号化に適用(スプライトモード)して、スプライトを用いないMPEG-4 Simple profileの符号化法(ノーマルモード)と比較検討を行った。特に、フレームレートや前景オブジェクトの割合を変化させ、符号量に与える影響を調査した。その結果、フレームレートに関係なく、前景比率が画面全体の10〜15%程度である場合にMPEG-4通常符号化方法の1/4〜1/2程度の符号量で同程度の画質を実現できることを確認した。また超低レート(128kbit/s、64kbit/s)においてフレームレート、客観画質の評価を行ったところ、同程度のSNRで倍以上のフレームレートを達成できることを確認した。
著者
上村 大輔 大野 修 末永 聖武 有本 博一 宮本 憲二
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009

長い炭素鎖を持ち、繰り返し構造の無い海洋生物由来天然分子を巨大炭素鎖有機分子と呼ぶ。これらは、その特異な構造とともに強力な生物活性に特徴がある。本研究では、海洋生物に共生する微生物の大量培養やメタゲノム的手法といった新しい方法論を導入する事で、新規巨大炭素鎖有機分子の探索を試みた。また、新規化合物の発見のみに満足することなく、それらの生物学的存在意義、生合成限界、生物活性、特異な化学反応を視野に入れて研究を展開した。その結果、複数の重要化合物の単離と生物学的役割の解明に成功し、巨大炭素鎖有機分子の概念の確立に貢献した。
著者
森 哲 COOK S. P. COOK Simon Phillip
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本年度は、研究開始時期が冬季であったため、調査地と対象種の選定を主とした予備的調査を行った。亜熱帯域におけるトカゲ類の温度生理を温度環境の異なる地域間で比較し、また、温度選好性が異なると推測される複数種が存在する場所と、単一種のみが存在する場所を選び、それらの間でそれぞれの種の温度特性を比較することを目的として、適切な種と調査地の確定を行った。また、選定に際しては、京都大学理学研究科の戸田守助手と琉球大学熱帯生物圏研究センターの太田英利教授のアドバイスをあおいだ。まず、既存の文献データから琉球列島に生息するトカゲ類の分布域と選好環境の情報を調べ、対象種として、オキナワトカゲ、バーバートカゲ、および、ヘリグロヒメトカゲを選抜した。これをもとに、調査候補地として、沖縄北部の山原、伊江島、久米島、伊平屋島、伊是名島、および、奄美大島を選んた。本年度は、このうち沖縄島北部の山原と伊江島へ1月に赴いて実際の環境を巡察し、山原は上記3種が生息する環境として、伊江島はオキナワトカゲとヘリグロヒメトカゲが生息する環境として、調査対象にふさわしい場所であると判断した。他の地域へは、平成17年度の4月に赴く予定である。また、2月には、体温と逃走速度との関係を実験下で調べるための実験装置であるレーストラックの作成準備にとりかかった。この実験では、野外で捕獲してきたトカゲを様々な体温条件下で逃走させる必要があるが、既存のインキュベーターを用いてトカゲの体温を変化させることが可能であることを確認した。
著者
小川 和夫 良永 知義
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

単生類Neoheterobothrium hirameは、1990年代半ばに突然新種として日本近海のヒラメに出現した寄生虫である。天然ヒラメの貧血症の原因寄生虫であり、ヒラメ資源への影響が懸念されている。本研究では、本虫の起源を明らかにする目的で、アメリカ合衆国大西洋岸のサザンフラウンダー、サマーフラウンダー、チリ産ヒラメ1種からNeoheterobothrium属虫体を採集し、ヒラメのN.hirameと形態学的・分子生物学的に比較した。サザンフラウンダーから得られた虫体は、ヒラメに寄生するN.hirameと形態学的に差が認められず、また、18S rRNA領域、ITS1-5.8S RNA-ITS2領域、ミトコンドリアのCOI領域のいずれにおいても、塩基配列に大きな差は認められなかった。この結果から、サザンフラウンダーに寄生する虫体はN.hirameであり、本種が近年日本近海に侵入し、ヒラメを宿主として定着したものと結論付けられた。従来、サザンフラウンダーにはサマーフラウンダーを宿主とするN.affineが寄生するという報告があった。そのため、N.hirameがN.affineと同種である可能性も残っていた。そこで、本研究いおいて、サマーフラウンダーから得られたN.affine2虫体について、形態学的再記載とITS1領域の塩基配列の配列決定を行い、N.hirameと比較した。その結果、この2種は別種であることが強く示唆された。ただし、今回は得られたN.affineの数が少なく、今後に検討の余地が残された。チリ産のヒラメ類Hippoglossina macropsから得られたN.chilensisの形態ならびにITS1と28S rRNAの部分領域の塩基配列を決定した。その結果、本虫はN.hirame・N.affineと大きく異なり、これらとは別属である可能性が示唆された。
著者
片柳 亮太 菅原 俊治
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.76-85, 2011 (Released:2011-01-06)
参考文献数
8
被引用文献数
1

