著者
河合 輝久
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.376-394, 2016-09-30 (Released:2016-10-31)
参考文献数
40
被引用文献数
5

本研究の目的は, 大学在学時に抑うつ症状を呈し始めた友人が身近にいた大学生の視点から, 大学生の抑うつ症状に対する初期対応の意思決定過程と実際の初期対応を明らかにすることである。大学生12名を対象に, 身近な友人が抑うつ症状を呈し始めた時の初期対応について半構造化面接を行った。得られた結果について, グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った結果, 「抑うつ症状を呈し始めた友人を援助する利益, 援助しないリスクを意識すると, 当該友人に援助的な初期対応を提供する」, 「抑うつ症状を呈し始めた友人を援助するリスク, 援助しない利益を意識すると, 当該友人に援助的な初期対応を提供せず, 距離を置いたり過度に配慮したりする」, 「専門的治療・援助の必要性を意識し勧めようとしても, 専門的治療・援助の利用勧奨リスクや専門的治療・援助の利用リスクを意識したり, 適切な専門的治療・援助機関を知らなかったりする場合, 専門的治療・援助の利用を勧めない」など8つの仮説的知見が生成された。大学生の抑うつの早期発見・早期対応においてインフォー マルな援助資源を活用する際には, 特に初期対応の実行に伴うリスク予期を軽減させるアプローチが重要であると考えられる。
著者
志摩 憲寿 宮吉 悠太
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.943-950, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
7

2020年の東京オリンピックが近づく中で、政府による「日本再興戦略2016」や「未来投資戦略2017」等において地域活性化の拠点としてスタジアムに期待が寄せられており、スタジアムと周辺地域の一体的な開発の重要性が指摘されているが、「後発型プロスポーツ」であるJリーグのホームスタジアムは、例えば、市街化調整区域内にスタジアムが立地する等、開発を慎重に進めざる得ない場面もみられよう。本研究は、地域密着型スタジアムの具体像を描く上での基礎的調査の報告であり、2017年にJリーグ全チームのホームスタジアムの施設特性と立地特性と俯瞰的に明らかにすることを目的とするものである。本研究を通じて、これらのスタジアムを「市街地型スタジアム」「郊外型スタジアム」「フリンジ型スタジアム」と分類し、それぞれについて開発の可能性を議論した。
著者
樋口 健太郎
出版者
古代学協会
雑誌
古代文化 (ISSN:00459232)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.509-522, 2005-10
著者
近藤 亮介
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.73-84, 2014-06-30 (Released:2017-05-22)

Shortly after the establishment of the Picturesque as the third aesthetic category, following the Beautiful and the Sublime, several pieces of English literature dealing with the Picturesque were published. One of the most popular pieces was William Combe's satirical poem, The Tour of Doctor Syntax, in Search of the Picturesque (1812). Dr.Syntax's character is based on Rev. William Gilpin, an advocator of the Picturesque. The poem indicates Combe's upper-class bias and middle-class focus: is not criticizing Gilpin himself, but rather the public fervor his theories kindled. In particular, Combe criticizes the popular picturesque tour. I suggest this is due to Combe's moral stance, and class affiliations. He sympathized with Quakerism, a middle-class Separatist group, for their pacifist tendencies. Although born into a merchant family, Combe tended towards upper-class conservatism, feeling that, unlike lower classes, they less often introduced urban vices to the countryside. His esteem for Quaker ideals of peace and simplicity, and for upper-class refinement as opposed to bourgeois populism, shapes this poem. While much scholarly attention has been paid literature criticizing upper-class notions of the Picturesque, this article focuses on Combe's criticism of the middle-class, and his reasons for it.
著者
中村 幸代 堀内 成子 柳井 晴夫
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.4_3-4_12, 2013-12-20 (Released:2013-12-26)
参考文献数
31

