著者
林 泉忠
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は研究代表者が提起した「辺境東アジア」という東アジア研究の新たな地域概念(『国際政治』135号掲載)に基づき、「中心」と「辺境」、「近代」と「前近代」が交錯し衝突する過程において現出した「辺境東アジア」地域のダイナミックなアイデンティティ・ポリティクスを解明するため、17年から19年まで三年連続、沖縄、台湾、香港そしてマカオにおいて、住民のアイデンティティ構造・特徴・要因を中心に、国際調査を行った。この四地域においてアイデンティティに関する国際調査は初めてとされる。調査は、琉球大学のほか、香港大学、台湾政治大学の専門調査機関の協力を得て、毎年の11月に、同時に、18歳以上の現地住民を対象に、それぞれ20以上の設問(一部は共通質問)を設け、電話調査を行い、それぞれ1000以上の有効サンプルを集めた。調査から得た主な所見は、1.帰属意識の構造に関し、四地域は、共に、複合的アイデンティティをもつ社会である。2.地元社会のへ愛着度やエスニック・アイデンティティについては、四地域は共に強いが、沖縄の方が特に強い。3.自立意識やナショナル・アイデンティティに関し、台湾が最も高く、ほかの三地域に広い差を付けた。4.若い年齢層は、他年齢層よりアイデンティティの複合性と流動性が高い、などである。調査結果に基づいた分析は、アジア政経学会、台湾政治学会、ハーバード大学フェアバンク研究センターおよびイエンチン研究所、北京大学、復旦大学、台湾大学、台湾交通大学をはじめ、日本、台湾、香港、韓国、インド、アメリカ、スイスなどの20以上の学術機関において発表を行った。また、書籍(共著)5冊、学術論文8本、新聞・雑誌記事20本を日本語、中国語、英語で出版した。なお、社会に報告するため、毎年、調査を行った翌月に、沖縄、台湾、香港、マカオ四地域の主要メディアに公表し、高い注目を受け、反響を及んだ。
著者
笠間 梧園 [カサマ ゴエン]
出版者
第五高等中學龍南會
雑誌
龍南會雜誌
巻号頁・発行日
vol.3, pp.16-17, 1892-01-25
著者
若松 寛 橋本 伸也 渡邊 伸 渡辺 信一郎 河村 貞枝
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

(1)本研究は、多様な生産形態・民族・言語・宗教・文化を基礎に政治的統合を達成した国家を帝国システムとして捉え、システム内部の諸要素の比較史的検討を通じて、世界史上における多様な政治的統合のあり方を解明すると共に、国家そのものの現在的意味を問いなおすことを目的とし、3年間共同研究を行ってきた。その成果は次のとおりである。(2)若松寛は、清朝による青海地方平定の後、ここに設置された旗の数に関し、当初の29旗が1746-1806年の期間のみ30旗あったことを解明した。(3)河村貞枝は、ヴィクトリア期からエドワード期にかけての帝国体制・帝国文化の中で形成されたイギリスの「第一波」フェミニズム運動をとりあげ、その本質が帝国主義の問題を中心に内包するものであったことを指摘し、インド女性との関係、ボ-ア戦争に対する姿勢、国際的なフェミニズムの連携に果たした役割などを考察した。(4)渡辺信一郎は、『大唐開元礼』に規定される唐王朝の元旦儀礼の訳注をおこない、元旦儀礼をつうじて象徴的に表現される皇帝と中央官僚との君臣関係、中央政府と地方政府及び諸外国・異民族との政治的従属関係の存在を指摘し、それらを唐王朝の帝国構造として把握した。(5)渡邊伸は、神聖ローマ帝国に関する近年の二つの研究動向に注目した。その一つは、帝国を「平和」のための法共同体とするものであり、いま一つは皇帝を中心とする人的結合関係から帝国をとらえようとする。そして事例考察から帝国システムの解明に後者の方向が有効と指摘した。(6)橋本伸也は、3次にわたるポーランド分割によってロシア領となった西部諸県の18世紀以来の教育的伝統を踏まえたうえで、19世紀前半のポーランド・シラフタを対象とした帝国の民族教育政策の転回について考察した。
著者
橘 秀樹 押野 康夫 山本 貢平 桑原 雅夫 上野 佳奈子 坂本 慎一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成10年に改正された「騒音に係る環境基準」では、環境騒音の状況に関して従来の点的把握から面的把握に変更され、評価指標としても騒音レベルの中央値(L50)から国際的に広く用いられている等価騒音レベル(LAeq)に変更された.また「環境影響評価法」でも大規模開発の際には環境の変化を正確に把握することが必須となった.このような背景の下に、本研究では、騒音のエネルギー的平均値を意味する等価騒音レベル(LAeq)によって環境騒音の状況を正確に把握あるいは予測し、その結果を客観的な形で表示する手法を確立することを目的として、以下の研究を行った。(1)道路交通騒音の予測・モニタリングに関する検討わが国における統一的な道路交通騒音予測モデルであるASJ RTN-Model 1998の内容をさらに充実するための基礎的研究として、大型車の影響や都市部における垂直方向の騒音分布に関する実測調査や、掘割・半地下道路からの騒音伝搬の計算手法の簡易化、きわめて複雑な特性を有する交差点周辺の騒音予測手法の開発などを行った。また、騒音対策として多用されている遮音壁の挿入損失の数値解析手法の検討や建物群による騒音低減効果などについても、検討を行った。(2)騒音伝搬特性の測定法に関する検討屋外では、騒音の伝搬に対して風などの気象条件による影響が大きく、またそれによって伝搬特性が時間的に変化する問題(時変性)が大きな問題となる。このような環境下において騒音の伝搬特性を精度よく測定する方法について、時間伸張(TSP)信号を用いる手法などについて、理論的・実験的検討を行った。(3)建設工事騒音の予測に関する検討最近では、各種の建設工事に伴って発生される騒音についても、環境アセスメントの対象となってきており、この種の騒音の予測手法を開発する必要がある。そこでそのための基礎的検討として、時間変動特性がきわめて多様である建設工事用機械類を対象とした騒音源データの測定・表示方法、LAeqを基本評価量とする騒音予測計算法の基本スキームについて検討を行った。

