著者
田中 庸裕 宍戸 哲也
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

Nb205上に1-ペンタノールを吸着させ光照射したところ,77Kにおいてはアルコキシド種から水素原子が外れたアルケニルラジカルに同定されるESRが得られた。これは,アルコキシドからの脱水素によるアルデヒドは室温では速やかに起こるが,77Kではアルケニルラジカルが準安定状態で存在することを表す。Cu/Nb205触媒に1級及び2級アルコールを吸着させ77Kにて光照射を行いESRスペクトル測定を行ったところアルコキシド由来のラジカルに帰属されるシグナルは観測されなかった。一方,酸化反応が進行しない3級アルコール(tBuOH)を吸着させた場合はいずれの触媒においてもメチルラジカルに帰属されるシグナルが観測された。これは,光励起そのものはいずれの触媒においても同様に進行するが,Cu/Nb205上では光励起種からカルボニル化合物への移行が速いために77Kにおいても光励起種をESRによって捕捉出来なかったことを示唆している。種々の銅種とシクロヘキサノンとの相互作用についてFT-IRによって検討したところ,光生成したシクロヘキサノンはCu(I)上に生成することが分かった。また,軽い真空排気によりこの吸着シクロヘキサノンは容易に脱離した。銅の役割は,1)反応中に生成する電子を受容し電荷分離を促進すること,2)アルコキシドからの脱水素を促進すること,3)シクロヘキサノンの脱離を促進することが考えられる。Nb205上での反応速度解析の結果は,生成物であるシクロヘキサノンの脱離が律速段階であることであるが,Cu/Nb205上においては,光吸収が律速段階となっている。本触媒上においては,銅は,Cu(II)→Cu(I)のredoxを通して,光触媒反応を促進している。この場合,Nb205はアルコキシドと表面錯体を形成し,電子-正孔源となっているものと考えられる。
著者
許斐 亜紀 横井 克彦
出版者
愛知学泉大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

造血機構における亜鉛の作用メカニズムは不明である。そこで、亜鉛欠乏が腎臓中エリスロポエチン(EPO)濃度に与える影響について検討した。Sprague-Dawley系3週齢雄ラットを対照群(CON)、亜鉛欠乏群(ZD)、Pair-Fed群(PF)の3群に振り分け4週間飼育した。データはFisherのPLSDで統計処理を行い、有意水準は5%とした。血中EPO濃度はCONに比べZDが有意に低値を示し、PFが低い傾向を示した。腎臓皮質中EPO濃度はZDがPFに比べ低値を示し、有意差は見られなかった。PFはCONに比べ高い値を示した。腎臓髄質中EPO濃度には差は見られなかった。
著者
山越 智
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

サイトカインLECT2の関節リウマチにおける抑制作用を解析した。関節炎に関与しLECT2受容体を発現する細胞を同定した。滑膜細胞はLECT2受容体を発現していた。そこで、滑膜細胞の増殖、関節炎に関与する炎症性サイトカイン等各種遺伝子発現についてLECT2添加による影響を調べた。LECT2遺伝子欠損マウスを用いたマウス関節炎モデルにおいて、主要に働く炎症性サイトカインに支配される遺伝子を見出した。
著者
山本 博樹
出版者
大阪学院大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

情報化社会では、受け手に情報を「分かりやすく」伝達するにはどうすればよいかという問題が重視される。同時に、このような社会では、映像情報の重要性が高いため、映像情報をいかに「分かりやすく」伝えるかを考察することが急務である。これまでの研究から、理解を支援する画面構成については、受け手の認知過程に適合するような画面構成が重要であると考えられてきた。すなわち、物語を題材とした場合、主人公の目標構造を構造化するように画面を構成することが、受け手の理解を支援することが示されている。主人公の行為が物語の最終的な問題解決にどのように結びついているかは行為の重要度と呼ばれ、階層化されているが、階層の高い行為は基本動作であり、基本動作を踏まえた画面構成が物語の理解を支援すると考えられている。そこで、本研究では、基本動作を踏まえた画面構成が物語理解の構成過程に及ぼす効果について実験研究を行った。実験では、幼稚園を被験者にし、3群を構成した。課題として簡単な出来事について数枚からなる絵画物語を作った。それらは内容が同じであっても、基本動作として重要度の高い動作が描かれた基本動作条件と基本動作として重要度の低い動作が描かれた非基本動作条件、ならびに規範的な動作が描かれた規範動作条件の三つであった。理解テストとして、絵画をランダムな順序で提示し、それらが正順になるように配列させた。各条件が理解の構成過程にどのような効果を及ぼしているかを分析するために、絵画配列行動を下位行動を分析し、また、構成結果がどれくらい正順と相関しているかについても分析を行った。以上の結果から、重要度の高い基本動作に対応させて画面を構成することが理解を支援することが示された。
著者
名倉 秀子 大越 ひろ 茂木 美智子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.533-542, 2006-08-15
被引用文献数
2