目的:冷え症の妊婦と,そうではない妊婦での,微弱陣痛および遷延分娩の発生率の相違の分析および,因果効果の推定を行うことである.方法:研究デザインは後向きコホート研究である.調査期間は2009年10月19日~2010年10月8日までの12ヵ月であり,病院に入院中の分娩後の女性2,540名を分析の対象とした(回収率60.8%).調査方法は,質問紙調査と医療記録からのデータ抽出である.分析では,共分散分析と層別解析にて傾向スコアを用いて交絡因子の調整を行った.結果:冷え症であった女性は41.9%であった.微弱陣痛では,冷え症の回帰係数0.69,p<0.001,オッズ比2.00であった(共分散分析).遷延分娩では,冷え症の回帰係数0.83,p<0.001,オッズ比2.38であった(共分散分析).結論:微弱陣痛では,冷え症である妊婦の微弱陣痛発生率の割合は,冷え症ではない妊婦に比べ,2倍であり,遷延分娩では約2.3倍であった.因果効果の推定では,冷え症と微弱陣痛ならびに遷延分娩の間で因果効果の可能性があることが推定された.
著者
富山大学附属図書館
出版者
富山大学附属図書館
巻号頁・発行日
pp.1-78, 2020-03

第1章 はじめに 1.1 大学で求められる「学士力・人間力」とは・・・・ 1 1.2 課題について・・・・ 2 1.3 学士力・人間力基礎で養うべき力・・・・ 4第2章 図書館から見た「学士力」とは 2.1 高校とは違う学修方法について・・・・ 6第3章 図書館を使いこなそう!-中央図書館の使い方- 3.1 図書館にはどんな場所や設備があるの?・・・・ 9 3.2 図書館ではどんな情報が利用できるの?・・・・ 16 3.3 図書館では図書館員が待っている!・・・・ 21 3.4 演習問題・・・・ 23第4章 学修に必要な情報を探す 4.1 調べるってどういうこと?・・・・ 24 4.2 調べ物の入口としての参考図書 ―辞書・事典・・・・ 24 4.3 学問体系を反映する小世界 ―請求記号とフロアマップ・・・・ 26 4.4 図書と雑誌を探す ―OPAC(オーパック) とCiNii Books(サイニィブックス)・・・・ 28 4.5 雑誌論文(日本語)を探す ―CiNii Articles(サイニィアーティクルズ)・・・・ 39 4.6 探した図書・雑誌・論文を利用する ―貸出・文献複写・・・・ 45 4.7 演習問題・・・・ 51第5章 「学士力・人間力基礎」で学ぶアカデミックスキル 5.1 「学士力・人間力基礎」で学ぶアカデミックスキル ―理由編―・・・・ 52 5.2 「学士力・人間力基礎」で学ぶアカデミックスキル ―内容編1(概説)―・・・・ 53 5.3 「学士力・人間力基礎」で学ぶアカデミックスキル ―内容編2(資料検索)― ・・・・ 55 5.4 「学士力・人間力基礎」で学ぶアカデミックスキル ―内容編3(引用)―・・・・ 56 5.5 「学士力・人間力基礎」で学ぶアカデミックスキル ―内容編4(テクニック集)―・・・・ 62 5.6 発信することの責任と意義・・・・ 64 5.7 おわりに・・・・ 65第6章 図書館員を利用しよう 6.1 図書館員が待っている!・・・・ 66 6.2 利用できる学修支援サービス・・・・ 67第7章 役に立つ情報源の紹介 7.1 第4章で紹介した各種情報源・・・・ 69 7.2 その他の有用な情報源・・・・ 72 7.3 図書館からの情報発信・・・・ 76 7.4 講習会(イベント)の実施・・・・ 77 7.5 演習問題・・・・ 78
著者
迫 龍哉 宋 剛秀 番原 睦則 田村 直之 鍋島 英知 井上 克巳
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.4_16-4_29, 2016-10-25 (Released:2017-01-14)

近年,命題論理の充足可能性判定(SAT)問題を解くSATソルバーの飛躍的な性能向上を背景に,問題をSATに変換し,SATソルバーを用いて求解するSAT型ソルバーが成功を収めている.しかしながら,最適化問題,解列挙問題などに対しては,SATソルバーを複数回起動する必要があり,求解性能が大きく低下することがある.この問題を解決する方法として,インクリメンタルSAT解法の利用が挙げられる.SATソルバー競技会のひとつであるSAT Race 2015で,このような解法を容易に実現するためのインクリメンタルSAT APIが提案された.本論文では,それを拡張したインクリメンタルSAT APIであるiSATを提案し,その応用について述べる.提案する拡張により,問題を簡潔に記述でき,Javaからの利用も可能になる.また,ショップスケジューリング問題,N-クイーン問題,ハミルトン閉路問題に対する実験結果を通じ,iSAT利用の有効性を示す.