1 0 0 0 IR 歌三首 : 文苑

著者
杉山 富槌 スギヤマ トミツチ Sugiyama Tomitsuchi
出版者
第五高等中學校龍南會
雑誌
龍南會雜誌
巻号頁・発行日
vol.13, pp.40-40, 1893-01-31
著者
清水 潔
出版者
皇学館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

研究課題を遂行するための基礎的調査として本朝月令、延喜式、新儀式の写本調査を行い、次の成果を得た。1、 本朝月令の諸本16本の伝来と書写系統を明らかにした。その結果、宮内庁書陵部所蔵九条家旧蔵本と尊経閣文庫所蔵旧金沢文庫本の二本が中世に遡る古写本であり、とりわけ九条家旧蔵本が鎌倉時代に遡る最古写本であり、近世の諸写本の祖本とみられること、近世の諸写本は二系統に分かれること、しかし今日流布する群書類従本はその二系統のいづれとも異なる字句の異同を示しており、しかも明らかに訂正を必要とする字句が散見し、改めて校定し直す必要があることを確認した。2、 上記の点を踏まえ、本朝月令の校定本を新たに作成した。これによって本朝月令に引用されている平安時代中期までに存在した典籍の本文校定及び逸文蒐集に貢献するであろうし、儀式行事の成立と由縁を考察する上により正確な資料を提供することになろう。3、 延喜式の頭注標目「弘」「貞」「延」のうち、少なくとも金剛寺本中務省式にみえるものは、信頼してよいと考えられる。4、 新儀式の8本の写本を調査したが、いづれも近世の写本であり、今のところ新たな知見を加えるまでには至らなかった。個別の儀式行事そのものについては、宇多天皇朝の成立と説かれる「元旦四方拝」、延喜式成立前後、光孝天皇朝には成立していたと説かれる「一代一度の仁王会」は、いづれも既に嵯峨天皇朝の弘仁式段階で宮廷儀礼として成立していたことを明らかにした。その他、延喜天暦期の儀式行事の実態を把握するために、当該期を中心とした関係記事を編年的に整理して、今後の研究の基礎的データを蓄積した。
著者
渡利 徹夫 江尻 晶 森下 一男 佐貫 平二 渡辺 二太 西村 清彦 天野 恒雄 成原 一途 岡本 正雄 笹尾 真美子 霍 裕平 沈 慰慈 沈 学民 李 健剛 張 大慶 王 孔嘉 兪 国揚 王 兆申 方 瑜徳 張 暁東 万 元熈 万 宝年 邵 育貴 朱 思錚 武藤 敬 関 哲夫 熊沢 隆平 大久保 邦三 岡村 昇一 足立 圭三 東井 和夫 佐藤 哲哉 孟 月東 藤原 正巳 羅 家融 藤田 順治 SHEN Xuemin SHEN Weici FANG Yude WANG Zhaoshen WANG Kongjia YU Guoyang HUO Yuping WAN Yuanxi WAN Baonian LI Jiangang ZHANG Daqing ZHANG Shaodong LUO Jiarong MENG Yuedong SHAO Yugui ZHU Sizheng 万 元煕 李 建剛 愈 国揚
出版者
核融合科学研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