A questionnaire survey was conducted among 2,798 university and college students to investigate their eating habits during the first three days of the New Year from 1986 to 2005. The percentage of foods and dishes eating-out during the 20-year period varied between 7.3% and 16.5%, and this percentage was gradually increasing. There was an exponential correlation between 4 selected years and the rate of increase in eating-out. The frequency of eating-out special dishes for the New Year was low during the first three days of the New Year, while the frequency of eating daily staple food, main and side dishes was high. The reasons for eating-out could be classified into three clusters: 1. to celebrate the New Year custom; 2. to celebrate the New Year by eating; 3. function of a part-time job.
著者
伊藤 孝 熊江 隆
出版者
日本体育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本実験は、某大学の陸上競技部に所属し、平成7年度の箱根駅伝メンバーとして選抜された選手を対象とした。夏期合宿は、北海道を中心として平成7年7月23日〜8月26日の約1ケ月間行われた。また、合宿期間中の走行距離は、通常の練習の約2倍程度であった。採血は、合宿前、合宿中、合宿後の計3回、早朝空腹時に肘正静脈より行った。好中球の分離は、合宿中に行った採血に関しても実験室まで運搬してから行った。したがって、この際の移動時間による好中球機能の変化を考慮し、事前に採血直後、6時間後さらに12時間後における好中球機能の変化を比較検討した。その結果から、採血後6時間経過してから分離を始めても、被験者間における好中球活性の相互比較が可能なことが確かめられたため、3測定とも6時間後に好中球分離を行うこととした。測定に関しては、好中球機能の指標として活性酸素産生を微弱光画像解析システム(ルミボックスH-1000、マイクロテック・ニチオン社)を用い、オプソニン化ザイモザンを刺激物質としてルシゲニンおよびルミノール依存性化学発光法にて行った。活性酸素産生能の評価方法は、活性酸素の最大産生量を示す最大発光量(Peak Height)、および異物認識から活性酸素の最大産生量に至るまでの平均時間とされる最大発光時間(Peak Time)を指標として行った。今回の結果から合宿中においてはPeak Heightが高く、またPeak Timeも早くなり、活性酸素産生能が活性化する傾向が認められた。しかしながら、合宿後においてはPeak Heightは合宿前の値より若干低値であったことから、更に合宿中の活性酸産生能の活性化の原因を検討する必要があると思われる。本研究において得られた他の数値については現在検討中であり、今後さらに分析を進め検討を行う予定である。
著者
宮良 高弘
出版者
札幌大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

