著者
奥薗 智仁 岡島 寛 松永 信智
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集 第59回自動制御連合講演会
巻号頁・発行日
pp.736-737, 2016 (Released:2017-02-01)

株式市場の内部メカニズム検討する手段に人工市場がある。従来の人工市場では投資家の意思決定や取引のルールを重要視したモデル化がされてない。実用的なルールを内包した人工市場を構築すると、公正な証券取引所の再設計にモデルを利用できる。そこで投資家モデル群と売買ルールに基づいた人工市場を設計し、その評価を行う。
著者
外川 昌彦
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.189-229, 2016-06

本稿は、1891年に大菩提協会を創設し、世界的なブッダガヤの復興運動を組織したスリランカの仏教運動家アナガーリカ・ダルマパーラ(Anagarika Dharmapala、1864―1933)と、当時の日本人との関わりを検証している。特に、1902年に九ヶ月に渡りインドに滞在した岡倉天心が、その滞在中に関わりを深めてゆくブッダガヤ問題の背景を、浮き彫りにしようとするものである。 そのため本稿では、特にダルマパーラの仏跡復興運動と厳しく対立したヒンドゥー教シヴァ派の僧院長であるマハントや、宗教的中立性を標榜し、現地の争点には不介入の立場をとった絵領インド政府によるブッダガヤ問題への対応の経緯を検証し、ダルマパーラが仏跡復興に取り組んだ1891年から、天心がブッダガヤを訪れた1902年までの約十二年間の大菩提協会の活動の経緯を検証する。 岡倉天心のブッダガヤ訪問は、これまで主に美術史的な観点から、アジャンター・エローラなどの仏跡探訪の延長として理解され、ブッダガヤでの活動について検証する研究は限られていた。他方、ダルマパーラの日本人との交流も、これまで釈興然や田中智学らの仏教者との交流は注目されてきたが、ダルマパーラの仏跡復興運動の文脈における天心との接点については、やはりその検証は限られていた。 しかし、九ヶ月に渡るインド滞在中に、天心は三度に渡りブッダガヤを訪れており、その間に、日本人巡礼者のためのレストハウスの建設を計画し、実際に、ヒンドゥー教僧院長のマハントとの土地取得の交渉を行っていた。九ヶ月のインド滞在中に天心が三度も訪れた場所は他にはなく、それは天心のブッダガヤへの、並々ならぬ関心を物語るものとなっている。 そこで本稿では、1891年以来、大菩提協会を組織してブッダガヤ復興運動をリードしたダルマパーラの活動を縦軸に据え、マハントや英領政府、及び日本人との関わりを横軸として、ブッダガヤ復興運動に関わる岡倉天心の意図を検証する。具体的には、1891年から1902年までのブッダガヤにおける仏跡復興の運動を、本稿では次の三つの時代に分けて整理する。 すなわち、①1891年に始まるダルマパーラの大菩提協会によるブッダガヤ寺院の買い取り運動と英領政府首脳部のダルマパーラに対する認識、②日本からブッダガヤ寺院に寄進された仏像をめぐる、1895年のダルマパーラによる大塔内陣への安置とマハントによるその撤去問題をめぐる係争関係、及び、ビルマ・レストハウスへの仏像の安置をめぐる英領政府と大菩提協会の対応の問題、③新たなレストハウスの建設と仏像の安置先の問題をめぐるダルマパーラ、マハント、英領政府の三つ巴の関係と、その中で日本人のためのレストハウスの建設を計画した、1902年の岡倉天心によるブッダガヤ訪問とマハントからの土地取得の交渉の経緯である。 これまで、ブッダガヤでの大菩提協会の活動は、特に1895年の大塔内への日本の仏像の安置問題が注目されてきたが、むしろ本稿では、日本の仏像の安置先をめぐる問題を、ブッダガヤ寺院内のレストハウス問題の一部として検証する。それによって、ダルマパーラの運動の行き詰まりを打破する可能性としての、岡倉天心による新たなレストハウス建設の意義が検証される。
著者
山本 光正
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.23-58, 1999-03-31