4 0 0 0 OA 和漢三才図会

著者
寺島良安 編
出版者
中外出版社
巻号頁・発行日
vol.巻第53−71, 1902
著者
杉村泰
出版者
名古屋大学
雑誌
言語文化論集
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, 2002-11-15
著者
静 春樹
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:18840051)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.1315-1321, 2015-03-25

本稿はマイトリパのヴィクラマシーラ僧院追放とアティシャの関与の問題を検討し,僧院における声聞乗の律と金剛乗の三昧耶の対立を述べる.マイトリパ(別名アドヴァヤヴァジラ)は有名な学匠でありタントラの実践者でもあった.マイトリパの生涯とその事績について論じた羽田野伯猷は,アティシャに十九年間師事したナクツォ訳経師からの口承に基づくとされる『アティシャ伝』に大きな信頼を置いてマイトリパの追放事件に言及している.Mark Tatzはこの問題を再検討しチベット人歴史家の方法論自体に疑問を挟み,羽田野論文に批判的な見解を提出している.本稿では最初にチベット人の歴史書を引用する.つぎにTatz論文の要点を紹介する.そこで筆者は,僧院規律に違犯して追放された出家者が,僧院の外部に何らかの活動拠点をつくり,それが金剛乗の信解者たちの交流の場となる可能性を指摘する.玄奘を始めとする中国人巡礼僧の報告によれば,インドの仏教僧院は「大小共住」であった.こうした状況下で,タントラ行の目的で酒を備えもち瑜伽女と目される女性と飲むことが僧院追放となるのであれば,ガナチャクラや「行の誓戒」「明の誓戒」などの金剛乗の信解者に義務づけられている行の実践はおよそ不可能となる.それらのタントラ的実践は単なる創作だったのであろうか.もし実際になされていたとすれば,問題はどこで実行されていたかである.ひとつ明確なことは,誰が僧院から追放されたとしても,その金剛乗の比丘は「ヴァーギーシュヴァラ準則」(bhiksum vajradharam kuryat)によって持金剛者のアイデンティティをもっていることである.僧院に属する金剛乗の比丘と僧院外部の在俗瑜伽行者が金剛乗の仲間内にだけ開かれた何らかの宗教施設でタントラ的行を実践することは可能だったはずである.金剛乗の世界が僧院以外の施設を建立し運営していたことは典籍に窺える.金剛乗の比丘たちはそのような施設を訪れタントラ的実践を行っていたと筆者は問題提起する.
著者
青木 真純 佐々木 銀河 真名瀬 陽平 五味 洋一 中島 範子 岡崎 慎治 竹田 一則
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.133-143, 2020

ノートを取ることの困難さを主訴とした大学生1名に対し,ノートを取るための方略生成と精緻化のプロセスを支援することで方略変容が生じるか,またそれがノートの内容にどのような影響を及ぼすかを検討した。支援開始前に心理教育的アセスメントを行ったところ,言語的な知識や,聴覚的短期記憶は保たれているものの,注意の向け方の独特さや,全体の見えにくさ,ワーキングメモリの弱さ,視覚的短期記憶の弱さ,注意の切り替えの難しさといった認知特性が想定され,これらがノートを取ることの困難さに関連した背景要因として考えられた。これらをふまえ,支援の中では,対象者に友人のノートと自分のノートを比較させ,方略を生成することを促し,言語化させた。その結果,対象者は多くの情報を記載するための方略や情報の取捨選択を行うための方略を生成し実行した。それによってノートに書かれた情報の不足を補うことが一定程度可能となった。