著者
竹内 保
出版者
国立精神・神経センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

胸腺内T細胞分化に関与する胸腺上皮細胞表面蛋白質、HS9を過剰発現するトランスジェニックマウス3系統を作出した。HS9は生理的には胸腺外側皮質に発現する。これに対して、いずれの系統のトランスジェニックマウスでもHS9は胸腺上皮全般に発現していた。トランスジェニックマウスには外見上の奇形および病変は認められなかったが、胸腺細胞数は1.2-1.8倍に増加していた。主にCD4CD8陽性でTCR陽性の分画が増加していた。この結果はHS9がCD4-CD8-(DN)からCD4+CD8+(DP)への胸腺T細胞分化を促すという従来の知見を裏付けるものである。さらに、これらトランスジェニックマウスはsplenomegalyを呈しており末梢の免疫異常を伴うことが示唆される。ConAによるT細胞刺激による反応性が低下していることが明らかになった。また、本年度はノックアウトマウスの為にベクターを構成した。129マウス用にHS9をコードするgenomicDNAを単離してエクソン1-3の置換型タイプのベクターを開発した。
著者
桑野 栄治
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、対象時期を14世紀後半の高麗(918〜1392年)末期よりほぼ15世紀全般に相当する朝鮮王朝(李朝。1392〜1897年)初期までの約150年間とし、正朝(元旦)・冬至と聖節(明の皇帝の誕生日)に朝鮮の王都漢城(現ソウル)で実施された対明遥拝儀礼(望闕礼という)の制度的変遷とその実態を『高麗史』『朝鮮王朝実録』など官撰史料を中心に追究したものである。その成果の概要は以下の通りである。1 高麗国王が明の皇帝を遥拝する儀礼は、明の太祖洪武帝の即位から4年を経た恭愍王21年(1372)の冬至に王都開城で初めて実施された。これこそ朝鮮初期の歴代国王が実施した望闕礼の原型である。朝鮮国王はみずからが北京に赴いて明の皇帝に拝謁することに代え、朝鮮の王宮にて王世子・文武官僚とともに望闕礼を毎年実施した。この儀礼は朝鮮国王にとっては明中心の冊封体制下における外交儀礼であり、君臣間の儀礼的関係を官僚の前で示す装置としても機能した。2 ところが、クーデターによって王位を簒奪した世祖は、治世年間の後半期になると望闕礼を放棄した。その一方で世祖は中国の皇帝のみが行いうる祭天儀礼(圜丘壇祭祀という)を王都の南郊で実施しており、朝鮮初期の儒者官僚の対明観と皇帝観を覆す異例の行動であった。冊封体制に対する挑戦ともいえる。3 朝鮮国王が王宮で望闕礼を終了すると、ひきつづぎ朝賀礼と会礼宴が実施された。その会場には受職女真人をはじめ日本・琉球からも多様な使節が参席した。彼らはいわば「朝貢分子」であり、その代表格が朝鮮王朝の諸侯を自称する対馬宗氏である。朝鮮政府が北方の女真人を厚遇した背景には辺境の防備という現実的な軍事問題があり、南方の倭窟対策として倭人を撫接する外交政策と相通ずる。
著者
金藤 栄孝 二木 厚吉
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.2124-2137, 2004-09-15

Dijkstraのgoto文有害説とそれに引き続く構造的プログラミングの提唱以降,goto文の使用に関する問題は永く議論された.goto文の使用法に関し理論的裏付けを持つ研究としては,逐次的プログラムでの任意の制御フローは順次接続・条件分岐・反復の3基本構追のみで表現可能であるという結果に基づくMillsらのgoto文排斥論以外は皆無である. Dijkstra本来の正しさを示しやすいプログラムを害くための構造化という立場一つまりプログラム検証論の立場-からのgoto文使用の是非は考察されていない.本論文では検証手段としてのHoare論理に基づき有限状態機械モデルに基づくプログラミングでのgoto文の使用を検討する.その結果,状態をラベルで表し状態遷移をgoto文での飛び越しで行うプログラミングスタイルが,状態を表す変数を追加しgoto文を除いたプログラミングスタイルと比べ. Hoare論理による検証での表明が簡単で自然な形となり機械的検証の時間的コストも少ない.ゆえにプログラムの正しさの示しやすさという観点からは有限状態機械モデルに基づくプログラミングでの状態変数導入によるgoto文除去は有害でありgoto文を用いたスタイルの方が望ましいことを示す. : There have been a vast amount of debates on the issue on the use of goto statements initiated by the famous Dijkstra's Letter to the Editor of CACM and his proposal of "Structured Programming". Except for the goto-less programming style by Mills based on the fact that any control flows of sequential programs can be expressed by the sequential composition, the conditional (if-then-else) and the indefinite loop (while), there have not been, however, any scientific accounts on this issue from the Dijkstra's own viewpoint of verifiability of programs. In this work, we reconsider this issue from the viewpoint of Hoare Logic, the most standard framework for correctness-proving, and we see that the use of goto's for expressing state transitions in programs designed with the finite state machine modelling can be justified from the Hoare Logic viewpoint by showing the fact that constructing the proof-outline of a program using goto's for this purpose is easier than constructing the proof-outline of a Mills-style program without goto by introducing a new variable.
著者
加藤 裕教 根岸 学
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