本計画立案時点において、トーラス型プラズマ装置として核融合科学研究所(NIFS)ではJIPP T-II U及びCHSが稼働中であり、準定常運転を目指す大型のLHDが建設中、他方合肥の等離子体物理研究所(ASIPP)ではHT-6M装置が稼働中、準定常運転を目指す大型のHT-7が建設中であった。またこの時点では「高ベータプラズマの閉じ込め研究」を共同研究の主要なテーマとしたが、基本となるプラズマ加熱が未だうまく行かない状態にあったASIPP側では大電力イオンサイクロトロン加熱の実現をHT-6Mの第一優先項目としたので、本計画もこの方面への研究協力に力点を置くことにした。本計画の3年間に、日本から合肥への派遣延べ21名,合肥から日本への招聘延べ18名を含む交流が実行された。平成5年度:ASIPPは採用していたカーボンリミターの材料の選択に問題があるとしてこれを撤去した。引き続きイオンサイクロトロンアンテナのファラデイシールドと呼ばれる部分の構造に問題があるというNIFS側の指摘に基づきこれも撤去した。これらの結果として、加熱の効果を示す「アンテナの負荷抵抗の増大」が観測された。NIFSのイオンサイクロトロン加熱において実績のあるチタンゲッターをHT-6Mに持ち込み不純物の制御を試みた。その結果ターゲットプラズマの質が向上した。入射電力は多少増大したものの未だ本格的な加熱には至らなかった。平成6年度:NIFSにおいて実績のある、固体ボロンを使ったボロニゼーションを試みた。不純物の流入が減少し、表面加熱に関する実験を行なう事が出来た。不純物の問題はいくらか改良されたものの、アンテナは絶縁破壊が起り大電力入射を妨げている。これを解決するために「長いアンテナ」を製作することにした。NIFSは2イオン共鳴加熱に移行することを主張していたが、HT-6Mでは磁場を0.9T以上にする上での技術的問題とASIPP内の実験テーマの優先順位の問題があって、2イオン共鳴加熱への移行は持ち越すこととなった。NIFSではLHDのイオンサイクロトロン加熱のための技術開発研究を行なっている。この一部としてASIPPの同軸切替器を改造して使用することにした。平成7年度「長いアンテナ」を装着し、第2高周波加熱以外に2イオン共鳴加熱の実験も行なった。予備的なものであったが、水素と重水素の成分比等の基本データも
著者
SWANSON Paul MOLLE Andrea
出版者
南山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

モッレ、アンドリア氏は平成20年度には「日本の新宗教運動と武道」をテーマに、主に以前行われたフィールドワークに基づき、データベースを作成し、研究を纏めた。訪問先やフィールドワークの対象になったものとして、名古屋大学合気道クラブ、名古屋の居合道道場、少林寺拳法名古屋東道場、合気道大阪武育会、栃木県気Society本部、東京の合気会本部道場、合気神社などである。新宗教運動として主に崇教真光を中心に研究を進めたが、綾部の大本教にもより、インタービュウーなどの研究活動をすすめた。また、インターネットやメールを通しての情報収集を行ってきた。データ(研究ノート、写真、書類、など)はNvivoによって入力・管理し、データをStOCNETによって分析をしている。また、この研究に基づき、多くの報告(著書の章、学術論文、研究報告、書評、翻訳、インターネット上の報告、など)を発表した。最後の一年間には引き続きフィールドワークを実施し、データを纏め、さらなる論文を作成し、今後の研究につなぐ準備をした。
著者
上杉 和央
出版者
京都府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