泉・蒲生らは、昭和25年に門別村の富浜、門別、賀張地区の漁業世帯の調査を行い、「北海道移住漁民の人類学的研究(一)-沙流郡門別村における漁村の成立とその生活-」において次のような結果を発表している。(1)漁民人口の50%がすでに三世によって占められている。(2)夫婦の出身県は青森、秋田、岩手、宮城、新潟、富山、石川、福井、三重、兵庫、広島、山口の12県に及び、父母の出身県が同一である夫婦が49.6%、夫婦の出身県が同一である者は17.5%である。(3)「世帯主夫婦とその子」の割合は83%、「その他の直系親族」は12%、「傍系親族」5%であるなどが報告されている。平成7年度の調査では漁村部に限らず、門別町の大部分を占める農村部にも及んだ。漁村部への和人の移住は、内陸部の農村よりも早い。それとの関連で、(1)の漁村部は昭和25年現在で三世であったが、農村部では平成現在で三世代目・四世代目に当たっている。(2)の漁村部は歴史が長く、12県に及ぶ移住者の血縁的混交が繰り返され、東北文化に彩られた函館地方との船による交易が行われる中で、文化の画一化が一層進展している。それに対して、農村部へは明治30年代に越中団体や越後団体は豊郷へ、石川団体は清畠へ、兵庫県淡路島出身者は庫富や幾千世へ多く入地し、移住当初は住み分ける傾向がみられる。農村部における先祖が共通する母村内婚率は、明治末期から大正生まれの移住二世代目の結婚期である戦前までは同県人同士が多い。産業構造の変化にもよるが、(3)との比較において、平成7年度の地域全体の家族形態は、単身世帯が35.6%、夫婦家族が22.5%、夫婦と未婚子が35.6%、直系家族が6%、複合家族が0.1%である。単身世帯は富川や本町などの市街地や牧夫を雇って軽種馬を営む平賀、福満、旭町、豊郷などに多い。夫婦家族は酪農、農業、漁業を営んでいる地域に多い。以上から、内陸農村部においては母村の生活文化は、戦後の昭和30年代まで家ごとに母村の習俗が受け継がれている。例えば、年中行事においては正月のオトシサン、雑煮の形態、七草の叩き菜、農業の予祝行事である地祭り、小正月の小豆粥、善哉などがみられる。更に、民間信仰では四国や淡路地方にみられる地神信仰が顕著であり、春秋の社日に五角形の石に刻んだ地神塔を祀っている。
著者
片長 敦子
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

非退化な斉次多項式で定義された超曲面単純K3特異点のリンクとして現れない実5次元多様体が,非退化な斉次多項式でない多項式で定義された超曲面単純K3特異点のリンクとして無限個実現できた.さらに,非退化な斉次多項式で定義された超曲面単純K3特異点のリンクの微分同相型は,例外集合として現れる正規K3曲面の特異点の構造と関連していることを明らかにした.また,ある複素3次元超曲面孤立特異点の実5次元リンクの実7次元球面へのはめ込みを,ある条件のもとで正則ホモトピーに関する分類を行った.
著者
中瀬古 哲
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

就学前 5 歳児の体育課業並びに課業づくりに3年間継続的に参加した(述べ7施設、総計 160回)。そこで、身体運動文化(運動遊び)の特質解明と類型化を試みた。その結果、以下のことが示唆された。(1)就学前に培うべき基礎的技術能力は、(1)姿勢制御、(2)物や人の動きに対する予測・判断、(3)スピード・リズムのコントロール、の三つに分類できる。(2)身体運動文化(運動遊び)は、幼児の生活課題・発達課題を含みんこんだ総合的な活動であり、それらを踏まえ内容化した学習課題を構想する必要がある。
著者
高尾 将幸
出版者
東洋大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究は第5回国民大会(愛知国体)を事例に、スポーツが荒廃した都市空間にどのような影響を与え、同時にその関係がその後のスポーツのあり方にどのようなインパクトを与えたのか、その一端を解明する作業に取り組んだ。
著者
湯川 聰子 湯川 夏子
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

この研究の最終目標は小学校の低・中学年の生活科と総合学習カリキュラムにおいて実施可能な,家庭科的視点からの教育内容を提案することと設定していた.新学習指導要領の実施に向けて,過重な負担感に悩む小学校教員を支援する意味をこめて,この研究は出発したのである.すなわち,低・中学年で無理なくできる調理活動を提示し,教員の指導可能性の予測が立てられるような資料を提供することである.この研究で明らかになったことは次の3項目に要約される.i 小学校教員自身の関心・経験と提案に対する反応の調査.ii 低・中学年児童の食生活に関する関心と,調理技能の現状把握 iii 実施可能な低・中学年向けレシピを提案し,授業化する試み.iは第2章の小学校教員対象の調査によって,現状を明らかにし,意見を知ることができた.iiは第1章の小学生対象の調査によって明快な回答が出たといえる.iiiは第3章,第4章に述べる実践研究によって,部分的にではあるが低学年向けの「お菓子つくり」メニューの提案,「国際理解」のためのレシピ提案という結果を,実験授業の協力を得て答えを,提案としてまとめることができた.ホームページでの公開を考えていたが,年度内にこの計画を実行することはできなかった.継続的な研究展開の中で教育現場との相互の情報交換を行い,実践支援の方向を展開していくことを考えている.