がん細胞の浸潤・転移に深く関連のある細胞接着や運動に関して、Rhoファミリーの低分子量G蛋白質の関与がこれまでにも数多く報告されている。最近Dock180に代表される、新しいタイプのRhoファミリーG蛋白質活性化因子(Dockファミリー)の存在が明らかになった。本研究では、我々が新しく見出したRhoG-ELMOを介したDockファミリーの活性制御メカニズムが、乳癌細胞の浸潤に促進的に関与していることを明らかにした。我々は始めにRhoGの上流について検討を行い、RhoGを活性化するGEFとしてEphexinファミリーに属するEphexin4を見いだした。Ephexin4は乳癌細胞において発現が見られ、乳癌細胞の浸潤性と深く関係があるとされるEphA2と細胞内で結合していることを見いだした。さらにショートヘアピンRNAにより内在性のEphexin4をノックダウンさせると乳癌細胞の運動性が抑制され、ノックダウン細胞にEphexin4もしくは常時活性型RhoGを発現させることでそれは細胞運動の抑制が解除された。Ephexin4によるRhoG活性化の下流では、ELMO2-Dock4複合体が関与していることも明らかとなった。以上の結果から、Ephexin4によるRhoGを介したDock4の活性化という新しいシグナル伝達経路を見いだし、この経路が乳癌細胞の浸潤性の増強に深く関わっていることが考えられた。
著者
山本 安夫 櫻木 弘之
出版者
都留文科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

研究代表者(山本)と海外協力研究者Th.A.Rijkenによって中間子論的SU3不変模型Extended Soft Core model (ESC)が開発された。この模型においては、従来のeffective scalar mesonsに代わってtwo meson exchange (pair term)の寄与が直接取り入れられ、極めて良い精度でNN散乱位相差のデータを再現すると同時に、ハイパー核のデータとの全体的に整合する。本研究において、ESC模型より導かれるG行列相互用G_<XX>(r;ρ,E)を用いたfolding modelによる核-核散乱の解析が大きく進展した。特にESC模型で核物質の飽和性を保証するために取り込まれている3体斥力の効果が系統的に現れることが示された。ESC模型のSU3不変性を踏まえ、G行列folding modelはハイペロン-核間相互作用の解析に適用された。旧来のESC模型には実験が示唆する強いΣ-核間斥力が出せない問題があったが、今年度に完成したESC08においては、クォーク・クラスター模型で与えられるPauli forbidden statesの影響を現象論的に取り入れることでその問題が解決された。N-核の場合と同様の枠組で得られるΣ-核相互作用を用いてΣ-核散乱の微分断面積を計算し、得られる角度分布のパターンがΣN相互作用の特徴を反映することを示した。また準自由(π^-,K^+)反応の強度関数を計算し、ESC08より導かれる斥力的Σ-核相互作用の結果が、引力的相互作用による結果よりも実験データの現象論的解析の結果とよく整合することを示した。以上の成果はHyp-X国際会議(2009年9月、東海村)において発表された。
著者
杉田 純一 高橋 時市郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.13, pp.91-96, 2007-02-20
被引用文献数
6

点描画は線ではなく、点の集合や非常に短いタッチで表現する絵画技法の1つであり、新印象派の画家達によって確立された。新印象派の点描画の最大の特徴は、鮮やかな色を並置する筆触分割により、網膜上で加法混色を起こす、視覚混合という光学現象を巧みに利用していることにある。さらに、補色を並置させることにより、非常に鮮やかな色彩の効果を生むことができる補色対比も工夫している。本稿では、補色対比を考慮した筆触分割をモデル化し、入力画像から点描画風の画像を生成する手法を提案する。実験の結果、良好な結果を得たので報告する。We have developed an image generation method based on divided brushstrokes taking into account of complementary color contrast. This technique is called "pointillism" , established by neo-impressionism artists. Pointillism expresses an image by huge numbers of colored points instead of line strokes. Each point is painted by pure color or its complementary color of corresponding pixel color of input image. Several experimental results verified the method generated pointillistic images well.
著者
清水 嘉子 関水 しのぶ 遠藤 俊子 落合 富美江
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.367-375, 2010-07