明治二二年に東海道線が開通すると、ほとんど同時にといってよいほど、人々は鉄道を利用するようになったと思われる。鉄道の出現により東海道の旅行も風情がなくなったという声が聞かれるようになるが、一方では鉄道は新しい風景を作り出したと評価する声もあった。しかし鉄道の是非とは関係なく、徒歩による長期の旅行を容認する社会ではなくなってしまった。鉄道旅行が当然のことになると、旧道特に東海道への回帰がみられるようになった。東海道旅行者には身体鍛錬を主とした徒歩旅行と、東海道の風景や文化を見聞しようとするものがおり、東海道を〝宣伝の場〟としても利用している。身体鍛錬の徒歩旅行は無銭旅行とも結びつくが、これは明治期における福島安正のシベリア横断や白瀬矗の千島・南極探検に代表される探検の流行と関連するものであろう。探検や無銭徒歩旅行の手引書すら出版されている。見聞調査は特に画家や漫画家を中心に行われた東海道旅行で、大正期に集中している。大正四年に横山大観・下村観山・小杉未醒・今村紫紅・同じ年に米国の人類学者フレデリック・スタール、年代不詳だが四~五年頃に近藤浩一路、七年に水島爾保布、七~八年頃に大谷尊由と井口華秋そして大正一〇年に行われた岡本一平を中心とする「東京漫画会」同人一八名の東海道旅行で一段落する。昭和に至り岡本かの子は短編『東海道五十三次』を発表するが、これは大正期における東海道旅行を総括するものとして位置付けられる。失われていくもの、大きく変りゆくものに対しては記念碑の如く回顧談的著作物が多く出版される。東海道線開通後旧東海道を歩くことが行われたのもこうした流れの中に位置付けることができるが、それだけでは理解しきれないものを含んでいた。さらに東海道旅行は昭和一〇年代の国威宣揚を意識した研究につながっていく。
著者
中井 順二 駒沢 正夫 大久保 泰邦
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.185-200, 1987-08-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

Bouguer anomaly map of the Kanto district was compiled. On the whole, gravity anomalies are high in Tsukubasan areas, and low in the central parts of the Kanto plain. Negative anomalies in the Boso peninsula and the Tama hills suggest the basement structures of the sedimentary basins. The Kanto mountains district is bounded on the east by steep gradient of gravity anomaly. The above gravity features can be recognized in the map of the upward continuation. The gravity trend along Narashino, Sakura and Omigawa is more clearly indicated in the map of the first derivative, and the tectonic line covered by sediments can be supposed.In the Izu peninsula and the Tanzawa mountains district, gravity anomalies are rather high and low anomaly zone is recognized between these two areas. The northern border part of this zone correspond to Kannawa fault and Kozu-Matuda fault.Aeromagnetic map was compiled with the data obtained by New Energy Development Organization and Geological Survey of Japan.Generally, the Kanto district is surrounded by intense magnetic anomalies with short wavelength which are distributed along Nasu volcanic zone and Fuji volcanic zone.In the central part of the Kanto plain, weak magnetic anomalies are scattered zonally in the E-W direction. According to the geological and well data, this zone seems to be corresponded to Sambagawa metamorphic belt and these anomalies are presumably caused by the basic or ultrabasic rocks.The Hakone mountains district has sharp anomalies with short wavelengths, and the maximum amplitude of the anomalies reachs 900nT. Low anomaly zones are recognized arround this high anomalies. The source of this low anomalies is not clear, but it is of great interest geologically and geophysically.
著者
長谷川 良平
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.86-90, 2014-09-30 (Released:2014-11-26)
参考文献数
21

An EEG-based brain–machine interface (BMI), “Neurocommunicator” has been developed by the author's research group in AIST in order to support communication of patients with severer motor deficits. The user can select one of registered messages in real time from electroencephalography (EEG) data and express it via his/her avatar. Integration of neuroscience and psychology will contribute to the future development, at hardware, software and service levels, of Neurocommunicator toward a commercial product.
著者
舘野 由香理
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Language and Literature (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.1-21, 2012-03-01

