著者
南 一誠
出版者
芝浦工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

居住者の個別性や生活の変化に対応できるように開発されたKEP方式による低中層集合住宅を対象に、入居後23年を経た実態を調査し、開発意図の実現や課題を明らかにして、今後の計画の参考にしようとする研究。調査対象は、住宅・都市整備公団が1982年〜1983年にかけて多摩ニュータウンに建設したエステート鶴牧3団地内の低中層分譲集合住宅で、低層21戸、中層93戸の調査を実施。入居直後の1983年と12年後の1995年に初見学らが行った調査データと比較しながら、生活の変化や間取り変更の実態を経年的に分析している。分析の結果、低層棟には竣工当初から住み続けている居住者が多く、中層棟では、KEP方式を採用していないタイプに長期居住者が多い。間取りの変更は、低層棟で約半数の住戸が、中層棟では約3割の住戸が実施している。これら低層棟と中層棟の違いは、住戸規模やメゾネットかフラットかの違いによるものと推測した。生活の変化への対応については、子どもが小さい頃は、子ども室を広くとり、成長に伴い個室に分割する変更が多く見られる。子どもが独立した後は、空いた部屋をそのままにしている例と隣接する部屋と一体にして広くする例がある。以上の実態から、若い世帯を対象とする計画では、はじめから細かく部屋を分けずに、必要に応じて段階的に問仕切ることができる構成が相応しいこと、また間仕切の変更は、居住者自らが行うことは少なく、遮音への不満も多いことから、居住者自身による変更を重視せず、遮音性に優れた構法で計画すべきであることを指摘した。また集合住宅のインフィルリフォームにおける住性能評価手法に関する研究として、民間分譲共同住宅(築後23年)を対象として、鉄骨系工業化住宅メーカーのインフィルシステムを用いて改修する現場の実態調査、環境性能測定を行った。この改修事例をモデルとして環境性能評価手法について検証した。
著者
藤原 源吉
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.130-139, 2004-04-01

我が国の民間航空機の整備に信頼性管理方式を導入して以来,筆者は幾多の航空機事故に直面し,さまざまな信頼性管理の問題点を経験した.当解説は,これらの問題点はどこにあったのかを示し,反省すべき点の幾つかを指摘した.
著者
國井 洋一 加藤 萌優美
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.182-191, 2009-12-15

本研究では回遊式庭園における園路景観の定量評価手法の開発を目的とし,江戸時代の代表的な大名庭園である小石川後楽園及び六義園を対象とし,園路の位置計測ならびに景観に対するフラクタル解析を行った。園路の位置計測では,両庭園に対する園路の平面位置および高さの変化を比較した。その結果,両庭園における高さ変化の標準偏差は小石川後楽園が±0.811m,六義園が±0.286mと小石川後楽園が特に園路の高さ変化に富んでいることが確認された。また,両庭園の園路長に対して同一の尺度にて比較を行った場合,両庭園の位置や高さの変化には類似性が見られた。さらに,フラクタル解析により両庭園における園路上の景観を評価した結果,園路の位置や高さと景観の変化とは関連性が高いことが確認され,位置計測およびフラクタル次元が日本庭園における景観に対する定量的評価の指標となる可能性を示唆した。
著者
中村 みどり
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

一次資料に基づき、外務省の東方文化事業に陶晶孫が関わってゆく過程、すなわち彼が日本留学時代に「特選留学生」に選抜されてから帰国後に上海自然科学研究所へ入所するまでのルートとその背景を明らかにすることができた。また戦前の中国人留学生たちの帰国後のネットワーク、およびその後の形跡を辿ることにより、陶が戦後国民政府から台湾帝国大学の接収に派遣されるまでの背景を考察し、陶晶孫研究に新たな視点を与えるに至った。
著者
臨海庵主人
出版者
社団法人日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.18, no.208, pp.63-67, 1906-02-15
著者
太皷地 武
出版者
社会保険研究所
雑誌
介護保険情報
巻号頁・発行日
vol.7, no.10, pp.56-59, 2007-01
著者
小清水 右一
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

