著者
太田 誠一 武田 博清 石塚 成宏
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

近年、湿潤熱帯アジアでは増大するパルプ需要に答えるため大規模な植林事業が展開されており、こうした地域ではアカシア・マンギウム(以下アカシア)を代表とするマメ科早生樹が広く植栽される。しかし、アカシアは窒素固定樹種であるため成長が早い一方、土壌-植生系内を循環する窒素量が増大することで、亜酸化窒素(N2O)を通常の森林よりも多く排出することを明らかにしてきた。本課題では N2O 放出緩和オプションの提示を目的として、インドネシア南スマトラ州のる大規模産業植林地帯において、以下の研究を実施した。1)リン施用がアカシア林地からの N2O 放出に及ぼす影響、2)リン施用を導入したアカシア植林施業の温暖化緩和効果の評価。 その結果、リン施用は植物根のない状態ではN2O 排出を促進するが、アカシア根による養分吸収がある条件下では植物の窒素吸収を促進することで土壌からの亜酸化窒素排出を抑制する効果を持つことを明らかにした。またアカシア新植時からリン施用を行えば無施用区に比べ、土壌炭素の分解が促進される一方で、 N2O の発生抑制ならびに植栽木のバイオマス生産増によって、全体としては温暖化緩和効果が強化されることを明らかにした。
著者
丸山 美貴子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

子育て支援において家族支援、とりわけ親のエンパワーメントは不可欠であるが、その過程と条件について、保育園児の親を対象とした研究はほとんど見られない。本研究は、保育園・幼稚園児の親が集うコミュニティとして保護者会や家族会を対象とし、社会教育学的観点により、親のエンパワーメントの過程とその条件としての教育・学習実践の解明を課題とするものである。その際に、教育・学習実践を、個人が知識や力量を獲得していく<個体モデル>としてではなく、問題を顕在化・課題化し解決にとりくむ実践共同体(=実践コミュニティ)の形成と一体のものとして把握する<コミュニティモデル>として、事例調査から実証的に研究するものである。
著者
石塚 淳子 笹野 幸春 山本 哲子 小元 まき子 渋江 かさね 山崎 準二
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

近年、看護師養成の課程をもつ看護系大学・学部が急増し、それに伴い看護教員の不足と質の低下が大きな問題となっている。日本の看護教育において、これからの看護教員の教育力の向上のためには、諸外国の物真似ではない日本独自の社会的背景の中で発展してきた熟練看護教員の力量発達過程を活用したプログラムが有用である。そこで申請者が長年研究してきた研究の成果を活かし、教師教育や生涯教育の研究者らと協力して熟練看護教員の経験をライフヒストリー・アプローチで描き出しながら現役若手看護教員らによる“実践コミュニティ(経験から学ぶ場)”プログラムを試みる。
著者
松宮 護郎 松田 暉 澤 芳樹 福嶌 教偉 西村 元延 市川 肇 舩津 俊宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

重症心不全でLVAD装着術後に自己心機能が改善し左室補助循環装置(LVAS)離脱が可能となる症例、いわゆる"Bridge to Recovery"が報告されているが、その心機能を改善させるための手段として細胞移植が応用できないかを検討することを目的として本研究を開始した。1.拡張型心筋症ハムスターに対する筋芽細胞シート移植拡張型心筋症ハムスターの27週齢時に、筋芽細胞シートを2層化して移植し、経時的に心機能を測定し、心筋構造蛋白の免疫染色を行った。筋芽細胞シートを移植した群は、従来の針による細胞移植法と比較して、有意な心機能向上効果を認め、左室壁の肥厚化を認めた。また、dystrroglycan, a, d-sarcoglycanの濃染性を認めた。また、筋芽細胞シート移植群は他群と比較して、生命予後は延長した。2.拡張型心筋症モデル犬に対する筋芽細胞シート移植ビーグル成犬に心室ペーシングを続け、拡張型心筋症モデルを作成した。ペーシング開始後4週後に自己筋芽細胞シートを心表面に移植し心機能の経時的変化を測定し、非移植群と比較した。シート移植群は有意に駆出率の増加、および内腔の縮小、壁厚の増大を認めた。また、組織学的検討では移植群において有意な心筋線維化抑制、apoptosis抑制効果を認めた。3.虚血性心筋症モデルブタに対する筋芽細胞シート移植ミニブタの冠状動脈左前下行枝をアメロイドリングを用いて結紮し、虚血性心筋症モデルを作成した。骨格筋筋芽細胞シートを移植し、心機能を評価した。シート移植群において他群に比して有意に良好な左室収縮能、壁厚の増大、内腔の縮小を認めた。またFDG-PETにて心筋の糖代謝能改善が認められた。これらのメカニズムを検証するにあたり、電子顕微鏡、免疫染色、RT-PCR法、FDG-PET法、MEDシステム等を駆使し、構造、因子、遺伝子、代謝、電位活性等の多方面からの検討を行った。
著者
合田 光寛 八木 健太 相澤 風花 濱野 裕章
出版者
徳島大学
雑誌
学術変革領域研究(B)
巻号頁・発行日
2020-10-02

多剤併用による薬剤シナジー効果を適切に解析できる薬効評価系の構築には、病態の一部の遺伝子やタンパク質発現変化を模倣しただけでは不十分であり、病態のメカニズムを網羅的遺伝子・タンパク質発現変化で解析可能な評価系が必要である。本研究では、ヒトの病態時に起こる遺伝子・タンパク質発現変化プロファイルを網羅的に解析できる病態モデルを確立し、薬剤のシナジー効果とその作用機序を解明する手法を構築 することを目的にする。多剤併用時の各病態における遺伝子・タンパク質発現変化プロファイルのデータを蓄積することにより、より効率的に薬剤シナジー効果を推定するための新規ヒトオミックスデータベースを構築できる。
著者
藤森 淳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

銅酸化物高温超伝導体の発見から36年を経て膨大な研究成果が蓄積されてきたが、未だに高温超伝導機構の解明に至っていない。機構解明の鍵を握るのが、超伝導ギャップより遙かに高温から開く擬ギャップの形成機構の解明である。近年、電子の分数化よる擬ギャップ形成機構が理論的に提案され有力視されている。本研究では、世界最高の分解能を持つ台湾放射光施設において共鳴非弾性X線散乱法を用いて、擬ギャップ状態を詳細かつ精密に特定し電子の分数化を検証する。
著者
倉井 淳
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

黄砂時粉塵の長期曝露が発癌に関与する可能性について,気道上皮構成細胞株を用いて検討を行った.その結果,比較的短時間の黄砂時粉塵による細胞株刺激でも,炎症発癌に関与するサイトカイン,酸化ストレスマーカーが誘導され,粉塵の長期曝露が発癌に関与する可能性が示唆された.また,鳥取県内に長期在住している非喫煙肺腺癌患者の術後肺標本における元素解析を蛍光X線法で行った.喫煙肺腺癌患者の標本でも同様の解析を行い両群間で元素成分について比較検討を行った.黄砂に付着する重金属などの非土壌成分について明らかな差異は認めらなかった.長期粉塵曝露が肺組織へ与える影響については今後さらなる検討が必要と考えられた.