本研究では,母親や末子の年齢,子どもの数といった属性が,母親の肯定的情動としての育児幸福感に影響があるかどうか,母親の就労状況別(フルタイム群,パートタイム群,家事従事群)に比較し検討する。参加者は,764名の0〜6歳の子どもをもつ母親である(フルタイム219名,パートタイム234名,専業主婦311名)。育児幸福感の測定には清水らが開発したChildcare Happiness Scale(以後CHSとする)用いた。母親年齢,子ども数,末子年齢を独立変数,8つの育児幸福感の下位尺度得点を従属変数としたモデルを,パス解析で多母集団同時比較を行い検討した。その結果,すべての群において子ども数は,CHSの8つの下位尺度得点に全く影響を与えなかったが,しかし末子年齢は,フルタイム群において「親としての成長」の得点に正の影響,そして専業主婦では負の影響があり,一方パートタイム群では影響がなかった。フルタイム群において,母親年齢は「子どもの成長」尺度得点に正の影響を与えたが,他の群においては影響がみられなかった。この結果より,フルタイムで働く母親にとって,母親や末子の年齢が増すことは「親としての成長」や「子どもの成長」の育児幸福感を高めることが示唆された。さらに,就労形態の異なる母親に対する育児教室における支援について検討した。

1 0 0 0 OA 物理階梯

著者
片山淳吉 編
出版者
金港堂
巻号頁・発行日
vol.上巻, 1880
著者
Mayu Kuroki Shinichi Ookawara Kohei Ogawa
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
JOURNAL OF CHEMICAL ENGINEERING OF JAPAN (ISSN:00219592)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement., pp.s73-s78, 2009-12-30 (Released:2009-12-30)
参考文献数
18
被引用文献数
39 56

A novel high-fidelity CFD model is proposed for the process optimization and intensification of methane steam reforming in a packed bed reactor. The random packing of spherical particles is constituted by simulating a dumping of particles into the annular reactor by a commercial code based on discrete element method (DEM). The complex spatial geometry between hundreds of particles is created associated with a developed interparticle bridge method, which eliminates the interparticle and particle–wall contact regions by assuming that the small regions are stagnant and would not affect the reactor behavior. The conservation equations of mass, momentum, energy and chemical species are fully solved by employing a commercial CFD code based on finite volume method. A newly coded subroutine is incorporated into the CFD code to evaluate the reaction rates according to the species partial pressures and temperature on each surface cell covering the particles. The values of reaction, equilibrium and adsorption constants are specified based on the experiments in the literature. According to the reaction rates, the mass and heat sources are given to each fluid cell on the surface cell. It is verified that the developed CFD model is capable of predicting the distributions of species and temperature microscopically as well as macroscopically for methane steam reforming. The present DEM–CFD procedure enables one to investigate the behavior of packed bed reactor in detail once the catalyst is characterized in a conventional way. Therefore it would become a powerful tool to optimize and intensify any process in a packed bed reactor where the plug flow assumption is invalid.
著者
アブディラー アグス バニ 橋本 直己 高橋 裕樹 中嶋 正之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.201, pp.73-80, 2001-07-12

従来は, 高価なグラフィクスワークステーションが主体であったコンテンツ制作の分野においても, 高性能かつ安価になった, パーソナルコンピュータが使用されるようになり, それを百台規模で結合した, PCクラスターは今後有望な映像制作システムとなると考えられる.本報告では, オープンソースであるLINUXおよびBMRTを組み合わせて, 安価なCG映像制作のためのシステムを紹介する.特に4台のPCを同時に使用して, 9枚のテスト画像およびアニメーションテストデータに対して, 高速にレンダリング処理を行った効果について述べる.特に, 画像を2×2, 4×2, 4×3, 4×4に分割した場合の4台のPCによるクラスターを用いた分割レンダリング処理時間の比較結果について示し, PCクラスターがCGプロダクションに有効であることを示す.
著者
行田 弘一 ニューエン ナム ホアン 岡田 和則 滝澤 修
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.12, pp.1-9, 2010-03

The wireless ad hoc network is expected to be used as an alternative of the existing mobile communication network to make users communicate securely in a so-called emergency when a large-scale disaster occurs. In this paper, we propose a Real City model which is more practical as a user terminal movement model in the emergency case. Then we analyze the performance of wireless ad hoc networks in the Real City model by using the network simulator. From the simulation results, it is clarified that changing die routing protocol attribute value and increasing the number of mobile terminals that contributes to the communication route formation are necessary to improve the ad hoc network performance.
著者
佐藤 公則 渡邊 睦 鹿嶋 雅之
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究はドアノブを握るという自然な動作の中で取得しやすい掌紋を個人認証に用いることを提案した.認証手法としては回転や移動,拡縮,明度変化にロバストであるSIFT特徴を用いている.ドアノブを握る動作の中で取得される1枚の画像のみでは握りの強弱により歪みが発生する.そこで,ドアノブを握る動作の動画を用い,複数の掌紋画像を時系列に時間幅を持たせて比較することを提案し,掌紋の歪みを考慮した認証を行うシステムを構築した.その結果,等価エラー率EERは3.16%となった.また他人受入率が初めて0%となる箇所を見た場合,本人認証率は93.7%となった.