1. マウスPB-カドヘリンのcDNAクローニングに成功し,その胎児期における発現様式の検討を行なった. Northern blotではPB-カドヘリンは胎生9日齢ごろよりその発現が認められ,胎生後期にかけてその発現量の上昇がみられた. より詳細な発現部位を明らかにするためin situ hybridizationを行なったところ,きわめて特異的なPB-カドヘリンの発現様式が確認できた. すなわちPB-カドヘリンは胎生10日齢では神経管と肢芽にのみシグナルが観察できる. 神経管における発現は腹側に限局して認められ,また将来小脳形成のオーガナイザー領域として機能する中脳-後脳境界領域(いわゆる峡脳)に特に強い発現が認められた. 一方,肢芽における発現はその後端,いわゆるZPA(zone of polalizing activity)領域に限局しており,その後,指骨軟骨凝集塊にその発現部位が変化する. PB-カドヘリンのこの様な発現様式は各種組織・器官の形成に関与する形態形成関連遺伝子,特にShhやFGFファミリー,wntファミリーの各種因子の発現とよく似ており,PB-カドヘリンの発現がこれらの因子により制御されている可能性を推測させるものである.2. マウスおよびヒトPB-カドヘリン遺伝子のゲノムクローニングを行った. マウスに関してはすでにほぼ全長に相当する領域の構造決定を済ましており,現在,マウスおよびヒトにおける染色体マッピングを行っている.3. dominant-ncgalivc型PB-カドヘリンを小脳形成領域に特異的に発現するトランスジェニックマウスの作製を試みた. その結果,すでに5系統のトランスジェニックマウスを得ることに成功しており,順次,その表現型の解析を進めている.
著者
酒本 勝之 田中館 昭博 野城 真理
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

多周波インピーダンスCT装置の製作と多周波インピーダンスCTの応用前に済ましておくべき生体電気特性の基礎的検討を以下の様に行った。1.多周波インピーダンスCT装置の作成:位相検出のため高精度の電子素子を用いた回路設計と試作を行った。その結果、振幅に関し周波数50kHzでの従来のインピーダンスCTで得られた精度と同等の結果が得られた。しかし、高周波数(約100kHz以上)で、浮遊容量の影響、周波数切り替え時での相互干渉が大きく、充分な位相検出の精度が上がらず、設計変更をする必要があった。2.細胞内外液量分布の変化と生体組織の電気インピーダンス変化との関係:細胞内外液量分布の変化と生体組織の電気インピーダンス変化との関係を流動血液を用い、理論と実験を持って検討した。また、有限要素法による数値解(ラプラスの方程式の解)によりシャドウイフェクトの影響を検討した。以上の結果,シャドウイフェクトの影響により、細胞外液抵抗の変化率は細胞外液量の変化率より小さいが、細胞内液抵抗の変化率は細胞内液量の変化率にほぼ等しいことが分かった。3.人工透析時の細胞内外液変動の検討:人工透析時に患者の下肢での電気インピーダンス変化の測定を行ない、人工透析中の細胞内外液の変動を裏付ける結果が得られた。特にショック時でのインピーダンス値は不定期で急激な変動が見られ、細胞内外液量に大きく急激な変動が見られることが示唆された。4.組織温度の変化による組織内血液量の変化の測定:電気インピーダンス法を用い筋組織温の変化による組織内血液量の変化を推定した。温度の上昇により血液量の増加が推測され,従来考えられている通りの結果が得られた。
著者
長沢 和俊 趙 靜 張 樹春 劉 文鎖 王 宗磊 李 肖 王 炳華 杉本 良 昆 彭生 荒川 正晴 櫻井 清彦 大橋 一章 岡内 三真 WAN Zong Lei WAN Bin Hoa ZHANG Shu Chun ZHAO Jung 劉 文すお 趙 静 昆 彭夫 劉 玉生 柳 洪亮 小澤 正人 于 志勇 李 宵 夏 訓誠 昆 彰生
出版者
早稲田大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