We propose an effective method of dynamic reorganization using reinforcement learning for the team formation in multi-agent systems (MAS). A task in MAS usually consists of a number of subtasks that require their own resources, and it has to be processed in the appropriate team whose agents have the sufficient resources. The resources required for tasks are often unknown \ extit{a priori} and it is also unknown whether their organization is appropriate to form teams for the given tasks or not. Therefore, their organization should be adopted according to the environment where agents are deployed. In this paper, we investigated how the structures of network and the number of tasks affect team formations of the agents. We will show that the utility and the success of the team formation is deeply affected by depth of the tree structure and number of tasks.
著者
兼松 明弘 清川 岳彦 筧 善行 竹内 秀雄
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.645-648, 1993-07

A case of multiple urinary stones in a patient with glycogen storage disease type 1 (GSD-1) is reported. In spite of the presence of hyperuricemia, these stones did not consist of uric acid, but mainly of calcium oxalate. Laboratory studies revealed distal renal tubular acidosis and hypocitraturia, but no significant abnormality in calcium metabolism. We discussed the mechanism of calcium stone formation in our case, and its prophylactic treatment by oral administration of citrate compound.
著者
谷口 幸治
出版者
日本口腔科学会
雑誌
日本口腔科学会雑誌 (ISSN:00290297)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.856-859, 1971-10
著者
朴澤 泰男
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

今年度の研究では、主に次の2つの成果が得られた。第一に、高校3年生を起点としたパネル調査のデータを用いて、大学進学選択の規定要因を分析し、成果をワーキングペーパーにまとめた。明らかになったのは、性別や家庭の所得、学力など個人属性がそれぞれ進学行動に影響していることのみならず、そうした要因をコントロールしても、出身県における大学教育供給のあり方の違いによって進学チャンスが異なることである。第二に、同じ調査データを用い、日本学生支援機構の第一種奨学金(予約採用)に申し込み、そして採用されるのはどのような家庭背景をもつ高校生なのかという問題を分析した。成果は2008年5月開催の日本高等教育学会大会で、「予約奨学金に採用されるのは誰か?」と題して発表する。奨学金が低所得層からの大学進学を促すか否かを検討するには、その前提として、必要な人に奨学金が届けられているかを検討しておく必要があるためである。分析の結果、次の四点が明らかになった。第一に、所得や学力をコントロールしてもなお、都道府県別奨学金採用枠の相対的に多い県に住んでいる高校生ほど、予約奨学金に申請する可能性が高い。しかしながら第二に、採用枠の多寡は、(申請の有無にかかわらず)予約奨学金の採否に影響を及ぼさない。第三に、採用枠の少ない県に住んでいる高校生ほど、予約採用制度のことを十分知らない傾向にある。したがって第四に、採用枠の少ない県ほど予約採用制度について十分知られておらず、そのため、(優れた学生で経済的理由により修学に困難がある者であっても)申請も行わない、といった家庭が少なくないことが示唆される。
著者
広瀬 啓吉 SHAIKH Mostata Al Masum SHAIKH Mostafa Al Masum
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

昨年度、文の情動の程度を数値として表し、そこに含まれる感情の指標を抽出することを進めた。本年度は、その手法を高度化するとともに、得られる指標を合成音声に反映させることを中心に研究を進め、下記成果を達成した。1.ニュース文について、動詞に着目して各句の肯定/否定の程度を評点として数値化した上で、順接、逆節といった句間の関係から、文全体の肯定/否定の程度を評点として与える手法を開発した。評点を用いて、英語音声合成フリーウェアのMARY音声合成システムの韻律を制御することを行った。お祭りのニュースなど、文内容が肯定的な場合は基本周波数/発話速度を上げ、事故のような、否定的な場合は、下げることを基本とする制御を行うことにより、文内容にふさわしい合成音声を得た。2.認知モデルの立場から、喜び、悲しみなどの感情を、肯定/否定、興奮/抑制といった軸によって定式化し、文内容に含まれる感性情報を抽出する手法を開発した。肯定/否定、興奮/抑制の値によりMARY音声合成システムの韻律を制御することを行い、合成音声の聴取実験により抽出した感情が適切に反映されることを確認した。3.音声からそこに含まれる情動/感性を抽出する手法について、音響部分の構築として、スペクトルの周波数と時間方向の変化の特徴と韻律的特徴を用い、Support Vector Machine等による判別を行うことで、定型文に限定されているが、肯定と否定の情動の判別率90%を達成した。4.人間が生活する際に発生する種々の音から、人間の活動を推定する手法(Life Logging)の開発を進めた。音声認識で使われているMFCCを特徴量としたHMMを用いることで良好な音認識が可能なことを示した。
著者
木村 茂喜
出版者
九州大学
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.587-601, 1998-01-21
著者
竹村 治雄 清川 清 間下 以大
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

学習システム自身がユーザ自身やユーザ周囲の状況(コンテキスト)を的確に把握し、コンテキストに応じて学習コンテンツの提示内容や提示手法を動的に変更することで移動中の連続した学習を支援する、適応的かつ連続的な学習支援システムを対象とした研究開発を行った。