中国語の音節構造はIMVF/Tで示されるのに対し、日本語はCVのような単純な開音節構造であるため、中国語原音を日本語に受け入れる際に、様々な問題が発生した。韻尾のうち、入声音は原則的に狭母音をつけて開音節化させたが、唇内入声音の受け入れ方は複雑である。例えば、「習シュウ(シフ)」のように語尾が「-ウ(-フ)」となるもの、「湿シツ」のように「-ツ」となるもの、「雑ゾウ(ザフ)・ザツ」のように「-ウ(-フ)」と「-ツ」の2通りあるものの3パターンの写され方が存在する。このうち「-ツ」は特殊であり、これは無声子音の前で起きた促音によるものとされる。小論では、現代漢語における唇内入声音の促音化について分析し、それをもとに歴史的実態についても推測する。合わせて、字音(漢字の音)と語音(漢語の音)の関係を明らかにしたい。
著者
南雲 清二
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.11, pp.1527-1543, 2011-11-01 (Released:2011-11-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

Cinchona is one of the most important medicinal plants as it contains quinine, a potent medicine for malaria. In this review, I reveal the history of cinchona introduction and cultivation in Japan. Cinchona was first introduced to Japan in 1876 from Java based on the proposal submitted by Takeaki Enomoto to the Meiji government. However, the cultivation attempt ended in failure. Later in 1922, Hoshi Pharmaceutical Co. succeeded for the first time in cultivating cinchona in Taiwan, which was then under Japanese colonial rule, and in manufacturing quinine from the cinchona tree in 1934. This was a historic feat in Japan, completing an entire process from cinchona cultivation to quinine manufacture all within the confines of the country. To commemorate this undertaking, the company dedicated a cinchona log harvested for the first time to the Imperial court. It was revealed that a log of unknown origin, which had been left untouched for years at Hoshi University, was the cinchona log from the time of commemoration. Yasusada Tashiro (1856-1928), who has made a great contribution to cinchona cultivation in Japan for over 50 years, led Hoshi Pharmaceutical Co. to success in cultivation.
著者
菅野 純
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第39回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S15-5, 2012 (Released:2012-11-24)

大量ではほぼ全員が肝不全により死亡、微量では用量依存的に肝がんが増加する、というのは遺伝子障害性発がん物質のアフラトキシンの毒性である。この用量作用関係は電離放射線のそれと類似している。これも最終的にラジカルなどの化学反応が生体分子を修飾して毒性を表すので共通性は当然存在する。1mGy程の低線量を前照射する(Tickle dose)と、その後の放射線障害を緩和する。化学物質でも、少量を前投与するとその後の投与の影響が変わる事は、紀元前2世紀の王様が毒物による暗殺に備えて少量の毒物を摂取するなど、太古から知られている。 しかし、放射線には化学物質には無い「魔術性」がある。例えば、抗がん剤のメトトレキセートが慢性関節リウマチに効くことから、現在「リュウマトレックス」と名を変えて処方されている。他方、放射線も効果を示すと報告されており、それを引用して低線量の放射線が体に良いという宣伝がなされている。さらに「だから、普通の健康な人にも良い」と言う者がいて、それをマスコミが取り上げる。しかし、抗がん剤であるメトトレキセートを健康な一般人に勧めることはないし、マスコミもその様な報道をしない。 既存の科学的データからリスクを評価する。データ不足は適切な仮説で補われる。閾値設定の適否もこれに含まれる。その結果に基づいて施策を決め措置を取るのがリスク管理である。本来、リスク評価は毒性専門研究者が、リスク管理は行政担当者が扱う。しばしば両者が共同で管理を実施したための弊害が指摘され改善が叫ばれているが、放射線はこれに逆行した様である。放射線の魔術性という特殊性はここにも影響していると思われる。 この魔術性を打破する事は国民の放射線影響に対する理解を深める為に必要であると考える。その為には「放射線毒性学」に於いて、化学物質と放射線の毒性を対等に扱う毒性学問領域の存在意義を広め、その研究を進めることを提案する。

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1921年09月27日, 1921-09-27
著者
Kakui Keiichi Hiruta Chizue
出版者
John Wiley & Sons
雑誌
Journal of Morphology (ISSN:03622525)
巻号頁・発行日
vol.275, no.9, pp.1041-1052, 2014-09
被引用文献数
14