われわれは平成6年から同8年にかけて、トルファン地区の総合調査を実施した。調査はそれぞれ分担研究者の専門により、美術史学の大橋教授はベゼクリス、トスクチ仏洞を、故書学の荒川助教授はトルファン文書の研究を行なったが、とくに共通のフィールドとしては、交河故城西方の溝西墓の発掘調査に全力を傾注してきた。周知の通り交河故城は今から2200年前から広くこの地方を支配してきた車師前国の都城で、溝西墓にはその車師前国時代の墓と、5世紀の高昌国から唐代にかけて、この地方に進出した漢民族の古墓群があり、その総数は2000基以上もある。以下、溝西墓の発掘調査を中心に、3年間の研究実績を総括してみると、次の通りである。(1)平成6年度:初年度はまず全隊員により、トルファン地区のGeneral Surveyが行われた。即ち高昌故城、アスターナ、ベゼクリクチ仏洞、蘇交塔など、トルファンの主要史跡を踏査し、各遺跡の史的意義、トルファン文書との関連などを調べた。さらに共通のフィールドとしての交河故城西方の溝西墓については、頼るべき地図がないので、新疆測量部の協力により、溝西墓(東西約3km、南北約1km)全域の測量を開始した。この測量により平成6年度末までに全域の1/500地図が出来上った。また王炳華氏の選定により、溝西墓のほぼ中心部で4か所の高昌国時代の墓を試掘した。その際、田中地質コンサルタントKKの協力を得て、遺跡の電磁波探査、気球による航空測量などを行なった。こうした物理探査は中国とくに新疆では最初の試みで、多くの考古学関係者の関心を集めた。この年に発掘した第2号墓からは墓碑が出土し、この墓は某氏の妻氾氏の墓で、589年に没したことが確認された。これによって溝西墓は、交河城にいた高昌貴族(6〜8世紀)と唐人の墓であることが分り、今後発掘地域を拡大することにより、アスターナと同じようなミイラ、古文書、絹織物等、副葬品の出土が期待された。(2)平成7年度:2年目には西北部の高昌国の豪族、麹氏と張氏の螢城から2か所、中央部のマウンドのない墓(三年物理探査で発見)2か所、南部の唐代の墓と思われるもの5墓計9基の墓を発掘、2個の墓誌、未盗掘の墓1基を発掘した。発掘後、墓の中央にトレンチを入れ、墓の構造も検討した。また田中地質の気球により前年度失敗した溝西墓、交河故城の空中撮影に成功した。今年度は9基の墓を発掘したが、ここは盗墓が盛んでほとんど盗掘されており、かつ墓室内の湿度・気温が意外に高く、有機物やめぼしい遺物は、ほとんど出土しないことが明らかになった。(3)平成8年度:そこで今年度はまず次の基礎調査の達成をめざした。(1)遺跡全域の1/500地形図の作成。…これは平成6-7年度に完成した。(2)250m四方の遺跡地図の完成…本年度の夏、不足分を補って完成。(3)全古墓の実測(Numbering)とデータベース化…実測は今夏終り、現在早稲田大学電算室でデータベース化しつつある。ついで本年度の発掘調査は、遺物の出そうな高い地域の墓4か所で8基の墓を発掘した。しかしこれらの高い地区の墓はいずれもすっかり盗掘されていて、遺骨のほか何も残っていなかった。そこで発掘主任の岡内教授は発想の転換をはかり、車師前国期の墓を発見し、ここを発掘した。その結果、そこから黄金の王冠、黄金の指輪、ブロ-チ、南海産の貝符、星雲文鏡が出土し、近くの17号墓からは黄金の髪飾り、トルコ石の首飾り、黄金製のバックルや脚飾りなどが出土し、車師人の王侯・貴族の黄金装飾品がワンセットで出土し、併出した星雲文鏡や五銖銭から、時代も前一世紀と特定でき、王炳華所長も「これだけ金製品がまとまって出土したことは新疆はもとより全中国でも珍しく、おそらく今年度の中国考古学で最も重要な発掘の1つ」と評価された。これらの出土品のうち王冠は明らかにスキタイ・サウロマタイ風で、ブロ-チや指輪は、西アジア工芸品の影響をましており、バックルや足飾りはモンゴル高原から青銅の類似品が出ており、貝符は南海産、漢鏡と五銖銭は中国の影響をまし、当時のトルファンが東西文明の十字路にあったことを示している。又殉葬馬や鉄鏃、轡の出土は車師が騎馬民族であることを示している。