沖縄県内に残る沖縄戦に関する慰霊碑について、ごく一部の離島を除き、すべての地域を踏査し、これまでに紹介されてきた慰霊碑一覧には掲載されていない慰霊碑があることを発見し、新聞資料等の調査結果とも合わせて、慰霊碑の建立(撤去)のプロセスには地域差があることを確認した。また、慰霊祭の現地調査や聞き取りを実施し、その実施状況・内容に地域差があることを明らかにした。
著者
竹下 恵 笹部 昌弘 中野 博隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CQ, コミュニケーションクオリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.445, pp.1-6, 2008-01-17

近年のモバイル端末の普及に伴い,MANET上での情報発見技術の確立が求められている.これまでに,DHTとネットワーク層のルーチングプロトコルを統合することで,情報発見の効率を高められることがわかっている.さらに,ノードの物理的な位置に基づいてDHT上でクラスタリングを行う手法が検討されているが,ノードの移動速度が速い環境下では効率の低下が指摘されている.そこで本稿では,クラスタ内でオブジェクト情報を共有することで,従来手法に比べて検索成功率を最大で40%近く改善できることを示す.
著者
元日田 和規
出版者
鹿児島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

核磁気共鳴画像診断装置(MRI)と超音波診断装置(US)を用いた検査の実施が診療放射線技師(R)や臨床検査技師(M)に認められている。これら専門職は大学、短期大学、専修学校の異なる年限で養成されている。本研究では、RとMのMRI検査とUS検査に関する臨床能力を教育と資格試験から解析した。1.専門職教育内容:R課程(40校)とM課程(73校)にシラバスの提供を依頼し、回収した各21校と36校1のうち、授業時間数・時期・内容・教育方法が記載されているシラバスを解析対象とした。世界放射線技師会のROLE OF THE MEDICAL RADIATION TECHNOLOGIST(Guidelines for the Education Of Entry-level Professional Practice In Medical Radiation Sciences)をもとに、MRIとUSに関するコンピテンスを「画像解剖」「疾患と診断」「撮像」「装置の構成と原理」「画質の評価」「ペイシェントケア」「チーム医療」に分類し、平均授業時間を養成課程間で比較した。各項目の授業時間比率は機関で異なっていた。MRIに関する「画像解剖」「疾患と診断」「撮像」「装置の構成と原理」「画質の評価」の授業時間はR課程がM課程より有意に長かった。USに関する「画像解剖」「疾患と診断」「装置の構成と原理」「画質の評価」はR課程で有意に長かったが、「撮像」は差は認められなかった。「ペイシェントケア」「チーム医療」はR-M課程間で有意な差は認められなかった。2.国家試験:全出題数200問に対するMRIとUSの出題数はRで8-12、5-6、Mは1-2、3-6で、MはMRIで妥当性・信頼性の乏しい臨床能力評価であった。3.学会認定試験:受験資格としてMRIは装置の性能評価データの作成、USでは3年以上の臨床経験を要件として認知の評価をしていた。
著者
池内 敏
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

(1)以酊庵輪番制に関わる史料・論文、(2)対馬藩士の手になる外交史料(『善隣通交』『善隣通書』ほか)、(3)(1)(2)と密接に関連すると思われる対馬藩政史料〔国元日記や江戸藩邸日記〕、(4)元禄竹島一件に関わる論文、史料、(5)近世日朝間における外交折衝の特色を分析・評価する上で参考となる近代日朝漂流史料、を収集した。収集史料のうち、いくつかを選んで翻刻作業を進め、分析を行った。以酊庵輪番制については、現時点で得られる先行研究の整理を行った上で問題点を整理した。既往の評価が一面的であることを明らかにすると共に、今後以酊庵輪番制研究を進めていうくえで解明すべき点を具体的に指摘することとなった。それら諸論点のうち、第86代輪番僧であった梅荘顕常の動向に関わっては口頭報告を行った。対馬藩士の手になる外交史料については、収集した諸本間の比較検討を行った。また、対馬藩における外交史料集の嚆矢ともいえる『善隣通書』『善隣通交』の成立と元禄竹島一件交渉との関わりを検討した。その作業を進める過程で、元禄竹島一件交渉について詳細な検討を行わざるをえず、これまで歴史具体的な分析の不足していた安龍福事件について詳細に明らかにし、口頭発表を行うとともに原稿化した。