Among arthropods, various insects, spiders, and crustaceans produce thread. The crustacean Tanaidacea include species that use thread mainly to construct dwelling tubes. While thread production was previously known only in Tanaoidea and Paratanaoidea, it was recently discovered in two species in Kalliapseudidae (Apseudoidea), although information on the morphology of the thread‐producing system was lacking. Using histology, light and scanning electron microscopy, we found that the kalliapseudid Phoxokalliapseudes tomiokaensis comb. nov. lacks the sort of glandular structures associated with thread production in the pereonites, but has these structures in pereopods 1–6. We observed four types of glandular systems defined by the types and distribution of glands they contain: Type A (pereopod 1), Type B (pereopods 2 and 3), Type C (pereopods 4 and 5), and Type D (pereopod 6). All types have small rosette glands and lobed glands; Type A additionally has large rosette glands. The inferred thread‐producing apparatus in P. tomiokaensis is very different from that in Tanaoidea and Paratanaoidea, suggesting that kalliapseudids evolved thread production independently from the latter two groups. J. Morphol. 275:1041–1052, 2014. © 2014 Wiley Periodicals, Inc.
著者
牛島 秀暢 青木 俊介 西山 勇毅 瀬崎 薫
雑誌
研究報告高度交通システムとスマートコミュニティ(ITS) (ISSN:21888965)
巻号頁・発行日
vol.2020-ITS-81, no.1, pp.1-8, 2020-05-21

交通やインフラ,スマートフォンなどから得られる様々なデータを統合的に利活用し,都市計画の継続的な改善に役立てるという都市コンピューティングが注目されている.都市コンピューティングは少子高齢化と過疎化が進行する日本においても公共インフラを有効活用し都市を維持するためにも有効である.限られた公共インフラを活用するためには人々の移動目的を推定し,交通リソースを最適化する必要があるが,既存の IC カードなどの交通データでは推定粒度に限界があった.こうした状況の中,特定の返却場所を持たないドックレス型のマイクロモビリティが急速に普及している.ドックレス型マイクロモビリティは平均移動距離が 500m 程度と短く,直接目的地に向かうため,より詳細な移動行動が検出可能である.本研究では,マイクロモビリティが都市空間で離散的に分布する点に着目した.そして,細かく単発的な移動行動を大域的に分析することで潜在的な移動パターンがあることを,Non-Negative Tensor Factrization と呼ばれる教師なし学習を用いることで明らかにした.
著者
玉田 泰嗣 古屋 純一 鈴木 啓之 小野寺 彰平 山本 尚德 佐藤 友秀 野村 太郎 近藤 尚知
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.503-509, 2020-03-31 (Released:2020-04-17)
参考文献数
18

摂食嚥下リハビリテーションは,慢性期のみならず急性期病院入院中の早期から行うことも重要である。歯科においても,特に有床義歯に対する歯科補綴学的対応は歯科医師に限定されているため,他職種からの期待も大きい。しかし,摂食嚥下障害を有する急性期病院入院患者における有床義歯の使用状況については,十分には明確になっていない。そこで本研究では,摂食嚥下障害と診断され歯科に依頼のあった急性期病院入院患者627名(平均年齢71.0歳)を対象として,有床義歯の使用状況について調査を行った。患者の多くは脳血管障害や頭頸部癌を有する高齢者で,多数歯欠損であるEichner分類B3~C3の割合が全体の約60%を占めていた。有床義歯に対する歯科補綴処置の必要性は医科の認識よりも実際には高く,全身と口腔の状態から歯科医師が,有床義歯装着が必要と判断した患者は全体の約70%だった。しかし,実際に義歯を使用している患者は全体の約25%であった。また,摂食嚥下障害臨床的重症度分類(Dysphagia Severity Scale:DSS)が低い患者ほど義歯を装着していないことが多いが,誤嚥を認めないDSS 5,6の患者においても,義歯が必要だが使用していない患者を約35%認めた。以上より,摂食嚥下障害を有する急性期病院入院患者においては,有床義歯に対する歯科補綴学的対応が重要であることが示唆された。